レモンポップとは、2018年生まれのアメリカ生産・日本調教の競走馬である。栗毛の牡馬。
主な勝ち鞍
2023年:フェブラリーステークス(GⅠ)、チャンピオンズカップ(GⅠ)、マイルチャンピオンシップ南部杯(JpnⅠ)、根岸ステークス(GⅢ)
生産者はMr. & Mrs. Oliver S. Tait、所有者はゴドルフィン、管理調教師は田中博康(美浦)。
概要
父Lemon Drop Kid、母Unreachable、母の父Giant's Causewayという血統。
父はベルモントステークスやトラヴァーズステークスなどGⅠ5勝、種牡馬としても活躍馬を輩出している。
母は未勝利馬だが牝系を遡るとNorthern Dancerの母Natalmaに辿り着き、祖母Harpiaはスーパーサイアーであるデインヒルの全妹というかなりの良血。
母の父はアイアンホースの異名を持つG1・6勝馬で、種牡馬として多くのG1馬を輩出した。
2018年2月15日誕生。生産者はMr. & Mrs. Oliver S. Tait夫妻。馬主は世界中で活動しているゴドルフィンで、2018年のキーンランドノーベンバーセールにおいて7万ドルで落札された。血統面や後の活躍を考えると非常にお値打ちだったと言って良いだろう。
所属は2018年より新たに開業した美浦の田中博康厩舎となった。彼については、2009年のエリザベス女王杯をクィーンスプマンテ(とテイエムプリキュア)と共に逃げ切った人と言ったらわかるだろうか。またレモンポップと同じダート戦線での活躍馬ということでシルクメビウスのことを思い出した方もいるかもしれない。
馬名の意味は、レモンスカッシュ。こんな馬名をしてるが牡馬である。
レモンを搾ってダートに行こう
2歳・3歳
2020年11月7日、東京ダート1300mの2歳新馬にて戸崎圭太騎手を背にデビューして3馬身で初勝利を挙げる。
続く11月28日のカトレアステークスに出走。初のマイル戦で距離が不安視され1番人気は同舞台の条件で勝利したタケルペガサスに譲る形となった。レースではタケルペガサスが逃げ、レモンポップは2番手に付ける。そのままの体制で直線に入ると進出を開始、後続を引き離そうとするタケルペガサスに一完歩ずつ迫まり、残り150mを過ぎたあたりで前に出て最終的に1馬身半差で快勝。2着タケルペガサスも3着に10馬身以上つけており、正に一騎打ちの決着であった。
しかしこの後、脚部不安により長期休養に入ることとなった。
復帰戦は3歳になった2021年12月12日の2勝クラスの夙川特別に出走、1年ぶりの実戦ながら1番人気となった。短期免許で来日していたクリスチャン・デムーロを背にレースを迎えるもケイアイドリーに交わされ2着。デビュー以来初めての黒星となった。
4歳
古馬初戦は2022年1月1日の中京競馬場の4歳以上2勝クラス、ここでも1番人気に支持されるもトーセンアランを捉えられず2着に敗れた。
鞍上を戸崎騎手に戻して1月30日の東京競馬場の4歳以上2勝クラスに出走。単勝オッズ1.5倍の1番人気の支持に応えて3馬身半差の圧勝。4月24日3勝クラスの鎌倉ステークスも1.4倍の支持を受けて6馬身差で圧勝。見事な走りぶりで一気にオープン入りを果たした。
その後は5月28日の欅ステークスに出走、初のオープン戦ながらも単勝オッズ1.6倍の1番人気となった。レースでは2・3番手を追走して直線では馬なりのまま先頭に並び掛けて、鞍上が促すと反応して先頭に踊りでて2馬身半差で快勝、オープン初戦を難なくこなした。
その後は休養に入って、秋初戦は10月30日のペルセウスステークスに出走。単勝オッズ1.4倍の支持を受けてた。道中4番手で追走して直線に入ると外側に寄れ始めたリフレイムの内から先頭に立つと後続を一気に突き放して4馬身差の圧勝で、4連勝を果たした。
その後は11月12日の武蔵野ステークスに出走。カトレアステークス以来のマイル戦で重賞初挑戦ながら単勝オッズ1.7倍の支持を受けるもギルデッドミラーに末脚に屈してハナ差の2着に敗れた。
5歳
年明け初戦は1月29日の根岸ステークスに出走。前走で敗れたギルデッドミラーも出走していたが、得意舞台の東京ダート1400mであったため単勝オッズ1.6倍の1番人気の支持を受けた。発馬でやや出負けるも直ぐに先団に取り付いて5番手に。直線では楽な手応えのまま先頭に並び掛けて、先頭に立つと外から伸びてきたギルデッドミラーを半馬身差で凌いでゴール板を通過。管理する田中博康調教師は開業5年目で重賞初制覇を果たした。
フェブラリーステークス
続いて2月19日のフェブラリーステークス。ライバルのギルデッドミラーが本番1週前に骨折で引退、連覇中の東京ダートマイル巧者カフェファラオがサウジカップに向かうため、東京を得意とするレモンポップにとっては絶好の機会となった。
