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|英名=Wasabi, <br>Japanese horseradish |
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== 分布・生育地 == |
== 分布・生育地 == |
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日本の特産で、[[北海道]]、[[本州]]、[[四国]]、[[九州]]に分布し{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=146}}、本来は水のきれいな深山の[[渓谷]]、渓流に自生する{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}{{sfn|大嶋敏昭監修|2002|p=438}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=171}}。野生のものは珍しく、主に[[静岡県]]や[[長野県]]の[[清流]]や涼しい[[畑]]で[[栽培]]されている{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}{{sfn|主婦と生活社編|2007|p=70}}。澄んだ水の冷涼な湿地の砂礫地、沢や水のかかる岩陰などで生育する{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=146}}{{sfn|主婦と生活社編|2007|p=70}}。 |
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== 形態・生態 == |
== 形態・生態 == |
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[[多年草]]。根茎は太い円錐形で横筋があり、細[[根]]を出す{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}{{sfn|大嶋敏昭監修|2002|p=438}}。[[根生葉]]は束になって生え、長さ10 - 20[[センチメートル]] (cm) の長い[[葉柄]]があり、[[葉身]]は径5 - 13 cmの大型で円形に近い心形で光沢があり、[[葉縁]]に不揃いな[[鋸歯]]と波状の凹凸がある{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}{{sfn|大嶋敏昭監修|2002|p=438}}{{sfn|主婦と生活社編|2007|p=70}}。 |
[[多年生]][[草本]]{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=146}}。根茎は太い円柱状もしくは円錐形で横筋があり、細[[根]]を出す{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}{{sfn|大嶋敏昭監修|2002|p=438}}{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=146}}。野生のワサビは、栽培ワサビよりも根茎が細い{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=146}}。[[根生葉]]は根茎の頂部から束になって生え、長さ10 - 20[[センチメートル]] (cm) の長い[[葉柄]]があり、[[葉身]]は径5 - 13 cmの大型で円形に近い心形で光沢があり、[[葉縁]]に不揃いな[[鋸歯]]と波状の凹凸がある{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}{{sfn|大嶋敏昭監修|2002|p=438}}{{sfn|主婦と生活社編|2007|p=70}}。 |
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花期は春(3 - 5月) |
花期は春(3 - 5月){{sfn|主婦と生活社編|2007|p=70}}。根茎の頂から長さ20 - 30 cmくらいの地上[[茎]]が立ち、柄の短い小型の葉を[[互生]]して、茎頂や上部の[[葉腋]]に、白色の十字型で花径3[[ミリメートル]] (mm) ほどの小さな4弁花を総状につける{{sfn|馬場篤|1996|p=117}}{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=146}}{{sfn|主婦と生活社編|2007|p=70}}。花は上から順に数個から十数個が開く{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=146}}。 |
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=== 地下茎(根茎) === |
=== 地下茎(根茎) === |
