非国民通信

ノーモア・コイズミ

選挙の結果は分からないが、その後の政治が変わらないであろうことは分かる

2024-10-13 21:07:54 | 政治・国際

 自民党総裁選を争っていた当時は早期解散に否定的な態度を示していた石破総理ですが、総裁就任後は早々に解散総選挙を表明、今月の末には投票が行われる運びとなりました。選挙期間中の主張と当選後の行動が一致しないのは石破以前にも常であり、ある意味で従来路線を継続する姿勢の現れと言えるでしょうか。なにしろ選挙前の公約を当選後に無視したところで責任を問われることはない、辞職を迫られるのは金銭や女性問題ぐらいというのが日本政治ですから。

 もっとも、今回は金銭問題の重みが違います。これまでは金銭問題の追及は特定の議員が一人で背負い込むことが多かった、それ故に辞職まで追い込まれることも普通だったわけです。ところが今回は金銭問題を抱えている議員が圧倒的に多く、結果として責任追及は皆で分散して受け止める形になっています。一人では耐えられなかった責任追及を、今回は皆で支え合って耐え凌ぐ格好になっているのが昨今の政治資金問題なのかも知れません。

 もし裏金議員が軒並み政治生命を保つことがあれば、「政策的や誤りは問われないが金銭問題には厳しい」我が国の政治文化が変わることになります。主立った野党は裏金問題への追及に余念がありませんが、政治資金問題の追及を看板に掲げる従来のスタンスが有効かどうかが今回の選挙で問われることになるとも言えそうです。そして金銭問題で与党を攻撃する路線が奏功しないようであれば、野党側はスタイルを変える必要がある、政治と金の問題ではなく政策の誤りを問う必要性が高まってきます。

 ここで問題になるのが日本では政治的な対立が少ないことです。自民党だけではなく立憲も維新も親米・緊縮のいわゆる中道右派で固まっており根本的な違いがない、方向性を同じくする政党が勢力争いを繰り広げているだけというのが実態であり、ゆえに政策論議が意味を持たない、仮に民主党が自民党から与党の座を奪ったとしても日本の政治は変わらないわけです。一応の野党第一党である立憲民主党などは尖閣国有化で中国との対立路線に大きく舵を切り消費税増税を決めた野田が返り咲きを果たす有様で、これは本当に「日本の政治は変わりません」というメッセージと言えるでしょう。

参考:各国の選挙を振り返って

 「中道」とは一つの極であり、「左」と「右」の中間ではないと以前に書きました。政治の世界において中道と呼ばれるのはネオリベ・ネオコンの先鋭化された勢力であり、決して「中庸」の立場を取る人々ではありません。そして「中道右派」もまた然りで、中道と右派の中間的な立場と誤って解釈されがちですが、実際は中道と右派の悪いところを兼ね備えた立場と理解すべきでしょう。すなわちネオリベ・ネオコンでありつつも差別主義を兼ね備えたのが中道右派である、と。

 ところがヨーロッパでは中道派の持つネオリベ・ネオコン思想と右派の「自国第一主義」が相容れないものとなり始めており、これが「極右勢力の伸張」として報じられる結果に繋がっています。つまりネオリベ路線では一部の資本家が肥えるばかりで自国民の多数派は貧しくなる、ネオコン路線ではアメリカ陣営の覇権のために自国の支出が増大する、これを右派が許容できなくなっているわけです。政治は資本家のためではなく自国民の多数派のためであるべき、アメリカの覇権のために自国が何かを負担する必要はない──そんな思想を持った「極右」が近年のヨーロッパでは台頭し始めています。

 しかるに日本では中道と右派の蜜月が続いているのが現状ではないでしょうか。中道派は右派の唱える差別主義には目をつぶる、右派はアメリカの覇権こそが日本の国益であると信じて疑わない、資本家が豊かになることが国が豊かになることだと勘違いしたままでいる、そうして中道と右派が堅く手を握り合っているのが日本政治であると言えます。もしヨーロッパのように中道と右派が分裂して争うようになれば日本の政治も変わるのかも知れませんが、今のところその兆しは皆無ですね。

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無視するか考慮するかは心がけ次第

2024-09-01 21:26:46 | 政治・国際

(しつもん!ドラえもん:5185)せんきょ編 こたえ(朝日新聞)

 白票(はくひょう)

 投票(とうひょう)をしない棄権(きけん)と違(ちが)って、投票(とうひょう)に行(い)ったうえで白紙(はくし)のまま投票(とうひょう)する。無効(むこう)にはなるけど、白票(はくひょう)で政治(せいじ)への不満(ふまん)を示(しめ)すこともあるんだ。

 

 朝日新聞がこんな記事を掲載したようで、一部界隈から憤りの声が上がっています。曰く「白票に政治への不満を示す効果なんてありません」「無効になるだけで意味ないよ」「白票がどういうプロセスで政治への不満を示すことになるのか」云々。確かに白票が何らかの拘束力を持つことはない、白票が何票あったところで行政に対する強制力を発揮するものではないわけです。ただ、その辺はデモや世論の反発と似たようなものかも知れません。デモや世間の反対を政治家は無視することが出来ますし、考慮することも出来ます。だいたいの場合は前者が選ばれるのですが、白票だって似たようなものでしょう。

 白票と共に、投票「しない」行為に対しても同様に非難の声を上げる人は少なくありません。これもまた投票率がどれだけ下がったところで議員の当落を動かすことが出来ないのは確かです。しかし、これも結局は向きあう態度次第なのでしょう。投票率の低さを憂慮して考えを改める議員もいれば、全く意に介さない議員もある、多分後者が圧倒的多数派であろうと想像できますが、それは市井からの抗議の声に対するものと同じです。ちゃんと考えた上で支持できる候補がいないならば、無投票や白票も一つの判断ではないか、と私は思います。

 白票や無投票は無意味と斥け、必ず(誰かに)投票すべきと説く人は多いです。しかし「誰に」投票すべきなのでしょうか。ここで明確に政党や候補者を挙げてくるタイプなら、賛否はさておき筋の通った振る舞いだとは感じます。しかし「誰に」投票すべきかを伏せたまま闇雲に投票を求める、白票や無投票は無意味と語るのはどうなのでしょう。では小池百合子への一票や自民党への一票は有意義なのか? 石丸伸二や維新に投票することには意味があるのか? 誰が相手でも特定の候補に投票することが大切だと説くのなら、やはり筋は通るのかも知れません。

