DXで拡大する郵便局の役割 住民サービス、オンライン診療、空き家対策

全国の郵便局で、DXを活用した地域サービス強化の取組が進んでいる。マイナンバーカードを利用した住民サービスに加え、オンライン診療、空き家対策の試みも行われている。

日本全国に2万4000箇所ある郵便局。その拠点性の利点とDXの有用性とをコラボレートさせて、地方公共団体との連携によって、地域の住民向けサービス等を身近の郵便局で受けられるようにしようという取組が進められている。

本誌2023年3月号で、筆者は、地方公共団体が担ってきた住民サービスを郵便局で取り扱う取組の沿革と課題について紹介したが、今般あらためて、その後の進捗状況と医療や空き家対策の新しい取組について、今後の展望を含めて紹介したい。

1.郵便局での住民サービス展開

2万4000という郵便局の数は、全国の市町村の支所・出張所数の4~5倍程度に相当する。郵便局には、前回も紹介したような地方公共団体事務受託の実績がある上に、制度的にも「地方公共団体の特定の事務の郵便局における取扱いに関する法律」(郵便局事務取扱法)により、そういった業務を行う上での局員の守秘義務、「みなし公務員」規定や、市町村の関与についての規定等が整備されている。

こういった利点を活かした地域の住民サービス確保策として、総務省では、マイナンバーカードを活用したDXによる郵便局の住民サービス提供を支援してきている。

マイナンバーカードというデジタルのツールを郵便局というアナログの拠点で活用するということだ。

(1)「セパレート型キオスク端末」の導入

市町村で行っている住民票の写し、印鑑登録証明書等の各種証明書の交付サービスを、市役所等まで出向かなくても、近所の郵便局で簡便に受けられるようにする取組が行われている。

これは、前回も紹介したように、郵便局と市町村との間では紙と電話とファクシミリによる従来型のアナログの方式で行われていることが多かった。その結果、住民には有用でも、市町村側からすれば、その事務軽減のメリットが少ないという課題があった。この課題解決に向けては、専用端末(キオスク端末)を導入して行う方法も導入されてきたが、この場合、大型で床面積の限界がある他、導入費用、維持費用がかかるという課題があった。

これらの課題を解決すべく、総務省では、キオスク端末の低コスト・小型化を進めた。具体的には、住民の方が操作する申請端末を切り離して窓口ロビーに設置、申請された証明書を出力する複合端末をバックオフィス(窓口事務室)に設置した「セパレート型キオスク端末」の実証を令和4年度(2022)に行った。

その有用性が確認されて、令和5年度(2023)から実用化されている。これが実装された郵便局では、住民に、局内の申請端末に自身のマイナンバーカードをかざして簡便な操作をしてもらい、そこで出力される受付票を窓口の郵便局員に手交してもらうことで、住民票の写し等の証明書の手交を受けられるようになっている。局員は、バックオフィスの複合端末で証明書を印刷する(図表1)。

図表1 郵便局型マイナンバーカード利用端末(令和4年実証事業実施)

図表1 郵便局型マイナンバーカード利用端末(令和4年実証事業実施)

宮崎県都城市の西岳郵便局で昨年10月3日にサービスが開始されたのを皮切りに、15地方公共団体28郵便局(今年5月末現在)で導入され、いずれも好評を得ている。

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内閣官房郵政民営化推進室長 藤野克氏

藤野克(ふじの・まさる)氏

内閣官房郵政民営化推進室長。博士(学術)。総務省郵政行政部長、大臣官房総括審議官などを経て現職。著書に『情報通信ルールの国際競争 日米のFTA戦略』(早稲田大学学術研究書出版奨励賞)、『インターネットに自由はあるか 米国ICT政策からの警鐘』(2012年度大川出版賞)、『電気通信事業法逐条解説再訂増補版』(共編著)がある

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