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[[地下茎]]をすりおろしたものは、日本料理の薬味として寿司、[[刺身]]、[[茶漬け]]、[[蕎麦]]、[[ウナギ|鰻]]の[[白焼き]]などに添えられる{{sfn|主婦の友社編|2011|p=255}}。洋食の[[ローストビーフ]]や[[スパゲッティ]]に使われることもある。また西洋料理、特に日本料理に影響を受けた近代[[フランス料理]]でソースなどに使用されることがある。牛肉とも相性が良いので[[焼肉]]に添えたり[[牛カツ]]に添える店もある。ワサビをすりおろしたことにより生じる辛味成分アリルイソチオシアネートは、強力な[[抗菌作用]]があることが知られており、刺身や寿司に使われることは食中毒予防の観点で理にかなっているといわれ、その香りによって魚の生臭みも防ぐこともできる{{sfn|主婦の友社編|2011|p=255}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=171}}。ワサビの辛味は、根茎の先の根に近い下のほうに行くほど強くなり、水分は少なく白っぽくなってくる{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=171}}。 |
[[地下茎]]をすりおろしたものは、日本料理の[[薬味]]として使い、寿司、[[刺身]]、[[茶漬け]]、[[蕎麦]]、[[ウナギ|鰻]]の[[白焼き]]などに添えられる{{sfn|主婦の友社編|2011|p=255}}。特に、魚類の生食には欠かせない食材として知られる{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=147}}。洋食の[[ローストビーフ]]や[[スパゲッティ]]に使われることもある。また西洋料理、特に日本料理に影響を受けた近代[[フランス料理]]でソースなどに使用されることがある。牛肉とも相性が良いので[[焼肉]]に添えたり[[牛カツ]]に添える店もある。ワサビをすりおろしたことにより生じる辛味成分アリルイソチオシアネートは、強力な[[抗菌作用]]があることが知られており、刺身や寿司に使われることは食中毒予防の観点で理にかなっているといわれ、その香りによって魚の生臭みも防ぐこともできる{{sfn|主婦の友社編|2011|p=255}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=171}}。ワサビの辛味は、根茎の先の根に近い下のほうに行くほど強くなり、水分は少なく白っぽくなってくる{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=171}}。 |
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すりおろす道具としては、 |
すりおろす道具としては、酵素と触れなければ辛味が出てこないため、[[細胞]]を細かく摩砕できる[[サメ]]皮おろしなどの目の細かい[[おろし器]]を用いて、ゆっくり円を描くようにしておろすろ、香りと辛味が増す{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=147}}。また、俗にワサビは金気を嫌うので金おろしを使わないという。ただし現実には、そのことによって料理店の良し悪しを言われてしまうこともあるものの、細目の金おろしを使っている和食店、寿司店も多い。 |
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ワサビの風味、特に辛味は[[揮発性]]のものが多いため、すりおろして余り時間を置くと風味を失ってしまうが、すってすぐの物も味にカドが有る。地下茎とおろし器を供して自分でするシステムを取る店やその来店客は、おろす動作の体験や、おろしたての強い香りを重視する<ref>【産地からの手紙 旬菜物語】ワサビ丼/おろしたて 香り抜群『日本農業新聞』2019年6月8日8面</ref>。 |
ワサビの風味、特に辛味は[[揮発性]]のものが多いため、すりおろして余り時間を置くと風味を失ってしまうが、すってすぐの物も味にカドが有る。地下茎とおろし器を供して自分でするシステムを取る店やその来店客は、おろす動作の体験や、おろしたての強い香りを重視する<ref>【産地からの手紙 旬菜物語】ワサビ丼/おろしたて 香り抜群『日本農業新聞』2019年6月8日8面</ref>。 |
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=== 葉、茎、花 === |
=== 葉、茎、花 === |
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{{独自研究|section=1|date=2015年3月}} |
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ワサビのやわらかい葉の部分も食用にされ、「葉ワサビ」とよばれている{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=61}}。沢で栽培されるものは3 - 4月ごろが旬、畑栽培のものは一年中出回る{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=61}}。 |
