クトゥルフ神話の生物
クトゥルフ神話に登場する生物について記載する。
クトゥルフ神話の構成要素の一つが、異形の怪物たちである。邪神を崇拝することもあれば、敵対することもある。
設定上クトゥルフ神話の土地、クトゥルフ神話の星々、ドリームランド (クトゥルフ神話)にも関連する。
クトゥルフ神話関連の書籍に解説が頻出し、最初の事典であるフランシス・T・レイニーの『クトゥルー神話小辞典』(1943)2章にてすでに取り上げられている[1]。TRPGでは奉仕種族・独立種族という分類がなされており、邪神に仕えるか否かで区別される。
H・P・ラヴクラフトの異形の種族
[編集]深きものども
[編集]邪神ダゴンやクトゥルフに仕える奉仕種族。固有名詞インスマスで彼らを指すこともある。
HPL作品は『インスマスを覆う影』[2]。ジャンルはインスマス物語、クトゥルフ物語[3][4]。ダーレス神話におけるメイン悪役勢力に抜擢されている。奉仕種族の代表例であるが、作品発表順ではミリ・ニグリやチョー・チョー人よりも後発となる。
クトゥルフの落とし子
[編集]古代地球の支配種族の一つ[5]。クトゥルフの同種眷属。
古のもの
[編集]独立種族。古代地球の支配種族の一つ[5]。樽型またはウミユリ状と表現される異星人であり「地球人」である。名前が定まっていない。
HPL作品は『狂気の山脈にて』[5]。ジャンルは古のもの物語[3][4]。
ショゴス
[編集]奉仕種族。古のものに造られ、やがて逆らった。万能に変形する細胞から成る不定形生物。
HPL作品は『狂気の山脈にて』[5]。ジャンルは古のもの物語[3][4]。いわゆるスライムの元ネタ。
ユゴスよりの菌類
[編集]奉仕種族または独立種族。古代地球の支配種族の一つ。ミ=ゴの名でも知られる。外見は甲殻類のようだが生物としては菌類に近い。
HPL作品は『闇に囁くもの』[6]。ジャンルはユゴス物語[3][4]。
グール(食屍鬼)
[編集]奉仕種族または独立種族。人間が魔術などで変異する。目覚めの世界とドリームランドを往来する[7]。
HPL作品は『ピックマンのモデル』[8]など。ジャンルはグール物語[3][4]。HPL以外ではロバート・ブロックが多用した。
イースの大いなる種族
[編集]独立種族。時間を超えて他者と精神交換を行い、知識を集める。外見は知られているが仮の肉体にすぎない。
HPL作品は『時間からの影』[9]。ジャンルは大いなる種族物語。
盲目のもの
[編集]独立種族。古代地球の支配種族の一つ。「飛行するポリプ状生物」などとも呼ばれ、名前が定まっていない。大いなる種族の敵対勢力。
HPL作品は『時間からの影』[9]。ジャンルは大いなる種族物語。
イェーキュブの芋虫生物
[編集]大いなる種族の競合ライバル。登場作品は『彼方よりの挑戦』[10]。
ノフ=ケー
[編集]半獣人種または怪物。登場作品は『北極星』[11]『未知なるカダスを夢に求めて』[7]『博物館の恐怖』[12]
無名都市の爬虫類
[編集]ダーレス神話ではクトゥルフを崇める。蛇人間とも関連する。
クン=ヤン人
[編集]仮称。北米地底世界に住む。ヒトに近い。クトゥルフなどを信仰する。
ヒト
[編集]古代人と現生人類がいる。邪神を崇めたり、追う者がいる。異種族の血を引いていることがある。
ゲームではプレイヤーが探索者と呼ばれ、正気度(SAN値)というステータスが設定されている。
H・P・ラヴクラフトのドリームランドの生物
[編集]いちおうドリームランドはクトゥルフ神話内でワンジャンルをなしている[3][4]が、含めないとする異論もあり見解が分かれる。内容もドリームランドの記事と重複するため、代表数例を簡易的に記すのみとする。
クトゥルフ神話の異形の種族
[編集]クトゥルフ神話は青心社のクト全13巻だけで100作近くあり、全クリーチャーを網羅しようとするとキリがないため、代表例のみ記載する。
