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* {{Snamei|Eutrema japonicum}} ({{AU|Miq.}}) {{AU|Koidz.}} var. {{Snamei|sachalinense}} ({{AU|Miyabe}} et {{AU|T.Miyake}}) {{AU|Nemoto}} {{small|([[1936年|1936]])}}<ref name="YList_18856">{{YList|id=18856|taxon=Eutrema japonicum (Miq.) Koidz. var. sachalinense (Miyabe et T.Miyake) Nemoto ワサビ(シノニム)|accessdate=2023-01-14}}</ref>
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|和名=ワサビ(山葵)、<br>カラフトワサビ<ref name="YList"/>
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|英名=Wasabi, <br>Japanese horseradish
|英名=Wasabi{{sfn|講談社|2013|p=111}}, <br>Japanese horseradish
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'''ワサビ'''('''山葵'''{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=171}}・山萮菜<ref>「わさび」/[[三省堂]]百科辞書編輯部編『新修百科辞典』(三省堂、1934年)2128頁</ref>、[[学名]]: ''Eutrema japonicum'')は、[[アブラナ科]][[ワサビ属]]の植物。[[日本原産の食用栽培植物|日本原産]]<ref name="山根ほか(2016)">山根京子, 杉山泰昭, 魯元学, 律娜, 丹野研一, 木村衣里, 山口裕文、[https://doi.org/10.2503/hortj.MI-065 【原著論文】日本のワサビ属植物(''Eutrema japonicum'' and ''E. tenue'')と中国の近縁野生種(''E. yunnanense'')における遺伝的分化,分子系統解析および民族植物学的研究]『The Horticulture Journal』2016年 85巻 1号 p.46-54, {{doi|10.2503/hortj.MI-065}}</ref>。中国の近縁種とは、約500万年前に分化したと推定される<ref name="山根ほか(2016)"/>。山地の[[渓流]]や[[湿地]]で生育し、春に4弁の白い小[[花]]を咲かせる。[[根茎]]や[[葉]]は食用となり、強い刺激性のある[[香味]]を持つため[[薬味]]や[[調味料]]として使われる。加工品は[[ホースラディッシュ|セイヨウワサビ]]のものと区別するため'''本わさび'''と呼ぶこともある。
'''ワサビ'''('''山葵'''{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=171}}・山萮菜<ref>「わさび」/[[三省堂]]百科辞書編輯部編『新修百科辞典』(三省堂、1934年)2128頁</ref>、[[学名]]: ''Eutrema japonicum'')は、[[アブラナ科]][[ワサビ属]]の植物。[[日本原産の食用栽培植物|日本原産]]<ref name="山根ほか(2016)">山根京子, 杉山泰昭, 魯元学, 律娜, 丹野研一, 木村衣里, 山口裕文、[https://doi.org/10.2503/hortj.MI-065 【原著論文】日本のワサビ属植物(''Eutrema japonicum'' and ''E. tenue'')と中国の近縁野生種(''E. yunnanense'')における遺伝的分化,分子系統解析および民族植物学的研究]『The Horticulture Journal』2016年 85巻 1号 pp.46-54, {{doi|10.2503/hortj.MI-065}}</ref>。[[中国大陸]]の近縁種とは、約500万年前に分化したと推定される<ref name="山根ほか(2016)"/>。山地の[[渓流]]や[[湿地]]で生育し、春に4弁の白い小[[花]]を咲かせる。

[[根茎]]や[[葉]]は食用となり、強い刺激性のある[[香味]]を持つため[[薬味]]や[[調味料]]として使われる。日本で栽培・利用される品種は'''本ワサビ'''とも呼ばれ<ref name=東京新聞20230831>『[[東京新聞]]』夕刊2023年8月31日1面「本ワサビ薫る欧州/英南部の農家、苦節13年7ヵ国に/日本食ブーム追い風採れたての新鮮さ人気]([[共同通信]]による[https://www.47news.jp/9800436.html配信記事])</ref>、加工品を含めてセイヨウワサビ([[ホースラディッシュ]])と区別される。食欲増進作用のほか、抗菌作用がある。


== 名称 ==
== 名称 ==
[[漢字]]で「山葵」と書く由来は諸説あり、一説には[[深山]]に生え、[[ゼニアオイ]](銭葵)の葉に似ているからといわれている{{sfn|主婦と生活社編|2007|p=70}}。'''ワサビ'''の語源については、[[平安時代]]中期の『[[本草和名]]』([[918年]])には、「山葵」の[[和名]]を'''和佐比'''と記している。同じく平安時代の『[[和名類聚抄]]』にも和佐比と記されている。悪(わる)・障(さわる)・疼(ひびく)の組み合わせという説があるが、詳細は不明である{{sfn|大嶋敏昭監修|2002|p=438}}。別名に、ヤマワサビ(山わさび)、サワワサビ(沢わさび)などともよばれている{{sfn|金田初代|2010|p=176}}。
[[漢字]]で「山葵」と書く由来は諸説あり、一説には[[深山]]に生え、[[ゼニアオイ]](銭葵)の葉に似ているからといわれている{{sfn|主婦と生活社編|2007|p=70}}。'''ワサビ'''の語源については、[[平安時代]]中期の『[[本草和名]]』([[918年]])には、「山葵」の[[和名]]を'''和佐比'''と記している。同じく平安時代の『[[和名類聚抄]]』にも和佐比と記されている。悪(わる)・障(さわる)・疼(ひびく)の組み合わせという説があるが、詳細は不明である{{sfn|大嶋敏昭監修|2002|p=438}}。別名に、ヤマワサビ(山わさび)、サワワサビ(沢わさび)などともよばれている{{sfn|篠原準八|2008|p=126}}{{sfn|金田初代|2010|p=176}}。


本種の[[学名]]は {{sname|''Wasabia japonica'' ([[フリードリッヒ・アントン・ヴィルヘルム・ミクェル|Miq.]]) [[松村任三|Matsum.]]}} とされることが多いが、現在では {{snamei|Wasabia}} 属は独立した属とはみなされていないので、{{sname|''Eutrema japonicum'' ([[フリードリッヒ・アントン・ヴィルヘルム・ミクェル|Miq.]]) [[小泉源一|Koidz.]]}} が正しい学名である<ref>[http://www1.gifu-u.ac.jp/~kyamane/wasabiKitamichi2.html 植物遺伝育種学 ワサビ属植物系統保存] [[岐阜大学]]植物遺伝育種学研究室HP</ref>。
本種の[[学名]]は {{sname|''Wasabia japonica'' ([[フリードリッヒ・アントン・ヴィルヘルム・ミクェル|Miq.]]) [[松村任三|Matsum.]]}} とされることが多いが、現在では {{snamei|Wasabia}} 属は独立した属とはみなされていないので、{{sname|''Eutrema japonicum'' ([[フリードリッヒ・アントン・ヴィルヘルム・ミクェル|Miq.]]) [[小泉源一|Koidz.]]}} が正しい学名である<ref>[http://www1.gifu-u.ac.jp/~kyamane/wasabiKitamichi2.html 植物遺伝育種学 ワサビ属植物系統保存] [[岐阜大学]]植物遺伝育種学研究室HP</ref>。


ワサビの名が付く近縁な植物として[[ホースラディッシュ|セイヨウワサビ(ホースラディッシュ)]]があるが、加工品の粉ワサビやチューブ入り練りワサビなどでは、原材料にセイヨウワサビのみを使用したり、両方を使っていたりするため、日本原産のワサビを'''本わさび'''と呼び、これを使ったものを高級品として区別していることが多い。
ワサビの名が付く近縁な植物としてセイヨウワサビ(ホースラディッシュ)があるが、加工品の粉ワサビやチューブ入り練りワサビなどでは、原材料にセイヨウワサビのみを使用したり、両方を使っていたりするため、日本原産のワサビを'''本わさび'''と呼び、これを使ったものを高級品として区別していることが多い。


地下茎をすり下ろしたすりわさびの事をワサビと呼ぶこともある。[[寿司屋]]の[[符牒]]に'''なみだ'''、'''さび'''がある。[[寿司]]や[[刺身]]の世界的な普及に伴って、[[英語]]、[[フランス語]]、[[台湾語]]、[[広東語]]、[[朝鮮語|韓国語]]などでそのままwasabiという発音で[[借用語|借用]]されている。
地下茎をすり下ろした薬味、調味料も「ワサビと呼ぶこともある。[[寿司屋]]の[[符牒]]に'''なみだ'''、'''さび'''がある。[[寿司]]や[[刺身]]の世界的な普及に伴って、[[英語]]、[[フランス語]]、[[台湾語]]、[[広東語]]、[[朝鮮語|韓国語]]などでそのままwasabiという発音で[[借用語|借用]]されている。


[[花言葉]]は、「実用{{sfn|主婦と生活社編|2007|p=70}}」「目覚め{{sfn|主婦と生活社編|2007|p=70}}」「嬉し涙{{sfn|主婦と生活社編|2007|p=70}}」などである。
[[花言葉]]「実用{{sfn|主婦と生活社編|2007|p=70}}」「目覚め{{sfn|主婦と生活社編|2007|p=70}}」「嬉し涙{{sfn|主婦と生活社編|2007|p=70}}」とする文献がある。


== 分布・生育地 ==
== 分布・生育地 ==
日本の特産で、[[北海道]]、[[本州]]、[[四国]]、[[九州]]に分布し{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=146}}、本来は水のきれいな深山の[[渓谷]]、渓流に自生する{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}{{sfn|大嶋敏昭監修|2002|p=438}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=171}}。野生のものは珍しく、主に[[静岡県]]や[[長野県]]の[[清流]]や涼しい[[畑]]で[[栽培]]されている{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}{{sfn|主婦と生活社編|2007|p=70}}。澄んだ水冷涼な湿地の砂礫地、沢や水のかかる岩陰などで生育する{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=146}}{{sfn|主婦と生活社編|2007|p=70}}。深い山間の渓流沿いで野生のものが見られるが、一般の山地で見られるものは半栽培の状態で生育している{{sfn|金田初代|2010|p=176}}。
日本の特産で、[[北海道]]、[[本州]]、[[四国]]、[[九州]]に分布し{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=146}}、本来は水のきれいな深山の[[渓谷]]、渓流に自生する{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}{{sfn|大嶋敏昭監修|2002|p=438}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=171}}。野生のものは珍しく、主に[[静岡県]]や[[長野県]]の[[清流]]や涼しい[[畑]]で[[栽培]]されている{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}{{sfn|主婦と生活社編|2007|p=70}}。絶えず澄んだ水が流れている冷涼な湿地の砂礫地、沢や水のかかる岩陰などで生育する{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=146}}{{sfn|主婦と生活社編|2007|p=70}}{{sfn|篠原準八|2008|p=126}}。深い山間の渓流沿いで野生のものが見られるが、一般の山地で見られるものは半栽培の状態で生育している{{sfn|金田初代|2010|p=176}}。


== 形態・生態 ==
== 形態・生態 ==
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== 産地 ==
== 産地 ==
[[File:Azumino Wasabi fields-1.jpg|thumb|[[安曇野]] 大王わさび農場(2008年5月12日撮影)]]
[[File:Azumino Wasabi fields-1.jpg|thumb|[[安曇野]] 大王わさび農場(2008年5月12日撮影)]]
日本の主要な産地は静岡県、長野県、東京都([[奥多摩]])、[[島根県]]、[[山梨県]]、[[岩手県]]、[[奈良県]]である。{{要出典範囲|date=2021-01-24|なかでも[[匹見ワサビ]](島根県[[益田市]])、安曇野ワサビ(長野県[[安曇野市]])、有東木ワサビ([[静岡]])は日本三大ワサビと呼ばれる}}このほか日本国外では[[台湾]]南部、[[ニュージーランド]]、[[中華人民共和国|中国]][[雲南省]]、[[大韓民国|韓国]][[江原特別自治道]][[鉄原郡 ()|鉄原郡]]<ref>{{Cite web|title=[로컬푸드를 찾아서] 1. 드라마틱 철원 샘통 물고추냉이|url=http://www.kado.net/?mod=news&act=articleView&idxno=861249|website=강원도민일보|date=2017-06-29|accessdate=2019-05-15|language=ko|last=강원도민일보}}</ref>などでも[[栽培]]されている。また、ワサビの産地である[[伊豆市]]や安曇野市では市の花に指定されている。
日本の主要な産地は静岡県、長野県、東京都([[奥多摩]])、[[島根県]]、[[山梨県]]、[[岩手県]]、[[奈良県]]などである。また、ワサビの産地である[[伊豆市]][[安曇野市]]ではの花に指定さている。
日本国外では[[台湾]]南部、[[ニュージーランド]]、[[中華人民共和国|中国]][[雲南省]]、[[大韓民国|韓国]][[江原特別自治道]][[鉄原郡 (大韓民国)|鉄原郡]]<ref>{{Cite web|title=[로컬푸드를 찾아서] 1. 드라마틱 철원 샘통 물고추냉이|url=http://www.kado.net/?mod=news&act=articleView&idxno=861249|website=강원도민일보|date=2017-06-29|accessdate=2019-05-15|language=ko|last=강원도민일보}}</ref>などでも栽培されている。