ワサビのやわらかい葉の部分も食用にされ、「葉ワサビ」とよばれている{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=61}}。沢で栽培されるものは3 - 4月ごろが旬、畑栽培のものは一年中出回る{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=61}}。野生ワサビの茎葉は、花の咲きはじめが旬とされ、花が咲いている株全体を採取して食用とする{{Sfn|高橋秀男監修|2003|pp=146–147}}。 |
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島根県西部([[高津川]]流域)と[[山口県]]東部では、新芽の部分をその独特の[[食感]]から「ガニ芽」と称し、高級食材として活用している。 |
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葉にも辛味があり、さっと茹でて水にさらし、[[お浸し]]や[[和え物]]にするほか、[[天ぷら]]、[[醤油漬け]]、[[わさび漬け]]、[[塩漬け]]などに使われる{{sfn|主婦と生活社編|2007|p=70}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=61}}。茎や葉を、さっと湯通しする程度に茹で、塩または出汁醤油をかけて密封容器にいれ、冷蔵庫において一夜漬けにすると、独特の香りと辛味が楽しめる{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=146}}。また、刻んで汁の実としてもおいしく食べられる{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=147}}。島根県西部([[高津川]]流域)と[[山口県]]東部では、新芽の部分をその独特の[[食感]]から「ガニ芽」と称し、高級食材として活用している。 |
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2 - 4月ごろの花芽がついた葉や茎は、「花ワサビ」とよばれて出荷もされている{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=61}}。花ワサビも葉ワサビと同様に辛味があり、さっとゆがいてお浸しにしたり、天ぷらにして食べられる{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=61}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=171}}。花は刺身の[[つま]]や、料理の[[つま#あしらい|あしらい]]としても使われる{{Sfn|高橋秀男監修|2003|p=147}}。 |
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葉や茎は、成分・エキスを抽出したり、すり下ろして練りわさびやスナック菓子などの風味付けの原料として用いられたりする。ワサビ風味の食品には、冷菓([[ソフトクリーム]]や[[アイスクリーム]])、米菓([[せんべい]]や[[あられ (菓子)|あられ]])もある。ただし、ワサビの辛味成分は数分で揮発してしまう為、添加物を加えてそれを抑止する等の工夫をしている。 |
葉や茎は、成分・エキスを抽出したり、すり下ろして練りわさびやスナック菓子などの風味付けの原料として用いられたりする。ワサビ風味の食品には、冷菓([[ソフトクリーム]]や[[アイスクリーム]])、米菓([[せんべい]]や[[あられ (菓子)|あられ]])もある。ただし、ワサビの辛味成分は数分で揮発してしまう為、添加物を加えてそれを抑止する等の工夫をしている。 |
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* {{Cite book|和書|author = 主婦と生活社編|title = 野山で見つける草花ガイド|date = 2007-05-01|publisher = [[主婦と生活社]]|isbn = 978-4-391-13425-4|page =70|ref=harv}} |
* {{Cite book|和書|author = 主婦と生活社編|title = 野山で見つける草花ガイド|date = 2007-05-01|publisher = [[主婦と生活社]]|isbn = 978-4-391-13425-4|page =70|ref=harv}} |
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* {{Cite book|和書|author =主婦の友社編|title = 野菜まるごと大図鑑|date=2011-02-20|publisher = [[主婦の友社]]|isbn=978-4-07-273608-1|page =255|ref=harv}} |
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* {{Cite book|和書|author=[[高橋秀男]]監修 田中つとむ・松原渓著|title=日本の山菜|publisher=[[学習研究社]]|series=フィールドベスト図鑑13|date=2003-04-01|isbn=4-05-401881-5|pages=146 - 147|ref={{SfnRef|高橋秀男監修|2003}} }} |
