東京都知事選は開票と同時に石原の当確が出るなど一方的な結果に終わりました。まぁ、渡辺美樹にならなかっただけ良かったと思いましょう。下には下がいるものですから。まぁ、ネット上で思われているほどには反石原感情は強くないのだと思います。「日本人のアイデンティティーは我欲。この津波をうまく利用して我欲を1回洗い落とす必要がある。やっぱり天罰だと思う」と石原が述べたのは記憶に新しいところですが、石原に反対しているつもりの人でも「今回の大震災と大津波、それに伴う原発事故は、低エネルギー社会への転換を促す天からの啓示だったのかも」「欲の皮の突っ張った同じ日本人が私たちの生命を脅かしているのだよ!」などと宣っているわけで、実は石原と共感できている部分も多いのではないでしょうか。ほんの僅かなボタンの掛け違えがあるだけで、石原と世界観を同じくしている人は反石原を掲げている人にも多い、ならば石原に対して感情的なしこりを持たない普通の人々が石原に投票するのは至って自然なことです。
静岡市長選は、元自民党県議の田辺信宏氏(49)=自民推薦=が、元民主党参院議員の海野徹氏(61)、前自民党市議の安竹信男氏(64)を抑えて初当選を決めた。田辺氏は「防災に対する切実な声を聞いた。一人も犠牲者を出さないよう避難場所の総点検をしたい」と抱負を語った。
(中略)
連合静岡も田辺氏を推し、民主党県連会長も支援するなど、民主、自民相乗りの支援態勢が整った。選挙終盤には民主から前原誠司前外相、自民から石原伸晃幹事長が応援に入った。
今回の選挙戦では国政の現与党である民主党の敗北が伝えられることも多いですが、しかるに民主と自民の直接対決が大幅に減った選挙でもあります。とりわけ首長選では伝統と実績の自民・民主相乗り候補が増えたのですから、その結果もメディアは積極的に伝えるべきでしょう。民主と自民のゴールデンコンビなら勝つのは当然、別に大きく報道することもないと考える人もいるのかも知れませんが、国政で似たもの同士の政党が不毛な罵りあいを続けている今こそ、国民に地方政治における相乗りの実績を知らしめるのもメディアの役割であるように思われます。
東京都知事選で4選を確実にした石原慎太郎氏は10日夜、都内の事務所で報道各社のインタビューに応じ、東京電力福島第一原子力発電所の事故による電力不足について、「パチンコと自動販売機で合わせて1000万キロ・ワット近い電力が消費されている国は日本以外にない。こういう生活様式は改めたほうがいい。(節電のために)国は政令を出せばいい。パチンコする人は我慢なさい、自販機がなくても生きていける」などと持論を展開した。
東京都知事選で4選を確実にした石原慎太郎氏は10日夜、都内の事務所で「4選して何をやるかと言ったら、同じ事をやるしかない。プラスアルファで災害対策だ。東京は日本のダイナモ。東京が止まれば日本も止まる。日本はこれから大変だ。我欲を抑えて、自分の生活をつましくしないと日本がもたない。日本人全体がスクラムを組みながら肩を組んでやろう」と述べた。
例によって石原に反対しているつもりの人でも「コンビニを昼夜問わず日本中で営業したり飲料の自動販売機をこれほどたくさん置いたりして電気を使い続けることは電気の浪費ではないかとの問題提起をしたい」とか主張しているわけで、そうでなくとも豊かさや利便性、贅沢を戒め慎ましく生きよと説く石原の同志は、反石原層にも非常に多いはずです。上述の静岡の選挙では「減税日本」という共通の敵の存在が民主と自民を深く結びつけたことが窺われるところ、ならば共に贅沢を敵視する者同士が手を組めないはずがないと思わないでもありませんが、国政がそうであるように似たもの同士でも目立つ場面では対立するフリを演出するものなのでしょう。
それはさておき、「東京は日本のダイナモ。東京が止まれば日本も止まる」と石原は言いますが、喫緊の電力不足にはどう対処するつもりなのでしょうか? 原発推進派を称した石原ですが、夏までに原発を新設できるはずもありません。原発推進派であろうが反対派であろうが、差し迫った夏の電力不足に直面しなければならないのは変わらないわけです。そこで「我欲を抑えて、自分の生活をつましくしないと」と石原は語ります。そして節電で乗り切れ、贅沢を慎めみたいな発想もまた、石原自身だけではなく反石原層にも根強いものであり、石原の主張は最大公約数的なものとも言えそうです。
ただ、電力が余っている夜間の営業禁止を提言していたりするなど(参考)、少なくとも石原は何がどう不足しているのか理解できていないことが窺われます。ただただ、この危機意識の高まりに乗じて「こういう生活様式は改めたほうがいい」と迫っているだけのことです。もっとも石原が言うまでもなく、時間帯を問わない自粛ムードは全国的に広まっているわけです。随所で照明が落とされ、欲しがりません勝まではと言わんばかりの節約意識が満ちあふれていますし、これを歓迎する人が7割に及ぶとも伝えられています。結局のところ、右も左も多数派はバブル時代に象徴されるような豊かさをこそ嫌っており、もっと「生活をつましくしないと」と意識している、そして自分だけではなく社会全体もそうであるべきだと思っているのでしょう。贅沢は敵だ!
