僕は今日東京に行く。何もかも不便で、ダサくて、変化がないこの糞ド田舎から抜け出して、何もかもが刺激的な東京に行くんだ。 僕の18年間は田舎との戦いだった。流行本すらまともに入荷しない木造立ての本屋、同じ髪型にしかしてくれない床屋、うるさい虫共、少ない街灯、妙に馴れ馴れしい近所の奴ら、一挙手一投足全てウザい母親……。 僕は東京に行って生まれ変わる。カッコよくてオシャレな新しい人生が始まる。友達がいっぱいできる。彼女も作る。カッコいいバンドのカッコいいライブに行く。本をたくさん読む。創作活動をしてみる。何もかもが楽しみだ。 ……それなのに。荷造りが終わってから続くこの何とも言えない物悲しい気持ちは何なんだ。 目に見えるもの全てが、美しく切ないもののように感じる。今僕は美化する過去を体感しているのかもしれない。 僕はこの町が大嫌いだ。でも、この町の思い出は大好きだ。