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* 長島善次「[https://doi.org/10.1271/nogeikagaku1924.31.7_514 わさびに関する研究(第3報)配糖体Sinigrinの分離,確認]」『日本農芸化学会誌』Vol.31 (1957年) No.7 pp.514-515 |
* 長島善次「[https://doi.org/10.1271/nogeikagaku1924.31.7_514 わさびに関する研究(第3報)配糖体Sinigrinの分離,確認]」『日本農芸化学会誌』Vol.31 (1957年) No.7 pp.514-515 |
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* {{Cite book|和書|author = 馬場篤|others = 大貫茂(写真)|title = 薬草500種-栽培から効用まで|date = 1996-09-27|publisher = [[誠文堂新光社]]|series = |isbn = 4-416-49618-4|page = 117|ref=harv}} |
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2023年5月1日 (月) 20:02時点における版
ワサビ | ||||||||||||||||||||||||
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わさび田のワサビ
(2009年8月7日撮影) | ||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Eutrema japonicum (Miq.) Koidz. (1930)[1] | ||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
ワサビ(山葵)、 カラフトワサビ[1] | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
Wasabi, Japanese horseradish |
ワサビ(山葵[6]・山萮菜[7]、学名: Eutrema japonicum)は、アブラナ科ワサビ属の植物。日本原産[8]。中国の近縁種とは、約500万年前に分化したと推定される[8]。山地の渓流や湿地で生育し、春に4弁の白い小花を咲かせる。根茎や葉は食用となり、強い刺激性のある香味を持つため薬味や調味料として使われる。加工品はセイヨウワサビのものと区別するため本わさびと呼ぶこともある。
名称
漢字で「山葵」と書く由来は諸説あり、一説には深山に生え、ゼニアオイ(銭葵)の葉に似ているからといわれている[9]。ワサビの語源については、平安時代中期の『本草和名』(918年)には、「山葵」の和名を和佐比と記している。同じく平安時代の『和名類聚抄』にも和佐比と記されている。悪(わる)・障(さわる)・疼(ひびく)の組み合わせという説があるが、詳細は不明である[10]。
本種の学名は Wasabia japonica (Miq.) Matsum. とされることが多いが、現在では Wasabia 属は独立した属とはみなされていないので、Eutrema japonicum (Miq.) Koidz. が正しい学名である[11]。
ワサビの名が付く近縁な植物としてセイヨウワサビ(ホースラディッシュ)があるが、加工品の粉ワサビやチューブ入り練りワサビなどでは、原材料にセイヨウワサビのみを使用したり、両方を使っていたりするため、日本原産のワサビを本わさびと呼び、これを使ったものを高級品として区別していることが多い。
地下茎をすり下ろしたすりわさびの事をワサビと呼ぶこともある。寿司屋の符牒になみだ、さびがある。寿司や刺身の世界的な普及に伴って、英語、フランス語、台湾語、広東語、韓国語などでそのままwasabiという発音で借用されている。
花言葉は、「実用[9]」「目覚め[9]」「嬉し涙[9]」などである。
分布・生育地
日本の特産で、北海道、本州、四国、九州に分布し[12]、本来は水のきれいな深山の渓谷、渓流に自生する[13][10][6]。野生のものは珍しく、主に静岡県や長野県の清流や涼しい畑で栽培されている[13][9]。澄んだ水の冷涼な湿地の砂礫地、沢や水のかかる岩陰などで生育する[12][9]。
形態・生態
多年生草本[12]。根茎は太い円柱状もしくは円錐形で横筋があり、細根を出す[13][10][12]。野生のワサビは、栽培ワサビよりも根茎が細い[12]。根生葉は根茎の頂部から束になって生え、長さ10 - 20センチメートル (cm) の長い葉柄があり、葉身は径5 - 13 cmの大型で円形に近い心形で光沢があり、葉縁に不揃いな鋸歯と波状の凹凸がある[13][10][9]。
花期は春(3 - 5月)[9]。根茎の頂から長さ20 - 30 cmくらいの地上茎が立ち、柄の短い小型の葉を互生して、茎頂や上部の葉腋に、白色の十字型で花径3ミリメートル (mm) ほどの小さな4弁花を総状につける[13][12][9]。花は上から順に数個から十数個が開く[12]。
-
ワサビ田(長野県 9月)
-
ワサビの蕾
-
自生ワサビ
-
自生ワサビの花
産地
日本の主要な産地は静岡県、長野県、東京都(奥多摩)、島根県、山梨県、岩手県、奈良県等である。なかでも、匹見ワサビ(島根県益田市)、安曇野ワサビ(長野県安曇野市)、有東木ワサビ(静岡市)は日本三大ワサビと呼ばれる[要出典]。このほか日本国外では台湾南部、ニュージーランド、中国雲南省、韓国江原道鉄原郡[14]などでも栽培されている。また、ワサビの産地である伊豆市や安曇野市では市の花に指定されている。
