第6回妻アニータへ深まる疑念 案内されたチリの豪邸、思わず笑ってしまう

有料記事アニータの夫

坂本泰紀
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 《青森県住宅供給公社の職員、千田郁司(ちだゆうじ)は、妻アニータ・アルバラードへの疑念を深めていった。そんな中、妻から「(2000年9月に)病院が開業するからテープカットに来てくれ」と頼まれた》

 病院はチリの首都・サンティアゴの一等地にあった。俺はオーナーだのなんだの言われて、5人ぐらい並んでテープカットをした。

 式典にはアニータの家族以外見知った顔ぶれはいなかったけど、あとで聞いたら政財界の大物も来ていたみたいだった。

 俺はスペイン語もわからないし、誰が来ているかわからなかったけどね。

 病院は、アニータの家族が総出で運営するということだった。受付は母親、送迎は妹の旦那、アニータは資金調達などの経営全般という話だった。

 病院があれば、アニータの家族は食っていけるし、貧乏な子どもたちにも、地域の人たちにもプラスになる。ああいいなって思った。まあ色々だまされてきたから感覚がまひしてたっていうか、普通なのかなって思うくらいになっていたよね。

青森県住宅供給公社の巨額横領事件とは

23年前に発覚した青森県住宅供給公社を舞台にした14億円超の巨額横領事件。当時、青森支局員だった記者が、刑期を終えた元公社職員に50時間を超えるインタビューを行いました。彼が語った事件とは。連載の後半では、金を受け取ったとされるチリ人妻のメッセージも紹介します。記事中の敬称は省略します。

 病院ができてホッとした部分もあったよね。横領するたびに手が震えて夜は酒を飲まずに寝られなかったから。疑われているんじゃないかって疑心暗鬼で、両親の顔もまともにみられない。

「私うそいっぱいって思ってるの?」

 一方で、この病院に7億も8…

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連載アニータの夫(全13回)

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