[[イギリス]]では、[[クレソン]]を栽培している会社が2010年にワサビ栽培を提案されて、南部の[[ドーセット州]]で試行錯誤を経て成功させ、2012年に欧州の料理店向けに販売を開始した<ref name=東京新聞20230831/>。汲み上げた地下水で日本と同様の栽培環境を再現している<ref name=東京新聞20230831/>。欧州で初めての商業ベースのワサビ栽培の事例となった。価格は100グラム30[[スターリングポンド|ポンド]](2012年時点で約4200円)<ref>[https://web.archive.org/web/20121228171327/http://sankei.jp.msn.com/world/news/121228/erp12122816570003-n1.htm 「英で日本のワサビ栽培・販売、欧州初 仏料理にも採用」][[産経新聞|MSN 産経ニュース]](2012年12月28日16:55版)</ref>。欧州では、日本産ワサビにこだわり採用を渋ったシェフもいたが、鮮度を評価して購入する料理店や個人もおり、[[ウオッカ]]や[[マヨネーズ]]など加工品の製造にも展開している<ref name=東京新聞20230831/>。


== 栽培 ==
== 栽培 ==
古くから食べられていたが、栽培の歴史は[[江戸時代]]の頃から本格的に行われ{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=171}}、静岡県有東木において、江戸時代初期にこのに自生していたワサビを移植し、栽培を始めたのがワサビ栽培の始まりとされている。寿司の流行により急激に広まったと言われている{{sfn|大嶋敏昭監修|2002|p=438}}。
[[江戸時代]]から栽培が本格化した{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=171}}。江戸時代初期、静岡県有東木において、地に自生していたワサビを圃場へ移植し、栽培を試みたのが最初とされている。寿司の流行により急激に広まったと言われている{{sfn|大嶋敏昭監修|2002|p=438}}。


冷涼なところを好む性質で、栽培方法を大別すると、水栽培で渓流や[[湧水]]で育てられる通称'''水ワサビ'''(谷ワサビ、沢ワサビ)と、畑栽培で育てられる通称'''畑ワサビ'''(陸ワサビ)がある{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}。水栽培は、山間部の北斜面で、水が濁らない湧水地がよいとされる{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}。また、畑栽培は落葉樹下の夏は日陰で、冬は日が当たる場所が選ばれる{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}。増殖は、[[種子]]を[[莢]]のまま砂に埋めておいて秋に播く{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}。春に[[芽]]が揃ったら定植する{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}。
冷涼なところを好む性質で、栽培方法を大別すると、水栽培で渓流や[[湧水]]で育てられる通称'''水ワサビ'''(谷ワサビ、沢ワサビ)と、畑栽培で育てられる通称'''畑ワサビ'''(陸ワサビ)がある{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}。水栽培は、山間部の北斜面で、水が濁らない湧水地がよいとされる{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}。また、畑栽培は落葉樹下の夏は日陰で、冬は日が当たる場所が選ばれる{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}。増殖は、[[種子]]を[[莢]]のまま砂に埋めておいて秋に播く{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}。春に[[芽]]が揃ったら定植する{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}。
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=== 歴史 ===
=== 歴史 ===
[[深山幽谷]]の清冽な渓流に沿い自生していたものが、その利便から人里近辺の清流栽培へと根分けされて広がり、日本の食文化に合う国内需要により農業生産されるに至る。
[[深山幽谷]]の清冽な渓流に沿い自生していたものが、その利便から人里近辺の清流栽培へと根分けされて広がり、日本の食文化に合う国内需要により農業生産されるに至る。
* [[飛鳥時代]]の遺跡である[[飛鳥京跡#飛鳥京跡苑池|飛鳥京跡苑池遺構]](現・奈良県[[明日香村]])から出土した[[木簡]]に「委佐俾三升(わさびさんしょう)」と書かれていた、これがワサビについて記された最古の史料とされる<ref>{{Cite web |url=http://www.kashikoken.jp/from-site/2001/asuka-en3.html |title=飛鳥京跡苑池遺構第3次調査(飛鳥京跡第145次調査)現地説明会資料 |date=2001-07-07 |publisher=[[奈良県立橿原考古学研究所]] |archiveurl=https://web.archive.org/web/20121213150118/http://www.kashikoken.jp/from-site/2001/asuka-en3.html |archivedate=2012-12-13 |accessdate=2021-04-05}}</ref>。
* [[飛鳥時代]]の遺跡である[[飛鳥京跡#飛鳥京跡苑池|飛鳥京跡苑池遺構]](現・奈良県[[明日香村]])から出土した[[木簡]]に「委佐俾三升(わさびさんしょう)」と書かれていた、これがワサビについて記された最古の史料とされる<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.kashikoken.jp/from-site/2001/asuka-en3.html |title=飛鳥京跡苑池遺構第3次調査(飛鳥京跡第145次調査)現地説明会資料 |date=2001-07-07 |publisher=[[奈良県立橿原考古学研究所]] |archiveurl=https://web.archive.org/web/20121213150118/http://www.kashikoken.jp/from-site/2001/asuka-en3.html |archivedate=2012-12-13 |accessdate=2021-04-05}}</ref>。
* [[718年]]([[奈良時代]])に出された[[賦役令]](現代の[[法人税法]]施行令に相当)の中に「山葵」(わさび)の名前が見られる。土地の名産品として、既に納付され、薬用として使用されていたと考えられる。
* [[718年]]([[奈良時代]])に出された[[賦役令]](現代の[[法人税法]]施行令に相当)の中に「山葵」(わさび)の名前が見られる。土地の名産品として、既に納付され、薬用として使用されていたと考えられる。
* 1221年7月([[鎌倉時代]])、[[後堀河天皇]]の即位に際して、[[丹波国]]よりワサビが献上される。
* 1221年7月([[鎌倉時代]])、[[後堀河天皇]]の即位に際して、[[丹波国]]よりワサビが献上される。
* [[室町時代]]、既に現代と同じ薬味としての利用が確立されていた。
* [[室町時代]]、既に現代と同じ薬味としての利用が確立されていた。
* [[江戸時代]]、有東木(うとうぎ、現・[[静岡市]][[葵区]])のワサビは[[駿府城]]で[[大御所 (江戸時代)|大御所]]政治を執っていた[[徳川家康]]に献じられ<ref>[https://mainichi.jp/articles/20190523/ddl/k13/100/002000c 【ぐるっと首都圏・食べる・つながる】静岡市葵区 静岡ワサビ/世界に伝統と味伝えたい 畳石式栽培で手間かけ]『[[毎日新聞]]』朝刊2019年5月23日(東京面)2019年6月10日閲覧</ref>、その味が絶賛された。これに加えて、ワサビの葉が[[三つ葉葵|徳川家家紋の「葵」]]に通じることから、[[江戸幕府]]の庇護を受けることとなった。一方で門外不出の扱いとなり、その栽培技術を他地区に広げることは禁じられた。寿司、[[蕎麦]]の普及につれて、広く一般に普及・浸透していった<ref>江戸時代後期、19世紀の『[[守貞謾稿]]』にはにぎずしかんする記述のなかで「刺身及ビコハダ等ニハ飯ノ下肉ノ上ニ山葵ヲ入ル」とある。</ref>。古くは自生のものを採取・利用していたが、江戸時代に有東木地区に住む村人が野生のワサビを栽培したのが、栽培普及の端緒と伝えられる。
* [[江戸時代]]、有東木(うとうぎ、現・[[静岡市]][[葵区]])のワサビは[[駿府城]]で[[大御所 (江戸時代)|大御所]]政治を執っていた[[徳川家康]]に献じられ<ref>[https://mainichi.jp/articles/20190523/ddl/k13/100/002000c 【ぐるっと首都圏・食べる・つながる】静岡市葵区 静岡ワサビ/世界に伝統と味伝えたい 畳石式栽培で手間かけ]『[[毎日新聞]]』朝刊2019年5月23日(東京面)2019年6月10日閲覧</ref>、その味が絶賛された。これに加えて、ワサビの葉が[[三つ葉葵|徳川家家紋の「葵」]]に通じることから、[[江戸幕府]]の庇護を受けることとなった。一方で門外不出の扱いとなり、その栽培技術を他地区に広げることは禁じられた。寿司、[[蕎麦]]の普及につれて、広く一般に普及・浸透していった<ref>江戸時代後期、19世紀の『[[守貞謾稿]]』には寿司する記述のなかで「刺身及ビ[[コハダ]]等ニハ飯ノ下肉ノ上ニ山葵ヲ入ル」とある。</ref>。古くは自生のものを採取・利用していたが、江戸時代に有東木地区に住む村人が野生のワサビを栽培したのが、栽培普及の端緒と伝えられる。
* [[延享]]元年(1744年)、天城湯ヶ島(現・静岡県伊豆市)で山守を務めていた板垣勘四郎は、[[三島市|三島]][[代官]]の命により[[シイタケ]]栽培の技術指導で有東木を訪れた。板垣はワサビの栽培を天城でも行いたいと懇願し、有東木の住民はシイタケの礼から禁を犯して板垣にワサビの苗を持たせた。この後、板垣の努力で天城でも栽培が始められることになる<ref>[http://www.city.izu.shizuoka.jp/form1.php?pid=3310 とれたてぴちぴち伊豆育ち。ふるさとの特産品をご紹介] 伊豆市(2012年11月2日閲覧)</ref>。
* [[延享]]元年(1744年)、天城湯ヶ島(現・静岡県[[伊豆市]])で山守を務めていた板垣勘四郎は、[[三島市|三島]][[代官]]の命により[[シイタケ]]栽培の技術指導で有東木を訪れた。板垣はワサビの栽培を天城でも行いたいと懇願し、有東木の住民はシイタケの礼から禁を犯して板垣にワサビの苗を持たせた。この後、板垣の努力で天城でも栽培が始められることになる<ref>[http://www.city.izu.shizuoka.jp/form1.php?pid=3310 とれたてぴちぴち伊豆育ち。ふるさとの特産品をご紹介] 伊豆市(2012年11月2日閲覧)</ref>。
* 1892年頃、原保村(現・伊豆市)の平井熊太郎が畳石式栽培を開発した<ref>[http://www.fuuchi.fr.a.u-tokyo.ac.jp/lfl/report/2009izu/report.html 地域森林景観 山間に広がる美しい棚田~中伊豆ワサビ田~] 東京大学(2012年11月2日閲覧)</ref>。
* 1892年頃、原保村(現・伊豆市)の平井熊太郎が畳石式栽培を開発した<ref>[https://www.fuuchi.fr.a.u-tokyo.ac.jp/lfl/report/2009izu/report.html 地域森林景観 山間に広がる美しい棚田~中伊豆ワサビ田~] 東京大学(2012年11月2日閲覧)</ref>。
* 1900年代初め([[明治]]の終わり頃)、[[丹那盆地]]および周囲の山々に、清水が湧き出すワサビ沢が7か所あったが、後に真下を丹那トンネルが開通して姿を消した<ref name="庶民列伝">野本寛一『庶民列伝』([[白水社]] 2000年4月10日発行 ISBN 4560022461)201頁</ref>。1918年着工、1934年開通の丹那トンネルは工事中に大量の出水があり、トンネルの真上に当たる丹那盆地は、地下水が抜け、湧き水が失われた。
* 1900年代初め([[明治]]の終わり頃)、[[丹那盆地]]および周囲の山々に、清水が湧き出すワサビ沢が7か所あったが、後に真下を丹那トンネルが開通して姿を消した<ref name="庶民列伝">野本寛一『庶民列伝』([[白水社]] 2000年4月10日発行 ISBN 4560022461)201頁</ref>。1918年着工、1934年開通の丹那トンネルは工事中に大量の出水があり、トンネルの真上に当たる丹那盆地は、地下水が抜け、湧き水が失われた。
* 1958年頃までの日本で栽培されていた品種は、[[中伊豆町]]の農家が発見して育成した品種「だるま」が多かったが、1958年の[[狩野川台風]]により中伊豆町のわさび田が壊滅。この台風被害からの復興の際に育種苗が不足したことや高品質な味と形を求められたことなどから、[[和歌山県]]産「真妻」(マズマ)種に置き換わっていった<ref>青木幸代「[https://doi.org/10.24586/jags.2.1_17 伊豆天城地方におけるワサビ栽培の地域的展開]」『地理空間』2009年 2巻 1号 pp.17-31, {{doi|10.24586/jags.2.1_17}}</ref>。また、栽培が盛んな県の農業試験場では、地域毎の栽培特性に合わせた独自品種を開発して県内農家向けに種苗を供給している<ref name="yamaguchi">近藤修一、坂井崇人、刀祢茂弘 ほか:[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010672359 ワサビ新品種「徳育1号」の育成経過と品種特性]『山口県農業試験場研究報告』(53), 73-74, 2002-03</ref><ref name="ja_nagano">[http://www.iijan.or.jp/oishii/products/etc/post-2301.php 信州花めぐり♪安曇野でわさびの花を味わう] JA長野</ref><ref>[http://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-720/tokusan/wasabi.html 地域の特産物(わさび)天城山麓] 静岡県 東部農林事務所</ref>。
* 1958年頃までの日本で栽培されていた品種は、[[中伊豆町]]の農家が発見して育成した品種「だるま」が多かったが、1958年の[[狩野川台風]]により中伊豆町のわさび田が壊滅。この台風被害からの復興の際に育種苗が不足したことや高品質な味と形を求められたことなどから、[[和歌山県]]産「真妻」(マズマ)種に置き換わっていった<ref>青木幸代「[https://doi.org/10.24586/jags.2.1_17 伊豆天城地方におけるワサビ栽培の地域的展開]」『地理空間』2009年 2巻 1号 pp.17-31, {{doi|10.24586/jags.2.1_17}}</ref>。また、栽培が盛んな県の農業試験場では、地域毎の栽培特性に合わせた独自品種を開発して県内農家向けに種苗を供給している<ref name="yamaguchi">近藤修一、坂井崇人、刀祢茂弘 ほか:[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010672359 ワサビ新品種「徳育1号」の育成経過と品種特性]『山口県農業試験場研究報告』(53), 73-74, 2002-03</ref><ref name="ja_nagano">[http://www.iijan.or.jp/oishii/products/etc/post-2301.php 信州花めぐり♪安曇野でわさびの花を味わう] JA長野</ref><ref>[http://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-720/tokusan/wasabi.html 地域の特産物(わさび)天城山麓] 静岡県 東部農林事務所</ref>。
* 2002年から2004年にかけて日本で「火災時における臭い警報システムに関する研究」が行われ、この研究をもとにワサビの臭いを用いた[[聴覚障害者]]向け[[住宅用火災警報器|火災報知器]]が商品化された<ref>{{Cite web|url=http://nrifd.fdma.go.jp/news/20111124/index.html |title=株式会社シームスの2011年イグノーベル賞受賞について |publisher=[[消防庁]][[消防大学校]] 消防研究センター |author= |date=2011-11-24 |language=日本語 |accessdate=2015-07-03 }}</ref>。この商品開発に関わる研究は、2011年に[[イグノーベル賞]](化学賞)を受賞した。
* 2002年から2004年にかけて日本で「火災時における臭い警報システムに関する研究」が行われ、この研究をもとにワサビの臭いを用いた[[聴覚障害者]]向け[[住宅用火災警報器|火災報知器]]が商品化された<ref>{{Cite web|和書|url=http://nrifd.fdma.go.jp/news/20111124/index.html |title=株式会社シームスの2011年イグノーベル賞受賞について |publisher=[[消防庁]][[消防大学校]] 消防研究センター |author= |date=2011-11-24 |language=日本語 |accessdate=2015-07-03 }}</ref>。この商品開発に関わる研究は、2011年に[[イグノーベル賞]](化学賞)を受賞した。
* 2018年3月、[[国連食糧農業機関]](FAO)は静岡県の伝統的ワサビ栽培を[[世界農業遺産]]に認定した<ref>{{Cite news|url=https://web.archive.org/web/20180310010602/http://www.chunichi.co.jp/s/article/2018030901002329.html|title=静岡の伝統的ワサビ栽培、世界農業遺産に 徳島の急傾斜地農耕も|newspaper =『[[中日新聞]]』|date=2018-03-09|accessdate=2018-03-10}}</ref>。
* 2012年には、[[イギリス]][[クレソン]]を栽培している会社が南部の[[ドーセット州]]で3前から日本の本ワサビの栽培取り組んだ末、欧州の料理店向けに販売を開始した。これは、欧州で初めての商業ベースのワサビ栽培の事例となった。価格は100グラム30[[スターリングポンド|ポンド]](2012年時点で約4200円)であった<ref>[http://sankei.jp.msn.com/world/news/121228/erp12122816570003-n1.htm 「英で日本のワサビ栽培・販売、欧州初 仏料理にも採用」][[産経新聞|MSN 産経ニュース]](2012年12月28日16:55版)</ref>。
* 2018年3月、[[国連食糧農業機関]](FAO)は静岡県の伝統的ワサビ栽培を[[世界農業遺産]]に認定した<ref>{{Cite news|url=http://www.chunichi.co.jp/s/article/2018030901002329.html|title=静岡の伝統的ワサビ栽培、世界農業遺産に 徳島の急傾斜地農耕も|newspaper =『[[中日新聞]]』|date=2018-03-09|accessdate=2018-03-10}}</ref>。