この節約ムードで心が満たされる人は多いものと予測されますが、残念ながら財布は満たされません。商業活動に制限が掛かる、とりわけ電力消費のピーク時(=平日の昼間)の操業を抑えねばならない以上、立場の弱い人から切り捨てられていくであろうことは想像に難くありません(あるいは深夜勤務に回される等)。計画経済的には全くのムダにも見えるレジャー産業などの「贅沢」もまた経済の一環であり、雇用を生み、消費を活性化させる社会のダイナモなのですが、しかるに石原の説くように「つましく」してしまったら、消費も雇用も落ち込んで、当然ながらダイナモの回転だって落ちていく他ないのです。1人1人がちょっと無理をしてでも贅沢をすることでダイナモも回って社会にも血が通うというものなのですが、石原は逆のことをやろうとしている、しかしそれは概ね歓迎されており、実は石原に反対している人の中にも同様の立場を取っている人が多いとあらば、東京のダイナモで生まれたエネルギーが東北に届く日は遠そうです。
←このごろは、臣下の心をも、お疑いになり、少しく派手な暮しをしている者には、人質ひとりずつ差し出すことを命じて居ります。御命令を拒めば十字架にかけられて、殺されます。
現代もまた自分が節約「しなければならない」ことを厭う気分より、妙な使命感に燃えて社会に慎ましさを説く人は多そうですね。やっぱり「我欲」にまみれている人よりも、周りの「我欲」を戒めることに満足を覚える人の方が、多いように思えるわけで……
あ、話が逸れましたが、統一地方選は、もう完全に震災にかこつけた精神論が幅寄せ…じゃなくて幅を利かせたという感じですね。ちょっと考えれば、パチンコ屋には従業員(搾取されるサラリーマン)もいっぱいいるわけで、そのバカみたいに下品な電飾や、地域に利益を殆ど落としていかないという問題は、節電とは関係ないことはわかるはずなんですが、公務員叩きの構図と一緒です。まぁなんにしろ石原の記者会見見て「ただのその辺のジジィじゃねぇか」と思わずに、有名人・芸能人を『特別な人』と思ってしまう心理、ワイドショー的というか、これがどうにかならないか困ったもんですね。
ご無沙汰してます。それはさておき節約ムード、被災地でも酒やタバコなどの「贅沢」が恋しくなってくる頃だと思いますが、そういう嗜好品を口にしているシーンが流れれば、「(支援を受ける側が)贅沢するな」とバッシングの対象になりそうな気がしてなりません。そして今回の選挙は、石原に対抗する側にも精神論的なものを感じざるを得ない有様でして、ますます以て状況が悪化しているように思えてきたものです。
東でナイターをやらせろと叫んでいた読売巨人軍が、本日西(山口)にて自家発電を利用した節電ナイターみたいなことをやっているそうです。
なんだか日本中がそれこそ「ゲンゼイ・ニッポン」みたいなノリになってしまいそうですよね。
「つつましさ」については個人の好みにとどめるべきで、無意味なポーズ優先の「セツヤク・ニッポン」で一つになられては困ります。
>とりわけ首長選では伝統と実績の自民・民主相乗り候補が増えたのですから~
国政で似たもの同士の政党が不毛な罵りあいを続けている今こそ、国民に地方政治における相乗りの実績を知らしめるのもメディアの役割であるように思われます。
相次ぐ民自相乗りの復活が「あの歴史的選択」の空虚さを物語っていますね。しかしながらイマダに自民Vs民主なんて構図だけは生き残っているわけで……。
民主党を支持してきた人たちは、これからどういう選択に向かうのでしょうかね。
例えば今回の都知事選では、イシハラ・ヒガシ・ワタミの「3択」だったのでしょうか?だとすると、想像を絶する「厳しい選択」になりそうです。笑
空虚な歴史的政権交代……おかげでこの有様です、原発のこと一つとってみても。
悪玉批判はするけど、自らは反省しない。
