記憶に残らないのは「理解」が足りていないから。「記憶に効くノート術」は、“自問自答“が鍵になる

青い背景で、女性が腕を組み悩んでいる様子

「勉強しているのになかなか記憶に残らない」
「理解が難しく、勉強が止まってしまうことがある」

そんな風に感じることはありませんか?

最新の知見を取り入れるため、あるいはキャリアアップのために、学ぶべきことが多い社会人。学びはできるだけスムーズにすすめていきたいものです。

ひたすらテキストを読んだり、ノートに書き写したりして学習しても、それだけでは十分な理解に至らないことがあります。

これを防ぐためには、能動的に学び、深く考えることが大切。特に、自分に問いかけて答えを導く「自問自答」のプロセスを取り入れると、学習内容の定着と深い理解につながります。

本記事では、自問自答のプロセスをノート術として活用し、理解を深める方法をご紹介します。

自問自答ノート術の基本コンセプト

自問自答ノート術とは、「自分で問いかけ、自分の言葉で答える」ことがコンセプト。自分の言葉で理由を追求すると記憶に残りやすいという性質をもとにした、おすすめのノート術です。

記憶について脳神経外科医の林成之氏はこう述べます。

記憶は、理解し、思考するというプロセスを経て生まれるのです。完璧な記憶には、このプロセスが最後まで完了することが重要ですが、人に説明できるかどうかは、理解、思考、記憶の過程を追いながら確かめることになります。*1

記憶を定着させるためには、理解と思考のプロセスが必須。その理解と思考を、自分自身に問いを立てながら深めていくのが自問自答ノート術なのです。

人に教えることで学びの効果が増大することは、「プロテジェ効果」としてよく知られていますが、これは教える相手がいないとできません。そこで、自問自答の形式をとることで、いわば「ひとりプロテジェ効果」がうまれるというわけです。

デスクに置かれたノート

「何が」「なぜ」「どうして」を突き詰める

ここで、勉強の内容を思い出しながらアウトプットする「アクティブリコール」についてご説明しましょう。

アクティブリコールとは「勉強したことや覚えたいことを、能動的に思い出すこと、記憶から引き出すこと」です。*2

アクティブリコールの具体的な実践方法として参考になるのが、米国内科専門医の安川康介氏が提案する「白紙勉強法」です。「白紙勉強法」のやり方は以下のとおり。

まず、英単語のリスト、教科書の章や段落、新聞や本など、覚えたい情報を読みます。その後、その情報を見ないで、覚えたい内容を、白い紙にできるだけ書き出していきます。

その際のポイントは、元の情報を見ない、つまり記憶の手掛かりがない状態で、頑張って記憶から内容を引き出すことです。*2

記憶から内容を引き出そうとすることで、必然的に自分の言葉でアウトプットすることになります。このことが、自分の言葉で思考し、理解するためのスタートとなるのです。

それでは、「白紙勉強法」に自問自答を加えながら実践していきたいと思います。

まず用意するのは、お好みのノートとペン。

筆者が用意したノートとペン

筆者は、次のふたつを意識してノートとペンを選びました。

  • 通勤時間などに振り返れるよう、持ち運びしやすい手帳サイズの小さなノート
  • 漢字を書き間違えたときに修正しやすい、消せるタイプのボールペン

安川氏は裏紙などでもいいと述べていたので、自分の学習スタイルに合ったものを探してみてください。

次に、黒色のペンで、学んだ内容を覚えている範囲で書き出します。内容は、最近筆者が勉強を始めた中国語です。「なにが」「なぜ」「どうして」の「なにが」に当たる部分を黒色のペンで書いていきます。