一方前走から主戦を務めていた戸崎圭太は、この馬の陣営が1週間出走の可否を判断している間に、先約のあった1つ年下の全日本2歳優駿勝ち馬・ドライスタウトを優先。レモンポップは代わりに若手有望株の坂井瑠星に手綱を託すこととなった。こうした具合に前走からの有利不利や距離不安が囁かれ続けたが、最終的にレース当日ではドライスタウトを抑えて単勝2.2倍の1番人気に支持される。
4枠7番から抜群の発馬を決めたレモンポップ。鞍上の坂井は外から主張したショウナンナデシコらに前を譲り、先行集団の真ん中でドライスタウトと並ぶように追走。4コーナーを回って外めから進出を開始し、直線で先行馬に並ぶ。持ったままで。
残り400mで坂井が追い出すと前の馬をまとめて抜き去り、一気に差を開く。後方からは3番人気レッドルゼルが追い込んできたが悠々と振り払い、決定的な1馬身半差をつけてゴールイン。11戦パーフェクト連対でGⅠ馬まで駆け上がった。鞍上の坂井騎手は前年のスタニングローズの秋華賞・ドルチェモアの朝日杯FSに続いてGⅠ3勝目、田中調教師は初重賞制覇から一ヶ月足らず勢いのままGⅠ勝利まで駆け抜けた。
ドバイゴールデンシャヒーン
この後はやや間隔が詰まっていたが遠征、ドバイゴールデンシャヒーンへ。フェブラリーステークスの勝利で1番人気に推されたが1200mはやはり短かったのか、短距離のペースに付いて行けず見せ場無く10着敗戦。
マイルチャンピオンシップ南部杯
夏休みを経て秋の始動戦はマイルチャンピオンシップ南部杯とシリウスステークスの両睨み。後者はトップハンデ61kgを背負わされる上に2000mと不安だらけのレース…なのだが、どうやら栗東の坂路調教目当てでの登録の模様(関東馬は関西のレースに登録していれば栗東滞在ができる)。本命は盛岡1600mのようであり、前年覇者のカフェファラオや皐月賞馬ジオグリフ、昨年JDD馬でマイル参戦のノットゥルノ、さらに地方勢から兵庫の誇る快速馬イグナイター[1]らとの対決と目された。
61kgのハンデが発表された時点でシリウスステークスは回避することとなり、マイルチャンピオンシップ南部杯へ。実績のある1600mへ戻ったということもあってか1.5倍の1番人気に推される。
レースではイグナイターと並んでハナを進むと、これを4コーナーでちぎり捨て、後は上がり最速34秒7の末脚で独走。2着を死守したイグナイターに「大差(2.0秒差)」をつけ、GI級競走2勝目をあげた[2]。さらには同レースが中央競馬へ開放されて以降初の大差勝ちであり、盛岡開催初年の1996年にホクトベガが記録していた最大着差V記録(7馬身1.3秒)を0.7秒も更新している。とんでもない俊足・・・
ちなみにこの時の内容で暫定値120のレーティングを10月19日発表で獲得している。[3]
マイルCS南部杯レーティング
チャンピオンズカップ
さて、今後の予定だが当時ゴドルフィンから挙がっていた選択肢は3つ。一つは最適性の1400mが無いので再びスプリントへ舞い戻り11月のJBCスプリント。もう一つは中3週とドバイ同様にローテが詰まるが遠征してのブリーダーズカップ・ダートマイル。そして三つ目は距離延長して1800mに挑戦、12月の中京ダートGⅠ・チャンピオンズカップというものだった。
後日絞り込んだ結論は三つ目の選択肢・チャンピオンズカップ。更に200mの距離延長を選択し、中央ダートGⅠ統一に向けて動くことになった。
相手どころは一昨年の覇者テーオーケインズ、前年2着でコリアカップを完勝したクラウンプライド、交流GⅠ3勝のメイショウハリオなどの実績馬に上昇ムードのハギノアレグリアスやグロリアムンディ、そして強烈な末脚を武器に無傷の5連勝を継続する3歳馬セラフィックコールが注目を集めた。レモンポップは実績優位ではあったが、初の1800mという距離不安に加え、よりによって大外8枠15番を引き当ててしまう。チャンピオンズカップが中京に移って以来8枠から勝利した馬は過去におらず[4]非常に不利な状況に置かれたが、最終的にはセラフィックコールと分け合っての1番人気に支持された。
レースではスタートダッシュこそややヨレたが二の脚は速く、大外枠もお構いなしに前走同様果敢に逃げを打つ。内から3歳馬ドゥラエレーデも主張してきたが2コーナーまでにハナを取り切り、以後は淡々と逃げていく。直線では後続を突き放すほどの手応えで先頭を譲らない。1600mを超え未知の領域に踏み込んでも勢いは衰えず、後方から一頭突っ込んできた伏兵ウィルソンテソーロを1馬身1/4封じ込めてゴール板を通過。史上4頭目の同一年春秋ダートGⅠ制覇を果たし中央ダート界を統一した。8枠からの勝利は中京に移ってからは初の偉業である。なお2着が12番人気ウィルソンテソーロで馬連29040円の高配当。さらに3着に9番人気ドゥラエレーデが粘りこんだことで、3連単は1902720円という大荒れの結果になった。
