敦賀延伸の効果で年末年始の利用が最多となった北陸新幹線。敦賀以西のルート議論が停滞している=4日、金沢駅

 ●西田昌司氏「無理だ、意味ない」
 ●杉本福井知事「誰も反対しない」

 北陸新幹線敦賀以西の延伸を巡って、福井県の杉本達治知事が年頭会見で打ち出した「小浜先行開業論」に、永田町で冷ややかな声が上がっている。米原ルートへの再考を求める国会議員はもとより、「小浜派」の与党整備委員長、西田昌司参院議員(自民、京都選出)ですら「無理だ」と否定的。京都など沿線自治体の理解を得られず、新年度着工が流れたルートを既成事実化しようという唐突な「小浜止まり」の提案に困惑が広がる。

 「小浜を先に開業させても全く意味がない」。杉本知事の会見での発言について、20日までに北國新聞社の取材に応じた西田氏は、こう言い切った。

 西田氏は本来、小浜ルートを強く推し、杉本氏と歩調を同じくしている。それでも「北陸新幹線は大阪までつないでこそ」との立場で、先行開業は論外との認識だ。

 杉本知事が「自身の初夢」として小浜先行開業論に言及したのは9日の年頭会見で、「小浜までは誰も反対する人がいない」と訴えた。これを受け、富山県の新田八朗知事は「もっともなことであり、賛成だ」と理解を示したものの、石川県の馳浩知事が「気にする必要がないとの認識だ」とするように、沿線関係者はその先のルート論議を棚上げした「我田引鉄」に眉をひそめる。

 自民党の佐々木紀衆院議員(石川2区)は「小浜に新幹線が通ればいいという馬脚を現したのではないか」と指摘。米原ルートへの変更を政府に提言した日本維新の会の馬場伸幸前代表(衆院大阪17区)は「福井の有権者へのメッセージなのだろうが、現実味がない」と断じた。

 杉本知事が小浜先行開業論を掲げた背景には、米原を推す声が日増しに強まっていることへの危機感があるとみられる。

 13日、小松市で開かれた福村章県議の新年互礼会であいさつした佐々木氏は「今年を『米原再考元年』にしなければならない」と力を込めた。ルートに関する自主研究会を主導する自民党の岡田直樹参院議員(石川選出)もこの会合で「小浜一本やりでは危ない」とあらためて懸念を示した。

 京都府内では地下水への影響やトンネル掘削に伴う残土処理などを問題視して反対運動が起き、「米原ルートが現実的」との声は少なくないという。小浜ルートでの着工には停滞感が漂うだけに、杉本知事の初夢発言について、西田氏は「『米原はあり得ない』と抗議したい思いもあるのだろう」と推し量った。

 ★小浜ルートと米原ルート 小浜ルートは敦賀から小浜市、京都市を経由して新大阪に至り、米原ルートは敦賀から米原につなぐ。2016年、与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームは北陸新幹線の敦賀以西について、小浜の採用を決めた。当時の国土交通省の試算では、小浜が事業費約2兆1千億円・工期15年、金沢-新大阪の所要時間は1時間20分、米原は事業費約5900億円・工期10年、所要時間は東海道新幹線に乗り換える想定で1時間41分。国交省は昨年8月、物価高騰を考慮した新たな試算を公表し、小浜の事業費は最大5兆3千億円、工期は最長28年に膨らむとした。

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