コンテンツにスキップ

アルフレッド・バーンバウム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アルフレッド・バーンバウム (2011)

アルフレッド・バーンバウム(Alfred Birnbaum、1955年 - )は、アメリカ合衆国日本文学翻訳家、メディアアーティスト。特に村上春樹の英訳で知られる。また、アジア芸術大衆文化についての翻訳・執筆なども行っている。

経歴

[編集]

1955年にワシントンD.C.で生まれる。ユダヤ系アメリカ人である。1960年に初来日し、小学校・高校は東京で過ごした。1977年から1978年の間、文部省奨学金早稲田大学に留学する。以来、日本を拠点に、メディアアート活動を行うと共に、1980年代からは村上春樹宮部みゆき池澤夏樹などの日本文学の英訳を行っている。一時期早稲田大学で教鞭を執っていたこともあり、その他には納豆製造法の研究や、『Monkey Brain Sushi: New Tastes in Japanese Fiction』(1991年)の監修編集でも知られる。

翻訳の作風

[編集]

日本語の構造にとらわれず、英語の感性を生かした翻訳を好むとされる。村上春樹は次のように語っている。

「バーンバウムは一種のボヘミアンなんです。特に定職もなく、大学に属しているわけでもなくて、タイに行ったりミャンマーに行ったりフラフラして暮らしている。彼はある場合には自分の好きなように訳すんです。正確かどうかよりは、出来上がりのかたちを重視する。だからわりに自由自在にやって、部分的に削ったりもする、勝手に(笑)」[1]

したがって、原著者よりもバーンバウム色が前面に出てしまっているという見解も見られるが、味のある作風に対してのファンも多数存在する。

タイトル 詳細情報 日本語タイトル 備考
Hear the Wind Sing 講談社英語文庫(1987年2月) 風の歌を聴け 現在は絶版。テッド・グーセン翻訳のものが2015年に出版。
Pinball, 1973 講談社英語文庫(1985年9月) 1973年のピンボール 現在は絶版。テッド・グーセン翻訳のものが2015年に出版。
A Wild Sheep Chase 講談社インターナショナル(1989年10月) 羊をめぐる冒険
Hard-Boiled Wonderland and the End of the World 講談社インターナショナル(1991年9月) 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド
Norwegian Wood 講談社英語文庫(1989年) ノルウェイの森 現在は絶版。ジェイ・ルービン翻訳のものが2000年に出版。
Dance Dance Dance 講談社インターナショナル(1994年1月) ダンス・ダンス・ダンス

短編小説・ほか

[編集]
タイトル 詳細情報 日本語タイトル 備考
The Wind-up Bird and Tuesday's Women ザ・ニューヨーカー』1990年11月26日号[2] ねじまき鳥と火曜日の女たち 短編集『The Elephant Vanishes』に収録
The Kangaroo Communiqué[注 1] 訳し下ろし カンガルー通信 同上
The Fall of the Roman Empire, The 1881 Indian Uprising, Hitler's Invasion of Poland, And The Realm of Raging Winds The Magazine』1988年3月号 ローマ帝国の崩壊・一八八一年のインディアン蜂起・ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界 同上
Lederhosen[注 2] Granta』1992年2月号 レーダーホーゼン 同上
Barn Burning[注 3] 『The Elephant Vanishes』(クノップフ社) 納屋を焼く 同上
TV People 『ザ・ニューヨーカー』1990年9月10日号[3] TVピープル 同上
A Slow Boat to China The Threepenny Review』1993年3月1日号 中国行きのスロウ・ボート 同上
The Last Lawn of the Afternoon 訳し下ろし 午後の最後の芝生 同上
The Silence 訳し下ろし 沈黙 同上
The Folklore of Our Times[注 4] 『ザ・ニューヨーカー』2003年6月9日号[4] 我らの時代のフォークロア―高度資本主義前史
Underground: The Tokyo Gas Attack and the Japanese Psyche Vintage(2000年6月) アンダーグラウンド
約束された場所で―underground 2
フィリップ・ガブリエルと共訳

翻訳作品(その他)

[編集]
  • All She Was Worth / 1996. (宮部みゆき『火車双葉社、1992年)
  • A Burden of Flowers / Kodansha International , 2000. (池澤夏樹『花を運ぶ妹』文藝春秋、2000年)
  • The Navidad Incident : the Downfall of Matías Guili / VIZ Media LLC , 2012(池澤夏樹『マシアス・ギリの失脚』新潮社、1993年)
  • Chinese Painting. A history of the art of China / Weatherhill , 1983.(宮川寅雄責任編集『中国絵画』)
  • Yoshitoshi, the Splendid Decadent/ Kodansha International , 1985. (瀬木慎一芳年』)
  • Traditional Japanese Furniture / Kodansha International , 1986. (小泉和子『日本の伝統家具』)
  • Chanoyu : the Urasenke Tradition of Tea / Weatherhill , 1988. (千宗室編『茶の湯』)
  • Monkey Brain Sushi : New Tastes in Japanese Fiction / Kodansha International , 1991.
  • 伊藤ガビン『Techno Sculpture : ゲームセンター美術館』編訳 アスペクト 2001 ストリートデザインファイル
  • アントニオ・カッシーリ『イタリア式エログロマンガ館』都築響一共訳 アスペクト 2001 ストリートデザインファイル
  • 都築響一写真・文『賃貸宇宙』筑摩書房 2001
  • 都築響一写真・文『ラブホテル・消えゆく愛の空間学』アスペクト 2001 ストリートデザインファイル
  • 大竹伸朗,都築響一『ローカル』アスペクト 2001
  • 畠中実柴俊一編『サウンディング・スペース 9つの音響空間』柿沼敏江共訳 NTT出版 2003
  • 都築響一写真・文『珍世界紀行 ヨーロッパ編』筑摩書房 2004
  • 畠中実ほか編『ネクスト メディア・アートの新世代』NTT出版 2004
  • ローリー・アンダーソン時間の記録 : sound in the work of Laurie Anderson』畠中実,指吸保子,吉住唯,柴俊一 編 木幡和枝,ドミニク・チェン共訳 NTT出版 2005

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 「カンガルー通信」はバーンバウムよりも先にフィリップ・ガブリエルが翻訳した。ガブリエル版は『ZYZZYVA』1988年春号に掲載された。
  2. ^ バーンバウムが訳した「レーダーホーゼン」はオーディオブック『村上春樹ハイブ・リット』(アルク、2008年11月)のテキストに用いられた。
  3. ^ 「納屋を焼く」はフィリップ・ガブリエルが翻訳したものも存在する。ガブリエル版は『The New Yorker』1992年11月2日号に掲載された。
  4. ^ 「我らの時代のフォークロア―高度資本主義前史」はフィリップ・ガブリエルが翻訳したものも存在する。ガブリエル版のタイトルは「A Folklore for My Generation: A Pre-History of Late-Stage Capitalism」と言い、短編小説集『Blind Willow, Sleeping Woman』に収録された。

出典

[編集]

関連項目

[編集]