「植民地」を持つということは、国民にとってどんな感覚なのだろう? いまの私たちには想像がつかない。現在の視点からはいろいろ批判があるが、かつての人々にとっては、誇らしく優越感が持てるのと同時に、解放感を与えられることだったのではないだろうか。 今回の事件の舞台は、日露戦争の結果、日本の租借地となった中国・遼東半島西南端の関東州・大連。前年の1932年に造られた日本の傀儡国家「満州国」(現中国東北部)の入り口であり、アカシアの街並みのエキゾチックなイメージで日本人を引き付けた街だ。 その高級住宅街の医学博士の邸宅で、博士と妻、妻の愛人2人が対決。愛人の1人が殺されて遺体が隠され、妻ともう1人の愛人は逃走し、博士は警察に自首した。いま起きてもワイドショーや週刊誌が放っておかないだろうスキャンダラスな犯罪。そこには、その時代と社会のさまざまな要素が影を落としている(今回も差別語が多く登場する)。