リンパは「リンパマッサージ」など大人になってからでも聞いたことがあると思うが、組織液という言葉は、中学校以来聞かないという人が多いでしょう。どちらも体液であり人間の体内を循環している。これから体内環境や恒常性を説明しながらこの二つの違いについて医学系研究アシスタントのmimosa(ミモザ)と一緒に解説していきます。

ライター/mimosa

もともと文系出身で、独学で生物学、生化学を勉強し、現在医学系研究所の研究アシスタントとして理系の世界へ飛び込んだ。理科が苦手な方へも興味を持ってもらうべくわかりやすい説明を心掛けている。

体液と体内環境

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人類も含め地球上の生物は太古の昔、海で生まれ、長い間海の中で生活してきました。海の中で進化し、さらに海とは全く環境の異なる乾燥や温度変化の厳しい外界の環境(体外環境)へで生活圏を拡大してきました。体外環境が厳しい中でどのようにして生活圏を広げることができたか。それは、体内の一つひとつの細胞が体液という変化の少ない環境(体内環境)に包まれているからなのですよ。

体内環境

外界の環境を体外環境と言って、それに対しての体内環境と言われますよ。私たちの体内の細胞、組織、器官は直接外界に触れているわけではありません。これらが体液に浸されて守られている環境のことを体内環境と言うのですね。

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恒常性(ホメオスタシス)

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「恒常性」という言葉は聞いたことありますか?「ホメオスタシス」とも言われていますよ。体内環境である体液の濃度は外界の厳しい変化に対して変動しやすく、また体液中に排出される老廃物によっても体液の濃度が変動します。こうした変化に対して、体内環境が安定した状態に維持されていることを恒常性(ホメオスタシス)と言いますよ。 恒常性には腎臓、肝臓、循環系など多くの器官が関係します。さらに、自律神経系や内分泌系による調節も受けますよ。例えば、体温が上昇すると、たくさん汗をかいて体温が低下し、体温が上昇しすぎるのを防いでくれます。逆に体温が低下すると、鳥肌が立って毛穴が縮み、体が震えますよ。こうすることで体温を上昇させようとして、体温が低下するのを防いでいるのですね。

ヒトの体液の組成

まず、体液の意味から説明しますね。体液とは、体内の細胞と細胞の間や組織の間にある液体のことですよ。ちなみにこの記事でふれている体液に関して、細胞内の液体は含めていません。体液の種類ですが、血液、組織液、リンパ液がありますよ。血液とは、血管中を流れる体液ですよ。組織液は、毛細血管の壁から組織の細胞間にしみ出た血しょうの部分リンパ液はリンパ管中を流れる体液ですよ。

血液

血液

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血液は恒常性と深い関係をもっていますよ。血液の組成は、有形成分(赤血球、白血球、血小板)は45%液体成分(血しょう)は55%ですよ。まず、有形成分から説明しますね。赤血球は、呼吸色素ヘモグロビンを含み、酸素の運搬を行いますよ。白血球は、呼吸色素を持たず、無色で核を持つ血球で、骨髄でつくられますよ。白血球は体内に侵入した細菌などを捕食します。リンパ球は獲得免疫に関係していますよ。獲得免疫については、他の記事でふれていますので、ご参考にされてくださいね。血小板は、骨髄でつくられて、血液凝固に関わりますよ。

次に、液体成分である血しょうは、90%は水で、残り10%がタンパク質、アミノ酸、血糖、脂肪などの栄養分、無機塩類、ホルモン、ビタミン、フィブリノーゲン(血液凝固に関係)、老廃物でできていますよ。また、血しょうは熱を体全体に運びますよ。

組織液とリンパ液

組織液とリンパ液について説明していきますね。組織液は、上記で説明した通り、毛細血管の壁から組織の細胞間にしみ出た血しょうの成分ですよ。リンパ液が流れるリンパ管について、リンパ管の末梢の部分の毛細リンパ管は毛細血管と似ていますが、毛細リンパ管の方が太いですよ。さらにリンパ管の中にがありますよ。逆流しないためですね。中央に行くにつれてだんだんより大きいリンパ管と合流し、静脈と同じ方向に流れますよ。

