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abc予想が証明された!?〜日経サイエンス2013年1月号より

検証には数年,本当なら整数論の重要問題に広範な影響

 

 2012年夏,数学界はビッグニュースに沸いた。京都大学の数学者,望月新一教授が,重要な未解決問題「abc予想」を証明したとして,500ページの論文をネット上に公開したのだ。もし本当なら整数論における数々の未解決問題が解決されるだけでなく,この分野に新たな研究のツールが登場することになり,影響は極めて大きい。

 

 望月教授は屈指の整数論研究者だ。19歳でプリンストン大学数学科を卒業し,23歳でPh. D.を取得。32歳にして京都大学の教授に就任した。長年abc予想の証明に取り組んできたことは,専門家の間ではよく知られている。今回の証明も正しいのではないかとの期待が高まっている。

 

 ただし検証は長期戦になりそうだ。望月教授が証明に用いた「宇宙際タイヒミュラー理論」はまったく独自のもので,これまでほかの研究で使われたことはない。数論幾何と呼ばれるこの分野の専門家,斎藤毅東京大学教授は「論文の前文を見て感じをつかもうとしても,見慣れない単語が次々と出てきて,すぐには読めない」と話す。フェルマー予想やポアンカレ予想の証明が出た時に比べて論文を読める人が圧倒的に少なく,「世界でも数人」と専門家らはみる。評価が確定するには,2〜5年はかかる見通しだ。

 

和の関係が約数に影響

 abc予想とは何だろうか。ざっくり言うと,整数の間に和の関係が存在するとき,その約数の性質に一定の制限がかかるとの予想だ。1985年までにオステルレ(Joseph Oesterlé)とマッサー(David W. Masser)が提唱した。(続く)

 

続きは現在発売中の1月号誌面でどうぞ。

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