カスク・エール
カスク・エール(英語: Cask ale)またはカスク・コンディション・エール(英語: cask-conditioned ale)、カスク・コンディション・ビール(英語: cask-conditioned beer)とは、ろ過およびパスチャライゼーション(熱処理)による殺菌処理を行わないエール、ビールのこと。
概要
[編集]カスクとは大樽の意であるが、日本においてビールの容器としてよく用いられている「樽」はケグであり、これとは異なる。カスクを「木製の樽」、ケグを「金属製の樽」と説明することもある[1]。
カスクの中で二次発酵が行われるのが最大の特徴[2]。醸造所で樽詰めされたエールは店舗に運び込まれた後も発酵が進む[3]。店では飲み頃かどうかを判断して、客に提供する時期を見計らう[3]。
ケグによる提供との違いは二次発酵の有無の他にも、ケグからグラスにビールを注ぐには別途炭酸ガスのボンベが必要なのに対し、カスクからグラスにビールを注ぐ際には手動のポンプを用いる[4][2]。
カスク・エールの特徴としては、エール/ビールの風味が良くなることが挙げられる。その一方でカスク・エールには、より一層デリケートな品質管理が要求される。温度管理は無論の事、カスク内の熟成を見極める必要がある。温度管理がいい加減であったり、必要以上に放置し熟成が進み過ぎたエールの味は落ちる[4][2][3]。
リアル・エール(英語: Real ale)は、カスク・エールも含む概念であるが、より広義に瓶詰めであっても瓶内で二次発酵が行われる場合(ボトル・コンディション・エール)も含まれる[4]。
歴史
[編集]1950年代以降、バス・ブリュワリーなどイギリスの大手ビールメーカーは製品が日持ちするようにろ過と熱処理を加えたエール、ビールをケグに詰めてパブや酒場、レストランに卸すようになった。こういった樽ビール、エールをケグ・ビア、ケグ・エールと呼ぶようになる。
1970年代になるとこういった大手ビールメーカーによる画一的で大量生産されるエール、ビールに反対し、伝統的なエール、ビールを守ろうとする消費者団体CAMRAが生まれ、ケグ・ビア、ケグ・エールに対立する概念としてリアル・エールという言葉が生まれた。同様に区別する意味でカスク・エールという言葉も使われるようになった。
カスク・エールのサーブ方法
[編集]大別すると、以下のような方法でカスクからグラスやジョッキに注がれる。
- 手押しポンプ式
- 井戸水のように手押しポンプによってカスクからくみ上げる。
- パイプの途中に残留したエール、ビールの洗浄などが必要。
- グラビティ式(英語: gravity)
- カスクに差し込んだコックをひねって、そのままグラスやピッチャーで受ける。
- パイプを通さないため、雑味が付かない。
- 主に冷却のためのカバーが必要であったり、カスクを高い位置に配置する必要がある。
- トールフォント式(英語: Tall fount)
関連項目
[編集]出典
[編集]- ^ 『日本ビール検定公式テキスト 2016年6月改訂版』マイナビ出版、2016年、103頁。ISBN 9784839958428。
- ^ a b c 『ビール事典』学研パブリッシング、2014年、46頁。ISBN 9784058002674。
- ^ a b c 野田幾子 (2018年1月20日). “〝今日、ここで〟しか飲めないビールが勢ぞろい!「CASKコンディションフェスティバル」2/11、12開催”. 日本ビアジャーナリスト協会. 2018年4月4日閲覧。
- ^ a b c “What is Real Ale?”. Japan Beer Times (2010年2月7日). 2018年4月4日閲覧。