歴史学において歴史修正主義(れきししゅうせいしゅぎ、英: Historical revisionism)とは、歴史の再定義や再解釈の言説を指す用語である。一般に否定的・批判的な意味合いを込めて使用されることが多く、特に第二次世界大戦に関わる戦争犯罪・戦争責任に関わる議論で、それを否定または相対化する言説を指して歴史修正主義という用語が使用される。 確立された歴史を「修正」することそれ自体は歴史の記述を発展させ洗練させるための一般的なプロセスであり、特に議論を呼ぶものではない。しかし、主流の歴史家が(例えば)正の力と捉えていたものが負の力として描かれるような、道徳的知見の逆転を含む議論は遥かに物議を呼ぶ。このような修正は、主流の見解の支持者から(特に激しい言葉で)異議を唱えられる。そして不適切な方法を用い、あるいは最初から事実と異なる言説を広めること、ジェノサイドの否定などを目的とする場合には、特に批判の対象とされる。欧米圏においてはホロコースト否認に代表されるような事実と異なる歴史像を広めることを意図して史実を否定する言説は「歴史修正主義」ではなく「否定論(denial)」と呼ぶようになっており、西欧ではこの種の言説に法的規制を設定し違法化している国が複数ある。

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  • 歴史学において歴史修正主義(れきししゅうせいしゅぎ、英: Historical revisionism)とは、歴史の再定義や再解釈の言説を指す用語である。一般に否定的・批判的な意味合いを込めて使用されることが多く、特に第二次世界大戦に関わる戦争犯罪・戦争責任に関わる議論で、それを否定または相対化する言説を指して歴史修正主義という用語が使用される。 確立された歴史を「修正」することそれ自体は歴史の記述を発展させ洗練させるための一般的なプロセスであり、特に議論を呼ぶものではない。しかし、主流の歴史家が(例えば)正の力と捉えていたものが負の力として描かれるような、道徳的知見の逆転を含む議論は遥かに物議を呼ぶ。このような修正は、主流の見解の支持者から(特に激しい言葉で)異議を唱えられる。そして不適切な方法を用い、あるいは最初から事実と異なる言説を広めること、ジェノサイドの否定などを目的とする場合には、特に批判の対象とされる。欧米圏においてはホロコースト否認に代表されるような事実と異なる歴史像を広めることを意図して史実を否定する言説は「歴史修正主義」ではなく「否定論(denial)」と呼ぶようになっており、西欧ではこの種の言説に法的規制を設定し違法化している国が複数ある。 日本語の「歴史修正主義」という用語は翻訳語であるが、欧米圏における"Historical revisionism"よりも広く、曖昧な意味合いで使用され、単なる歴史の再解釈や俗説を指す場合もある。 (ja)
  • 歴史学において歴史修正主義(れきししゅうせいしゅぎ、英: Historical revisionism)とは、歴史の再定義や再解釈の言説を指す用語である。一般に否定的・批判的な意味合いを込めて使用されることが多く、特に第二次世界大戦に関わる戦争犯罪・戦争責任に関わる議論で、それを否定または相対化する言説を指して歴史修正主義という用語が使用される。 確立された歴史を「修正」することそれ自体は歴史の記述を発展させ洗練させるための一般的なプロセスであり、特に議論を呼ぶものではない。しかし、主流の歴史家が(例えば)正の力と捉えていたものが負の力として描かれるような、道徳的知見の逆転を含む議論は遥かに物議を呼ぶ。このような修正は、主流の見解の支持者から(特に激しい言葉で)異議を唱えられる。そして不適切な方法を用い、あるいは最初から事実と異なる言説を広めること、ジェノサイドの否定などを目的とする場合には、特に批判の対象とされる。欧米圏においてはホロコースト否認に代表されるような事実と異なる歴史像を広めることを意図して史実を否定する言説は「歴史修正主義」ではなく「否定論(denial)」と呼ぶようになっており、西欧ではこの種の言説に法的規制を設定し違法化している国が複数ある。 日本語の「歴史修正主義」という用語は翻訳語であるが、欧米圏における"Historical revisionism"よりも広く、曖昧な意味合いで使用され、単なる歴史の再解釈や俗説を指す場合もある。 (ja)
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  • ...過去が普通に過ぎ去ってゆくといっても、それは消え去るということではない。例えば、ナポレオン一世の時代は、歴史的な研究において繰り返し現在化される。アウグスティヌスの古典的著作もまたしかりである。だがこうした過去は、明らかに、それらがかつての同時代人に対してもっていた迫真性を失っている。まさにそれだからこそ、こうした過去は歴史家の手に委ねられる。それに反して、ナチズムの過去は(中略)いつの間にか消え去る、あるいは力が弱まっていくといった過程をとらない。それどころかますます生き生きとし、力強くなっているようにさえ思われる。とはいえ、それは模範としてではなく悪しき前例としてであり、まさしく現在として立ちはだかる過去、裁きの剣のように現代の頭上につり下がっている過去としてなのだ。(中略)だが、過去が過ぎ去ろうとしないことに不快の念を表わし、もう「終わり」にして、ドイツの過去を原則的にもはや他の国の過去と異ならないものにしたいと思っているのは、果たして日常生活のなかの「実際のドイツ国民」の頑迷さだけなのだろうか。... (ja)