=== 水ワサビ===
=== 水ワサビ===
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[[File:Azumino Wasabi fields-2.jpg|thumb|安曇野 売店に並ぶワサビ(2008年8月18日撮影)]]
[[File:Azumino Wasabi fields-2.jpg|thumb|安曇野 売店に並ぶワサビ(2008年8月18日撮影)]]
ワサビの上品な味と香り、[[辛味]]、[[苦味]]、甘みについて、国内の交通が急激に変化した[[明治]]から[[大正|大正時代]]にかけて研究されており、日本国内の主要産地ごと、また近年では外食チェーンで多用される中国産などでかなりの違いが認められる。多くの栽培[[品種]]があるが、「真妻」「だるま」「島根3号」が3大品種と云われ、その他の品種はこれらが育種母体として利用されていることが、[[デオキシリボ核酸|DNA]]鑑定の結果判明した<ref name="DNA">[http://www1.gifu-u.ac.jp/~kyamane/wasabiRes_DNA.html ワサビ属植物系統保存] 岐阜大学 植物遺伝育種学、2010年</ref>。これらと野生在来種を交配選抜して栽培効率や耐病性、食味、保存性などを向上させた改良品種が数多く存在し、近年ではほとんど辛みのないものも栽培・流通している。
ワサビの上品な味と香り、[[辛味]]、[[苦味]]、甘みについて、国内の交通が急激に変化した[[明治]]から[[大正|大正時代]]にかけて研究されており、日本国内の主要産地ごと、また近年では外食チェーンで多用される中国産などでかなりの違いが認められる。多くの栽培[[品種]]があるが、「真妻」「だるま」「島根3号」が3大品種と云われ、その他の品種はこれらが育種母体として利用されていることが、[[デオキシリボ核酸|DNA]]鑑定の結果判明した<ref name="DNA">[http://www1.gifu-u.ac.jp/~kyamane/wasabiRes_DNA.html ワサビ属植物系統保存] 岐阜大学 植物遺伝育種学、2010年</ref>。これらと野生在来種を交配選抜して栽培効率や耐病性、食味、保存性などを向上させた改良品種が数多く存在し、近年ではほとんど辛みのないものも栽培・流通している。
* 真妻(まま)- 旧・真妻村(現・和歌山県[[印南町]]川又)が発祥地の品種。品質が優れていたため静岡県内を中心に栽培が広がった。現在、[[印南町]]の農家が発祥の地復活を目指し、一度は途絶えた生産出荷に向け取り組んでいる<ref>[http://www.pref.wakayama..jp/prefg/000200/nagomi/web/nagomi23/specialfeature04/index.html 真妻わさび]{{リンク切れ|date=2021年11月}}[特集]発祥の地、和歌山、Vol.23(2014年)</ref>。
* 真妻(まま)- 旧・[[真妻村]](現・和歌山県[[印南町]]川又)が発祥地の品種。品質が優れていたため静岡県内を中心に栽培が広がった。現在、[[印南町]]の農家が発祥の地復活を目指し、一度は途絶えた生産出荷に向け取り組んでいる<ref>[http://www.pref.wakayama..jp/prefg/000200/nagomi/web/nagomi23/specialfeature04/index.html 真妻わさび]{{リンク切れ|date=2021年11月}}[特集]発祥の地、和歌山、Vol.23(2014年)</ref>。
** 正緑(まさみどり)- 品種は眞妻。耐病性と大型化を改良。
** 正緑(まさみどり)- 真妻の子品種。耐病性と大型化を改良。
* 達磨(だるま)- 大正時代末期から昭和初期にかけて静岡県において導入された半原種([[神奈川県]]原産)の中から[[突然変異]]株として優れた系統を発見し、選抜された。1965年頃から急速に退化現象が現れ、原種に近いものはほとんどなくなり、静岡では代わりに前述の「真妻種」が主力品種となった<ref>[http://kitamura-wasabi.com/work/work01.html 「ダルマ種」について] 北村わさび(2010年)</ref>。
* 達磨(だるま)- 大正時代末期から昭和初期にかけて静岡県において導入された半原種([[神奈川県]]原産)の中から[[突然変異]]株として優れた系統を発見し、選抜された。1965年頃から急速に退化現象が現れ、原種に近いものはほとんどなくなり、静岡では代わりに前述の「真妻種」が主力品種となった<ref>[http://kitamura-wasabi.com/work/work01.html 「ダルマ種」について] 北村わさび(2010年)</ref>。
** ふじだるま<ref>「[https://ci.nii.ac.jp/naid/40017854084/ ワサビ新品種'ふじだるま'について]」『静岡県農業試験場研究報告』(19), 64-69, 1974年10月, {{naid|40017854084}}</ref>
** ふじだるま<ref>「[https://cir.nii.ac.jp/crid/1520009410540864896 ワサビ新品種'ふじだるま'について]」『静岡県農業試験場研究報告』(19), 64-69, 1974年10月, {{naid|40017854084}}</ref>
* 島根3号(しまねさんごう)- 島根県農事試験場の野津六兵衛が、1925年以降全国各地から集めたワサビと、島根在来種との自然交配による[[実生]]を育て、さらに横木国臣の協力を得て1936年に選抜し、1942年に公表した<ref>吉田正温「[https://ir.lib.shimane-u.ac.jp/1541 ワサビ属の細胞学的研究(II) : ワサビ 島根3号]」『[[島根大学]]農学部研究報告』8, 49-50, 1974年12月15日, {{naid|120005583092}}</ref>。一時日本を席巻し、[[京都]]の高級[[料亭]]ではよく使用された品種とされる<ref>[http://www.kosuke-ogawa.com/?eid=3566 「世界から愛される和食に不可欠なワサビの危機」]山根京子(2015年)</ref>。
* 島根3号(しまねさんごう)- 島根県農事試験場の野津六兵衛が、1925年以降全国各地から集めたワサビと、島根在来種との自然交配による[[実生]]を育て、さらに横木国臣の協力を得て1936年に選抜し、1942年に公表した<ref>吉田正温「[https://ir.lib.shimane-u.ac.jp/1541 ワサビ属の細胞学的研究(II) : ワサビ 島根3号]」『[[島根大学]]農学部研究報告』8, 49-50, 1974年12月15日, {{naid|120005583092}}</ref>。一時日本を席巻し、[[京都]]の高級[[料亭]]ではよく使用された品種とされる<ref>[http://www.kosuke-ogawa.com/?eid=3566 「世界から愛される和食に不可欠なワサビの危機」]山根京子(2015年)</ref>。
** 徳育1号 - 「島根3号」の種子から優良株の選抜を複数繰り返し、山口県が開発した<ref name="yamaguchi"/>。
** 徳育1号 - 「島根3号」の種子から優良株の選抜を複数繰り返し、山口県が開発した<ref name="yamaguchi"/>。
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{{栄養価 | name=わさび 根茎 生<ref name=mext7>[[文部科学省]] 『[https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365297.htm 日本食品標準成分表2015年版(七訂)]』</ref>| kJ =368| water=74.2 g| protein=5.6 g| fat=0.2 g| carbs=18.4 g| opt1n=[[食物繊維|水溶性食物繊維]]| opt1v=0.8 g| opt2n=[[食物繊維|不溶性食物繊維]]| opt2v=3.6 g| fiber=4.4 g| sodium_mg=24| potassium_mg=500| calcium_mg=100| magnesium_mg=46| phosphorus_mg=79| iron_mg=0.8| zinc_mg=0.7| copper_mg=0.03| Manganese_mg=0.14| selenium_ug =9| betacarotene_ug=7| vitA_ug =1| vitE_mg =1.4| vitK_ug=49| thiamin_mg=0.06| riboflavin_mg=0.15| niacin_mg=0.6| vitB6_mg=0.32| folate_ug=50| pantothenic_mg=0.20| opt3n=[[ビオチン|ビオチン(B<sub>7</sub>)]] | opt3v=3.5 µg| vitC_mg=75| opt4n=[[硝酸イオン]]| opt4v=0.1 g| note =ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した<ref>[[厚生労働省]] 「[https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000114399.pdf 日本人の食事摂取基準(2015年版)]」</ref>。廃棄部位: 側根基部及び葉柄| right=1 }}
{{栄養価 | name=わさび 根茎 生<ref name=mext7>[[文部科学省]] 『[https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365297.htm 日本食品標準成分表2015年版(七訂)]』</ref>| kJ =368| water=74.2 g| protein=5.6 g| fat=0.2 g| carbs=18.4 g| opt1n=[[食物繊維|水溶性食物繊維]]| opt1v=0.8 g| opt2n=[[食物繊維|不溶性食物繊維]]| opt2v=3.6 g| fiber=4.4 g| sodium_mg=24| potassium_mg=500| calcium_mg=100| magnesium_mg=46| phosphorus_mg=79| iron_mg=0.8| zinc_mg=0.7| copper_mg=0.03| Manganese_mg=0.14| selenium_ug =9| betacarotene_ug=7| vitA_ug =1| vitE_mg =1.4| vitK_ug=49| thiamin_mg=0.06| riboflavin_mg=0.15| niacin_mg=0.6| vitB6_mg=0.32| folate_ug=50| pantothenic_mg=0.20| opt3n=[[ビオチン|ビオチン(B<sub>7</sub>)]] | opt3v=3.5 µg| vitC_mg=75| opt4n=[[硝酸イオン]]| opt4v=0.1 g| note =ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した<ref>[[厚生労働省]] 「[https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000114399.pdf 日本人の食事摂取基準(2015年版)]」</ref>。廃棄部位: 側根基部及び葉柄| right=1 }}