組織液はもともと血液の成分であり、リンパ液はリンパ管を流れるもので違うとも言えますが、例外があります。組織液の大部分は、静脈側の毛細血管に吸収されて血管内にもどりますが、一部はその付近に分布している毛細リンパ管に入って、リンパ液となりますよ。

体液の循環

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体液は全身に循環しています。全身に体液を循環させて、物質の運搬などを行う器官系を循環系と言いますよ。循環系は、液を送り出すポンプである心臓と、液を送り届ける管(血管、リンパ管など)から成り立っていますよ。循環系はこれらから成り立っていますが、もうひとつポンプの役目を果たすのは、第二の心臓とも言われているふくらはぎです。下半身の血液を心臓に押し戻すためのポンプの役割をしています。その体循環が滞るとさまざまな病気が起こりますから注意が必要ですよ。以下、体液の循環が滞って発生する疾患を二つ紹介しますね。

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体液の循環と病気

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リンパ液の流れが悪くなって、手足にむくみがでるリンパ浮腫があります。ただのむくみとは違って、原因不明の先天性のものと、子宮がんや乳がん・前立腺がん等の治療や術後に、リンパ節の郭清放射線・抗がん剤治療の後遺症としてリンパシステムに障害が起こる疾患です。リンパ管が炎症を起こす、リンパ管炎もありますよ。

震災の時に話題になった「エコノミークラス症候群」。これは、肺血栓塞栓症(はいけっせんそくせんしょう)とも言われますよ。静脈の流れが悪くなると、血管内に血栓ができてとどまります。この血栓がなんらかの拍子に血管から外れて心臓まで送られると肺動脈に詰まったりしますよ。こうなると、激しい胸の痛み、呼吸困難や息切れを伴います。重症の場合は意識障害があったり、命にかかわることもあるのですよ。

体液によって守られている

ヒトの体液はからだ全体の80%近く含まれていますよ。変化の少ない体液に細胞一つひとつが浸されているから、私たちは恒常性を保つことができ、様々な外界の環境に適応できるのですね。組織液とリンパ液は由来が違いますが、組織液の一部はリンパ管へ取り込まれてリンパ液になるのですよ。血液、リンパ液、組織液などの体積が体中を巡ることで、細胞一つひとつに必要な物質が行きわたって私たちの健康が維持されるのですね。体内環境について理解を深めたら、今度は循環系について勉強してみたらさらに体内環境について理解が深まると思いますよ。

" /> 3分で簡単「組織液」と「リンパ液」の違い医学系研究アシスタントがわかりやすく解説 – Study-Z
理科環境と生物の反応生物

3分で簡単「組織液」と「リンパ液」の違い医学系研究アシスタントがわかりやすく解説

リンパは「リンパマッサージ」など大人になってからでも聞いたことがあると思うが、組織液という言葉は、中学校以来聞かないという人が多いでしょう。どちらも体液であり人間の体内を循環している。これから体内環境や恒常性を説明しながらこの二つの違いについて医学系研究アシスタントのmimosa(ミモザ)と一緒に解説していきます。

ライター/mimosa

もともと文系出身で、独学で生物学、生化学を勉強し、現在医学系研究所の研究アシスタントとして理系の世界へ飛び込んだ。理科が苦手な方へも興味を持ってもらうべくわかりやすい説明を心掛けている。

体液と体内環境

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人類も含め地球上の生物は太古の昔、海で生まれ、長い間海の中で生活してきました。海の中で進化し、さらに海とは全く環境の異なる乾燥や温度変化の厳しい外界の環境(体外環境)へで生活圏を拡大してきました。体外環境が厳しい中でどのようにして生活圏を広げることができたか。それは、体内の一つひとつの細胞が体液という変化の少ない環境(体内環境)に包まれているからなのですよ。

体内環境

外界の環境を体外環境と言って、それに対しての体内環境と言われますよ。私たちの体内の細胞、組織、器官は直接外界に触れているわけではありません。これらが体液に浸されて守られている環境のことを体内環境と言うのですね。

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