イランの女子生徒たち、スカーフ外して準軍事組織の関係者を罵倒

動画説明, イラン南部の学校で女子生徒たちが、イラン革命防衛隊の準軍事組織バシジ関係者を罵倒

反政府デモが広がるイランで、女子生徒たちがイラン革命防衛隊の準軍事組織関係者を前に、頭髪を覆うスカーフを外し、「失せろ」と叫ぶ動画が注目されている。

イランでは先月、髪の毛を覆うよう女性に義務づけた法律に違反したとしてマサ・アミニさん(22)が道徳警察に逮捕され、その後に死亡した。それをきっかけに、抗議デモが広がっている。

国民に恐れられている準軍事組織バシジの関係者が訪れた学校で、10代の女子生徒たちがヘッドスカーフを振り回し、「バシジはうせろ」と叫んでいる動画は、南部シラーズで4日に撮影されたものとされているが、BBCはこれを独自に検証できなかった。

バシジはこれまで、アミニさん死亡を機にした各地の抗議行動について、治安当局による取り締まりに協力している。

ソーシャルメディアで拡散した別の動画では、北西部の都市サナンダジで、若い女性たちスカーフを振り回しながら車の間をぬって道路を歩くなか、男性が「独裁者に死を」と叫んでいる。

別の動画では、スカーフを外した女子生徒たちが「自由、自由、自由」と叫ぶ様子に、年長の女性が拍手している。

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イランのユセフ・ヌリ教育相は5日、一連の世情不安は学校や大学を標的にしている「敵」のせいだと非難した。

モハマド・ジャファル・モンタゼリ検事総長は、イランの若者がデモに参加しているのは、インターネットを見すぎて「わなにはまった」からだとして、各地当局はデモ取り締まりに乗り出す必要があると述べた。

こうしたなか、テヘラン近郊のカラジでは、歩道の脇でオートバイで走らせる男から、複数の女子生徒が悲鳴を上げながら逃げる動画が拡散された。男は私服の治安当局者とみられる。

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イランでは9月、テヘランでクルド系のマサ・アミニさん(22)が頭髪を覆うスカーフを適切に着けていなかったとして道徳警察に逮捕され、数日後に亡くなった。これを機に、国内各地でこれに抗議する大規模なデモが相次いでいる。

目撃者によると、アミニさんは9月13日、警察に警棒で頭を殴られ、警察車両に頭を打ち付けられるなどした後、意識不明に陥り、16日に亡くなった。警察は暴行の証拠はなく、アミニさんは心臓発作で死亡したと主張している。

動画説明, 【解説】 イランで抗議行動が相次ぐ 女性の死亡を機に反政府デモ拡大
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当初から若い女性たちが抗議行動の中心になっていたものの、3日からは多くの女性生徒たちが公然とデモに参加するようになった。

その前日には首都テヘランにあるシャリフ大学で学生たちが、警察当局と衝突。多くの学生が大学構内に閉じ込められ、殴打され、目隠しをされて連行されたと言われている。

最高指導者アリ・ハメネイ師は3日になって初めて、各地のデモに言及。マサ・アミニさん(22)が死亡したことで「みんな深く悲しんでいる」と述べた。ハメネイ師は、抗議デモはアメリカやイスラエルが仕組んだものだとの考えも示し、治安当局はデモ取り締まりを継続する必要があると述べた。

動画説明, イランで自由を求め続け……世代を超えた女性たちの闘い

南東部では多数が死亡

複数の人権団体はイランの治安当局が市民を多数殺害していると非難している。南東部シスタン・バルチスタン州の州都ザヘダンで9月30日に起きた治安当局による反政府デモの取り締まりでは、83人が死亡したとされている。

パキスタンおよびアフガニスタンと国境を接するシスタン・バルチスタン州には、イランでは少数派のイスラム教スンニ派が多く住む。治安当局は、ザヘダンでの騒乱は武装したバルチ分離派が当局を攻撃したことで起きたと主張しているが、市内最大のモスクのイマーム(指導者)はこれを否定している。

シスタン・バルチスタン州ではこれに先立ち、警察幹部が15歳少女を強姦したとされる事件も起きていたため、ザヘダン市内の緊張は高まっていた。

Iranian riot police stand in a street in Tehran, Iran (3 October 2022)

画像提供, WANA NEWS AGENCY via REUTERS

画像説明, 市内で待機するイランの機動隊(3日、テヘラン)

デモに参加の16歳死亡 当局が埋葬と

各地のデモをめぐっては、首都テヘランで9月20日に行われたデモに参加した16歳少女が行方不明になる事件も起きていた。

16歳のニカ・シャカラミさんは30日に、テヘランの留置施設で死亡しているのを家族に発見された。BBCペルシャ語は5日、墓地が発行した死亡診断書の内容を報道。それによると、シャカラミさんは「硬い物体が当たったことによる複数の負傷」のため亡くなったという。

Nika Shakarami

画像提供, BBC Persian source

画像説明, 遺体で発見されたニカ・シャカラミさんは最後のメッセージで友人に、治安当局に追われていると伝えていた

イラン国営メディアはこれまでに、司法当局がシャカラミさんの死亡について調査に着手したとして、デモとは無関係だという当局の見方を伝えている。死因を調べた当局者は、シャカラミさんの「腰と頭部、腕と脚の上部と下部に、複数の骨折」が検視によって確認されたため、「この人物は高いところから投げ落とされたと思われる」と説明していた。

親族によると、シャカラミさんは最後のメッセージで友人に、警察に追われていると伝えていたという。

家族に近い消息筋はBBCペルシャ語に対して、家族がシャカラミさんの遺体を父親の故郷ホラマバードへ運んだものの、治安当局が遺体を盗み出し、約40キロ離れた村で秘密に埋葬したのだと話していた。

Nika Shakarami's grave

画像提供, BBC Persian source

画像説明, 家族は、治安当局がシャカラミさんの遺体を秘密に埋葬したと話している