 しかし内心では、もっと別の候補や政党に投票して欲しい、今まで投票所に足を伸ばさなかった人々が選挙に行くようになれば(自分の支持候補の)票が伸びるはずだと、そんな風に夢を見ている人も多いと感じます。本当は蓮舫に投票して欲しかった、民主党系に投票して欲しいのに、それを表に出さず一概に白票や無投票を否定しているとしたら、ちょっと陰湿な振る舞いだと思わないでもありません。公然と特定の候補を支持している人は尊重できますが、支持候補を隠しつつもそこに誘導したがるタイプの人は好きになれないな、と。

 投票率が上がれば、特に若年層が選挙に行けば、自分の支持政党に有利に働くと夢見ている人はどこの政党の支持層にも見受けられます。ただ実際のところ伸びしろの大きい若年層と、元から投票率の高い中高年層では政党の支持傾向も異なる、投票率が低いと中高年の支持が厚い立憲民主が有利になり、反対に投票率が上がると石丸伸二のようなタイプが支持を集めることになるわけです。ならば民主党系の支持者は「若年層は寝ててくれればいい」ぐらいに言っても良さそうなところ、しかし中高年に支持が偏る政党の支持者でも、とにかく投票に行くべき、白票や棄権は無意味!と語る人が絶えません。ナイーブな人が多いのでしょうね、きっと。

参考、合区によって失われたもの

 なお投票率の関連で個人的に意識してほしいものとしては、「合区」の影響を挙げたいです。これは昨年10月に行われた「徳島・高知選挙区」での話になりますけれど、高知県では40%の投票率に対して徳島では僅かに23%と惨憺たる投票率が記録されました。一応の与野党対決ではあったものの、いずれの候補も高知の方に基盤を持つ議員だったようで徳島県民からすると「他人事」に感じられたのかも知れません。今後も「一票の格差是正」と「議員定数削減」が進めば似たようなケースは増えていくことと予想されます。

 しかし合区によって「他県の政治家」しか投票の選択肢がなくなってしまった地域の有権者は、必然的に政治への関心を失っていくものです。それが23%という絶望的な投票率に繋がっているわけで、これは与野党いずれの支持者であろうとも深刻に受け止めるべきでしょう。政治への関心の低下は避けなければならない、しかし今のまま「一票の格差是正」と「議員定数削減」を進めれば当然ながら合区が増える、「地元の候補」を持たない、結果として政治参加意識の低い有権者が増えることになります。「一票の格差是正」と「議員定数削減」への批判的視野を持っているかどうか、その辺を私は厳しく問いたいですね。

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悪意のある報道

2024-08-25 21:17:04 | 政治・国際

 先般、ロシアからバルト海を経由してドイツへと続く天然ガスのパイプライン「ノルドストリーム」の爆破実行犯として、ウクライナ人の男性にドイツが逮捕状を発行したことが伝えられました。爆破当初はロシア側の犯行説もまことしやかに紙面を賑わせていたわけですが、そろそろウクライナも梯子を外されつつある状況なのでしょうか。ロシア領内で起こった諸々のテロなども結局はロシア側の主張が正しかったことが後に明らかになるのが大半で、ならば最初からロシア側の報道を引用した方が良いのではないか、と思わないでもありません。

 しかし我が国の大手メディアは軒並み誤報上等とばかりにウクライナの大本営発表を垂れ流す、アメリカ政府の見解をそのままに視聴者へと伝えてきました。結局のところ話の真偽など誰も気にしていない、「敵国」を貶める内容であれば偽情報でも構わない、というのがメディアの論理というものなのかも知れません。ロシア側の犯行であるとの事実と異なる報道を繰り広げて、それが後に誤りであったと知れたところで、そのメディアや大学教員が責任を問われたり非難に晒されたりすることはない、戦時報道とは如何なるものかを我々はリアルタイムで見せられていると言えます。

 

処理水放出後、漁続ける中国 日本産禁輸、でも近海で操業(朝日新聞)

 台湾海峡を望む中国・福建省福州の漁港。16日正午、839隻の漁船が爆竹を鳴らし、一斉に北東に進み出た。目指すはこの日、一部で漁が解禁された東シナ海だ。漁師の男性(60)は「天候次第で釣魚島(尖閣諸島の中国名)周辺まで行く」と話した。

 

 一方でこちらは福島沖への原発処理水の放出に端を発した中国の禁輸措置と、それにも拘わらず中国漁船の操業が続いていることを伝えたものです。内容自体は事実なのかも知れませんが、しかし引用元である朝日新聞は処理水を「汚染水」と呼び、それが危険なものであるかのごとく煽り続けてきた急先鋒でもあります。朝日新聞の主張通りに処理水が健康被害をもたらす汚染水であるのなら、中国政府の日本産禁輸措置にはもう少し理解を示しても良さそうなものです。

 実際には中国政府も処理水を危険視しているわけではない、だから自国の漁船が近海で操業することを禁止してはいませんし、その流通を妨げることもしていません。ただ中国の禁輸措置に先立って半導体関連など日本からの輸出制限が度重なっており、実質的にはこれの報復措置と言えます。しかし報復措置であることを明言してしまえば将来的な関係修復の妨げになりかねない、代わりに処理水の放出を口実に使った、というのが中国側の実態でしょう。

 こうした背景を踏まえれば、中国が禁輸措置を続けつつも漁獲を許していることには何ら矛盾もありません。日本産禁輸を解除して欲しければ、日本が中国に半導体製造装置を自由に売れるようにすれば済む話です。そうなれば中国側も何かしら理由を作って日本の水産物の輸入禁止を速やかに解除することでしょう。禁輸措置の本当の原因に対処すれば問題は解決する、しかし本当の原因から目を背けて、あたかも相手国に非があるように見せかけているのが今回の報道と言えそうです。

 日本が隣国の周辺海域でアメリカとの合同軍事演習を行い、その対抗措置として中国なりロシアなり北朝鮮なりが軍事演習を行う、そしてメディアは後者のみを大きく取り上げる、結果として周辺諸国が日本の平和を脅かす脅威であるかのごとく印象づける、それが日本の主流メディアにとって当たり前の振る舞いとなっています。同様に日本が隣国へ輸出制限を課し、相手国が対抗措置を執った場合もやはり大きく報道されるのは後者のみ、あたかも日本が被害者であるかのように印象づけられてきました。しかし本当のところはどうなのでしょうか?