栽培
古くから食べられていたが、栽培の歴史は江戸時代の頃から本格的に行われ[6]、静岡県有東木において、江戸時代初期にこの地域に自生していたワサビを移植し、栽培を始めたのがワサビ栽培の始まりとされている。寿司の流行により急激に広まったと言われている[10]。
冷涼なところを好む性質で、栽培方法を大別すると、水栽培で渓流や湧水で育てられる通称水ワサビ(谷ワサビ、沢ワサビ)と、畑栽培で育てられる通称畑ワサビ(陸ワサビ)がある[13]。水栽培は、山間部の北斜面で、水が濁らない湧水地がよいとされる[13]。また、畑栽培は落葉樹下の夏は日陰で、冬は日が当たる場所が選ばれる[13]。増殖は、種子を莢のまま砂に埋めておいて秋に播く[13]。春に芽が揃ったら定植する[13]。
歴史
深山幽谷の清冽な渓流に沿い自生していたものが、その利便から人里近辺の清流栽培へと根分けされて広がり、日本の食文化に合う国内需要により農業生産されるに至る。
- 飛鳥時代の遺跡である飛鳥京跡苑池遺構(現・奈良県明日香村)から出土した木簡に「委佐俾三升(わさびさんしょう)」と書かれていた、これがワサビについて記された最古の史料とされる[15]。
- 718年(奈良時代)に出された賦役令(現代の法人税法施行令に相当)の中に「山葵」(わさび)の名前が見られる。土地の名産品として、既に納付され、薬用として使用されていたと考えられる。
- 1221年7月(鎌倉時代)、後堀河天皇の即位に際して、丹波国よりワサビが献上される。
- 室町時代、既に現代と同じ薬味としての利用が確立されていた。
- 江戸時代、有東木(うとうぎ、現・静岡市葵区)のワサビは駿府城で大御所政治を執っていた徳川家康に献じられ[16]、その味が絶賛された。これに加えて、ワサビの葉が徳川家家紋の「葵」に通じることから、江戸幕府の庇護を受けることとなった。一方で門外不出の扱いとなり、その栽培技術を他地区に広げることは禁じられた。寿司、蕎麦の普及につれて、広く一般に普及・浸透していった[17]。古くは自生のものを採取・利用していたが、江戸時代に有東木地区に住む村人が野生のワサビを栽培したのが、栽培普及の端緒と伝えられる。
- 延享元年(1744年)、天城湯ヶ島(現・静岡県伊豆市)で山守を務めていた板垣勘四郎は、三島代官の命によりシイタケ栽培の技術指導で有東木を訪れた。板垣はワサビの栽培を天城でも行いたいと懇願し、有東木の住民はシイタケの礼から禁を犯して板垣にワサビの苗を持たせた。この後、板垣の努力で天城でも栽培が始められることになる[18]。
- 1892年頃、原保村(現・伊豆市)の平井熊太郎が畳石式栽培を開発した[19]。
- 1900年代初め(明治の終わり頃)、丹那盆地および周囲の山々に、清水が湧き出すワサビ沢が7か所あったが、後に真下を丹那トンネルが開通して姿を消した[20]。1918年着工、1934年開通の丹那トンネルは工事中に大量の出水があり、トンネルの真上に当たる丹那盆地は、地下水が抜け、湧き水が失われた。
- 1958年頃までの日本で栽培されていた品種は、中伊豆町の農家が発見して育成した品種「だるま」が多かったが、1958年の狩野川台風により中伊豆町のわさび田が壊滅。この台風被害からの復興の際に育種苗が不足したことや高品質な味と形を求められたことなどから、和歌山県産「真妻」(マズマ)種に置き換わっていった[21]。また、栽培が盛んな県の農業試験場では、地域毎の栽培特性に合わせた独自品種を開発して県内農家向けに種苗を供給している[22][23][24]。
- 2002年から2004年にかけて日本で「火災時における臭い警報システムに関する研究」が行われ、この研究をもとにワサビの臭いを用いた聴覚障害者向け火災報知器が商品化された[25]。この商品開発に関わる研究は、2011年にイグノーベル賞(化学賞)を受賞した。
- 2012年には、イギリスのクレソンを栽培している会社が南部のドーセット州で3年前から日本の本ワサビの栽培に取り組んだ末、欧州の料理店向けに販売を開始した。これは、欧州で初めての商業ベースのワサビ栽培の事例となった。価格は100グラム30ポンド(2012年時点で約4200円)であった[26]。
- 2018年3月、国連食糧農業機関(FAO)は静岡県の伝統的ワサビ栽培を世界農業遺産に認定した[27]。
水ワサビ
水ワサビはワサビ田で栽培し、その根茎(根と茎の間の芋の部分)は生食用として利用される。このワサビ田は溪流式、地沢式、平地式、畳石式の4つの様式に分かれる[28]。畳石式とは、ワサビ田に石を下から順に大・中・小と積み上げたうえに砂利を敷き、そこに通した湧水をろ過したうえで酸素・養分を含ませ、高品質なワサビを育てる栽培法。畳石は数十年ごとに敷きなおす「畳替え」が必要で、コンクリートによる代用は食味が落ちるという[29]。
水ワサビの生育には、豊富で綺麗な水温9 - 16℃[30]の水と、砂地などの透水性が良い土壌が必要で、強い日光を嫌う。粘土質土壌や腐葉土質を嫌うため肥料等は必要なく、育成の手間も殆ど要らないが、きれいな水が大量にある場所に生育が限定されるため、栽培の難しい農作物としても知られる。なお、経験的に、20℃ 3時間以上で根の腐敗が始まるとされる[31]。一方、山間の沢や水路を利用して小規模に栽培されることもある。