ワサビの辛味成分は、[[カラシナ|芥子菜]]などアブラナ科の植物が多く含む[[からし油配糖体]](グルコシノレート)の一種[[シニグリン]]がすり下ろされる過程で[[細胞]]にある[[酵素]]と反応することにより生成される[[アリルイソチオシアネート]](6-メチルイソヘキシルイソチオシアナート、7-メチルチオヘプチルイソチオシアナート、8-メチルチオオクチルイソチオシアナート)などであり{{sfn|主婦の友社編|2011|p=255}}、[[唐辛子]]の辛味成分である[[カプサイシン]]とは辛味成分が全く異なる。成分は品種、栽培条件、収穫時期で変化するが<ref>鈴木正、長島善次、内山正昭「[https://doi.org/10.11519/jjfs1953.41.5_180 ワサビ無機成分の時期別変化について]」『日本林学会誌』Vol.41 (1959年) No.5 pp.180-183</ref><ref>大鶴勝, 花山和美、「[https://doi.org/10.1271/nogeikagaku1924.56.935 わざびの生育期間中における辛味生成因子の変動]」『日本農芸化学会誌』Vol.56 (1982年) No.10 pp.935-937</ref>、わさびスルフィニル(''wasabi sulfinyl'')は国産の本わさびからワサビ特有の辛みを除いた抽出した成分6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート/6-methylsulfinylhexyl isothiocyanate (6-MSITC)を指す<ref>[http://www.wasabi-labo.jp/sulfinyl/about 金印わさび機能性研究所 「わさびスルフィニル」 / 「わさびスルフィニル」とは]</ref><ref>村田充良、宇野みさえ、永井陽子ほか「[https://doi.org/10.3136/nskkk.51.477 わさびおよび加工わさび製品中の6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート含量]」『日本食品科学工学会誌』Vol.51 (2004年)No.9 pp.477-482</ref>。
ワサビの辛味成分は、[[カラシナ|芥子菜]]などアブラナ科の植物が多く含む[[からし油配糖体]](グルコシノレート)の一種[[シニグリン]]という成分含まれており、ワサビをすり下ろ過程で[[細胞]]にある[[酵素]]と反応することにより、シニグリンが[[アリルイソチオシアネート]](6-メチルイソヘキシルイソチオシアナート、7-メチルチオヘプチルイソチオシアナート、8-メチルチオオクチルイソチオシアナート)などの刺激性ガスに分解される{{sfn|主婦の友社編|2011|p=255}}{{sfn|講談社編|2013|p=111}}。成分は品種、栽培条件、収穫時期で変化するが<ref>鈴木正、長島善次、内山正昭「[https://doi.org/10.11519/jjfs1953.41.5_180 ワサビ無機成分の時期別変化について]」『日本林学会誌』Vol.41 (1959年) No.5 pp.180-183</ref><ref>大鶴勝, 花山和美、「[https://doi.org/10.1271/nogeikagaku1924.56.935 わざびの生育期間中における辛味生成因子の変動]」『日本農芸化学会誌』Vol.56 (1982年) No.10 pp.935-937</ref>、わさびスルフィニル(wasabi sulfinyl)は国産の本わさびからワサビ特有の辛みを抽出した成分6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート/6-methylsulfinylhexyl isothiocyanate (6-MSITC)を指す<ref>[http://www.wasabi-labo.jp/sulfinyl/about 金印わさび機能性研究所 「わさびスルフィニル」 / 「わさびスルフィニル」とは]</ref><ref>村田充良、宇野みさえ、永井陽子ほか「[https://doi.org/10.3136/nskkk.51.477 わさびおよび加工わさび製品中の6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート含量]」『日本食品科学工学会誌』Vol.51 (2004年)No.9 pp.477-482</ref>。


[[抗菌]]効果があるとする報告<ref>七山征子、橋本明子、新井輝義ほか「[https://doi.org/10.5803/jsfm.11.173 調味料と香辛料が腸炎ビブリオの生存に及ぼす抗菌作用 I. 醤油と沢わさび, しょうが, にんにくの共働抗菌作用]」『日本食品微生物学会雑誌』Vol.11 (1994-1995年) No.3 pp.173-178</ref>、[[胃がん]]細胞増殖抑制成分が含まれているとする報告<ref>小野晴寛、足立圭子、福家洋子ほか「[https://doi.org/10.3136/nskkk.43.1092 沢わさびの胃がん細胞増殖抑制成分の精製と構造解析]」『日本食品科学工学会誌』Vol.43 (1996年) No.10 pp.1092-1097</ref>など様々な研究が発表されている。[[名古屋市立大学]][[大学院]][[医学研究科]]は、[[神経細胞]]の再生を促して記憶力や学習能力を改善させると発表し、1日に12.5グラムを摂取することにより脳だけでなく全身で細胞の再生が促進され、[[認知症]]予防以外にも血管拡張や骨密度強化など多彩な効果があるとしている<ref>「※記事名不明※」『[[中日新聞]]』2008年12月18日</ref>。また、[[中部大学]][[応用生物学]]の研究チームは、ワサビの辛味成分アリルイソチオシアネートが[[酸化ストレス]]を防ぐ体内酵素を活性化させて[[老化]]や疾病を防ぐ一定の効果があるほか、抗[[アレルギー]]作用があると発表した<ref>「※記事名不明※」『[[静岡新聞]]』2010年2月18日</ref>。
[[抗菌]]効果があるとする報告<ref>七山征子、橋本明子、新井輝義ほか「[https://doi.org/10.5803/jsfm.11.173 調味料と香辛料が腸炎ビブリオの生存に及ぼす抗菌作用 I. 醤油と沢わさび, しょうが, にんにくの共働抗菌作用]」『日本食品微生物学会雑誌』Vol.11 (1994-1995年) No.3 pp.173-178</ref>、[[胃がん]]細胞増殖抑制成分が含まれているとする報告<ref>小野晴寛、足立圭子、福家洋子ほか「[https://doi.org/10.3136/nskkk.43.1092 沢わさびの胃がん細胞増殖抑制成分の精製と構造解析]」『日本食品科学工学会誌』Vol.43 (1996年) No.10 pp.1092-1097</ref>など様々な研究が発表されている。[[名古屋市立大学]][[大学院]][[医学研究科]]は、[[神経細胞]]の再生を促して記憶力や学習能力を改善させると発表し、1日に12.5グラムを摂取することにより脳だけでなく全身で細胞の再生が促進され、[[認知症]]予防以外にも血管拡張や骨密度強化など多彩な効果があるとしている<ref>「※記事名不明※」『[[中日新聞]]』2008年12月18日</ref>。また、[[中部大学]][[応用生物学]]の研究チームは、ワサビの辛味成分アリルイソチオシアネートが[[酸化ストレス]]を防ぐ体内酵素を活性化させて[[老化]]や疾病を防ぐ一定の効果があるほか、抗[[アレルギー]]作用があると発表した<ref>「※記事名不明※」『[[静岡新聞]]』2010年2月18日</ref>。

ワサビは、強力な抗菌作用だけでなく、魚の臭み成分と反応して生臭さを消す作用を持っており、辛み成分は胃を刺激して消化を助け、食欲を駆り立てる効果もある{{sfn|講談社編|2013|p=111}}。

=== 栄養価 ===
栄養成分としては、[[ビタミンC]]、[[カリウム]]、[[カルシウム]]などが群を抜いて多く含まれる{{sfn|講談社編|2013|p=111}}。ただし、ワサビは強力な辛み成分を含み、それらの栄養効果を期待するほど一度に多くの量を食べることはない{{sfn|講談社編|2013|p=111}}。


== 利用・加工法 ==
== 利用・加工法 ==
日本原産の野菜で、根茎、茎、根、花などすべてが食用にされる{{sfn|主婦の友社編|2011|p=255}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=171}}。主に辛味として使われるのは根茎で、一年中流通して特定の[[旬]]はないが、冬場の11月 - 2月を旬とする文献もあり{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=171}}、全体に色鮮やかな淡緑色で良く締まったかたいものが良品とされる{{sfn|主婦の友社編|2011|p=255}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=171}}。
日本原産の野菜で、根茎、茎、根、花などすべてが食用にされる{{sfn|主婦の友社編|2011|p=255}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=171}}。市場に出ているものは山間地の栽培ものである{{sfn|篠原準八|2008|p=126}}。主に辛味として使われるのは根茎で、一年中流通して特定の[[旬]]はないが、冬場の11月 - 2月を旬とする文献もあり{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=171}}、全体に色鮮やかな淡緑色で良く締まったかたいものが良品とされる{{sfn|主婦の友社編|2011|p=255}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=171}}。