 処理水を汚染水と呼んで危険視してきた、しかし中国が処理水を口実に禁輸措置を執ればそれを非難する、なんとも矛盾した話です。結局のところ朝日新聞としては、電力会社を悪玉にしたいときは処理水を危険なものとして扱い、隣国への敵意を煽るときは処理水を口実にした禁輸措置を理不尽なものとして描き出す、そんな風に立場を使い分けているのだと言えます。メディアとしての倫理が疑われる振る舞いですが、いかがなものでしょうか。朝日新聞は国内の右派から筋違いの非難を受けることも多いですけれど、本当に批判されるべきは別のところにあるように思います。

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看板は新しいものに変わる、中身はさておき

2024-08-18 21:35:06 | 政治・国際

 先日は岸田首相が自民党総裁選の不出馬を表明しまして、これで日本のトップも変わるわけです。総理大臣は新たな自民党総裁の手に渡るのでしょうけれど、しかし日本の政治そのものは変わるのか、という点ではあまり期待の持てないところもあります。岸田が続投を断念するに至った理由としては「政治と金」で批判を浴びているところが大きい、この問題にどう対処できるかが次の首相には問われると予測されるのですが──それで国民の生活が上向くことはあるのでしょうか。

 日本の政治家にとって、最も致命的なのがまさに「政治と金」の問題です。次は女性問題(男性問題)ぐらいで、政策的な誤りに関しては基本的にノーダメージ、それで議員の地位が危うくなったりはしないのが我が国の政治の特質と言えます。もちろん政治と金の問題は好ましくない、無視も出来ない代物には違いないのかも知れません。しかし金銭スキャンダルや派閥がなければ良い政治かと考えた場合、そこは別問題ではないでしょうか。政治資金の面でクリーンであることは政策の質を担保しない、そして重要度が高いのは後者です。

 ところが日本の主要政党だけではなく大手メディアも世論の多数派も「親米・緊縮」で方向性が一致しており、政策的な論点に乏しい、結果として相手を一方的に責め立てやすい「政治と金」の問題が最大の争点になってしまうのが実情でしょうか。このため、自民党総裁が替わろうが野党が自民党に取って代わろうが、結局のところ政策面では転換がなく単純に看板を掛け替えただけに終わってしまうわけです。それでも看板が掛け替えられることで国民の期待感だけは高まる、支持率も一時的に上昇するのですから尚更のこと政策の転換など夢のまた夢なのかも知れません。

 海の向こうでは老いの顕著なバイデンから相対的に若いハリスへと民主党候補がすげ替えられたことで、支持率が飛躍的に伸びています。バイデン政権下の目立たない副大統領が急に前面に出てきたわけですが、何が有権者の期待をこれほどまでに駆り立てているのでしょうか。民主党内の予備選を争いバイデンを蹴落として出てきた候補ならいざ知らず実質的には後継としての登場であり、対立候補は批判しても自分の属している政権は当然ながら批判できていない、転換ではなく「継続」がハリスの基本方針であることは間違いないと言えます。

 バイデンとトランプの間であれば、トランプの方が優勢とみられていました。それがハリスに変わったことで形勢は逆転してしまったわけです。ではバイデンの政治方針の悪い部分をハリスが改めようとしているのかと言うと、決してそんなことはありません。ただ単に、候補が後期高齢者から少し若い女性に変わっただけです。ことによるとアメリカの有権者も政策を理由に投票先を決める人は多くない、単に高齢者を嫌っているだけ、より若い方に投票しようとしているだけの人が一定数いるのかも知れません。しかし若くても高齢でも、害悪政治家は害悪政治家です。

 日本でも総裁選の結果として、あるいは解散総選挙の結果として少しだけ政治資金面でクリーンな新政権が誕生する可能性はあります。しかし、それで日本の政治が変わる、国民の生活が上向くかどうかは保証の対象外です。政権交代が起こってすらも、解消されるのが政治と金の問題ぐらいで政策面での転換がなければ、何の意味もないのだと断言できます。しかし政策は変わらずとも総理が替わる、閣僚が替わる、政権が(別の政党に)替わる、とにかく看板さえ掛け替えられれば一時的にでも支持率は向上してしまうのが実態です。だからこそ看板は変わっても政策は変わらない、それが日本政治となっているのかも知れません。

 取り敢えず自民党総裁候補として名前の挙がっている面々であれば誰が当選しても抜本的な好転は望めない、政権交代が起こっても野党第一党、野党第二党であればやはり政策面での本当に必要な転換は望めない、というのが私の認識です。そこは現役の政治家が考えを180°改めるか、主要政党を強制的に解散させるかでもしないとダメでしょう。そうした面では選挙なんかよりも外圧の方が期待できる、トランプが大統領に再選して日本が振り回された方が転換の契機になるのでは、ぐらいに思っていました。しかしハリスが勝って現行路線が継続されてしまうとなると、ますます以て望み薄ですね。

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I remembered Pearl Harbor

2024-08-15 21:26:32 | 政治・国際

 先日はウクライナ軍がロシアのクルスク方面へ大規模な侵攻を開始したことから、一部界隈が賑わっています。これを見て思い起こすべきは日本の真珠湾攻撃でしょうか。中国方面の戦況が思わしくない事態を打開すべくアメリカへの奇襲に打って出た日本軍は作戦当初こそ華々しい戦火を収めたわけですが、その結果は言うまでもありません。ただアメリカとすれば日本がかくも無謀な攻撃に出るとは読めていなかったようで、勝った側にも怨恨を残す戦いでもありました。

 ウクライナも日米開戦当時の日本軍と同様に思わしくない戦局を打開すべく奇襲に打って出た、ロシアはアメリカと同様に劣勢にある側が新たな戦端を開くとは予想できずと、対応が後手に回ってしまったのが現状でしょうか。ただロシア側は既にクルスク方面にも軍を移動させウクライナ軍を押し戻しつつあるほか、ウクライナ東部方面では引き続きジリジリと占領地を広げる状態が続いており、長期的に見れば太平洋戦争と同じ結果に落ち着くものと予想されます。

 

Update 242 – IAEA Director General Statement on Situation in Ukraine(IAEA)

(訳)ウクライナのザポロージェ原子力発電所(ZNPP)で、国際原子力機関(IAEA)の専門家が、夜通し複数の爆発音を聞いた後、発電所の北西エリアから濃い黒煙が出ているのを目撃した。チームは、今日、原発の冷却塔のひとつにドローンによる攻撃があったとされるとの報告を受けた。IAEAのラファエル・マリアノ・グロッシ事務局長は、原子力安全への影響はないことを確認した。

IAEAチームは、ZNPPからドローンが同発電所の冷却塔2基のうち1基を攻撃したとされるとの報告を受けたのと同時に、本日爆発音を聞いたと報告した。

 

 そして現在、クルスクとザポロージェの原子力発電所2つがウクライナ軍による攻撃を受けています。いずれもロシア及びIAEAの伝えるところではドローンによる攻撃とされている一方、国内メディアは全く別の内容を記しているわけです。

