「事実は小説よりも奇なり」と言うが、小説の題材となった実話には、すぐには信じられないようなエピソードもある。なかでも小説『白鯨』の元になった実話は、さらに壮絶だった。 ギャラリー:28年間たった1人で彼が孤島に暮らし続けた理由 写真13点 南太平洋で捕鯨船が巨大クジラに激突され、乗組員たちは手漕ぎボートで3カ月近く漂流する。食糧が底をつき、空腹と狂気に苦しめられた彼らが生き延びるためにとった行動は・・・。 19世紀、捕鯨は生活に不可欠だった。鯨油はランプの燃料やろうそくの原料になり、鯨蝋はさまざまな薬に使われた。捕鯨は手堅く報酬を得られる一方で、きわめて苛酷な仕事でもあった。 米国の捕鯨産業の拠点は東海岸のナンタケット島にあったが、最も豊かな漁場は南太平洋。男たちは大西洋を南下し、南米最南端のホーン岬を回る1万2000キロの困難な旅を経て、やっと仕事に取りかかるわけである。捕鯨船エセックス