  • 来たる国立航空宇宙博物館のエノラ・ゲイ号の展示における、わが軍の男女の適切な描写に関する上院の見解をここに表明する。第二次世界大戦時のエノラ・ゲイ号の役割は、アメリカ人と日本人の命を救うという、第二次世界大戦の慈悲深い終結をもたらしたことへの貢献において重大なものであり、現行の国立航空宇宙博物館のエノラ・ゲイ号展示の台本は修正主義的で、多くの第二次世界大戦従事者とって侮辱的であり(中略)また連邦法が定めるところによれば、「わが軍の男女の勇敢かつ犠牲的な貢献は、アメリカの現在および将来の世代を鼓舞するように描写される」ものであるため、戦争におけるアメリカの役割を記念するに際し、国立航空宇宙博物館は、連邦法の下、当時の適切なコンテクストにおいて歴史を描写する義務を負うものである... (ja)
  • ...過去が普通に過ぎ去ってゆくといっても、それは消え去るということではない。例えば、ナポレオン一世の時代は、歴史的な研究において繰り返し現在化される。アウグスティヌスの古典的著作もまたしかりである。だがこうした過去は、明らかに、それらがかつての同時代人に対してもっていた迫真性を失っている。まさにそれだからこそ、こうした過去は歴史家の手に委ねられる。それに反して、ナチズムの過去は(中略)いつの間にか消え去る、あるいは力が弱まっていくといった過程をとらない。それどころかますます生き生きとし、力強くなっているようにさえ思われる。とはいえ、それは模範としてではなく悪しき前例としてであり、まさしく現在として立ちはだかる過去、裁きの剣のように現代の頭上につり下がっている過去としてなのだ。(中略)だが、過去が過ぎ去ろうとしないことに不快の念を表わし、もう「終わり」にして、ドイツの過去を原則的にもはや他の国の過去と異ならないものにしたいと思っているのは、果たして日常生活のなかの「実際のドイツ国民」の頑迷さだけなのだろうか。... (ja)
  • 来たる国立航空宇宙博物館のエノラ・ゲイ号の展示における、わが軍の男女の適切な描写に関する上院の見解をここに表明する。第二次世界大戦時のエノラ・ゲイ号の役割は、アメリカ人と日本人の命を救うという、第二次世界大戦の慈悲深い終結をもたらしたことへの貢献において重大なものであり、現行の国立航空宇宙博物館のエノラ・ゲイ号展示の台本は修正主義的で、多くの第二次世界大戦従事者とって侮辱的であり(中略)また連邦法が定めるところによれば、「わが軍の男女の勇敢かつ犠牲的な貢献は、アメリカの現在および将来の世代を鼓舞するように描写される」ものであるため、戦争におけるアメリカの役割を記念するに際し、国立航空宇宙博物館は、連邦法の下、当時の適切なコンテクストにおいて歴史を描写する義務を負うものである... (ja)
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  • -アメリカ合衆国上院国立航空宇宙博物館非難決議 (ja)
  • -『過ぎ去ろうとしない過去』 (ja)
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  • 歴史学において歴史修正主義(れきししゅうせいしゅぎ、英: Historical revisionism)とは、歴史の再定義や再解釈の言説を指す用語である。一般に否定的・批判的な意味合いを込めて使用されることが多く、特に第二次世界大戦に関わる戦争犯罪・戦争責任に関わる議論で、それを否定または相対化する言説を指して歴史修正主義という用語が使用される。 確立された歴史を「修正」することそれ自体は歴史の記述を発展させ洗練させるための一般的なプロセスであり、特に議論を呼ぶものではない。しかし、主流の歴史家が(例えば)正の力と捉えていたものが負の力として描かれるような、道徳的知見の逆転を含む議論は遥かに物議を呼ぶ。このような修正は、主流の見解の支持者から(特に激しい言葉で)異議を唱えられる。そして不適切な方法を用い、あるいは最初から事実と異なる言説を広めること、ジェノサイドの否定などを目的とする場合には、特に批判の対象とされる。欧米圏においてはホロコースト否認に代表されるような事実と異なる歴史像を広めることを意図して史実を否定する言説は「歴史修正主義」ではなく「否定論(denial)」と呼ぶようになっており、西欧ではこの種の言説に法的規制を設定し違法化している国が複数ある。 (ja)
  • 歴史学において歴史修正主義(れきししゅうせいしゅぎ、英: Historical revisionism)とは、歴史の再定義や再解釈の言説を指す用語である。一般に否定的・批判的な意味合いを込めて使用されることが多く、特に第二次世界大戦に関わる戦争犯罪・戦争責任に関わる議論で、それを否定または相対化する言説を指して歴史修正主義という用語が使用される。 確立された歴史を「修正」することそれ自体は歴史の記述を発展させ洗練させるための一般的なプロセスであり、特に議論を呼ぶものではない。しかし、主流の歴史家が(例えば)正の力と捉えていたものが負の力として描かれるような、道徳的知見の逆転を含む議論は遥かに物議を呼ぶ。このような修正は、主流の見解の支持者から(特に激しい言葉で)異議を唱えられる。そして不適切な方法を用い、あるいは最初から事実と異なる言説を広めること、ジェノサイドの否定などを目的とする場合には、特に批判の対象とされる。欧米圏においてはホロコースト否認に代表されるような事実と異なる歴史像を広めることを意図して史実を否定する言説は「歴史修正主義」ではなく「否定論(denial)」と呼ぶようになっており、西欧ではこの種の言説に法的規制を設定し違法化している国が複数ある。 (ja)
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  • 歴史修正主義 (ja)
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