 

ザポロジエ原発で火災 ロシア放火の情報とウクライナ(共同通信)

 【キーウ共同】ウクライナのゼレンスキー大統領は11日、ロシアが占拠するウクライナ南部ザポロジエ原発の敷地内で、ロシア軍が火災を起こしたと通信アプリに投稿した。放射線量は正常だとしている。原発の対岸に位置するニコポリの当局者によると、冷却塔で大量のタイヤに放火したとの情報があるという。

 

 こちらはウクライナの元大統領であるゼレンスキーの妄言をそのまま掲載したもので、何ら根拠のない情報が前面に押し出されています。ウクライナの先勝報告然り、軍部の「こうあって欲しい」という妄想をそのままマスコミが広報しているわけで、典型的な「大本営発表」ですね。時に「事件記者ではなく警察記者」みたいな批判もあって、つまり事件そのものを取材するのではなく警察を取材して警察発表を紙面に載せるだけの報道機関が目立つところですが、今回のウクライナを舞台にしたロシアとNATOの戦争も同様、実態ではなく大本営の発表を伝えることに満足しているメディアが主流派を構成していると言えます。

 このザポロージェ原発に関しては「ロシアが占領している」という点では日米欧のメディアも一致しているにも関わらず、「誰が攻撃しているか不明」みたいな扱いを長らくされてきました。ロシアが確保している拠点に攻撃をかけるのはNATOの傀儡勢力以外にあり得ないのですが、西側の主立ったメディアは軒並みロシアによる自演説を何の根拠もなく主張してきたわけです。どうにもロシアを貶める内容でありさえすれば真偽や根拠は問わない、というのが報道の基本姿勢になっているようで、真実を伝えることを放棄してプロパガンダ機関に徹するメディアの姿勢には疑問を感じないでもありません。

 今以上に日本が主体的に関与する──つまりは他国に日本の軍隊を送り込むような戦争が起こったときも、メディアは同じことをするであろうと私は確信しています。大本営発表をそのままに、「敵」を貶めるべく創作ニュースが垂れ流されているのは80年前も今も全く変わっていません。日本軍もウクライナ軍も報道上では華々しい戦果を上げ続けていましたが、それは真実ではないわけです。そして過去と現在において繰り返されていることは、当然ながら未来においても繰り返されることでしょう。

 外国の政府高官も加担したクーデターで大統領が追放されたとき、西側諸国はウクライナを咎めませんでした。反体制派への武力攻撃も少数派住民への弾圧も停戦合意違反も、ウクライナに関しては問題視されてきませんでした。野党の活動が禁止されゼレンスキーに批判的な政治家が身柄を拘束されたときも、ウクライナの政治体制を批判する声は上がりませんでした。そして任期が切れた後も権力の座に居座るゼレンスキーを未だに大統領扱いしているわけです。

 たぶんウクライナ軍の攻撃で重大な原発事故が発生してもウクライナ側は許される、全てはロシア側の問題にされることでしょう。それを理解しているからことウクライナは躊躇なく原発への攻撃を繰り返していると言えます。しかし、このような状態において真に平和への脅威となっているのは実際にはどちらなのか、首を傾げずにはいられません。決して欧米諸国から咎められないことを知っているからこそイスラエルは民間人を犠牲にすることに躊躇がないように、ウクライナもまた同じことを続けるでしょう。

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何を反省するべきか

2024-08-11 21:20:56 | 政治・国際

 広島と長崎での平和祈念式典が終わりました。原爆投下が戦争終結を早めたとの主張もアメリカ側にはあるわけですが、史実はどうだったのでしょう。原爆投下後も軍部は徹底抗戦の構えであり、日本に降伏を決意させたのはソ連の参戦ではないかという気もします。このソ連の参戦だってアメリカがヤルタ会談で要請して決まったもので、揚陸作戦のための訓練や装備もアメリカが提供していたこと(プロジェクト・フラ)を鑑みれば、結局はアメリカの戦略として誇られても良さそうです。しかるに対日参戦があたかもソ連の判断であるかのように誤って伝えられてきた、その結果として原爆投下と終戦を関連付けて考える発想を許してきたところもあるかも知れません。

 広島では予定通りロシアとベラルーシを排除、イスラエルやアメリカを招いて式典が開催されました。広島市長もまたロシアとウクライナの関係については「侵攻」と決めつける一方で、イスラエルとパレスチナについては「情勢の悪化」と誤魔化すなど、これまた特定の陣営に偏った主張を繰り返すに終始し、我が国における「平和」の位置づけを窺わせるものであったと言えます。ロシアのザハロワ報道官は岸田首相の演説を評して「日本当局の公式見解によれば、これらはアメリカの原爆投下ではなく、単に空から爆弾が降ってきただけ」と語りましたが、結局のところ我が国の政治にとって基準となるのは「アメリカの敵か、味方か」であり、「同志国」であるイスラエル非難などあり得ないのでしょう。

 

主要6カ国とEU、長崎市に書簡「イスラエル除外なら高官参加困難」(朝日新聞)

 米英など主要6カ国と欧州連合(EU)の駐日大使らが、9日に平和祈念式典を開く長崎市に対し、イスラエルを招待国から除外したら「我々もハイレベル(高官)の参加が難しくなる」との書簡を7月中旬に送っていたことが7日、明らかになった。同日までに長崎市からイスラエルへの招待がなかったことから、米英の駐日大使は式典への出席見合わせを決めた。

 長崎市と米英など主要国などが、式典の約20日前からイスラエルへの式典招待をめぐって意見が食い違い、政治問題化していた実態が明らかになった。

 書簡は7月19日付。主要7カ国(G7)のうち、日本を除く米、英、仏、カナダ、ドイツ、イタリアとEUの大使や代理大使が直筆のサイン付きで、長崎市の鈴木史朗市長あてに送付した。

 

政府、核軍縮への影響懸念 G7大使の長崎式典欠席―原爆忌(時事通信)

 与党幹部によると、政府は長崎市がイスラエルを式典に招待しないことを決め、各国大使らが反発していることが分かると、外交問題に発展する事態を懸念。鈴木史朗市長と関係のある現職閣僚や元参院議員を通じて水面下で翻意を促したが、市の方針は変わらなかった。

 