そーゆー人が多すぎる気がします。
わたしはどちらにも反対です。共産党が賛成しているものに対して、数少ない例です。競争力強化や環境対策などに、逆行しまくりの政策だと思っています。管理人さんの言うストイックな政策ですね。左翼もこぞって大賛成でした。
みんなが慎太郎に集約されてしまうというのは、早い時期からあったことなのかもしれませんね。
正直、ブログ論壇みていると、原発の方にシフトしたな、という感がしてなりません。たしかに、原発・エネルギー問題は重要な問題で、これ悪化させたら福島の方はじめ多くの方の『生きる土壌』が失われる問題なだけに考えなければならないものですが、何かが抜け落ちているな、というのが正直な感想です。
昨日、野球部の後輩が見つかりました。
弱い野球部強くしようと、放課後遅くまでたたかい、そこで信頼関係作ってからは放課後にマジ話する関係になった後輩が…そういう熱い思い持った彼を、一瞬で奪い去りました。
自然に対しての恨み節はありませんが、この震災で犠牲を生んでしまったことそのものと、これから向き合う困難さに関しては無性に怒りすらわいています。
この震災で、浮き彫りになったものは大きいです。ただ、その解決にあたっては権力者をぶったたくという事を主眼に置かないで、今難儀している人を見捨てない、という事を主眼に置いていただきたいです。
エネルギー問題に関して言えば、無駄なのは…という主義に立っていますが、その一方で必要な電力の確保もしっかりしてね(これは管理人さんの記事で気付かされました)という立場にも立っています。
どの問題でもいえるのは、ただの叩きではなく、人に通ずるような議論をしていただきたい、ということを切に願います。自分も似たようなことするので、その自戒もありますが。
長文大変失礼しました。
この一文どうか意をくんでいただければ、と思います。
西日本で節電をしても何の意味もないはずなのですが、自粛ムードに付き合わないと不謹慎としてバッシングを受ける、そういう時代なのでしょうね。個人で節約に努めるのは自由ですが、それを社会全体に強要すべきではないでしょう。
>ルーピーさん
まぁ社会情勢に応じて、適正な政策は変わるものですから。余裕のあるときには好ましい政策も、余裕がないときには先送りすべきものがあるわけです(財政再建とか脱原発とか)。問題は、その状況にそぐわない政策の方が選ばれがちなところにあるのだと思います。
>伊東勉さん
その辺は私も、心苦しいところがあります。どうしても批判的に取り上げやすいという点で原発がらみの言論を扱うことが増えてしまいましたが、もっと深刻な状況に置かれ得ている人は他にいるんですよね……
石原慎太郎氏の言うつましさは良いけど焦点がずれてる気がしますね。数字しか見てないんでしょう。いうとおりにしたら呑み屋や深夜に開ける店が影響を受けて間違いなく景気は衰退するでしょうね
西側は節電と関係ないという意見がありますが飲料や食料の工場を24時間回すため、あと資源が近い将来に足りなくなるという予測&被災地に回すために(とは書かれてないけど)節電を電力会社が呼び掛けてるそうですよ。なので無駄なエネルギー消費を省く意味では賛成かな
省エネや原発に代わる技術で景気回復してくれれば理想なんでしょうけどね。
3年ほど前からこちらのブログを閲覧してますが経済、福祉など自分の考えを改めさせられることが多いです
中部以西の節電は、混乱に乗じて流されたデマであり、電力会社側は過剰な節電に走らないように呼びかけていたはずです。まぁ、とかく節約、節制的なものが「善」とされる中で、「本当っぽい」デマが信憑性を帯びやすい、このことは危惧されるべきだと思います。節電は悪いことではないのでしょうけれど、だからといってデマに振り回された結果としての節電というのでは、ちょっと危ういですから。