知床観光船、捜索の漁業者に重い燃料費負担…「経費かかるが救助に行くのは当たり前」

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 知床半島沖で乗客乗員26人を乗せた観光船「KAZU I(カズワン)」が沈没した事故で、地元の北海道斜里町の漁業者たちが連日、出漁せずに捜索に専念した。捜索すると燃料費の負担が重くのしかかるが、漁業者への支援は追いついていないのが実情だ。

「知床遊覧船」社長の桂田精一被告が保釈…カズワン沈没事故巡り起訴
定置網漁を終え、ウトロ漁港に戻った漁師たち(9日午前、斜里町で)=永井秀典撮影
定置網漁を終え、ウトロ漁港に戻った漁師たち(9日午前、斜里町で)=永井秀典撮影

 「人助けには経費がかかるが、救助に行くのは当たり前だ」。斜里町のウトロ漁協の深山和彦組合長(66)は、捜索には費用が必要だと強調した。

 漁船は、事故翌日の4月24日から5月5日まで捜索に専従し、1日に最大10隻が出動した。6日からホッケやニシンをとるための定置網の設置を始めた。

 定置網漁の場合は漁船が動く距離は限られるため、漁船1隻が1日で消費する軽油は約200リットル。これに対し、捜索は広い範囲を動き回るため2倍の400リットルを使い、燃料費は1日約3万2000円に上る。

 海難事故が起こった場合、捜索に参加した人を支援する公益社団法人「日本水難救済会」(東京)から、漁に出ずに捜索に参加した漁業者に報奨金が支払われる。

 全国で約5万人の漁業者らが「救助員」として登録。報奨金は1人に対して初日は1日当たり4時間未満で5000円、4時間以上で6000円にとどまる。

 捜索のために1漁船に乗る漁業者は5~6人で、ウトロ漁協の担当者は「捜索にかかった燃料代に満たない」と話し、休漁中の補償にならないどころか、捜索に参加すればするほど漁業者の持ち出しが増える。

 水難救済会によると、報奨金は個人や団体からの寄付でまかなわれており、予算には限界がある。同会の遠山 純司あつし 常務理事(61)は「燃料費にも届かないのは理解しているが、財政面の余裕はなく、金額の引き上げができない」と語る。現状では捜索に従事した漁業者らへの公的な助成制度はなく、「制度の創設には、世論の高まりが欠かせない」と指摘した。

知床観光船事故の最新ニュース
スクラップは会員限定です

使い方
「社会」の最新記事一覧
記事に関する報告
2985034 0 社会 2022/05/10 07:30:00 2022/05/10 07:41:32 2022/05/10 07:41:32 /media/2022/05/20220510-OYT1I50025-T.jpg?type=thumbnail

主要ニュース

セレクション

読売新聞購読申し込みキャンペーン

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)