 一方の長崎では、イスラエルが招待されなかったことに反発したG7各国が不参加を表明、この状況に対して日本政府までもが長崎市に圧力をかけていたことも伝えられているのですが、いかがなものでしょうか。確かにイスラエルはアメリカの同志として「許される」側の国であり、アメリカに敵視された「許されない」国とは同列に語られるものではないのかも知れません。イスラエルを招待しなかった理由はあくまで式典の円滑実施のためとされており、市長演説もまたイスラエルを名指しすることを避ける日和った代物でした。それでもなお、アメリカと同じ陣営にいる国は常に歓迎されなければならない、それが「主要国」を自称する排他的仲良しグループの決まり事だったようです。

・・・・・

 先日はバングラデシュで大規模な暴動が発生、政権が転覆されるに至りました。選挙によらない政権交代は世界各国で起こっていますけれど、このバングラデシュの暴力革命はどのように評価されるのか興味深いところです。これも最終的に樹立された新政権が「アメリカ寄りか否か」で欧米からの扱いが決まってしまう、典型的なのがウクライナで、アメリカの国務次官補も加わった暴徒によるクーデター政権は何の議論もなく「国際社会」の承認を得ました。一方でアメリカの意向に従わないアフガニスタンやミャンマーの新政権は一貫してネガティブに扱われています。ただ「アメリカ陣営にとって良いか悪いか」ではなく、その国で暮らす人々にとってどうなのか、という観点で考えてみることも必要ではないでしょうかね。

 岸田文雄は、アメリカにとって理想的な政治家であると言えます。バイデンの望むままに軍事予算を増大させ、中国やロシア周辺での軍事演習にも積極的で、アメリカの尖兵として周辺国との敵対関係の構築に余念がありません。内政面でも勤労から投資への税制優遇措置で日本人による外国株購入を強く促し、アメリカの景気を下支えしてもいるわけです。しかしアメリカから見れば非の打ち所のない政治家であっても、自国民から見ればどうなのでしょう。岸田は日本人にとって良い政治家ですか?

 欧米では、アメリカ陣営の利害と自国の利害を分けて考える人々が増えており、それが中道と右派に分化している、左右の対立ではなく右と左と中道に三極化している様相が窺えます。アメリカ陣営の利益になるとしても、それが自国の負担増に繋がるのであればお断り──と、自国中心主義を唱える新しい右派が勢力を増しているわけです。残念ながら日本はアメリカの利益と日本の利益を分けて考えることが出来ず、ただただアメリカに付き従うばかりの国政運営が続いている状態と言えますが、この誤りに気づく日はいつか訪れるのでしょうか。

 原爆投下の日に続いて、今週は「終戦の日」が訪れます。しかし日本の対外戦争は複数あり、それぞれ終戦を迎えた日は異なるわけです。日清戦争にも日露戦争にも、シベリア出兵にもイラク侵略にも、それぞれ終戦を迎えた日があります。日本が出兵した戦争が終わった日が数多ある中で、どうして8月15日だけが「終戦の日」なのでしょうか。本当に戦争そのものを反省しているのであれば、他の戦争の終わった日だって顧みられてしかるべきです。「過ちは繰返しませぬから」と語られるとき、そこで想起されているのは何なのか、他の戦争を忘れて特定の戦争だけを反省しているとしたら、それは「二度とアメリカには刃向かいません」という誓いと何が違うのか、問われるべきものがあるように思います。

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偏向ここに極まれり

2024-08-04 21:15:50 | 政治・国際

(百年 未来への歴史)序章・瀬戸際の時代 よみがえる「戦間期」の悪夢(朝日新聞)

 

 上記のような図が新聞の1面に掲載されていたのですが、いかがなものでしょう。第2次大戦の図は枢軸国をピックアップしたものとして間違いではないのかも知れませんけれど、後段の現代を表したとされるものは強い作為を感じさせます。特におかしいのが中東地域の図で、具体的な国名としてはイランが名指しされているのですが、しかしイランがどこかの国に派兵を行ったなどの事実はなく、名前を挙げられた4つの国に共通点を探すとすれば結局のところ「アメリカから敵視されている」ぐらいしか言いようがありません。せっかくなら南北アメリカ大陸も地図に加えてベネズエラの国旗も掲揚したら、より主張が伝わったような気がしますね。

 国のチョイスもおかしいのですが、地域ごとに付け加えられた説明もおかしい、欧州やアジアに比べて中東の説明だけが不釣り合いに長いのですが、曰く「イスラム組織ハマスの奇襲を受け~」とのこと。これではパレスチナ側が先制攻撃を仕掛けた結果としてイスラエルが正当防衛を行っているかのような誤解を読者に与えてしまいます。朝日新聞としてはそれが本望なのかも知れませんけれど、事実関係の説明としてはいかがなものでしょうか?

 確かにハマスによる反転攻勢はあった、しかしこれに先立つイスラエル建国以来の絶えざる侵略については触れられていません。何事も全てを始まりから記載するのは難しいとはいえ、これでは紛争の原因がハマスにあるかのようなミスリードと言わざるを得ないでしょう。もちろんこのミスリードも意図遭ってのことのようにも思えます。ウクライナであれば、まずクーデターがあり、その後に国内の少数派住民に対する武力攻撃があった、これが解決されずロシアによる介入が始まったわけです。中東ではハマスの反転攻勢から触れることでイスラエルを免責し、欧州ではウクライナの内戦を無視することでロシアを悪玉に仕立て上げる、まさに西側陣営のプロパガンダそのものの図と言えます。

 立ち位置で言えば、ガザ=ドンバス、イスラエル=ウクライナであり、昨今の紛争におけるロシアに相当する国は現在のところありません。確かにイスラエルに抗している勢力の後ろ盾としてイランが存在することは否定できないものの、それでもイラン本国は日和見主義的な立場を維持しており、戦局はイスラエル優位が続いています。やはりイランがロシアのように直接的な軍事介入を始めれば、ガザの窮地は救われる可能性が高い、それは上策ではなくとも大義のあることなのですが──「国際社会」を自称する欧米諸国からの非難に晒されるのは、イランであることがあらかじめ決められているのでしょう。

・・・・・

 今週は広島の平和記念式典が行われるわけですが、前年と同様にロシアは排除、アメリカやイスラエルは招待を継続、パレスチナ代表も当然ながら招待せずと、広島市の立場は鮮明です。日本にとっての核廃絶とはアメリカ陣営による核の独占であり、平和とはアメリカによる天下統一である、アメリカの覇権を脅かす存在こそが平和にとっての脅威であると、そう解釈すれば日本国内で平和を唱える人々の行動にも一貫性がないわけではないことが分かります。シオニストが平和を訴えるとき、それはパレスチナ人の絶滅政策を意味しているように、平和の基準が正しいのかどうかは常に顧みられてしかるべきでしょう。

