空母や潜水艦、実在の国や国際機関を登場させ、国家や安全保障をテーマにした作品を描いてきた漫画家がいる。かわぐちかいじさん(73)だ。ロシアによるウクライナ侵攻に終わりは見えず、国連の存在はかすみ、軍拡の波が押し寄せる。ミリタリー漫画の巨匠の目に、この世界はどう見えているのだろう。 「今世界は、『世界政府』『世界連邦』と言うべきか、地球が一つになるような方向に向かっていると感じています。もちろん、一つの形ができる時には反動があるので、行きつ戻りつするわけですが、大きな流れがあると思います」。住宅地の中にある自宅兼仕事場を訪ねると、かわぐちさんは低音の渋い声で語り出した。ウクライナ侵攻後、国際社会については民主主義国家と専制主義国家が対峙(たいじ)する構図が指摘され、自国第一主義もはびこる中、意外な一言だった。 「世界政府」と聞くと、1988~96年に連載され、政治漫画として不動の人気を誇る代
