サッカー留学サポート、社長は元FC東京DF…世界との競争力は「スタッフ含め日本全体に必要」
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サッカーのFIFAワールドカップ(W杯)で、優勝経験を持つドイツ代表やスペイン代表を撃破し、世界を驚かせたカタール大会の日本代表。ただ目標のベスト8には届かず、米国、カナダ、メキシコの3か国が共催する4年後の北中米大会で、改めてその景色を目指すことになる。
中村亮さん41歳、挫折バネに語学習得…神戸でアメリカへの橋渡し
それには、「選手だけでなく、スタッフも含めて世界と戦える競争力をつける。サッカー界全体の底上げが大事だ」。米国へのサッカー留学をサポートする神戸市の会社「WithYou」社長の中村亮さん(41)はそう語る。
鹿屋体育大学(鹿児島県)卒業後の2004年にDFとしてFC東京に加入した。右膝の古傷に苦しめられ、公式戦に出場することなく、05年に引退。中学校の教師やモデルなどを経て、28歳でアメリカに語学留学した。
Jリーグで挫折を経験しただけにサッカーに関わる気はなかった。だが、授業でシュートを決めたところ、急に周りから話しかけられるようになり、それまで苦しんでいた語学力も向上した。「選手としてプレーしながら、英語を身につけられるのではないか」。日本の高校生を留学させるアイデアが浮かんだ。
米国はトップクラスの強豪ではないが、ワールドカップ(W杯)に11回出場。今大会前に国際サッカー連盟(FIFA)が公表した世界ランキングも日本を上回った。体格や身体能力を生かしたダイナミックなサッカーが持ち味だ。
しかし、中村さんは「『止める、蹴る』の正確さや器用さ、戦術理解度などは日本の選手の方が上回っている。一緒にプレーすれば、お互い高め合うことができるはずだ」とみる。
100人単位の部員がいる日本とは異なり、米国の大学でサッカー部に入れるのは30人ほど。13年に同社を設立した当初は苦戦したが、16年に送り出した2人の選手が活躍したこともあり、翌年以降、大学側の受け入れ要望が急増した。これまでに男女約400人の留学を手がけた。
米国は大学の練習環境や奨学金制度が整っていることに加え、近年サッカー人気が高まり、欧州リーグの下部組織に所属していた選手も留学してくるようになった。すぐにJリーグや欧州のチームに行けなくても、米国で各国の選手と
選手としてプロになれなかったとしても、米国流のスポーツ理論や経営手法を学び、スタッフとしてサッカー界に貢献する道もあり得る。中村さんは、若くして海外に出て英語で意思疎通ができるようになれば、「世界との距離はもっと縮まる」と強調する。
今大会の日本の快進撃を受け、中村さんには新たなオファーが次々と寄せられている。米国の大学を経由してJリーガーとなり、ゆくゆくは日の丸を背負う――。その選手が北中米大会で活躍してくれたら、と願う。(永瀬章人)