©2024「きみの色」製作委員会

 長編アニメーション映画『きみの色』が、8月30日に全国公開される。本作ではトツ子、きみ、ルイが“しろねこ堂”というバンドを結成し、「リッケンバッカー」「Roland」など実在の楽器が登場する。その中でルイが世界最古の電子楽器「テルミン」を担当。バンドで使用する楽器としてはめずらしい「テルミン」をバンドに加えた理由が明かされた。

 【写真】映画『きみの色』場面カット

 2017年アヌシー国際アニメーション映画祭長編コンペティション部門に入選、国内外問わず高い評価を受け、興行としても23億円の異例のヒットを記録した名作『映画 聲の形』(16年)。監督を務めた山田尚子氏は、些細な日常を瑞々しく鮮やかに描く稀有な映像センスと、小さな心の揺れ動きさえ表現していく繊細な演出で、世界から脚光を浴びるアニメーション監督の一人となった。そんな山田尚子監督の最新作となる完全オリジナル長編アニメーション映画『きみの色』が8月30日に全国公開する。

 今作で脚本を務めるのは、スタジオジブリや、京都アニメーションの数々の大ヒット作品を手掛け、山田監督とは「けいおん!」シリーズ以降、幾度となくタッグを組む吉田玲子。音楽は『映画 聲の形」『リズと青い鳥』(18年)など山田監督作品のほか、話題作「チェンソーマン」(22年 テレビ東京系)のサウンドトラックを担当する作曲家・牛尾憲輔。声の出演には、日暮トツ子役に鈴川紗由、作永きみ役に髙石あかり、影平ルイ役に木戸大聖と、いま注目の若手俳優たちが参加。3人を導くシスター日吉子役を新垣結衣が務める。

 先日フランスで行われた第49回アヌシー国際アニメーション映画祭では、本作鑑賞後の観客が絶賛。「とても素晴らしい作品。きちんと色から感情が伝わってくる、大好きな作品だった」、「観客全員が一緒になって楽しんで笑って、とても温かい気持ちになった」など、話題をさらい、続く第26回上海国際映画祭で、金爵賞アニメーション最優秀作品賞を受賞。日本作品としては5年ぶりの快挙となり、授賞式に出席した山田監督は、檀上でトロフィーを受け取り、「アニメーションは素晴らしい力を持っていると思います。これからも世界中に向けて、たくさんのアニメーションを作っていけたらと思っています」と受賞の喜びを誇らしげに語っていた。さらに、8月2日より毎週金曜更新で、公式Xで展開されているミニアニメ「きみいろチャンネル」では、キャラクター紹介や作品の見どころなど、本作の魅力をミニアニメで紹介。公開後まで全7本を毎週投稿予定となっている。

■トツ子、きみ、ルイが劇中で使用する楽器に注目、世界最古の電子楽器「テルミン」をバンドに加えた理由

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 本作は山田監督の原点でもある「音楽×青春」の物語として、劇中ではトツ子、きみ、ルイが“しろねこ堂”というバンドを結成し、離島にある古びた教会に集まって練習する3人や、それぞれオリジナルの楽曲づくりに挑戦する場面、そして学園祭で迎える初めてのライブシーンなど、音楽に夢中になっていく姿が生き生きと描かれている。そんなトツ子たちの使用している楽器は、実在するものがモデルとなっている。トツ子が弾いている楽器初心者にも使いやすいとされる「Roland」のキーボードをはじめ、寮で作曲中に使っている「CASIO」のミニキーボード、古教会で弾いているレトロな「YAMAHA」の足踏みオルガン。また、きみの使用するギターはザ・ビートルズのメンバーも愛用していたことで知られる「リッケンバッカー」など、他にも数々のアイテムが劇中に登場している。

 そして、本作で特に珍しいのは、ルイの担当楽器としてバンドに「テルミン」を入れていること。テルミンとは、アンテナに手を近づけたり、遠ざけたりして触れずに演奏ができる、世界最古の電子楽器。劇中では、今最も売れているテルミンを製造する「Moog」社が22年に発売した最新版「Etherwave Theremin」をモデルとしている。「昔の電子オルガンや古いシンセサイザーなど、デジタルだけど凄くアナログに近い感覚でできるものに興味がありました」という山田監督は、その中でもテルミンを選んだきっかけについて、「フランスの音楽家グレゴワール・ブランさんという方を知って、テルミンの感覚や考え方が180度変わりました。凄くしっかりと音階を当てて弾かれる方で、あれ、こんなにきれいな音が、女性の歌声みたいで凄い、と。こんなに綺麗な奏で方ができるのであれば、ぜひチャレンジしてみたいと思いました」と、グレゴワール・ブランのテルミンの音色に惚れ込み、劇中演奏のオファーを決意したことを明かしている。ギター、キーボード、テルミンという独創的なバンド編成に挑戦できたのは、長年山田監督と制作を共にしてきた牛尾憲輔への厚い信頼があったことも大きかったそうで、完成した楽曲について山田監督は「よくあるアニメのライブ曲ではない、カッコイイ曲ができたんじゃないかなと思っています」と自信を覗かせていた。

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