ワサビの葉も辛味があり、[[わさび漬け]]などに、太い根茎は、主にすりおろして[[香辛料]]とする{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}{{sfn|主婦と生活社編|2007|p=70}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=171}}。食欲増進、食物防腐、制菌作用があることから、生ものに添えられ{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}、[[刺身]]や[[寿司]]、[[蕎麦]]などの[[日本料理]]には欠かせない[[薬味]]として知られる{{sfn|主婦の友社編|2011|p=255}}。根茎は薬効がある[[生薬]]として、民間では山葵根(さんきこん)と称されることもあるが、ワサビは[[中国]]にはなく、本来は「山葵」とすることは誤りである{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}。薬用としてよりも、香辛料として用いられる{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}。野生のワサビは根茎部が小さくてほとんど使えないため、[[山菜]]として利用するのは主に地上部である{{sfn|金田初代|2010|p=176}}。
ワサビの葉も辛味があり、[[わさび漬け]]などに、太い根茎は、主にすりおろして[[香辛料]]とする{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}{{sfn|主婦と生活社編|2007|p=70}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=171}}。食欲増進、食物防腐、制菌作用があることから、生ものに添えられ{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}、[[刺身]]や[[寿司]]、[[蕎麦]]などの[[日本料理]]には欠かせない[[薬味]]として知られる{{sfn|主婦の友社編|2011|p=255}}。根茎は薬効がある[[生薬]]として、民間では山葵根(さんきこん)と称されることもあるが、ワサビは[[中国]]にはなく、本来は「山葵」とすることは誤りである{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}。薬用としてよりも、香辛料として用いられる{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}。野生のワサビは根茎部が小さくてほとんど使えないため、[[山菜]]として利用するのは主に地上部である{{sfn|金田初代|2010|p=176}}。
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=== 地下茎(根茎) ===
=== 地下茎(根茎) ===
{{独自研究|section=1|date=2015年3月}}
{{独自研究|section=1|date=2015年3月}}
[[地下茎]]すりおろしたものは、日本料理の[[薬味]]として使い、寿司、[[刺身]]、[[茶漬け]]、[[蕎麦]]、[[ウナギ|鰻]]の[[白焼き]]などに添えられる{{sfn|主婦の友社編|2011|p=255}}。特に、魚類の生食には欠かせない食材として知られる{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=147}}。洋食の[[ローストビーフ]]や[[スパゲッティ]]に使われることもある。また西洋料理、特に日本料理に影響を受けた近代[[フランス料理]]でソースなどに使用されることがある。牛肉とも相性が良いので[[焼肉]]に添えたり[[牛カツ]]に添える店もある。ワサビをすりおろしたことにより生じる辛味成分アリルイソチオシアネートは、強力な[[抗菌作用]]があることが知られており、刺身や寿司に使われることは食中毒予防の観点で理にかなっているといわれ、その香りによって魚の生臭みも防ぐこともできる{{sfn|主婦の友社編|2011|p=255}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=171}}。ワサビの辛味は、根茎の先の根に近い下のほうに行くほど強くなり、水分は少なく白っぽくなってくる{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=171}}。
根茎はおろして辛味薬味として使う。根わさびとして使う部分は[[地下茎]]で、すりおろすと揮発性からし油が生じて、鼻に抜ける刺激的な辛みが生じる{{sfn|講談社編|2013|p=111}}。おろしわさびは、日本料理の[[薬味]]として使い、寿司、[[刺身]]、[[茶漬け]]、[[蕎麦]]、[[ウナギ|鰻]]の[[白焼き]]などに添えられる{{sfn|主婦の友社編|2011|p=255}}。特に、魚類の生食には欠かせない食材として知られる{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=147}}。洋食の[[ローストビーフ]]や[[スパゲッティ]]に使われることもある。また西洋料理、特に日本料理に影響を受けた近代[[フランス料理]]でソースなどに使用されることがある。牛肉とも相性が良いので[[焼肉]]に添えたり[[牛カツ]]に添える店もある。ワサビをすりおろしたことにより生じる辛味成分アリルイソチオシアネートは、強力な[[抗菌作用]]があることが知られており、刺身や寿司に使われることは食中毒予防の観点で理にかなっているといわれ、その香りによって魚の生臭みも防ぐこともできる{{sfn|主婦の友社編|2011|p=255}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=171}}。ワサビの辛味は、根茎の先の根に近い下のほうに行くほど強くなり、水分は少なく白っぽくなってくる{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=171}}。青茎種が最も辛みが強く、粘り気がある{{sfn|講談社編|2013|p=111}}。


すりおろす道具としては、[[細胞]]を細かく摩砕できる[[鮫皮]]おろしなどの目の細かい[[おろし器]]を用いて、葉がついていた上の方から円を描くようにしておろすと、香りと辛味が増す{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=147}}{{sfn|金田初代|2010|p=176}}。また俗にワサビは金気ので金おろしを使わなというし現実には、そことによって料理店の良し悪しを言われてしうこともあるもの、細目の金おろしを使っている和食店、寿司店も多い
すりおろす道具としては、[[細胞]]を細かく摩砕できる[[鮫皮]]おろしなどの目の細かい[[おろし器]]を用いて、葉がついていた上の方から円を描くようにしておろすと、香りと辛味が増す{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=147}}{{sfn|金田初代|2010|p=176}}。すりおろすときは切り落として、葉の付け根のほからおろしく{{sfn|講談社編|2013|p=111}}できるけ金属製おろ避け、陶製たは鮫皮のおろしを使う{{sfn|講談社編|2013|p=111}}


ワサビの風味、特に辛味は[[揮発性]]のものが多いため、すりおろして余り時間を置くと風味を失ってしまうが、すってすぐの物も味にカドが有る。地下茎とおろし器を供して自分でするシステムを取る店やその来店客は、おろす動作の体験や、おろしたての強い香りを重視する<ref>【産地からの手紙 旬菜物語】ワサビ丼/おろしたて 香り抜群『日本農業新聞』2019年6月8日8面</ref>。
ワサビの風味、特に辛味は[[相転移#物理学的性質|揮発性]]のものが多いため、すりおろして余り時間を置くと風味を失ってしまうが、すってすぐの物も味にカドが有る。地下茎とおろし器を供して自分でするシステムを取る店やその来店客は、おろす動作の体験や、おろしたての強い香りを重視する<ref>【産地からの手紙 旬菜物語】ワサビ丼/おろしたて 香り抜群『日本農業新聞』2019年6月8日8面</ref>。


またワサビを醤油で溶いたりしても、ほとんどが醤油に含まれる[[メチオノール]]で消臭されるため、風味を弱く感じるようになる。作家[[池波正太郎]]は著書『男の作法』の中で「刺身の上にわさびをちょっと乗せて、それにお醤油をちょっとつけて食べればいいんだ。そうしないとわさびの香りが抜けちゃう。醤油も濁って新鮮でなくなるしね」と述べている<ref name="otokonosahou_p83"> 池波正太郎『男の作法』([[新潮文庫]] 1981年)p.83</ref>。一方、[[北大路魯山人]]は著書の中で「しょうゆの中にわさびをいれてしまっては辛味はなくなる。しかししょうゆの味がよくなる」と記述している<ref name="hoshioka">『星岡』1933年</ref>。
またワサビを醤油で溶いたりしても、ほとんどが醤油に含まれる[[メチオノール]]で消臭されるため、風味を弱く感じるようになる。作家[[池波正太郎]]は著書『男の作法』の中で「刺身の上にわさびをちょっと乗せて、それにお醤油をちょっとつけて食べればいいんだ。そうしないとわさびの香りが抜けちゃう。醤油も濁って新鮮でなくなるしね」と述べている<ref name="otokonosahou_p83"> 池波正太郎『男の作法』([[新潮文庫]] 1981年)p.83</ref>。一方、[[北大路魯山人]]は著書の中で「しょうゆの中にわさびをいれてしまっては辛味はなくなる。しかししょうゆの味がよくなる」と記述している<ref name="hoshioka">『星岡』1933年</ref>。
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=== 葉、茎、花 ===
=== 葉、茎、花 ===
{{独自研究|section=1|date=2015年3月}}
{{独自研究|section=1|date=2015年3月}}
[[File:わさびアイス(手前)とわさび田(背景).jpg|thumb|[[浄蓮の滝]]で撮影したわさびアイス。わさび田を背景に撮影。]]
ワサビのやわらかい葉の部分も食用にされ、「葉ワサビ」とよばれている{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=61}}。沢で栽培されるものは3 - 4月ごろが旬、畑栽培のものは一年中出回る{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=61}}。野生ワサビの茎葉は、花の咲きはじめが旬とされ、花が咲いている株全体を採取して食用とする{{Sfn|高橋秀男監修|2003|pp=146&ndash;147}}。
ワサビのやわらかい葉や葉柄の部分も食用にされ、「葉ワサビ」とよばれている{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=61}}。沢で栽培されるものは3 - 4月ごろが旬、畑栽培のものは一年中出回る{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=61}}。野生ワサビの茎葉は、花の咲きはじめが旬とされ、花が咲いている株全体を採取して食用とする{{Sfn|高橋秀男監修|2003|pp=146&ndash;147}}。野生ものも一年中使えるが、特に葉と茎は花の咲く時期がやわらかい{{sfn|篠原準八|2008|p=126}}。


葉にも辛味があり、さっと茹でて水にさらす、あるいは熱湯をかけて冷ましたものを[[おし]]や[[和え物]]、[[煮びたし]]にするほか、[[醤油漬け]]、[[わさび漬け]]、[[塩漬け]]、[[粕漬け]]、[[浅漬け]]、[[酢漬け]]などにしてピリッとした辛味を味わう{{sfn|主婦と生活社編|2007|p=70}}{{sfn|金田初代|2010|p=176}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=61}}。また生のまま[[天ぷら]]にもする{{sfn|金田初代|2010|p=176}}。茎や葉を、さっと湯通しする程度に茹で、塩または出汁醤油をかけて密封容器にいれ、冷蔵庫において一夜漬けにすると、独特の香りと辛味が楽しめる{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=146}}。また、刻んで汁の実としてもおいしく食べられる{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=147}}。島根県西部([[高津川]]流域)と[[山口県]]東部では、新芽の部分をその独特の[[食感]]から「ガニ芽」と称し、高級食材として活用している。
や葉柄にも辛味があり、さっと茹でて水にさらす、あるいは熱湯をかけて冷ましたものを[[おひたし]]や[[和え物]]、[[煮びたし]]にするほか、[[醤油漬け]]、[[わさび漬け]]、[[塩漬け]]、[[粕漬け]]、[[浅漬け]]、[[酢漬け]]などにしてピリッとした辛味を味わう{{sfn|主婦と生活社編|2007|p=70}}{{sfn|金田初代|2010|p=176}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=61}}。また生のまま[[天ぷら]]にもする{{sfn|金田初代|2010|p=176}}。茎や葉を、さっと湯通しする程度に茹で、塩または出汁醤油をかけて密封容器にいれ、冷蔵庫において一夜漬けにすると、独特の香りと辛味が楽しめる{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=146}}{{sfn|篠原準八|2008|p=127}}。[[三杯酢]]につけたり、[[粕漬け]]にしても楽しめる{{sfn|篠原準八|2008|p=127}}。また、刻んで汁の実としてもおいしく食べられる{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=147}}。島根県西部([[高津川]]流域)と[[山口県]]東部では、新芽の部分をその独特の[[食感]]から「ガニ芽」と称し、高級食材として活用している。


2 - 4月ごろの花芽がついた葉や茎は、「花ワサビ」とよばれて出荷もされている{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=61}}。花ワサビも葉ワサビと同様に辛味があり、さっとゆがいてお浸しにしたり、天ぷらにして食べられる{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=61}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=171}}。花は刺身の[[つま]]や、料理の[[つま#あしらい|あしらい]]としても使われる{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=147}}{{sfn|金田初代|2010|p=176}}。
2 - 4月ごろの花芽がついた葉や茎は、「花ワサビ」とよばれて出荷もされている{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=61}}{{sfn|講談社編|2013|p=111}}。花ワサビも葉ワサビと同様に辛味があり、さっとゆがいてお浸しにしたり、天ぷらにして食べられる{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=61}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=171}}。花は刺身の[[つま]]や、料理の[[つま#あしらい|あしらい]]としても使われる{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=147}}{{sfn|金田初代|2010|p=176}}。


葉や茎は、成分・エキスを抽出したり、すり下ろして練りわさびやスナック菓子などの風味付けの原料として用いられたりする。ワサビ風味の食品には、冷菓([[ソフトクリーム]]や[[アイスクリーム]])、米菓([[せんべい]]や[[あられ (菓子)|あられ]])もある。ただし、ワサビの辛味成分は数分で揮発してしまう為、添加物を加えてそれを抑止する等の工夫をしている。
葉や茎は、成分・エキスを抽出したり、すり下ろして練りわさびやスナック菓子などの風味付けの原料として用いられたりする。ワサビ風味の食品には、冷菓([[ソフトクリーム]]や[[アイスクリーム]])、米菓([[せんべい]]や[[あられ (菓子)|あられ]])もある。ただし、ワサビの辛味成分は数分で揮発してしまう為、添加物を加えてそれを抑止する等の工夫をしている。


