カスタマーレビュー

2012年11月25日に日本でレビュー済み
これほどの小説なら内容をそのまま評価するのではなく、
自分の生き方にどう影響していくのか、という視点で考えるのが良いように思います。

主題としては明治という時代に生きた日本人の、ある種の精神について
振り返ったもので、そういう意味で叙事詩といわれるのでしょう。
色々批判もありますが、司馬さんの主観で描ききったという点ですごいのだと思います。
例えば昭和時代の「これだ」という物がいまだ出てこないのですが、
近々発表される予感もありません。
またこの平成が後年語られるほどの歴史といえるのか、我々世代の責任も大と
そんなことも思ってしまいます。

さて、登場人物では3人の主人公の中では正岡子規が一番輝いていて好きでした。
何事にも情熱的でありながら、米山保三郎に出会いその志をころっと変えたり、
この正直さが面白く、後の写生にたどり着いたように感じられます。
秋山兄弟は子規の死後はやや印象が薄まり、というのも児玉、乃木、東郷といった
圧倒的存在感の前には無理は無く※仕方ないのですが。
※これは1回目に読んだときの印象で、4,5回と繰り返し読むとまた違ってきます。
 頭に入ってこない余談の部分も繰り返し読むと、別の味わいを発見できたりします。
 直近ではロシア革命の女神ブレシコブレシコフスカヤが革命ののち、亡命せざるを得なくなった
 公理の記述が新しい味わいの発見です。 

陸軍の戦いを見ると、詳しくない自分が読んでも、日本人が死力を尽くしている感が
伝わってきます。その信じられない(よく言えば)勇敢さがクロパトキンの戦術常識
をして狂わせたし、また織田信長が続けた常に大群を準備して安全に戦ったことは
江戸時代には忘れ去られ、昭和まで続いたという件はなるほどね。と思いました。
現在でも乏しい資源はアイデアでカバーするんだ、とうい風潮があり、日本人はこれが
好きです。しかし第一線で戦う人はそんなこと微塵も思っておらず、
例えばiPS細胞の山中教授もマラソンに出ることで、少しでもやりやすい環境を
整えようとがんばっているのだと思います。
そういう努力をせず、結果が良かったときだけ「アイデアでカバーした」と宣伝する
メディアの底の低さはひどい(いや日本人がそれを望み、メディア自身が煽られている)と思うのです。
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