私はアーカイブズ学を専門とし、アーキビストとして慶應義塾大学で精神病院関連資料の分析と目録作成を行っています。 アーカイブズ学では、アーカイブズ(記録資料とそれを所蔵する館の2つの意味がありますが、ここでは記録資料を指します)とは「長く残す価値のある記録資料」のことを指し、いわゆる公文書のみに限定されるものではなく、さらに媒体も問いません。粘土板やパピルス、フィルムであれ、記録されたものであれば立派なアーカイブズです。そして資料1点1点の内容より、「資料群」の構造に着目し、資料を生み出した組織の機能や役割を分析することもアーカイブズ学の特徴です。この考え方に沿って、私がいま取り組んでいる(財)小峰研究所が所有する資料群(通称:小峰資料群)をご紹介したいと思います。 小峰資料群は「王子脳病院」「小峰病院」「小峰研究所」の3つの組織で作成された記録を主としています。王子脳病院(写真1)は190