 

PAC3、米に売却契約 ライセンス完成品で初―防衛省(時事通信)

 防衛省は28日、航空自衛隊が保有する地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を米軍に約30億円で売却する契約を締結したと発表した。弾数や引き渡し時期は非公表。昨年12月に防衛装備移転三原則の運用指針を緩和した後、国内製造する外国ライセンスの防衛装備完成品の移転は初めて。

 

 先月には日本国内製造の兵器をアメリカ軍に売却すると発表されました。「日本製」の兵器はアメリカ軍が使用するとの触れ込みですが、この分で余剰が出来るであろうアメリカ製の兵器はイスラエルやウクライナに送られるわけです。どう小細工を弄したところで、結局はパレスチナ人の虐殺へ日本も間接的に加担することになったと言えます。日本が「平和」を口にするとき、その意味するところはアメリカが世界を牛耳っていることです。「アメリカの敵」がどのような攻撃に晒されていようと、それは平和のためと言うことになるのでしょう。

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 先に行われたベネズエラの大統領選挙では、西側メディア発表の世論調査結果を覆してマドゥロ大統領の再選が発表されました。4年前にトランプが選挙結果に異議を唱えたように、その公正性について疑問を投げかける権利はヨソの国にもあるのかも知れません。しかし西側メディアによる世論調査結果を根拠に、対立候補が本当の勝者であると認定し始める国もあるわけです。国外メディアによる世論調査結果で一方の候補が当選者として認定されるとしたら、それこそ民主主義とは何だろうと考えさせられるところもあります。そしてウクライナでは大統領の任期の切れたゼレンスキーが今なお権力の座に居座り、西側諸国から国家元首扱いされている有様で、どうにも選挙すら実は正統性の根拠にならない、要はアメリカの敵か味方かに収束してしまうのだと言わざるを得ません。

 このウクライナのクーデター政権がドンバス地域の少数派住民への武力攻撃を開始してから、ロシアが直接介入に踏み切るまでは8年の歳月を要しました。それを思えば、イランがガザのために決起するにはまだまだ時間を要するのかも知れません。ロシアがそうであったように外交的努力を積み重ねた結果、どれだけの年月をかけても解決の見込みはない、かくなる上は軍事力による対抗しかないとイランが判断する時期が訪れたとしても、決して驚くことではないでしょう。そうなったときに日本ではイランへの非難が吹き荒れるであろうことは想像に難くありません。しかし本質的な悪はイスラエルの増長を助けてきた欧米にあってイランは大義のある行動をしているのだ、と私はあらかじめ態度を表明しておきます。

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似たような制度でも、陣営が違えば扱いも違う

2024-07-21 21:20:04 | 政治・国際

西側がそれでグルジアを批判した「外国の代理人」法案をカナダが可決(スプートニク)

カナダは、米国の外国代理人登録法(FARA)よりも厳格な法案をわずか1か月半で可決した。これにロシア外務省のザハロワ報道官が注目し、トルドー政権の指示で急いで提出された文書に一部の議員が目を通していなかったのを認めたことに言及した。ザハロワ氏は、これほど重要な法制度の改正としては前例のない速さだと指摘した。

法案には以下の提案が含まれている:
・外国代理人登録リストの作成
・大使館職員の制限
・外国の影響を管理する機構の設置

 

 この法案については当然のことながら公にされているのですが(参考)、日本語で読めるメディアで報じているのはロシアのスプートニクと、法輪功の大紀元ぐらいしか見つけられませんでした(参考)。まぁ大紀元は中国におけるウイグル弾圧の情報源として西側諸国では大いに信頼されている、ということは伝えておくべきでしょうか。

 本年の5月には州じゃない方のジョージアにて、同様の外国代理人登録に関する法律が可決されました。これは日本国内の大手メディアでも頻繁に報道され「ロシアの法律」「民主主義の後退」などとレッテルを貼られてきたわけです。事実関係としてはザハロワ報道官も正しく指摘するとおり、アメリカには先駆者として既に同様の法律があります(参考)。アメリカの州にあやかって国名を改称するような国がアメリカの法律を模倣しただけなのに、西側諸国のメディアは挙って事実をねじ曲げて報道してきた、この偏向ぶりは強く意識されるべきでしょう

 

政府が「メタ情報」を平時監視へ 能動的サイバー防御巡り検討(共同通信)

 政府はサイバー攻撃に先手を打って被害を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」を巡り、インターネットの住所に当たるIPアドレスや通信量の変化などの付随的な「メタ情報」について、政府機関による監視を平時から可能とする方向で検討に入った。プライバシーに配慮し、メールの件名や本文のようなデータ本体は原則、収集の対象外とする。複数の政府関係者が14日明らかにした。

 

 この辺も一応は報道されているわけですが、あまり話題にはなっていないように思われます。曰く国内のデータ通信を政府機関によって監視する、データ本体は「原則」収集の対象外とするとのこと、「原則」とは具体的に何を例外とするのでしょうかね? よく西側諸国が中国やロシアの企業との取引を抑制する口実として、データが相手国の政府に渡される云々と吹聴されていますけれど、では日本やアメリカ、イスラエルなどの同志国であれば違うのか、という疑問は尽きません。少なくとも上記の検討事項が通れば、日本政府によって通信の秘密が侵されることになる、日本国内でのビジネスは中国やロシアにおけるものと同様にリスクがあると言えます。

 結局のところ、どこの国も根本的な制度は似たようなものです。アメリカにもロシアにも、州じゃない方のジョージアにもカナダにも外国の代理人を監視する制度はありますし、中国にも日本にも民間の活動情報を政府が監視・収集する取り組みはある、制度面ではどこの国も大差ないと言うことができます。違うのは制度ではなく「陣営」に過ぎない、アメリカの傘下にある国を信頼できると見なし、アメリカの意向に従わない国を危険と見なしている、ただそれだけのことです。

 

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 先般はトランプ大統領候補が演説中に銃撃される事件が起きました。そしてお決まりの「テロは許されない」「民主主義への脅威」等といった非難が国内報道にも並んだわけです。しかし2014年に武装勢力が議会を包囲して大統領を追放したウクライナを巡っての言説はどうだったでしょうか? 結果として親米政権が樹立された場合、その暴力革命は「マイダン革命」や「アラブの春」などと呼ばれ西側諸国から賞賛されてきました。一方でアメリカの意向に沿わない政権が樹立された場合はクーデターとして非難される等々、結局は武力による現状変更もまた「陣営」次第で賛否が分かれると言えます。

