米マイクロソフト、排出する「すべてのCO2を回収」 2050年までに

Satya Nadella

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画像説明, 米マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)

米マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は16日、1975年の創業以来排出してきた二酸化炭素(CO2)について、2050年までに「すべて」回収すると述べた。

マイクロソフトは、この目標を達成するために、まずは2030年までに「カーボンネガティブ(排出するよりも多くのCO2を除去する)」を実現するとしている。

さらに、2025年までに、同社のデータセンターや他の施設で使用するすべての電力を、再生可能エネルギーにしたい考えだ。

今回の計画の背景には、ライバル企業の米アマゾンが、2040年までに、CO2の排出量と除去量をプラスマイナスゼロにする「カーボンニュートラル」の達成を目指してることがあるとみられる。

CO2削減の技術開発に10億ドル

マイクロソフトのブラッド・スミス社長は「CO2に関して言うと、プラスマイナスゼロでは不十分だ」と述べた。

スミス社長はブログで、「大気中の二酸化炭素は、熱を閉じ込める(温室効果)ガスの膜を作り出し、世界中の気候に変化を与えている。(中略)我々がCO2排出量を抑えなければ、基本は上昇し続ける。科学によって、壊滅的な結果がもたらされると証明されている」と述べた。

マイクロソフトは、CO2を回収し蓄えるための幅広い技術を用いて、「カーボンネガティブ」を達成したいとしており、こうしたCO2削減の技術開発に10億ドル(約1100億円)の基金を設置するという。

スミス社長は、今回の計画には、「今日の世界にはまったく存在していない」技術が必要になるとしている。

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CO2税の引き上げも

マイクロソフトは、二酸化炭素税を引き上げるなどして、2030年までに同社と同社のサプライチェーンに含まれる企業から排出されるCO2を、現在の半分に抑える計画だ。

2012年以降、マイクロソフトは、電力の使用や出張の移動などを通じて発生するCO2コストを考慮した予算を設定するよう、各部門に求めてきた。

そして今回、顧客が同社製品に使う電力などによる、間接的なCO2排出も組み込まれることになる。

CO2回収の方法

マイクロソフトは、幅広い方法で大気中のCO2を回収したいとしている。

具体的には、新たな植樹と既存の森林の拡大、土壌炭素隔離(CO2を大気中に排出せず、地中に閉じ込める)、直接空気回収(大気中のCO2を直接回収する)、バイオエネルギーを用いた二酸化炭素回収などを挙げている。

環境活動家の反応

マイクロソフトが自分たちの役割だけでなく、さらに大きな環境改善の展望を描いていることを示しているとして、環境活動家は今回の発表を大歓迎した。

「これは、持続可能な環境政策を率いるハットトリックだ」と、環境防衛基金(EDF)のエリザベス・スターケン氏は述べた。

「しかし、本当に目立った変化をもたらすためには、先例に従い、巧言を行動に移す企業がほかに1000社必要だ」

一方、国際環境団体グリーンピースは、マイクロソフトにはまだ、石油会社やガス会社との継続的関係に対処する必要があると警告した。

「マイクロソフトの発表には喜ぶべきことがたくさんある一方で、ぽっかりあいた穴については対処がなされないままだ。マイクロソフトは、石油燃料会社がもっと石油やガスを掘れるよう、機械学習や人工知能(AI)技術の面での支援を拡大しているのだから」と、グリーンピースの上級活動家、エリザベス・ジャルディン氏は述べた。

それでも、マイクロソフトの計画は、フェイスブックやグーグル、アップル、アマゾンなど、「カーボンネガティブ」の取り組みをしていないほかのハイテク企業の計画よりもずっと挑戦的だ。

ハイテク部門とCO2

ハイテク企業の製造センターやデータ処理センターからは、大量のCO2が排出される。

米ニューヨーク大学の研究機関「AI Now Institute」は、今年のハイテク部門のCO2排出量は、世界の温室効果ガスの3.6%を占めることになるだろうと推定している。これは、2007年の時の2倍以上の割合だという。そして、最悪のシナリオでは、その割合が2040年までに14%まで膨れあがる可能性がある。

ライバル企業の取り組み

米ソフトウェア企業イントゥイットは、2030年までに「カーボンネガティブ」を達成するとしている。米アマゾンは、2019年9月に、「カーボンニュートラル」を2040年までに達成すると発表した。

一方、米グーグルは2018年9月、各都市がCO2排出量を確認できる、可視化ツール「EIE」をリリースしている。

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「カーボンニュートラル」と「カーボンネガティブ」

「カーボンニュートラル」を掲げる企業は、効果的に、大気中にCO2を排出しないことを目指す。

方法の一例は以下の通り。

  • CO2排出量と除去量のバランスをとる。例えば、1トンのCO2を大気中に排出するごとに1トン回収する
  • CO2排出量分を相殺する。例えば、世界のどこかでCO2排出量を削減するプロジェクトに投資する
  • そもそも温室効果ガスを排出しない。例えば、再生可能エネルギーに切り替える

これまでは、ほとんどの企業がカーボンニュートラルを達成するために排出量分を相殺することを重視してきた。

例えば、水力発電所を建設したり、まきストーブの使用を家族にやめるよう促したり、企業が太陽光発電を活用する手助けをしたりすることが多い。

こうした方法では、排出量を抑えられるが、除去量が排出量を超えることにはつながらない。

「カーボンネガティブ」を達成するには、企業側は実際のところ、排出量を上回る量を回収しなければならない。

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