- ティンダロスの猟犬
- 標的の臭いを追跡し、「角度」から出現して殺戮する。
- 創造者はロングで、初登場作品は『ティンダロスの猟犬』[15]。クトゥルフ神話草創期のクリーチャーであり、HPLが取り込んでいる。
- 蛇人間
- →詳細は「ヴァルーシアの蛇人間」を参照
- 成立の経緯が複雑。ハワード系蛇人間とスミス系蛇人間がいて、さらにHPLの無名都市爬虫類も絡み、カーターが設定を盛っている。てんでバラバラであったクトゥルフ神話が統合される過程を担う。
- 大地の妖蛆
- 仮称。ハワード系蛇人間の退化亜種。創造者はハワードで、ほぼハワードの専属クリーチャー。
- ミリ・ニグリ
- 邪神チャウグナル・ファウグンに仕える奉仕種族。
- 創造者はHPLだが、アレンジして発表したのはロングの『恐怖の山』[17]。クトゥルフ神話最初[注 1]の奉仕種族である。
- 黒い仔山羊
- 邪神シュブ=ニグラスの落とし子。樹木状の体をしており、枝が触手であり、幹には巨大な口を備え、根は蹄となっており歩行する。ショゴスと呼ばれたことがある。
- 原型となったのはブロックの『無人の家で発見された手記』における怪物。
- 星の精
- 星間宇宙に住む吸血生物。嘲笑するような音を発する。姿は透明で、血を吸って染まると見えるようになる。ルドウィク・プリンが使い魔としたとされ、妖蛆の秘密に召喚方法が記されている。
- 創造者はブロックで、初登場作品は『星から訪れたもの』。名前はTRPGにおける名称。
脚注
[編集]【凡例】
- 全集:創元推理文庫『ラヴクラフト全集』、全7巻+別巻上下
- クト:青心社文庫『暗黒神話大系クトゥルー』、全13巻
- 定本:国書刊行会『定本ラヴクラフト全集』、全10巻
- 真ク:国書刊行会『真ク・リトル・リトル神話大系』、全10巻
- 新ク:国書刊行会『新編真ク・リトル・リトル神話大系』、全7巻
- 新潮:新潮文庫『クトゥルー神話傑作選』、2022年既刊3巻
- 新訳:星海社FICTIONS『新訳クトゥルー神話コレクション』、2020年既刊5巻
- 事典四:学研『クトゥルー神話事典第四版』(東雅夫編、2013年版)
注釈
[編集]- ^ ドリームランドを除外する。
出典
[編集]- ^ クト13『クトゥルー神話小辞典』フランシス・T・レイニー
- ^ 全集1/クト8/新潮1/新訳1など『インスマスを覆う影』HPL
- ^ a b c d e f g 事典四「クトゥルー神話の歴史●クトゥルー神話の誕生」、14ページ。
- ^ a b c d e f g 新紀元社『クトゥルフ神話ガイドブック』30ページ。
- ^ a b c d 全集4/新潮2など『狂気の山脈にて』HPL
- ^ 全集1/クト9など『闇に囁くもの』HPL
- ^ a b c d e f 全集6『未知なるカダスを夢に求めて』HPL
- ^ 全集4『ピックマンのモデル』HPL
- ^ a b 全集3/新潮2など『時間からの影』HPL
- ^ 真ク2&新ク2『彼方よりの挑戦』キャサリン・ルーシー・ムーア、エイブラハム・メリット、HPL、ロバート・E・ハワード、フランク・ベルナップ・ロング
- ^ 全集7/新潮3など『北極星』HPL
- ^ クト1/全集別巻下/新訳3など『博物館の恐怖』HPL
- ^ 全集3/新潮3など『無名都市』HPL
- ^ クト12『墳丘の怪』ゼリア・ビショップ(HPL代作)
- ^ クト5『ティンダロスの猟犬』フランク・ベルナップ・ロング
- ^ クト4『七つの呪い』クラーク・アシュトン・スミス
- ^ クト11『恐怖の山』フランク・ベルナップ・ロング
- ^ クト8『潜伏するもの』ダーレス&スコラー
- ^ クト2『永劫の探究』オーガスト・ダーレス
- ^ 創元推理文庫『タイタス・クロウ・サーガ1 地を穿つ魔』ブライアン・ラムレイ