食用外でも、アリルイソチオシアネートの殺菌作用や、植物の老化を早める[[エチレン]]ガスの発生を抑制する作用を利用して、食品・野菜用の抗菌・消臭・鮮度保持剤として冷蔵庫などで使用する製品もある。[[弁当]]用の[[防腐剤]]や[[米]]の[[防虫剤]]としても利用されている。
食用外でも、アリルイソチオシアネートの殺菌作用や、植物の老化を早める[[エチレン]]ガスの発生を抑制する作用を利用して、食品・野菜用の抗菌・消臭・鮮度保持剤として冷蔵庫などで使用する加工製品もある。[[弁当]]用の[[防腐剤]]や[[米]]の[[防虫剤]]としても利用されている。また、樹脂によりワサビ成分(AITC)をマイクロカプセル化したペレットとベース剤を混合することで、揮発量と徐放性を調正可能にしたシート型防虫剤が開発されており、貨物コンテナに混載する縫製品などの梱包製品にも使用されている。台湾や日本で問題になっている[[ヒアリ]]への燻蒸・殺虫実験も行われており、効果が証明されている<ref>{{Cite web|和書|title=ヒアリ対策最前線 ~決め手は「わさび」~ NHK WEB特集 環境 |url=https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240529/k10014462371000.html|website=[[NHK]]|accessdate=2024-06-27}}</ref> <ref>{{Cite web|和書|title=ヒアリ燻蒸・殺虫法にマイクロカプセル化ワサビ成分を安全・簡便に活用する研究成果を発表しました。 兵庫県立 人と自然の博物館(ひとはく)|url=https://www.hitohaku.jp/research/h-research/20200428news.html|website=兵庫県立 人と自然の博物館|accessdate=2024-06-27}}</ref>


== 広義のワサビ ==
== 広義のワサビ ==
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=== 粉ワサビ・練りワサビ ===
=== 粉ワサビ・練りワサビ ===
加工品として、缶入りの粉ワサビ、チューブあるいはパック入りの練りわさびが存在し、現在、日本の一般家庭では生のワサビ地下茎をすりおろすよりもこちらが広く用いられるが、原材料はワサビ(本わさび)ではなく、安価な代用品として[[ホースラディッシュ|セイヨウワサビ]]を使用していることが多い<ref>{{Cite web |url=http://www.kinjirushi.co.jp/dictionary/seiyou/seiyou.html |title=金印グループ 西洋わさびについて] |accessdate=2015-02-22}}</ref><!--<ref>{{Cite web |url=http://www.sbfoods.co.jp/sbsoken/jiten/detail.php?SPCCODE=00041 |title=S&B エスビー食品株式会社 ホースラディッシュ] |accessdate=2015-02-22}}</ref> --><ref>{{Cite web |url=http://housefoods.jp/products/catalog/pkgview.php?cd=84020&ct=1 |title=ハウス食品 粉わさび |accessdate=2015-02-22}}</ref>。
加工品として、缶入りの粉ワサビ、チューブあるいはパック入りの練りわさびが存在し、現在、日本の一般家庭では生のワサビ地下茎をすりおろすよりもこちらが広く用いられるが、原材料はワサビ(本わさび)ではなく、安価な代用品として[[ホースラディッシュ|セイヨウワサビ]]を使用していることが多い<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.kinjirushi.co.jp/dictionary/seiyou/seiyou.html |title=金印グループ 西洋わさびについて] |accessdate=2015-02-22}}</ref><!--<ref>{{Cite web |url=http://www.sbfoods.co.jp/sbsoken/jiten/detail.php?SPCCODE=00041 |title=S&B エスビー食品株式会社 ホースラディッシュ] |accessdate=2015-02-22}}</ref> --><ref>{{Cite web|和書|url=http://housefoods.jp/products/catalog/pkgview.php?cd=84020&ct=1 |title=ハウス食品 粉わさび |accessdate=2015-02-22}}</ref>。
しかしながら、近年では高価な“本来のワサビ(本わさび)”も加えている商品が増えてきている。{{要出典範囲|date=2015年7月|根茎は高価なため、それ以外の根や茎の部分が使用される事が多い<ref>[http://www.tv-asahi.co.jp/rakuen/contents/past/0240/ テレビ朝日]「島根・益田市 ~単身移住でワサビ栽培~」2016年2月17日閲覧</ref>
しかしながら、近年では高価な“本来のワサビ(本わさび)”も加えている商品が増えてきている。根茎は高価なため、それ以外の根や茎の部分が使用される事が多い<ref>[http://www.tv-asahi.co.jp/rakuen/contents/past/0240/ テレビ朝日]「島根・益田市 ~単身移住でワサビ栽培~」2016年2月17日閲覧</ref><ref>[http://www.ryusendo-water.co.jp/selection/wasabi.html 岩泉産業開発]主に茎を利用する「畑わさび」で、現在では練りワサビの原料として日本一の生産量 2016年2月17日閲覧</ref>。チューブ入りわさびにおいては植物油、食塩、糖分、増粘剤等を添加しているものが多い。品名(名称)は、いずれも「加工わさび」であるが、日本加工わさび協会の基準においては原料わさびのうち本わさび(ワサビ)を50%未満使用している場合は「本わさび入り」、50%以上使用している場合は「本わさび使用」を表記して良いとしている<ref>{{Cite web|和書|title=【チューブわさび】「本わさび使用」や「本わさび入り」と書かれていますが、どのように違うのでしょうか。|Q&A・お問い合わせ|url=https://www.sbfoods.co.jp/customer/detail/00434.html|website=[[ヱスビー食品]]|accessdate=2019-05-29}}</ref>。
<ref>[http://www.ryusendo-water.co.jp/selection/wasabi.html 岩泉産業開発]主に茎を利用する「畑わさび」で、現在では練りワサビの原料として日本一の生産量 2016年2月17日閲覧</ref>。}}チューブ入りわさびにおいては植物油、食塩、糖分、増粘剤等を添加しているものが多い。品名(名称)は、いずれも「加工わさび」であるが、日本加工わさび協会の基準においては原料わさびのうち本わさび(ワサビ)を50%未満使用している場合は「本わさび入り」、50%以上使用している場合は「本わさび使用」を表記して良いとしている<ref>{{Cite web|title=【チューブわさび】「本わさび使用」や「本わさび入り」と書かれていますが、どのように違うのでしょうか。|Q&A・お問い合わせ|url=https://www.sbfoods.co.jp/customer/detail/00434.html|website=[[ヱスビー食品]]|accessdate=2019-05-29}}</ref>。


=== サプリメント ===
=== サプリメント ===
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* {{Cite book|和書|author=大嶋敏昭監修|date=2002-05-20|title=花色でひける山野草・高山植物|publisher=[[成美堂出版]]|series=ポケット図鑑|isbn=4-415-01906-4|page=438|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author=大嶋敏昭監修|date=2002-05-20|title=花色でひける山野草・高山植物|publisher=[[成美堂出版]]|series=ポケット図鑑|isbn=4-415-01906-4|page=438|ref=harv}}
* 笠島一郎、平林孝之、川合真紀、内宮博文「[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010791884 日本ワサビのDNA多型解析]」『農業および園芸』85巻・6号, pp.633-636(2010年6月)
* 笠島一郎、平林孝之、川合真紀、内宮博文「[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010791884 日本ワサビのDNA多型解析]」『農業および園芸』85巻・6号, pp.633-636(2010年6月)
* {{Cite book|和書|author = 主婦と生活社編|title = 野山で見つける草花ガイド|date = 2007-05-01|publisher = [[主婦と生活社]]|isbn = 978-4-391-13425-4|page =70|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author=講談社編|title = からだにやさしい旬の食材菜の本|date=2013-05-13|publisher = [[講談社]]|isbn=978-4-06-218342-0|page=111|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =主婦の友社編|title = 野菜まるごと大図鑑|date=2011-02-20|publisher = [[主婦の友社]]|isbn=978-4-07-273608-1|page =255|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author=篠原準八|title=食べごろ 摘み草図鑑:採取時期・採取部位・調理方法がわかる|publisher=[[講談社]]|date=2008-10-08|isbn=978-4-06-214355-4|pages=126 - 127|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author=[[高橋秀男]]監修 田中つむ・松原渓著|title=日本の|publisher=[[学習研究社]]|series=フィールドベスト図鑑13|date=2003-04-01|isbn=4-05-401881-5|pages=146 - 147|ref={{SfnRef|高橋秀男監修|2003}} }}
* {{Cite book|和書|author=主婦生活社編|title =で見つける草花ガイド|date = 2007-05-01|publisher = [[主婦と生活社]]|isbn = 978-4-391-13425-4|page =70|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author=主婦の友社編|title = 野菜まるごと大図鑑|date=2011-02-20|publisher = [[主婦の友社]]|isbn=978-4-07-273608-1|page =255|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author=高橋秀男監修 田中つとむ・松原渓著|title=日本の山菜|publisher=[[学習研究社]]|series=フィールドベスト図鑑13|date=2003-04-01|isbn=4-05-401881-5|pages=146 - 147|ref={{SfnRef|高橋秀男監修|2003}} }}
* 長島善次「[https://doi.org/10.1271/nogeikagaku1924.31.7_514 わさびに関する研究(第3報)配糖体Sinigrinの分離,確認]」『日本農芸化学会誌』Vol.31 (1957年) No.7 pp.514-515
* 長島善次「[https://doi.org/10.1271/nogeikagaku1924.31.7_514 わさびに関する研究(第3報)配糖体Sinigrinの分離,確認]」『日本農芸化学会誌』Vol.31 (1957年) No.7 pp.514-515
* {{Cite book|和書|author = 馬場篤|others = 大貫茂(写真)|title = 薬草500種-栽培から効用まで|date = 1996-09-27|publisher = [[誠文堂新光社]]|series = |isbn = 4-416-49618-4|page = 117|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author = 馬場篤|others = 大貫茂(写真)|title = 薬草500種-栽培から効用まで|date = 1996-09-27|publisher = [[誠文堂新光社]]|series = |isbn = 4-416-49618-4|page = 117|ref=harv}}
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* [http://www.kinjirushi.co.jp/dictionary/hon/hon.html おいしいわさびの選び方から食べ方まで] 金印のわさび
* [http://www.kinjirushi.co.jp/dictionary/hon/hon.html おいしいわさびの選び方から食べ方まで] 金印のわさび
* {{cite journal|和書 |author=Mahmood H., 藤目幸擴, 松井年行, 奥田幸延, 鈴木春雄 |issue=52 |title=ワサビの形態的特徴 |url=https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030621301 |journal=京都府立大学学術報告. 人間環境学・農学 |ISSN=1343-3954 |publisher=京都府立大学 |year=2000 |pages=39-43}}
* {{cite journal|和書 |author=Mahmood H., 藤目幸擴, 松井年行, 奥田幸延, 鈴木春雄 |issue=52 |title=ワサビの形態的特徴 |url=https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030621301 |journal=京都府立大学学術報告. 人間環境学・農学 |ISSN=1343-3954 |publisher=京都府立大学 |year=2000 |pages=39-43}}



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2024年10月31日 (木) 20:09時点における最新版

ワサビ
わさび田のワサビ
(2009年8月7日撮影)
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
亜綱 : ビワモドキ亜綱 Dilleniidae
: フウチョウソウ目 Brassicales
: アブラナ科 Brassicaceae
: ワサビ属 Eutrema
: ワサビ E. japonicum
学名
Eutrema japonicum (Miq.) Koidz. (1930)[1]
シノニム
和名
ワサビ(山葵)、
カラフトワサビ[1]
英名
Wasabi[6],
Japanese horseradish

ワサビ山葵[7]・山萮菜[8]学名: Eutrema japonicum)は、アブラナ科ワサビ属の植物。日本原産[9]中国大陸の近縁種とは、約500万年前に分化したと推定される[9]。山地の渓流湿地で生育し、春に4弁の白い小を咲かせる。

根茎は食用となり、強い刺激性のある香味を持つため薬味調味料として使われる。日本で栽培・利用される品種は本ワサビとも呼ばれ[10]、加工品を含めてセイヨウワサビ(ホースラディッシュ)と区別される。食欲増進作用のほか、抗菌作用がある。