 暴力革命と聞くと一概に否定する人が圧倒的多数を占めているはずですが、しかし現実にウクライナで暴力革命が発生した際にこれを非難した人は極めて稀でした。結局のところ、制度や行為そのものは問題ではない、単純にアメリカ側に属しているかどうかで評価している、そんな人々が西側諸国で主流派を構成しています。日本は専ら差別する側に立っているからこそ、この歪さには全く気づかないのが現状かも知れません。しかし差別される側、不公正に取り扱われてきた側にとって驕れるアメリカとその衛星国の言動は白々しいものにしか映っていないことでしょう。

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各国の選挙を振り返って

2024-07-14 21:27:50 | 政治・国際

 先日の東京都知事選ですが、投票率は60%超で平成では過去2番目の高水準だったそうです。2012年の都知事選には及ばなかったものの、このときは石原慎太郎が職を辞しての争いだったのに対し、今回は圧倒的優位にある現職がそのまま立候補しています。それでも冷めた選挙にならなかったのは、大幅に増えた泡沫候補達の影響もあるでしょうか。中には悪ふざけとの誹りを受けても仕方のない候補者もいましたけれど、そうしたネタ候補もまた選挙への関心を高める上では役に立っていたのかも知れません。

 投票率が上がるのは一般的に良いこととされますが、この結果として割を食ったのが蓮舫で、当初は小池百合子の対抗馬と目されながら石丸伸二にすら及ばない3位という結果に終わりました。蓮舫に限らず民主党系の候補は若年層の支持が薄く、投票率が低迷して相対的に中高年層の票が多数を占める状態では一定の強みを見せるものの、今回のように選挙への関心が高まり若年層の投票も増えるようになると2位にもなれないわけです。政治家が子供受けの良いキャラクターを目指す必要はありませんけれど、支持層が中高年に偏る立憲民主党の弱点は自覚されるべきでしょうね。

 なお立憲・国民の民主両陣営は今回の敗北の責任を共産党に転嫁したいようで、共産党との連携解消を主張する議員も散見されます。実際どうなるかは分かりませんけれど、もし野党共闘という茶番が解消されるのであればどうなるのでしょう。民主党に道を譲って立候補の取り下げを続けてきた結果として共産党は少しずつですが着実に議席と得票を減らしてきました。共産党を滅ぼしたい、共産党に社民党と同じ末路を辿らせたい、反共であればこそ共産党との選挙協力は維持すべき、というのが私の見解ですが、両民主党や連合にどれだけの将来計画があるかは今ひとつ分かりません。

 東京都知事選挙はそれなりに投票率が高かった一方、ヨソの国に目を転じると盛り上がりに欠けたのか投票率の低い選挙もありました。その一つはイランの大統領選挙で、最初の投票では40%、決選投票でも結局は50%に届かない結果に終わったそうです。前大統領の事故死を受けて、今後の方向性を左右しかねない選挙であったにも拘わらず、イラン国民は冷めた目で見ていたことが分かります。

 決選投票に勝利したのは元保健相のペゼシュキアンで、氏を「改革派」と呼ぶ西側メディアからは一定の期待が寄せられているようです。イスラエルの蛮行を制止する上で重要な役割を担っているイランが欧米に媚びるようになるとパレスチナが見捨てられる恐れもあり決して歓迎できる事態ではありませんが、しかしイラン国民の低い投票率に見られる冷めた目線からすると、結局は最高指導者の決定が優先であって大統領についてはあまり重要でないとも考えられます。

 大きな選挙は続き、イギリスでは与党・保守党が大敗し、野党・労働党が政権を奪回するに至りました。もっとも現在の労働党は党内の左派を排斥して「中道」路線で染められており、その政策スタンスは保守党と大きく変わるものではありません。イギリスの場合は純粋に与党の失策のために別の党へ票が移っただけであり、日本における自民党から民主党への政権交代と同様、与党は変わっても根本的な政策は変わらない、あまり期待の持てない政権交代で終わる可能性は高いことでしょう。

 逆に転換の見込みがあるのはフランスで、第一回投票では右派が第一党を窺う勢いだったのですが、その後の決選投票で大きく覆り左派がまさかの第一勢力を占めるに至りました。ただ第一勢力と言っても過半数には届かず、左派・右派・中道のいずれも何らかの形で連立を組む必要に迫られています。この連立次第でフランスの政策は変わる可能性もあるものの、中道勢力が上手いこと立ち回ってキャスティング・ボートを握ってしまうと、これまで何も変わらない状況が続くと懸念されるだけに、今しばらくは状況を見守る必要がありそうです。

 ここで「中道」とは何かについて少し考えて欲しいのですが、世間一般の理解は以下のようなものはないでしょうか。「左」と「右」が両側で極端な主張を持っており、その中央でバランスを取っているのが「中道」であると、世の中にはそんな思い込みもありますし、「中道」勢力自身が意図を持ってそのイメージを作り出してきたところもあるわけです。「中道」という言葉を字義通りに解釈すればその名の通り左と右の中間に位置しているように感じられてしまうのは仕方がないのかも知れません。しかし「中道」勢力が促進してきたことの実態はどうなのでしょう?

 確かに「左」と「右」にも当然ながら主張はあり、それが相反して綺麗に対立している部分もあります。では「左」と「中道」、「右」と「中道」の間ではどうなのか、ともすると中間的な関係であろうと勘違いされがちですが、その実は「左」と「中道」の間には絶対に相容れない溝があったり、その点ではむしろ「左」と「右」の間の方がまだしも歩み寄れる余地があったりもするのではないでしょうか。世の中「左」と「右」の対立軸もさることながら、もう一つ「中道」という「極」があって、それぞれ3つの対立で捉えた方が現実に符合するところがあるように思います。

 例えば「資本家を優先」する政策を推し進めているのは「左」か「右」か「中道」かと言えば、多くの場合は中道勢力が最も先鋭的です。同様に「NATOの覇権を優先」しているのもまた「中道」であり、「左」や「右」は懐疑的な立場を取る傾向にあります。こうした点では「左」と「右」の間にはそこまで大きな相違点がなく、むしろ「中道」との間にこそ埋めがたい隔たりがある、その辺は強く意識されるべきでしょう。

 フランス大統領のマクロンはまさに「極中道」とでも呼ぶべき人物で、徹底した資本家優先、NATOの覇権優先へと舵を切ってきました。この極端な中道主義者に比べれば、極左や極右と呼ばれる政治勢力の主張はずっと穏健とすら言えます。日本を振り返っても「右」の安倍晋三と、保守本流の出身と呼ばれ相対的には中道に位置づけられる岸田文雄のどちらが資本家優先、アメリカ優先であるかは考えるまでもありません。日本をアメリカの意向に沿って戦う国へと作り替えようとしている急進派の政治家は、安倍晋三ではなく岸田文雄の方です。

 実際は右よりも左よりも先鋭化した急進派でありながら、「中道」という偽りの仮面であたかもバランスの取れた存在であるかのごとく自らを装う、そんな政治勢力こそが長らく欧米諸国を牛耳ってきました。ひたすらにアメリカ陣営のため勢力圏を広げようとする中道勢力によって国際関係も大きく歪められてきたのが現代と言えますが、フランスのように僅かでも左右勢力が中道を打ち破るようになってきたのは、多少なりとも希望のもてる展開ではあるでしょうか。そして中道勢力の打倒が必要なのは、欧米だけではなく日本もまた同様です!