種類は赤茎種と緑茎種の2種類がある。静岡県で盛んに栽培される真妻種、島根県の在来種は赤茎系とされる。キャベツと同じアブラナ科の植物であるため、時としてスジグロチョウ[32]やモンシロチョウ[33]の幼虫(青虫)に葉を食害される。また、根茎部分はヨコエビによる食害が報告されている[34][35]。
畑ワサビ
畑ワサビは栽培から収穫までを畑で行うもので、水ワサビと異なり、温度と湿度管理が整えばどこでも栽培することが可能である[28]。しかし、株分けによる栽培を続けると数年で「退化現象」と呼ばれるウイルス感染に伴う成長障害や不稔、白さび病[36][37]、うどんこ病[38]が生じ、衰退する。この退化現象を回避するため茎頂培養(成長点培養)によるウイルスフリー苗(メリクロン苗)の生産技術が1990年代には確立され、栽培農家に供給されている[39]。栽培では、日射を避けるため日よけを施した広葉樹林[40]や針葉樹林の湿り気の多い場所が多く利用される。ハウス栽培も行われる[41]。2000年代になり人工光源を使用した栽培実験も行われている[42]。
主要品種と特徴
ワサビの上品な味と香り、辛味、苦味、甘みについて、国内の交通が急激に変化した明治から大正時代にかけて研究されており、日本国内の主要産地ごと、また近年では外食チェーンで多用される中国産などでかなりの違いが認められる。多くの栽培品種があるが、「真妻」「だるま」「島根3号」が3大品種と云われ、その他の品種はこれらが育種母体として利用されていることが、DNA鑑定の結果判明した[43]。これらと野生在来種を交配選抜して栽培効率や耐病性、食味、保存性などを向上させた改良品種が数多く存在し、近年ではほとんど辛みのないものも栽培・流通している。
- 真妻(まずま)- 旧・真妻村(現・和歌山県印南町川又)が発祥地の品種。品質が優れていたため静岡県内を中心に栽培が広がった。現在、印南町の農家が発祥の地復活を目指し、一度は途絶えた生産出荷に向け取り組んでいる[44]。
- 正緑(まさみどり)- 親品種は眞妻。耐病性と大型化を改良。
- 達磨(だるま)- 大正時代末期から昭和初期にかけて静岡県において導入された半原種(神奈川県原産)の中から突然変異株として優れた系統を発見し、選抜された。1965年頃から急速に退化現象が現れ、原種に近いものはほとんどなくなり、静岡では代わりに前述の「真妻種」が主力品種となった[45]。
- ふじだるま[46]
- 島根3号(しまねさんごう)- 島根県農事試験場の野津六兵衛が、1925年以降全国各地から集めたワサビと、島根在来種との自然交配による実生を育て、さらに横木国臣の協力を得て1936年に選抜し、1942年に公表した[47]。一時日本を席巻し、京都の高級料亭ではよく使用された品種とされる[48]。
- 徳育1号 - 「島根3号」の種子から優良株の選抜を複数繰り返し、山口県が開発した[22]。
- 半原(はんばら) - 別名「丹羽山」。
- みどり - 主にわさび漬けの材料用品種。
- グリーンサム - 辛みが強いが、病気にかかりやすい。
- 岩泉1号 - 岩手県に多い品種。畑ワサビ[49]
- 静岡17
- 高井(たかい) - 長野県に多い品種。
- 長野23号 - 大きくなるが、病気にかかりやすい[23][50]。
- 三鷹大沢わさび - 東京都三鷹市大沢で少数現存し、株の老化や絶滅が危惧されている。開発で湧水が減る前の昭和初期までは商業栽培されて、神田青果市場や築地市場に出荷されていた。江戸時代後期、伊勢(現在の三重県)出身の箕輪政右衛門が豊富な湧き水に着目し、郷里の五十鈴川上流で自生していたワサビを婿入りに際して持ち込んだと伝わる。野生種や絶えた古い栽培種を受け継いでおり、近縁種との交配による復活・保全が進められている[51]。
有効成分
100 gあたりの栄養価 | |
---|---|
エネルギー | 368 kJ (88 kcal) |
18.4 g | |
食物繊維 | 4.4 g |
0.2 g | |
5.6 g | |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(0%) 1 µg(0%) 7 µg |
チアミン (B1) |
(5%) 0.06 mg |
リボフラビン (B2) |
(13%) 0.15 mg |
ナイアシン (B3) |
(4%) 0.6 mg |
パントテン酸 (B5) |
(4%) 0.20 mg |
ビタミンB6 |
(25%) 0.32 mg |
葉酸 (B9) |
(13%) 50 µg |
ビタミンC |
(90%) 75 mg |
ビタミンE |
(9%) 1.4 mg |
ビタミンK |
(47%) 49 µg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(2%) 24 mg |
カリウム |
(11%) 500 mg |
カルシウム |
(10%) 100 mg |
マグネシウム |
(13%) 46 mg |
リン |
(11%) 79 mg |
鉄分 |
(6%) 0.8 mg |
亜鉛 |
(7%) 0.7 mg |
銅 |
(2%) 0.03 mg |
セレン |
(13%) 9 µg |
他の成分 | |
水分 | 74.2 g |
水溶性食物繊維 | 0.8 g |
不溶性食物繊維 | 3.6 g |
ビオチン(B7) | 3.5 µg |
硝酸イオン | 0.1 g |
ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[53]。廃棄部位: 側根基部及び葉柄 | |
