岸田首相、ロシア名指しで非難「国連の理念踏みにじる」 国連総会

【ニューヨーク=田中一世】岸田文雄首相は20日午後(日本時間21日午前)、米ニューヨークで開かれている国連総会で一般討論演説に臨んだ。ロシアによるウクライナ侵攻で国連安全保障理事会の機能不全が露呈した現状を踏まえ「国連の信頼性が危機に陥っている」と指摘した。ロシアを名指しし「国連憲章の理念と原則を踏みにじる行為だ。断じて許してはならない」と非難し、国際社会の結束を呼びかけた。

一般討論演説が完全に対面方式で開催されるのは3年ぶりで、ウクライナ情勢が最大の焦点となっている。首相は、核兵器の使用をちらつかせるロシアに対し「核兵器による威嚇、ましてや使用は、国際社会の平和と安全に対する深刻な脅威だ」と非難。ライフワークの「核兵器のない世界」の実現を改めて訴えた。

8月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議は、ロシアの反発で最終文書を採択できず決裂したが、来年5月に被爆地の広島市で開く先進7カ国首脳会議(G7サミット)に向け、核軍縮の機運を高めたいとの思いがある。

また、「法の支配」に基づく国際秩序の維持が不可欠だと主張した。そのために国連を改革し、機能を強化する必要性を強調した。「安保理の改革に向けて文言べースの交渉を開始する時だ」と述べ、改革に必要な決議案作成に向けた交渉入りを各国に呼びかけた。

安保理改革は常任理事国が消極的で、ハードルは非常に高い。このため、安保理に限らず「総会のさらなる活性化」など国連全体の機能強化も訴えた。

北朝鮮による日本人拉致問題については、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記と条件を付けずに会談する決意があるとの姿勢を示し、「あらゆるチャンスを逃すことなく全力で行動する」と語った。

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