なお口取りの際は馬名にちなんで関係者がレモンを手に撮影に臨んでいた。その内ザ・テレビジョンの表紙に同馬が採用されるかもしれない。
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2023年は5戦4勝、国内では全勝の成績でJRA賞最優秀ダートホースを受賞。同年にはドバイワールドカップを制したウシュバテソーロもいたが40票差で上回った。
6歳
かつては得意距離が限られていたため厳しい戦いが続いていた時期もあったが、徐々に力をつけて距離の壁を乗り越え中央ダート統一を果たしたレモンポップ。6歳の初戦としてゴドルフィンはサウジカップを選択、その後はドバイワールドカップの中東遠征を示唆し、後者は第1希望に適正の近いゴドルフィンマイルを選択。そして、サウジカップへの出走が叶い、昨年のドバイゴールデンシャヒーン以来の海外遠征に挑む。
対戦相手としてウシュバテソーロ、デルマソトガケ、クラウンプライドといった日本ダートのトップクラスの馬を始め、BCクラシックでウシュバテソーロとデルマソトガケを破ったホワイトアバリオ、前走のペガサスワールドカップを勝利したナショナルトレジャーなどが立ちはだかった。
しかし、レースではスタートこそ悪くなかったものの、前走とは異なりハナを取らず控えて中団を追走し続けた。直線に入った後は伸びることなく、後方から物凄い脚で追い上げ他馬を差し切るウシュバテソーロをさらにセニョールバスカドールが差し切って勝利するのを尻目に12着と大敗してしまった。この結果を受け、田中調教師は「帰国やドバイ転戦も含めてオーナーサイドと相談して今後のことを決めたい」と語っている。
5歳でダート王となるも、6歳の初戦で大きくつまづいてしまったレモンポップ。当初の予定ではドバイに転戦の計画もあったが、一夜明け歩様の乱れを確認したことから一旦帰国させ、次走を今年からJpnⅠに昇格した浦和の1400m・さきたま杯に定めた。かつての得意距離で巻き返しなるか。
血統表
*レモンポップの血統 | |||
Lemon Drop Kid 1996 鹿毛 |
Kingmambo 1990 鹿毛 |
Mr. Prospector | Raise a Native |
Gold Digger | |||
Miesque | Nureyev | ||
Pasadoble | |||
Charming Lassie 1997 黒鹿毛 |
Seattle Slew | Bold Reasoning | |
My Charmer | |||
My Charmer | Buckpasser | ||
Gay Missile | |||
Unreachable 2009 鹿毛 FNo.2-d |
Giant's Causeway 1997 栗毛 |
Storm Cat | Storm Bird |
Terlingua | |||
Mariah's Storm | Rahy | ||
*イメンス | |||
Harpia 1994 鹿毛 |
Danzig | Northern Dancer | |
Pas de Nom | |||
Razyana | His Majesty | ||
Spring Adieu | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Northern Dancer 5×5×4(12.50%)、Buckpasser 4×5(9.38%)、Natalma 5×5(6.25%)
関連動画
関連静画
関連項目
脚注
- *彼はレモンポップが新馬戦で勝利した同日、同じ東京競馬場の5レース(ダート1600m)でデビューし、勝利している。その後1勝クラスで負けた後、大井へ移籍。その後、園田へ移籍しており、ここまでJpnIII2勝・JpnII1勝と、中央馬を3度返り討ちにしていた。、
- *イグナイターも決して弱くはなく、レディバグ以下、他の中央馬は凌いでいるし、後にJBCスプリント(JpnI)を勝っている。1600mはやや守備範囲から外れるだけなのだ。
- *2024年1月の2023年度ワールドベストレースホースランキングの発表で、この120が確定値となった。 2023年度ロンジンワールドベストレースホースランキング(WBRR)(PDF)
- *2020年の開催ではG1連勝中だったクリソベリル(1人気)が8枠から4着になっており、それなりの説得力で語られていた「消し」のデータである。ちなみに複勝率も0%だった。
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