| |
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
ワサビの辛味成分は、芥子菜などアブラナ科の植物が多く含むからし油配糖体(グルコシノレート)の一種のシニグリンがすり下ろされる過程で細胞にある酵素と反応することにより生成されるアリルイソチオシアネート(6-メチルイソヘキシルイソチオシアナート、7-メチルチオヘプチルイソチオシアナート、8-メチルチオオクチルイソチオシアナート)などであり[54]、唐辛子の辛味成分であるカプサイシンとは辛味成分が全く異なる。成分は品種、栽培条件、収穫時期で変化するが[55][56]、わさびスルフィニル(wasabi sulfinyl)は国産の本わさびからワサビ特有の辛みを除いた抽出した成分6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート/6-methylsulfinylhexyl isothiocyanate (6-MSITC)を指す[57][58]。
抗菌効果があるとする報告[59]、胃がん細胞増殖抑制成分が含まれているとする報告[60]など様々な研究が発表されている。名古屋市立大学大学院医学研究科は、神経細胞の再生を促して記憶力や学習能力を改善させると発表し、1日に12.5グラムを摂取することにより脳だけでなく全身で細胞の再生が促進され、認知症予防以外にも血管拡張や骨密度強化など多彩な効果があるとしている[61]。また、中部大学応用生物学の研究チームは、ワサビの辛味成分アリルイソチオシアネートが酸化ストレスを防ぐ体内酵素を活性化させて老化や疾病を防ぐ一定の効果があるほか、抗アレルギー作用があると発表した[62]。
利用・加工法
日本原産の野菜で、根茎、茎、根、花などすべてが食用にされる[54][6]。主に辛味として使われるのは根茎で、一年中流通して特定の旬はないが、冬場の11月 - 2月を旬とする文献もあり[6]、全体に色鮮やかな淡緑色で良く締まったかたいものが良品とされる[54][6]。ワサビの葉も辛味があり、わさび漬けなどに、太い根茎は、主にすりおろして香辛料とする[13][9][6]。食欲増進、食物防腐、制菌作用があることから、生ものに添えられ[13]、刺身や寿司、蕎麦などの日本料理には欠かせない薬味として知られる[54]。根茎は薬効がある生薬として、民間では山葵根(さんきこん)と称されることもあるが、ワサビは中国にはなく、本来は「山葵」とすることは誤りである[13]。薬用としてよりも、香辛料として用いられる[13]。
地下茎(根茎)
この節には独自研究が含まれているおそれがあります。 |
地下茎をすりおろしたものは、日本料理の薬味として使い、寿司、刺身、茶漬け、蕎麦、鰻の白焼きなどに添えられる[54]。特に、魚類の生食には欠かせない食材として知られる[63]。洋食のローストビーフやスパゲッティに使われることもある。また西洋料理、特に日本料理に影響を受けた近代フランス料理でソースなどに使用されることがある。牛肉とも相性が良いので焼肉に添えたり牛カツに添える店もある。ワサビをすりおろしたことにより生じる辛味成分アリルイソチオシアネートは、強力な抗菌作用があることが知られており、刺身や寿司に使われることは食中毒予防の観点で理にかなっているといわれ、その香りによって魚の生臭みも防ぐこともできる[54][6]。ワサビの辛味は、根茎の先の根に近い下のほうに行くほど強くなり、水分は少なく白っぽくなってくる[6]。
すりおろす道具としては、酵素と触れなければ辛味が出てこないため、細胞を細かく摩砕できるサメ皮おろしなどの目の細かいおろし器を用いて、ゆっくり円を描くようにしておろすろ、香りと辛味が増す[63]。また、俗にワサビは金気を嫌うので金おろしを使わないという。ただし現実には、そのことによって料理店の良し悪しを言われてしまうこともあるものの、細目の金おろしを使っている和食店、寿司店も多い。
ワサビの風味、特に辛味は揮発性のものが多いため、すりおろして余り時間を置くと風味を失ってしまうが、すってすぐの物も味にカドが有る。地下茎とおろし器を供して自分でするシステムを取る店やその来店客は、おろす動作の体験や、おろしたての強い香りを重視する[64]。
またワサビを醤油で溶いたりしても、ほとんどが醤油に含まれるメチオノールで消臭されるため、風味を弱く感じるようになる。作家池波正太郎は著書『男の作法』の中で「刺身の上にわさびをちょっと乗せて、それにお醤油をちょっとつけて食べればいいんだ。そうしないとわさびの香りが抜けちゃう。醤油も濁って新鮮でなくなるしね」と述べている[65]。一方、北大路魯山人は著書の中で「しょうゆの中にわさびをいれてしまっては辛味はなくなる。しかししょうゆの味がよくなる」と記述している[66]。
ワサビの鼻につんとくる独特の刺激的な辛さは、一般的に子供には好まれない。そのため、寿司などにワサビを入れないものを「サビ抜き」といい、子供やワサビが苦手な人のために作られる。また、逆に鉄火巻きの要領でワサビだけを巻いた寿司として「ワサビ巻き(なみだ巻き)」がある。
刻んだ地下茎を酒粕に混ぜて漬け込んだ粕漬けの一種のわさび漬けは、酒のつまみや米飯の副菜となり、静岡県の名物となっている。
島根県の山間部には山葵の風味を生かした汁かけご飯の一種「うずめ飯」がある。
-
採取・切断して販売される地下茎
-
すりおろした状態
-
安曇野市穂高のわさび漬け(葉と茎は使わず根茎だけを使用)
葉、茎、花