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結果はさておき

2024-07-07 21:06:23 | 政治・国際

 このブログでは取り上げませんでしたが、東京都知事選挙が終わりました。私は千葉都民の子として生まれ自らも千葉都民として生活しているわけですけれど、残念ながら東京都の選挙権はありません。選挙権は居住地を基準に割り当てられるものですが、しかし多くの千葉都民にとって自分の生活に直結するのは千葉の政治なのか東京の政治なのかは一概に言えない気がします。その他、たまたま転勤で赴任しているいるだけの地域の選挙よりも自分の故郷の政治の方が関心がある、そんな人も多いことでしょう。ふるさと納税のような悪法がまかり通る時代であれば、むしろ選挙権を行使する地方を国民に選択させるぐらいのことは考えても良いかも知れません。

 それはさておき、今回の都知事選には過去最多の56人が立候補しました。多少なりとも現職と競れる見込みのある人もいれば、勝機はなくとも候補者なりに訴えたいことがありそうな人もいる、ただ同じ政党でありながら複数の候補を乱立させたところもあり、売名を疑われている人も少なくないようです。かつては日本の供託金を「高い」と批判する声の方が大きく取り上げられがちでしたが、実際は供託金を「安い」と判断する人の方が多数派で、その結果が今回の候補者56人に結びついたと言えます。

 実際のところ、立候補することで得られる露出の機会を考慮すれば300万円という供託金は格安なのかも知れません。東京都民しか投票できない選挙でありながら関心は全国から向けられる、僅か300万円で日本全国へ名前を売ることが出来るのであれば、十分に元が取れると判断する人も多かったのでしょう。そして制度の穴を突き、候補者を乱立させて獲得したポスターの掲示スペースを、寄付を募るという名目で実質上の販売を行った政党もあるわけです。

 

都知事選「ポスター枠」を55万円で購入した男性 「生後8カ月のわが子」をポスターに掲載した理由(AERA dot.)

 6月20日に告示された東京都知事選は候補者の「選挙ポスター」が物議をかもしている。ほぼ全裸の写真や風俗店のポスターが貼られ、一部候補者や政治団体が警視庁から警告を受ける事態に発展した。さらに、ある政治団体は候補者を乱立させ、そのポスター枠を事実上「販売」していることも波紋を広げている。“売名”など本来の目的とは異なる形で掲示板が利用されており、対策を求める声も出ている。では、ポスター枠を“買う”側は世間からの批判に何を思うのか。「55万円」でポスター枠を買った男性に取材した。

「掲示板ジャックに参加したのは、都知事選の判断材料として有権者の皆さまに私個人の主張を伝えるためです。マスメディアの情報はどうしても偏りがちですし、(公の場で)一個人の意見が取り上げてもらえる場は限られています。こうして名もない一個人が主張できる機会を得られたので、私はお金を払ってポスターを出したのです」

(中略)

 だが、道理としては、自らが都知事選に立候補して堂々と有権者に政策を訴えればいいはずだが、男性はなぜそれをしないのか。

「私が立候補すればいい、考える人はそういないのではと思います。人には能力がありますし、分相応ということもあります。私は緊張しやすいですし、人前でうまく喋れるタイプではありません。都民だったとしても立候補など全く考えられません」

 

 先般はアメリカ本土でバイデンとトランプの討論会が行われ、バイデンが大きく評価を落としました。ただ、主張の中身は大差ないもので、政策面でバイデンがトランプに劣っていたとは一概に言えません。それでもトランプ勝利と評価する人が多数派を占めたのは、バイデンの振るまいが顕著に老いを感じさせるものであったからです。政治家の評価を決めるのは政策よりもキャラクターの強さによるところが大きい、政策面では五十歩百歩でも意気軒昂な70代と衰えの顕著な80代とでは前者が票を集めてしまう、そういうものでしょう。

 だから、ここで「ポスター枠を買った」人に私は共感するところもあります。政策はある、主張もある、しかし政治家に転身するつもりはないし、そのために人前に出るだけのタフさはない、そんな人は多いはずです。こうした従来は広く伝えられる機会のなかった人々の声を表に出す機会として、今回の掲示板ジャックは一つの「穴」であったのかも知れません。現行の選挙制度の趣旨とは異なる手順で行われたことではありますけれど、一概に否定できたものでもないというのが私の評価ですね。

 ついでに言えばNHK党の露出戦略には全否定できないところもあります。結局のところ候補者を立てていかなければ党の主張が有権者に届くことはなく、勝算に乏しいからと他の党に道を譲っていれば、その党は次第に忘れられてゆくだけです。だから現行の共闘路線を継続している限り、共産党は議席を減らしいずれは社民党と同じ末路を辿ることでしょう。野党共闘は、共産党を憎む人こそが追求すべき路線です。当の共産党サイドは「我々は社民党とは違う」と思い上がっていると推測されますが、いずれは後悔する日が訪れると私は予言します。そうなる前に路線を修正できるかが運命の分かれ道ですね。

 ちなみに東京都知事選ですが、「良い」候補が当選すべきか「悪い」候補が当選すべきか、迷うところがあります。日本全体で俯瞰してみた場合、東京一極集中と地方の衰退は当然ながら好ましいことではなく是正が必要です。そうした観点からは東京には「悪い」都知事が君臨していた方が、ことによると日本全体の利益になる可能性があります。もし石原慎太郎や小池百合子ではなく、もっと良心的で賢明な首長が東京に誕生していたならば東京はもっと栄えていた、その結果として東京一極集中は今よりもずっと酷いものになっていたかも知れません。東京のトップが石原慎太郎や小池百合子だったからこそ、東京一極集中がこの程度で済んでいるのではないか、そんな気もしています。東京一極集中を抑制するためには、東京都知事は少し問題があるぐらいの方が良いのではないか……と。

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