名称

漢字で「山葵」と書く由来は諸説あり、一説には深山に生え、ゼニアオイ(銭葵)の葉に似ているからといわれている[11]ワサビの語源については、平安時代中期の『本草和名』(918年)には、「山葵」の和名和佐比と記している。同じく平安時代の『和名類聚抄』にも和佐比と記されている。悪(わる)・障(さわる)・疼(ひびく)の組み合わせという説があるが、詳細は不明である[12]。別名に、ヤマワサビ(山わさび)、サワワサビ(沢わさび)などともよばれている[13][14]

本種の学名Wasabia japonica (Miq.) Matsum. とされることが多いが、現在では Wasabia 属は独立した属とはみなされていないので、Eutrema japonicum (Miq.) Koidz. が正しい学名である[15]

ワサビの名が付く近縁な植物としてセイヨウワサビ(ホースラディッシュ)があるが、加工品の粉ワサビやチューブ入り練りワサビなどでは、原材料にセイヨウワサビのみを使用したり、両方を使っていたりするため、日本原産のワサビを本わさびと呼び、これを使ったものを高級品として区別していることが多い。

地下茎をすり下ろした薬味、調味料も「ワサビ」と呼ぶこともある。寿司屋符牒なみださびがある。寿司刺身の世界的な普及に伴って、英語フランス語台湾語広東語韓国語などでそのままwasabiという発音で借用されている。

花言葉を「実用[11]」「目覚め[11]」「嬉し涙[11]」とする文献がある。

分布・生育地

日本の特産で、北海道本州四国九州に分布し[16]、本来は水のきれいな深山の渓谷、渓流に自生する[17][12][7]。野生のものは珍しく、主に静岡県長野県清流や涼しい栽培されている[17][11]。絶えず澄んだ水が流れている冷涼な湿地の砂礫地、沢や水のかかる岩陰などで生育する[16][11][13]。深い山間の渓流沿いで野生のものが見られるが、一般の山地で見られるものは半栽培の状態で生育している[14]

形態・生態

多年生草本[16]。全草に香気と辛味がある[18]。地下にある根茎は太い円柱状もしくは円錐形で横筋があり、細を出す[17][12][16]。野生のワサビは、栽培ワサビよりも根茎が細い[16]根生葉は根茎の頂部から束になって生え、長さ10 - 20センチメートル (cm) の長い葉柄があり、葉身は径5 - 13 cmの大型で円形に近い心形で光沢があり、葉縁に不揃いな鋸歯と波状の凹凸がある[17][12][11]。茎につく葉もほぼ円形で、光沢がある[18]

花期は春(3 - 5月)[11]。根茎の頂から長さ20 - 30 cmくらいの地上が直立し、柄の短い小型の葉を互生して、茎頂や上部の葉腋に、白色の十字型で花径3ミリメートル (mm) ほどの小さな4弁花を総状につける[17][16][11]。花は上から順に数個から十数個が開く[16]

産地

安曇野 大王わさび農場(2008年5月12日撮影)

日本の主要な産地は静岡県、長野県、東京都(奥多摩)、島根県山梨県岩手県奈良県などである。また、ワサビの産地である伊豆市安曇野市では市の花に指定されている。

日本国外では台湾南部、ニュージーランド中国雲南省韓国江原特別自治道鉄原郡[19]などでも栽培されている。

イギリスでは、クレソンを栽培している会社が2010年にワサビ栽培を提案されて、南部のドーセット州で試行錯誤を経て成功させ、2012年に欧州の料理店向けに販売を開始した[10]。汲み上げた地下水で日本と同様の栽培環境を再現している[10]。欧州で初めての商業ベースのワサビ栽培の事例となった。価格は100グラム30ポンド(2012年時点で約4200円)[20]。欧州では、日本産ワサビにこだわり採用を渋ったシェフもいたが、鮮度を評価して購入する料理店や個人もおり、ウオッカマヨネーズなど加工品の製造にも展開している[10]

栽培

江戸時代から栽培が本格化した[7]。江戸時代初期、静岡県有東木において、当地に自生していたワサビを圃場へ移植し、栽培を試みたのが最初とされている。寿司の流行により急激に広まったと言われている[12]

冷涼なところを好む性質で、栽培方法を大別すると、水栽培で渓流や湧水で育てられる通称水ワサビ(谷ワサビ、沢ワサビ)と、畑栽培で育てられる通称畑ワサビ(陸ワサビ)がある[17]。水栽培は、山間部の北斜面で、水が濁らない湧水地がよいとされる[17]。また、畑栽培は落葉樹下の夏は日陰で、冬は日が当たる場所が選ばれる[17]。増殖は、種子のまま砂に埋めておいて秋に播く[17]。春にが揃ったら定植する[17]

歴史

深山幽谷の清冽な渓流に沿い自生していたものが、その利便から人里近辺の清流栽培へと根分けされて広がり、日本の食文化に合う国内需要により農業生産されるに至る。

  • 飛鳥時代の遺跡である飛鳥京跡苑池遺構(現・奈良県明日香村)から出土した木簡に「委佐俾三升(わさびさんしょう)」と書かれていた、これがワサビについて記された最古の史料とされる[21]
  • 718年奈良時代)に出された賦役令(現代の法人税法施行令に相当)の中に「山葵」(わさび)の名前が見られる。土地の名産品として、既に納付され、薬用として使用されていたと考えられる。
  • 1221年7月(鎌倉時代)、後堀河天皇の即位に際して、丹波国よりワサビが献上される。
  • 室町時代、既に現代と同じ薬味としての利用が確立されていた。
  • 江戸時代、有東木(うとうぎ、現・静岡市葵区)のワサビは駿府城大御所政治を執っていた徳川家康に献じられ[22]、その味が絶賛された。これに加えて、ワサビの葉が徳川家家紋の「葵」に通じることから、江戸幕府の庇護を受けることとなった。一方で門外不出の扱いとなり、その栽培技術を他地区に広げることは禁じられた。寿司、蕎麦の普及につれて、広く一般に普及・浸透していった[23]。古くは自生のものを採取・利用していたが、江戸時代に有東木地区に住む村人が野生のワサビを栽培したのが、栽培普及の端緒と伝えられる。
  • 延享元年(1744年)、天城湯ヶ島(現・静岡県伊豆市)で山守を務めていた板垣勘四郎は、三島代官の命によりシイタケ栽培の技術指導で有東木を訪れた。板垣はワサビの栽培を天城でも行いたいと懇願し、有東木の住民はシイタケの礼から禁を犯して板垣にワサビの苗を持たせた。この後、板垣の努力で天城でも栽培が始められることになる[24]
  • 1892年頃、原保村(現・伊豆市)の平井熊太郎が畳石式栽培を開発した[25]
  • 1900年代初め(明治の終わり頃)、丹那盆地および周囲の山々に、清水が湧き出すワサビ沢が7か所あったが、後に真下を丹那トンネルが開通して姿を消した[26]。1918年着工、1934年開通の丹那トンネルは工事中に大量の出水があり、トンネルの真上に当たる丹那盆地は、地下水が抜け、湧き水が失われた。
  • 1958年頃までの日本で栽培されていた品種は、中伊豆町の農家が発見して育成した品種「だるま」が多かったが、1958年の狩野川台風により中伊豆町のわさび田が壊滅。この台風被害からの復興の際に育種苗が不足したことや高品質な味と形を求められたことなどから、和歌山県産「真妻」(マズマ)種に置き換わっていった[27]。また、栽培が盛んな県の農業試験場では、地域毎の栽培特性に合わせた独自品種を開発して県内農家向けに種苗を供給している[28][29][30]
  • 2002年から2004年にかけて日本で「火災時における臭い警報システムに関する研究」が行われ、この研究をもとにワサビの臭いを用いた聴覚障害者向け火災報知器が商品化された[31]。この商品開発に関わる研究は、2011年にイグノーベル賞(化学賞)を受賞した。
  • 2018年3月、国連食糧農業機関(FAO)は静岡県の伝統的ワサビ栽培を世界農業遺産に認定した[32]

水ワサビ

天城山の北麓、伊豆市筏場のワサビ田。
天城山の北麓、伊豆市筏場のワサビ田。

水ワサビはワサビ田で栽培し、その根茎(根と茎の間の芋の部分)は生食用として利用される。このワサビ田は溪流式、地沢式、平地式、畳石式の4つの様式に分かれる[33]。畳石式とは、ワサビ田に石を下から順に大・中・小と積み上げたうえに砂利を敷き、そこに通した湧水をろ過したうえで酸素・養分を含ませ、高品質なワサビを育てる栽培法。畳石は数十年ごとに敷きなおす「畳替え」が必要で、コンクリートによる代用は食味が落ちるという[34]

水ワサビの生育には、豊富で綺麗な水温9 - 16[35]の水と、砂地などの透水性が良い土壌が必要で、強い日光を嫌う。粘土質土壌や腐葉土質を嫌うため肥料等は必要なく、育成の手間も殆ど要らないが、きれいな水が大量にある場所に生育が限定されるため、栽培の難しい農作物としても知られる。なお、経験的に、20℃ 3時間以上で根の腐敗が始まるとされる[36]。一方、山間のや水路を利用して小規模に栽培されることもある。

種類は赤茎種と緑茎種の2種類がある。静岡県で盛んに栽培される真妻種、島根県の在来種は赤茎系とされる。キャベツと同じアブラナ科の植物であるため、時としてスジグロチョウ[37]モンシロチョウ[38]幼虫青虫)に葉を食害される。また、根茎部分はヨコエビによる食害が報告されている[39][40]

畑ワサビ

畑ワサビは栽培から収穫までを畑で行うもので、水ワサビと異なり、温度と湿度管理が整えばどこでも栽培することが可能である[33]。しかし、株分けによる栽培を続けると数年で「退化現象」と呼ばれるウイルス感染に伴う成長障害や不稔、白さび病[41][42]、うどんこ病[43]が生じ、衰退する。この退化現象を回避するため茎頂培養(成長点培養)によるウイルスフリー苗(メリクロン苗)の生産技術が1990年代には確立され、栽培農家に供給されている[44]。栽培では、日射を避けるため日よけを施した広葉樹[45]針葉樹林の湿り気の多い場所が多く利用される。ハウス栽培も行われる[46]。2000年代になり人工光源を使用した栽培実験も行われている[47]

主要品種と特徴

安曇野 売店に並ぶワサビ(2008年8月18日撮影)

ワサビの上品な味と香り、辛味苦味、甘みについて、国内の交通が急激に変化した明治から大正時代にかけて研究されており、日本国内の主要産地ごと、また近年では外食チェーンで多用される中国産などでかなりの違いが認められる。多くの栽培品種があるが、「真妻」「だるま」「島根3号」が3大品種と云われ、その他の品種はこれらが育種母体として利用されていることが、DNA鑑定の結果判明した[48]。これらと野生在来種を交配選抜して栽培効率や耐病性、食味、保存性などを向上させた改良品種が数多く存在し、近年ではほとんど辛みのないものも栽培・流通している。

  • 真妻(まづま)- 旧・真妻村(現・和歌山県印南町川又)が発祥地の品種。品質が優れていたため静岡県内を中心に栽培が広がった。現在、印南町の農家が発祥の地復活を目指し、一度は途絶えた生産出荷に向け取り組んでいる[49]
    • 正緑(まさみどり)- 真妻の子品種。耐病性と大型化を改良。
  • 達磨(だるま)- 大正時代末期から昭和初期にかけて静岡県において導入された半原種(神奈川県原産)の中から突然変異株として優れた系統を発見し、選抜された。1965年頃から急速に退化現象が現れ、原種に近いものはほとんどなくなり、静岡では代わりに前述の「真妻種」が主力品種となった[50]
  • 島根3号(しまねさんごう)- 島根県農事試験場の野津六兵衛が、1925年以降全国各地から集めたワサビと、島根在来種との自然交配による実生を育て、さらに横木国臣の協力を得て1936年に選抜し、1942年に公表した[52]。一時日本を席巻し、京都の高級料亭ではよく使用された品種とされる[53]
    • 徳育1号 - 「島根3号」の種子から優良株の選抜を複数繰り返し、山口県が開発した[28]
  • 半原(はんばら) - 別名「丹羽山」。
  • みどり - 主にわさび漬けの材料用品種。
  • グリーンサム - 辛みが強いが、病気にかかりやすい。
  • 岩泉1号 - 岩手県に多い品種。畑ワサビ[54]
  • 静岡17
  • 高井(たかい) - 長野県に多い品種。
  • 長野23号 - 大きくなるが、病気にかかりやすい[29][55]
  • 三鷹大沢わさび - 東京都三鷹市大沢で少数現存し、株の老化や絶滅が危惧されている。開発で湧水が減る前の昭和初期までは商業栽培されて、神田青果市場築地市場に出荷されていた。江戸時代後期、伊勢(現在の三重県)出身の箕輪政右衛門が豊富な湧き水に着目し、郷里の五十鈴川上流で自生していたワサビを婿入りに際して持ち込んだと伝わる。野生種や絶えた古い栽培種を受け継いでおり、近縁種との交配による復活・保全が進められている[56]