この節には独自研究が含まれているおそれがあります。 |
ワサビのやわらかい葉の部分も食用にされ、「葉ワサビ」とよばれている[67]。沢で栽培されるものは3 - 4月ごろが旬、畑栽培のものは一年中出回る[67]。野生ワサビの茎葉は、花の咲きはじめが旬とされ、花が咲いている株全体を採取して食用とする[68]。
葉にも辛味があり、さっと茹でて水にさらし、お浸しや和え物にするほか、天ぷら、醤油漬け、わさび漬け、塩漬けなどに使われる[9][67]。茎や葉を、さっと湯通しする程度に茹で、塩または出汁醤油をかけて密封容器にいれ、冷蔵庫において一夜漬けにすると、独特の香りと辛味が楽しめる[12]。また、刻んで汁の実としてもおいしく食べられる[63]。島根県西部(高津川流域)と山口県東部では、新芽の部分をその独特の食感から「ガニ芽」と称し、高級食材として活用している。
2 - 4月ごろの花芽がついた葉や茎は、「花ワサビ」とよばれて出荷もされている[67]。花ワサビも葉ワサビと同様に辛味があり、さっとゆがいてお浸しにしたり、天ぷらにして食べられる[67][6]。花は刺身のつまや、料理のあしらいとしても使われる[63]。
葉や茎は、成分・エキスを抽出したり、すり下ろして練りわさびやスナック菓子などの風味付けの原料として用いられたりする。ワサビ風味の食品には、冷菓(ソフトクリームやアイスクリーム)、米菓(せんべいやあられ)もある。ただし、ワサビの辛味成分は数分で揮発してしまう為、添加物を加えてそれを抑止する等の工夫をしている。
食用外でも、アリルイソチオシアネートの殺菌作用や、植物の老化を早めるエチレンガスの発生を抑制する作用を利用して、食品・野菜用の抗菌・消臭・鮮度保持剤として冷蔵庫などで使用する製品もある。弁当用の防腐剤や米の防虫剤としても利用されている。
広義のワサビ
ワサビの名が付く植物
ワサビに似た辛味がある植物にワサビの名がついていることがある。ただし、必ずしもワサビと近縁ではない。
- セイヨウワサビ(西洋山葵)、ホースラディッシュ、ワサビダイコン(山葵大根)、山ワサビ Armoracia rusticana
- ユリワサビ(百合山葵)、イヌワサビ(犬山葵)Wasabia tenuis syn. Eutrema tenuis
- ワサビノキ(山葵の木)Moringa spp. - ワサビとは遠縁である。
粉ワサビ・練りワサビ
加工品として、缶入りの粉ワサビ、チューブあるいはパック入りの練りわさびが存在し、現在、日本の一般家庭では生のワサビ地下茎をすりおろすよりもこちらが広く用いられるが、原材料はワサビ(本わさび)ではなく、安価な代用品としてセイヨウワサビを使用していることが多い[69][70]。 しかしながら、近年では高価な“本来のワサビ(本わさび)”も加えている商品が増えてきている。根茎は高価なため、それ以外の根や茎の部分が使用される事が多い[71] [72]。[要出典]チューブ入りわさびにおいては植物油、食塩、糖分、増粘剤等を添加しているものが多い。品名(名称)は、いずれも「加工わさび」であるが、日本加工わさび協会の基準においては原料わさびのうち本わさび(ワサビ)を50%未満使用している場合は「本わさび入り」、50%以上使用している場合は「本わさび使用」を表記して良いとしている[73]。
サプリメント
上述の「ワサビ スルフィニル」の有用性が確認され、その成分を抽出したサプリメントが製造販売されている。
文化・俗信
脚注
出典
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- 山菜の栽培技術指針、ワサビの栽培 (PDF) - 愛媛県
- 栗田憲二、鈴木正、安藤愛次「ワサビの生育と作土性質について」『日本林学会誌』Vol.35 (1953年) No.1 pp.14-16, doi:10.11519/jjfs1953.35.1_14
- 大嶋敏昭監修『花色でひける山野草・高山植物』成美堂出版〈ポケット図鑑〉、2002年5月20日、438頁。ISBN 4-415-01906-4。
- 笠島一郎、平林孝之、川合真紀、内宮博文「日本ワサビのDNA多型解析」『農業および園芸』85巻・6号, pp.633-636(2010年6月)
- 主婦と生活社編『野山で見つける草花ガイド』主婦と生活社、2007年5月1日、70頁。ISBN 978-4-391-13425-4。
- 主婦の友社編『野菜まるごと大図鑑』主婦の友社、2011年2月20日、255頁。ISBN 978-4-07-273608-1。
- 高橋秀男監修 田中つとむ・松原渓著『日本の山菜』学習研究社〈フィールドベスト図鑑13〉、2003年4月1日、146 - 147頁。ISBN 4-05-401881-5。
- 長島善次「わさびに関する研究(第3報)配糖体Sinigrinの分離,確認」『日本農芸化学会誌』Vol.31 (1957年) No.7 pp.514-515
- 馬場篤『薬草500種-栽培から効用まで』大貫茂(写真)、誠文堂新光社、1996年9月27日、117頁。ISBN 4-416-49618-4。
関連項目
- ホースラディッシュ - ヨーロッパ原産の西洋ワサビ。粉ワサビにも使われる。
- 日本原産の食用栽培植物
外部リンク
- おいしいわさびの選び方から食べ方まで 金印のわさび
- Mahmood H., 藤目幸擴, 松井年行, 奥田幸延, 鈴木春雄「ワサビの形態的特徴」『京都府立大学学術報告. 人間環境学・農学』第52号、京都府立大学、2000年、39-43頁、ISSN 1343-3954。