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【研究紹介】最も遠い回転円盤銀河の発見

 広島大学宇宙科学センターの稲見助教、Algera研究員が参加する国際共同研究チームは、南米チリのアタカマ大型ミリ波・サブミリ波アレイ(ALMA)を使って、最も遠い、天の川銀河に非常に良く似た大きな回転円盤銀河を発見することに成功しました。

 現在の銀河の形成と進化に関する理解では、初期宇宙の若い銀河は、激しく衝突合体を繰り返すことでだんだんと成長するため、現在の銀河に比べて、より小さく、より複雑な形と運動をしていると予想されていました。今回、131億年前の宇宙(7億歳の宇宙)で見つかった、REBELS-25と呼ばれる若い銀河は、成長し切った銀河である天の川銀河に匹敵するくらいの大きさを持つ回転円盤銀河でした。

 稲見助教は今回の発見について「宇宙誕生のすぐあとに、回転する円盤をもつ銀河が存在したとは驚きです。銀河がどのように形作られるのかについて、これまで理解を覆す可能性のあるエキサイティングな発見です」とその意義を語りました。

 REBELS-25は宇宙が誕生してまだ7億年しか経っていない頃の銀河で、回転円盤を持つ銀河は存在しないと考えられていました。現在の理論では、複雑な形をもつ小さな銀河が、互いにぶつかって何十億年もの時間をかけてスムーズな回転円盤をもつよう進化していくはずなのですが、今回の発見はこの銀河成長のタイムスケールに疑問を投げかけるものです。そのため、私たちの天の川銀河とよく似た、回転円盤を持つ銀河がごく初期の宇宙で発見されたことは大きな驚きです。

 この研究は、同研究チームによるALMA望遠鏡の大型観測プログラムREBELS (Reionization Era Bright Emission Lines Survey)の一環として実施されました。当初のデータは解像度が十分でなかったため、回転円盤をもつ確証がありませんでしたが、今回、より高い像度でALMAによる追跡観測を行ったことで、この発見がなされました。このことについて、Algera研究員は「REBELS-25というこの銀河は、REBELSプログラムが狙った40天体のターゲットの中で当初から驚きを秘めた銀河として私たちを魅了していましたが、今回のALMAによる追跡観測はこの第一印象を見事に裏付けています」と語ります。

 驚くべきことに、ALMA望遠鏡で得た今回のデータは銀河中心で棒構造や渦巻き状の腕のような特徴も示しており、私たちの住む天の川銀河に似た姿をしています。Algera研究員によると、ALMA望遠鏡のみならず「世界最大の宇宙望遠鏡であるジェームズ・ウェッブによる追観測で、アルマ望遠鏡に匹敵する解像度で若い星からの光を発見できるはず」と最遠方の回転円盤銀河の解明に期待を寄せています。

 さらに、131億年前の宇宙で回転円盤をもつREBELS-25の発見は、ひょっとしたら他にも回転円盤銀河が宇宙初期に存在するかもしれないことを示しています。稲見助教いわく「初期宇宙の銀河の探査観測を重ねることで、REBELS-25と似た回転円盤銀河がさらに見つかる可能性は十分にあります。宇宙が進化するスピードは私たちがこれまで考えていたよりもずっと速かったかも知れませんね」とのこと、今後の調査への期待が高まります。

 本研究は、「REBELS-25: z=7.31 における動的に冷たい円盤銀河の発見」として英国王立天文学会月報に掲載されました。

 本研究は、アルマ望遠鏡大規模プログラム「REBELS: Reionization Era Bright Emission Lines Survey.」として推進されました。
 

【この記事に関するお問い合わせ先】

広島大学広報室

Email: koho*office. hiroshima-u.ac.jp (注:*は半角@に変換して送信してください)


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