国勢調査員殺害事件
国勢調査員殺害事件(こくせいちょうさいんさつがいじけん)とは、1990年(平成2年)実施の第15回国勢調査において、非常勤の国家公務員として働いていた主婦が訪問先で殺害された事件である。
総務庁国勢統計課(当時)によると、1920年(大正9年)に国勢調査が始まって以来、国勢調査員が調査訪問先で殺害された事件は初めてのことであった[1]。これに対して、国勢調査員に対する所管官庁の安全対策が不十分であるとの批判が起こり、その後の国勢調査では、国勢調査員に対してさらなる安全対策が講じられるようになった。
事件の概略
[編集]1990年10月8日に、広島県広島市安佐南区で国勢調査員として働いていた被害者(女性 当時36歳)が農道脇の竹やぶで死亡しているのが発見された。当初は外傷も無く滑落による事故死と思われていたが、司法解剖の結果、絞殺であることが判明した。翌日になり犯人の男(当時25歳)が出頭し逮捕された。供述によれば10月7日に男が家で一人でいるところに被害者が訪問したため衝動的に殺害したもので、深夜になり遺体を遺棄したというものであった。
事件の影響
[編集]被告人になった男に対し、広島地裁は1991年4月26日に懲役18年を言い渡した。判決文の中で、事件が起きた地域では女性調査員が多かったにもかかわらず、予想されるトラブルや困難についての注意や対応策がなされていなかったとして、管轄官庁が充分に配慮していれば事件を防げたのではないかと指摘されていた[2]。
このため、その後の国勢調査では、調査員の安全確保のために複数人で調査活動を行う仕組みや、マニュアルを用いた安全対策の指導、防犯ベルなどの支給などの対策が講じられている。その後は、1995年(平成7年)実施の第16回国勢調査から2015年(平成27年)実施の第20回国勢調査まで、同様の事件は発生していない。