有効成分

わさび 根茎 生[57]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 368 kJ (88 kcal)
18.4 g
食物繊維 4.4 g
0.2 g
5.6 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(0%)
1 µg
(0%)
7 µg
チアミン (B1)
(5%)
0.06 mg
リボフラビン (B2)
(13%)
0.15 mg
ナイアシン (B3)
(4%)
0.6 mg
パントテン酸 (B5)
(4%)
0.20 mg
ビタミンB6
(25%)
0.32 mg
葉酸 (B9)
(13%)
50 µg
ビタミンC
(90%)
75 mg
ビタミンE
(9%)
1.4 mg
ビタミンK
(47%)
49 µg
ミネラル
ナトリウム
(2%)
24 mg
カリウム
(11%)
500 mg
カルシウム
(10%)
100 mg
マグネシウム
(13%)
46 mg
リン
(11%)
79 mg
鉄分
(6%)
0.8 mg
亜鉛
(7%)
0.7 mg
(2%)
0.03 mg
セレン
(13%)
9 µg
他の成分
水分 74.2 g
水溶性食物繊維 0.8 g
不溶性食物繊維 3.6 g
ビオチン(B7 3.5 µg
硝酸イオン 0.1 g

ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[58]。廃棄部位: 側根基部及び葉柄
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。

ワサビの辛味成分は、芥子菜などアブラナ科の植物が多く含むからし油配糖体(グルコシノレート)の一種シニグリンという成分が含まれており、ワサビをすり下ろす過程で細胞にある酵素と反応することにより、シニグリンがアリルイソチオシアネート(6-メチルイソヘキシルイソチオシアナート、7-メチルチオヘプチルイソチオシアナート、8-メチルチオオクチルイソチオシアナート)などの刺激性ガスに分解される[59][60]。成分は品種、栽培条件、収穫時期で変化するが[61][62]、わさびスルフィニル(wasabi sulfinyl)は国産の本わさびからワサビ特有の辛みを抽出した成分6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート/6-methylsulfinylhexyl isothiocyanate (6-MSITC)を指す[63][64]

抗菌効果があるとする報告[65]胃がん細胞増殖抑制成分が含まれているとする報告[66]など様々な研究が発表されている。名古屋市立大学大学院医学研究科は、神経細胞の再生を促して記憶力や学習能力を改善させると発表し、1日に12.5グラムを摂取することにより脳だけでなく全身で細胞の再生が促進され、認知症予防以外にも血管拡張や骨密度強化など多彩な効果があるとしている[67]。また、中部大学応用生物学の研究チームは、ワサビの辛味成分アリルイソチオシアネートが酸化ストレスを防ぐ体内酵素を活性化させて老化や疾病を防ぐ一定の効果があるほか、抗アレルギー作用があると発表した[68]

ワサビは、強力な抗菌作用だけでなく、魚の臭み成分と反応して生臭さを消す作用を持っており、辛み成分は胃を刺激して消化を助け、食欲を駆り立てる効果もある[60]

栄養価

栄養成分としては、ビタミンCカリウムカルシウムなどが群を抜いて多く含まれる[60]。ただし、ワサビは強力な辛み成分を含み、それらの栄養効果を期待するほど一度に多くの量を食べることはない[60]

利用・加工法

日本原産の野菜で、根茎、茎、根、花などすべてが食用にされる[59][7]。市場に出ているものは山間地の栽培ものである[13]。主に辛味として使われるのは根茎で、一年中流通して特定のはないが、冬場の11月 - 2月を旬とする文献もあり[7]、全体に色鮮やかな淡緑色で良く締まったかたいものが良品とされる[59][7]

ワサビの葉も辛味があり、わさび漬けなどに、太い根茎は、主にすりおろして香辛料とする[17][11][7]。食欲増進、食物防腐、制菌作用があることから、生ものに添えられ[17]刺身寿司蕎麦などの日本料理には欠かせない薬味として知られる[59]。根茎は薬効がある生薬として、民間では山葵根(さんきこん)と称されることもあるが、ワサビは中国にはなく、本来は「山葵」とすることは誤りである[17]。薬用としてよりも、香辛料として用いられる[17]。野生のワサビは根茎部が小さくてほとんど使えないため、山菜として利用するのは主に地上部である[14]

地下茎(根茎)

根茎はおろして辛味薬味として使う。根わさびとして使う部分は地下茎で、すりおろすと揮発性のからし油が生じて、鼻に抜ける刺激的な辛みが生じる[60]。おろしわさびは、日本料理の薬味として使い、寿司、刺身茶漬け蕎麦白焼きなどに添えられる[59]。特に、魚類の生食には欠かせない食材として知られる[69]。洋食のローストビーフスパゲッティに使われることもある。また西洋料理、特に日本料理に影響を受けた近代フランス料理でソースなどに使用されることがある。牛肉とも相性が良いので焼肉に添えたり牛カツに添える店もある。ワサビをすりおろしたことにより生じる辛味成分アリルイソチオシアネートは、強力な抗菌作用があることが知られており、刺身や寿司に使われることは食中毒予防の観点で理にかなっているといわれ、その香りによって魚の生臭みも防ぐこともできる[59][7]。ワサビの辛味は、根茎の先の根に近い下のほうに行くほど強くなり、水分は少なく白っぽくなってくる[7]。青茎種が最も辛みが強く、粘り気がある[60]

すりおろす道具としては、細胞を細かく摩砕できる鮫皮おろしなどの目の細かいおろし器を用いて、葉がついていた上の方から円を描くようにしておろすと、香りと辛味が増す[69][14]。すりおろすときは、葉を切り落として、葉の付け根のほうからおろしていく[60]。できるだけ金属製のおろし金を避け、陶製または鮫皮のおろし器を使う[60]

ワサビの風味、特に辛味は揮発性のものが多いため、すりおろして余り時間を置くと風味を失ってしまうが、すってすぐの物も味にカドが有る。地下茎とおろし器を供して自分でするシステムを取る店やその来店客は、おろす動作の体験や、おろしたての強い香りを重視する[70]

またワサビを醤油で溶いたりしても、ほとんどが醤油に含まれるメチオノールで消臭されるため、風味を弱く感じるようになる。作家池波正太郎は著書『男の作法』の中で「刺身の上にわさびをちょっと乗せて、それにお醤油をちょっとつけて食べればいいんだ。そうしないとわさびの香りが抜けちゃう。醤油も濁って新鮮でなくなるしね」と述べている[71]。一方、北大路魯山人は著書の中で「しょうゆの中にわさびをいれてしまっては辛味はなくなる。しかししょうゆの味がよくなる」と記述している[72]

ワサビの鼻につんとくる独特の刺激的な辛さは、一般的に子供には好まれない。そのため、寿司などにワサビを入れないものを「サビ抜き」といい、子供やワサビが苦手な人のために作られる。また、逆に鉄火巻きの要領でワサビだけを巻いた寿司として「ワサビ巻き(なみだ巻き)」がある。

刻んだ地下茎を酒粕に混ぜて漬け込んだ粕漬けの一種のわさび漬けは、酒のつまみ米飯副菜となり、静岡県の名物となっている。

島根県の山間部には山葵の風味を生かした汁かけご飯の一種「うずめ飯」がある。

葉、茎、花

浄蓮の滝で撮影したわさびアイス。わさび田を背景に撮影。

ワサビのやわらかい葉や葉柄の部分も食用にされ、「葉ワサビ」とよばれている[73]。沢で栽培されるものは3 - 4月ごろが旬、畑栽培のものは一年中出回る[73]。野生ワサビの茎葉は、花の咲きはじめが旬とされ、花が咲いている株全体を採取して食用とする[74]。野生ものも一年中使えるが、特に葉と茎は花の咲く時期がやわらかい[13]

葉や葉柄にも辛味があり、さっと茹でて水にさらす、あるいは熱湯をかけて冷ましたものをおひたし和え物煮びたしにするほか、醤油漬けわさび漬け塩漬け粕漬け浅漬け酢漬けなどにしてピリッとした辛味を味わう[11][14][73]。また生のまま天ぷらにもする[14]。茎や葉を、さっと湯通しする程度に茹で、塩または出汁醤油をかけて密封容器にいれ、冷蔵庫において一夜漬けにすると、独特の香りと辛味が楽しめる[16][75]三杯酢につけたり、粕漬けにしても楽しめる[75]。また、刻んで汁の実としてもおいしく食べられる[69]。島根県西部(高津川流域)と山口県東部では、新芽の部分をその独特の食感から「ガニ芽」と称し、高級食材として活用している。

2 - 4月ごろの花芽がついた葉や花茎は、「花ワサビ」とよばれて出荷もされている[73][60]。花ワサビも葉ワサビと同様に辛味があり、さっとゆがいてお浸しにしたり、天ぷらにして食べられる[73][7]。花は刺身のつまや、料理のあしらいとしても使われる[69][14]

葉や茎は、成分・エキスを抽出したり、すり下ろして練りわさびやスナック菓子などの風味付けの原料として用いられたりする。ワサビ風味の食品には、冷菓(ソフトクリームアイスクリーム)、米菓(せんべいあられ)もある。ただし、ワサビの辛味成分は数分で揮発してしまう為、添加物を加えてそれを抑止する等の工夫をしている。

食用外でも、アリルイソチオシアネートの殺菌作用や、植物の老化を早めるエチレンガスの発生を抑制する作用を利用して、食品・野菜用の抗菌・消臭・鮮度保持剤として冷蔵庫などで使用する加工製品もある。弁当用の防腐剤防虫剤としても利用されている。また、樹脂によりワサビ成分(AITC)をマイクロカプセル化したペレットとベース剤を混合することで、揮発量と徐放性を調正可能にしたシート型防虫剤が開発されており、貨物コンテナに混載する縫製品などの梱包製品にも使用されている。台湾や日本で問題になっているヒアリへの燻蒸・殺虫実験も行われており、効果が証明されている[76] [77]

広義のワサビ

ワサビの名が付く植物

ワサビに似た辛味がある植物にワサビの名がついていることがある。ただし、必ずしもワサビと近縁ではない。

粉ワサビ・練りワサビ

加工品として、缶入りの粉ワサビ、チューブあるいはパック入りの練りわさびが存在し、現在、日本の一般家庭では生のワサビ地下茎をすりおろすよりもこちらが広く用いられるが、原材料はワサビ(本わさび)ではなく、安価な代用品としてセイヨウワサビを使用していることが多い[78][79]。 しかしながら、近年では高価な“本来のワサビ(本わさび)”も加えている商品が増えてきている。根茎は高価なため、それ以外の根や茎の部分が使用される事が多い[80][81]。チューブ入りわさびにおいては植物油、食塩、糖分、増粘剤等を添加しているものが多い。品名(名称)は、いずれも「加工わさび」であるが、日本加工わさび協会の基準においては原料わさびのうち本わさび(ワサビ)を50%未満使用している場合は「本わさび入り」、50%以上使用している場合は「本わさび使用」を表記して良いとしている[82]

サプリメント

上述の「ワサビ スルフィニル」の有用性が確認され、その成分を抽出したサプリメントが製造販売されている。

文化・俗信

脚注

出典

  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Eutrema japonicum (Miq.) Koidz. ワサビ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月14日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Wasabia japonica (Miq.) Matsum. ワサビ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月14日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Wasabia japonica (Miq.) Matsum. var. sachalinensis (Miyabe et T.Miyake) Hisauti ワサビ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月14日閲覧。
  4. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Eutrema wasabi Maxim. ワサビ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月14日閲覧。
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参考文献

関連項目

外部リンク