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シュヴァーベンジュラにある洞窟群と氷河期の芸術

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
世界遺産 シュヴァーベンジュラにある洞窟群と
氷河期の芸術
ドイツ
フォーゲルヘルト洞窟
フォーゲルヘルト洞窟
英名 Caves and Ice Age Art in the Swabian Jura
仏名 Grottes et l’art de la période glaciaire dans le Jura souabe
面積 462.1 ha
(緩衝地帯 1,158.7 ha)
登録区分 文化遺産
登録基準 (3)
登録年 2017年
第41回世界遺産委員会
公式サイト 世界遺産センター(英語)
地図
シュヴァーベンジュラにある洞窟群と氷河期の芸術の位置(ドイツ内)
シュヴァーベンジュラにある洞窟群と氷河期の芸術
使用方法表示

シュヴァーベンジュラにある洞窟群と氷河期の芸術(シュヴァーベンジュラにあるどうくつぐんとひょうがきのげいじゅつ)は、南ドイツの6つの洞窟を対象とするUNESCO世界遺産リスト登録物件である。それらの洞窟は、最終氷期に含まれる約43000年前から33000年前の人類がシェルターに使っていた場所であり、シュヴァーベンジュラ山脈ローネタールドイツ語版とアッハタールという2つの谷にある。洞窟群の中では、女性をかたどった小像、動物(ドウクツライオンマンモス鳥類ウマウシ科魚類など)の彫像楽器、個人的な装飾具などが発見されており、小立像のなかには、半人半獣をかたどったものもある[1]オーリニャック文化に属するそれらの彫像は、明白に彫刻と認められるものとしては最古の部類に属する[2][3]。同様に、鳥の骨から作ったフルートも、楽器としては最古級と見なされている[4]。なお、登録名に「氷河期の芸術」とあるが、後述するように世界遺産の登録対象は洞窟そのものであり、出土品は含まない。

登録経緯

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この物件は2015年1月15日に世界遺産の暫定リストに記載され、2016年1月13日に世界遺産センターに正式に提出された[5]。それに対し、世界遺産委員会の諮問機関である国際記念物遺跡会議(ICOMOS) は「登録」を勧告し[6]、2017年の第41回世界遺産委員会でも勧告通りに登録された[7]

登録名

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世界遺産としての登録名はCaves and Ice Age Art in the Swabian JuraおよびGrottes et l’art de la période glaciaire dans le Jura souabeである。その日本語訳は、以下のように揺れがある。

  • シュヴァーベン・ジュラにある洞窟群と氷河期の芸術 - 世界遺産検定事務局[8]
  • シュヴァーベンジュラの洞窟群と氷河時代の芸術 - 『今がわかる時代がわかる世界地図』[9]
  • ジュヴェービッシュ・ユラの洞窟群と氷河期の芸術 - 日本ユネスコ協会連盟[10]
  • シュヴァーベンジュラ山脈の洞窟群と氷河期アート - 月刊文化財[11]プレック研究所[3]
  • シュヴェビッシェアルプの洞窟群と氷河時代の芸術 - なるほど知図帳・世界[12]

登録基準

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この世界遺産は世界遺産登録基準のうち、以下の条件を満たし、登録された(以下の基準は世界遺産センター公表の登録基準からの翻訳、引用である)。

  • (3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。

この基準は、「ヨーロッパに定住した最初の現生人類の文化」を伝えるものとしての傑出した価値が評価されたものである[7]

推薦時には創造的才能に適用される基準 (1) も提案されており、ICOMOSは確かに出土品の芸術性を認めたが、洞窟そのものには適用できないとした[3](世界遺産は不動産しか登録できない)。

構成資産

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世界遺産はアッハタール(Ach Valley, ID1527-001)とローネタール(Lone Valley, ID1527-002)という2つの渓谷を対象としている。登録範囲は前者が 271.7 ha (緩衝地帯 766.8 ha)、後者が 190.4 ha (緩衝地帯 391.9 ha)である[13]

画像 名称 所在地 概要 出土品 主な出土品の画像
Bocksteinhöhle
additional pictures
ボクシュタイン洞窟 (Bocksteinhöhle) Lone Valley 大型のハンドアックス (Bocksteinmesserとして知られる) Bocksteinmesser
Geißenklösterle
additional pictures
ガイセンクレステルレ英語版 Ach Valley オランス英語版(両手を掲げた姿勢)象牙製の半人半獣像 Orans figure
additional pictures
Hohler Fels
additional pictures
ホーレ・フェルス英語版 Ach Valley マンモスの牙製のホーレ・フェルスのヴィーナスシロエリハゲワシの骨製のフルート Venusfigur
additional pictures
Hohlenstein-Stadel
additional pictures
ホーレンシュタイン=シュターデル英語版 Lone Valley 50 m (160 ft)の長く狭い洞窟。入り口は幅8 m、高さ4 m。 マンモスの牙製のライオンマン Löwenmensch
additional pictures
Sirgensteinhöhle
additional pictures
ジルゲンシュタイン洞窟英語版 Ach Valley 洞窟の総延長は42 m (138 ft)で、高さは最高で10mある。 最奥部は天井に天然の穴が開いているので明るい。 約5,000点におよぶ燧石製の尖頭器石錐などの石器
Vogelherdhöhle
additional pictures
フォーゲルヘルト洞窟英語版 Lone Valley マンモスの牙製の動物像や、イノシシの牙製のヴィーナス小像 Wildpferd
additional pictures

保護

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構成資産の近くで風力発電の開発計画があったが、ICOMOSは不許可とするよう勧告していた。地元であるバーデン=ビュルテンベルク州は、勧告通り、建設計画を認めないと決定した[3]

脚注

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  1. ^ Caves and Ice Age Art in the Swabian Jura”. UNESCO. 18 July 2017閲覧。
  2. ^ 河合 2009, p. 93
  3. ^ a b c d プレック研究所 2018, pp. 286–287
  4. ^ 河合 2009, p. 95
  5. ^ ICOMOS 2017, p. 183
  6. ^ ICOMOS 2017, p. 190
  7. ^ a b World Heritage Centre 2017, pp. 228–229
  8. ^ 世界遺産検定事務局『くわしく学ぶ世界遺産300』第3版、2019年、p.9
  9. ^ 『今がわかる時代がわかる世界地図 2018年版』成美堂出版、2018年、p.142
  10. ^ 日本ユネスコ協会連盟 2018, p. 24
  11. ^ 鈴木地平 「第41回世界遺産委員会の概要」『月刊文化財』第651号、2017年、p.35
  12. ^ 『なるほど知図帳 世界2018』昭文社、2017年、p.109
  13. ^ Caves and Ice Age Art in the Swabian Jura – Multiple Locations(世界遺産センター、2019年9月12日)

参考文献

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  • 河合信和『人類進化99の謎』文藝春秋文春新書〉、2009年。ISBN 978-4-16-660700-6 
  • 世界遺産検定事務局『くわしく学ぶ世界遺産300』(3版)マイナビ出版、2019年。ISBN 978-4-8399-6879-3 世界遺産アカデミー監修)
  • 日本ユネスコ協会連盟『世界遺産年報2018』講談社、2018年。ISBN 978-4-06-509599-7 
  • プレック研究所第41回世界遺産委員会(2017年 ポーランド クラクフ)審議調査研究事業報告書』プレック研究所、2018年https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/sekai_isan/pdf/41_sekaiisan_shingi.pdf