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シッキム語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
シッキム語
デンジョンカ
Lhokä
話される国 シッキム州ネパールブータン
民族 ブティヤ人
話者数 70,000 (2001年)[1]
言語系統
シナ・チベット語族
  • チベット・カナウリ語派?
表記体系 チベット文字
公的地位
公用語 インドの旗 シッキム州
統制機関 統制なし
言語コード
ISO 639-3 sip
Glottolog sikk1242[2]
 
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シッキム語(シッキムご)は、シッキム・チベット語ブティヤ語デンジョンケーチベット文字འབྲས་ལྗོངས་སྐད་ワイリー方式'bras ljongs skad 「稲の谷の言葉」[3])、デンジョンカなどとも呼ばれ、南チベット諸語に属する。シッキム州ネパール北東部のブティヤ人によって話される。シッキム人は自らの言語をデンジョンケー、その土地をデンジョン(チベット文字འབྲས་ལྗོངས་ワイリー方式'bras-ljongs 「稲の谷」)と呼んでいる[1][4]

書記体系

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シッキム語は古典チベット語に由来するチベット文字で書かれるが、シッキム語の音韻や語彙は古典チベット語とははっきり異なっている。国際SILは、シッキム語の書記体系を「Bodhi style」と呼んでいる。SILによれば、2001年においてシッキム州のブティヤ人の識字率は68%であった[1][5][6]

シッキム語と周辺の言語

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シッキム語の話者はゾンカ語をある程度理解することができ、両言語の語彙の共通度は 65% である。これにくらべ、標準チベット語とは 42% しか語彙が共通しない。また、シッキム語はとなりあうヨルモ語やタマン語の影響を受けている[1][5]

シッキム語の話者は、100年以上にわたってネパール語およびチベット語話者と密に接触しているため、これらの言語を日常的に使っていることが多い[1]

音韻

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子音

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下表はシッキム語の子音で、主に Yliniemi (2005) と van Driem (1992) によった[6]

両唇音 歯音/
歯茎音
そり舌音 歯茎硬口蓋音/
硬口蓋音
軟口蓋音 声門音
鼻音 無声 [n̥]/n̥/ [ŋ̥]/ŋ̥/
有声 [m]/m/ [n]/n/ [ŋ]/ŋ/
破裂音 無声
無気
[p]/p/ [t]/t/ [ʈ] ཏྲ /ʈ/ [k]/k/ [ʔ]/ʔ/
無声
帯気
[pʰ]/pʰ/ [tʰ]/tʰ/ [ʈʰ] ཐྲ /ʈʰ/ [kʰ]/kʰ/
有声 [b]/b/ [d]/d/ [ɖ] དྲ /ɖ/ [ɡ]/ɡ/
無声化 [p̀ʱ]/pʼ/ [t̀ʱ]/tʼ/ [ʈ̀ʱ] དྲ /ʈʼ/ [k̀ʱ]/kʼ/
破擦音 無声
無気
[ts]/ts/ [tɕ]/tɕ/
無声
帯気
[tsʰ]/tsʰ/ [tɕʰ]/tɕʰ/
有声 [dz]/dz/ [dʑ]/dʑ/
無声化 [tɕ̀ʱ]/tɕʼ/
摩擦音 無声 [s]/s/ [ɕ]/ɕ/ [h]/h/
有声 [z]/z/ [ʑ]/ʑ/
流音 無声 [l̥]/l̥/ [r̥]/r̥/
有声 [l]/l/ [r]~[ɹ]~[ɾ]/r/
接近音 [w]/w/ [j]/j/

無声化子音は、弱い息もれ声を持つ帯気音で、低く発音される。無声化子音は古典チベット語の有声子音が無声化したなごりである。音韻的にはこれらを無声音として扱うことも可能である。歴史的に ny にさかのぼる子音は、/n/ または /ŋ/ に合流して、音韻としては消滅している。/n//ŋ//i, y, j/ の前でともに [ɳ] になる[6]

母音間の有声破裂音は有声摩擦音として、無声帯気音は無声摩擦音として現れる。

音節末には /m//n//ŋ//N/(鼻母音化)、/P/[p])、/K/[k] または [ʔ] に合流)、/ʔ/[ʔ])、/r//l/ があるが、/l/ は文化的な語彙に限られる。

母音

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下表に記したシッキム語の母音は、やはり主に Yliniemi (2005) による[6]

前舌 中舌 奥舌
unrounded rounded unrounded rounded
[i]  ི /i/ [y]  ུ /y/ [u]  ུ /u/
中央 [e]  ེ /e/ [ø]  ོ /ø/ [ɔ]  ོ /o/
[ɛ]  ེ /ɛ/ [ɐ] /ɐ/

母音は長短を区別する。チベット文字アブギダであり、a は記されない。上記の表においてイタリックで示した [ɛ][e]異音である可能性もある[6]

声調

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シッキム語には高低2種類の声調があり、高調はさらに高平調と高降調に分かれる。無声の閉鎖音・破擦音および /l̥//r̥//h/ で始まる音節はつねに高く、有声または無声化した阻害音および /r/ は常に低い。これを高さの違いではなく発声の違いとみなすこともできる。

関連項目

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出典

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  1. ^ a b c d e Lewis, M. Paul: “Sikkimese”. Ethnologue: Languages of the World. Dallas, Texas: SIL International (2009年). 2011年4月16日閲覧。
  2. ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Sikkimese”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History. http://glottolog.org/resource/languoid/id/sikk1242 
  3. ^ David Bradley; Eguénie J.A. Henderson; Martine Mazaudon, ed (1988). “Lost Syllables and Tone Contour in Dzongkha (Bhutan)”. Prosodic analysis and Asian linguistics: to honour R. K. Sprigg. Pacific Linguistics. C-104. pp. 115-136 
  4. ^ 河口慧海は地名を「レージョン」と記す。河口慧海『第二回チベット旅行記』講談社学術文庫、1981年、55頁。 
  5. ^ a b Norboo, S. (1995), “The Sikkimese Bhutia” (PDF), Bulletin of Tibetology (Gangtok: Namgyal Institute of Tibetology): pp. 114–115, http://himalaya.socanth.cam.ac.uk/collections/journals/bot/pdf/bot_1995_01_25.pdf 
  6. ^ a b c d e Yliniemi, Juha (2005). Preliminary Phonological Analysis of Denjongka of Sikkim (PDF) (Masters, General Linguistics thesis). University of Helsinki. 2011年4月17日閲覧

関連文献

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