以下は前章の続きである。
加戸証言は知らんぷり
また、朝日新聞は「情報公開」や「国民の知る権利」を盾に安倍政権を非難しているが、自分自身はどうなのか。
衆参両院が七月十日に開いた閉会中審査の報じ方で、朝日新聞は馬脚を現した。
翌十一日付朝刊では、前川氏の言い分に関してはこれでもかと詳報し、社説で「国会の場で、国民の代表の質問に答えた重い発言である」と持ち上げる一方で、「行政が歪められた」との前川氏の反証となる加戸守行前愛媛県知事の重要な証言については、一般記事中で一行も取り上げなかったのである。
いっそ清々しいまでの無視ぶりだったが、県知事として加計学園誘致を進めた当事者である加戸氏は、獣医師不足を訴え、次のように述べていた。
「東京の有力な私学に声をかけたが、けんもほろろだった。愛媛県にとっては、十二年間、加計ありきだった。いまさら、一年、二年の間で加計ありきじゃない」
「十年間、我慢させられてきた岩盤規制にドリルで穴を開けていただいた。『歪められた行政が正された』というのが正しい」
「大切なことは、国民が何を求め、国は何を必要とし、どの分野でどんな人材が求められているのかであって、一定の既得権益団体の主張に偏って現状を守ろうとする動き自体、不思議だった。国民的感覚と文科省は乖離してきているのではないか」
朝日新聞と前川氏が作ったストーリーとは矛盾するので知らんぷりをしたのだろうが、読者の「知る権利」や地元の願いすらどうでもいいということか。
朝日新聞は記事本文中、加戸氏の言葉は一切紹介せず、辛うじて加計学園の新獣医学部の建設予定地がある愛媛県今治市の菅良二市長の言葉を次のように引いただけである。
「閉会中審査に参考人として出席した加戸守行・前愛媛県知事が今治市での獣医学部の必要性に触れたことについては、『私たちの思いを代弁してくれた』と述べた」
これのみでは何のことだか分からない。
切々と事情を説明する加戸氏の証言に対しては、インターネット上では「すとんと腑に落ちた」「背景がよく分かった」などと評判を呼んでいたが、朝日新聞にとって都合が悪く、安倍政権にとって有利になる情報は読者に伝えないという姿勢は徹底している。
文部省(現文科省)時代は前川の上司でもあった加戸氏は、六月には産経新聞のインタビューでもこう語っていた。
「少子高齢化に悩む今治市にとってみれば、若者が来て、街が活性化すればよかった。ただ、愛媛県は学園都市よりも獣医学部が欲しかった。獣医師が欲しい、感染症対策をやってもらいたい、という思いだった。私の知事時代には鳥インフルエンザが発生し、米国では狂牛病が発生した。平成二十二年には囗蹄疫が発生したが、獣医師が足らず大わらわだった」
「獣医学部が去年できていれば、誰も何も言わなかった話だ。それなのに、やれ『安倍晋三さんの友達だ』「テロ等準備罪は通さない』となって、マスコミがたたきまくっている。事の本質は愛媛でどれだけ獣医師がいなくて困っているかということだが、そんなことは知ったことではないということか」
「『総理の意向』という言葉は事務方レベルでは使います。私なんか文部省の現役時代は『大臣の意向だ』とか、『事務次官がこう言っているぞ』とかハッタリをかましていました。虎の威を借りないと役人は動かないんですよ」
この稿続く。