筆者が記入したノート

そして緑色のペンで説明を書き足します。「なぜ」「どうして」の部分に当たります。

筆者が記入したノート

最後にテキストを見直し、忘れていたことや補足事項などを右側のページにメモします。「なぜ」「どうして」をさらに深めるイメージです。

筆者が記入したノート

実践画像はすべて筆者が作成した

このプロセスを経ることで理解を深めていきます。筆者はまだ中国語の勉強を始めたばかりですが、あいさつの表現を書き出し、「なぜこの表現なのか」と自分に問いつつ理解を深めようとしただけでも、敬語とフランクな表現の違いを認識することができました。

実践して感じたメリットや応用

自問自答ノート術を実践してみて感じたメリットは次のとおり。

  • 自分の理解度が明確になる
  • 書きながら思考の整理ができる
  • 理解しながらなので、記憶に残りやすい

また、実践していて気づいたのは、勉強範囲を細かく区切ってこまめに自問自答したほうがいいということ。振り返る範囲が広いとなかなか思い出せず、時間がかかって効率が悪いからです。

自分でテストを作って学習効果を高める

「自問自答ノート術」をさらに発展させる方法として、「自分で問題を作って答える」ことは非常に効果的です。

実際にどんな問題を自作すればいいのか迷う場合は、まず「人に説明したいテーマ」「仕事で活用したい知識」など、自分の最終的なアウトプットを意識して問いを設定してみましょう。

記憶定着アプリ「モノグサ」の開発を手がける、モノグサ株式会社代表取締役CTO 畔柳圭佑氏は、STUDY HACKERのインタビューでこのように語ります。

いかにテストをつくるかも、とても重要です。資格勉強をしている人なら問題集や模試もあるかもしれませんが、社会人にとっての勉強はそういった勉強だけに限りません。教養をつけるための読書を通じた勉強などにおいては、テストを自分でつくらないとならないのです。

テストを自分でつくるというと『手間だなあ』と感じる人もいるかもしれません。ですが、記憶を強化するにも、きちんと記憶できたかどうかを確認するにも、覚えたことを忘れないようにするにも、そして自分が使いたいかたちで記憶を使うためにもテストは非常に重要なもの。

テストをつくらなかったために記憶できない、記憶を活用できないなんて状況になってしまうことを思えば、テストをつくることのメリットはとても大きいのです。 *3

ノートに書き出した内容から自作のテストを起こしてみると、ただ知識を暗記するだけでなく「どのポイントを理解し、何をどう覚えておくべきか」がクリアになります。

まとめたノートをベースに「抜けていた部分はどこか?」「同じテーマで別の角度から問題を出すとどうか?」と振り返りながら問題を整えることで、理解の定着と抜け漏れの確認を同時に行えるのが大きな利点です。これは資格試験や語学学習はもちろん、ビジネス書を通じた教養の習得などにも応用できます。

たとえば今回の実践例であれば、次のように自分への質問をノートに書き、後日解答するイメージです。

  • 「你姓?」と聞かれたらなんと答える?
  • 目上の人に「こんにちは」と言うなら?

ほかにも、次のように自問自答を応用してみるのもいいのではないでしょうか。

  • テキストの目次を見て、「どんな内容だったか?」「これを勉強することで何ができるようになるのか?」を自分の言葉でノートに書き出す
  • テキストの太字部分を思い出しながら自分の言葉でノートに書き出し、「なぜこれがポイントなのか?」を書き出す
  • 数学など理系の勉強の場合は、間違えた問題を「なぜ間違えたのか?」「どの部分の理解が足りていないのか?」と振り返る。そのうえで、誰かに説明するつもりで、理解が不足していた部分についての説明をノートに書き出す

白紙にアウトプットした内容に対して、「なぜ?」「どうして?」と問いかける習慣をつけると、理解が加速的に深まるでしょう。

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studyhacker.net

ノートに書いている人の手元

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自問自答ノート術は、理解と思考を深めていくために有効な手段です。日々の学びを記憶に定着させるために、ぜひ本記事を参考に取り組んでみてください。

※引用の太字は編集部が施した

【ライタープロフィール】
澤田みのり

大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。

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