「ば ばかな し 信じられん あの『断間狗』を使う者が存在しようとは…!!」
「知っているのか 雷電!?」
「うむ」
断間狗(だんまく)…古代中国、戦国時代において、秦の密偵『荊武(けいぶ)』が編み出した暗殺術。
荊武は猛毒が塗られた針を発射するからくりを身体中に仕込んでおり、密偵中に警備兵に発見された際にはこのからくりから毒針を発射する事で速やかに発見者を暗殺し、敵国から数々の情報を盗み出していた。この毒針は広範囲に、かつ大量に飛んでくる為に咄嗟の回避が困難であり、この針に刺された者は断末魔の悲鳴を上げる間もなく、狗のように死んでいった。この事から、荊武の放つ毒針は『断間狗』と呼ばれ、恐れられたという。
なお現代において、大量に発生する弾をかわす事を念頭に置いたシューティングゲームを「弾幕系シューティング」と呼ぶが、この暗殺術が由来である事は聡明な読者諸兄には言うまでもないだろう。
民明書房刊『中国暗殺術に見るシューティングゲームの起源』より
民明書房とは、大正15年(1926年)に創業された出版社であり、幅広い専門書籍を精力的に出版し続ける奇書・怪書の代名詞として好事家・趣味人に広くその名を知られている。創業者は大河内民明丸(おおこうち・みんめいまる)。
概要
明治37年(1904年)。書籍の聖地として知られる神田(千代田区)の製本業者の子として生を享けた民明丸が、自著を世に知らしめるべく大正15年(1926年)に設立したのが民明書房のはじまりである。当時は明治後期~昭和初期にかけて有名出版社が次々と設立された最中であり、奇しくもその年は名作『魁!!男塾』を輩出した集英社が設立された年でもあった。
だが「小学生の作文以下」と称された民明丸の文才が世に認められる筈もなく、翌27年には早くも倒産の危機に追い込まれる。しかし世を儚み、首を括る縄を片手に辿り着いた森にて、民明丸はひとりの中国人拳法家との運命の邂逅を果たす。奇妙な技を使い宙を舞うその老人の姿を目の当たりにした民明丸は出版人として開眼、その場で中国へと渡る事を決意。老人もそれを受け入れ、民明丸は中国全土やその隣国等の拳法や格闘技を精力的に取材し、一冊の書物を著した。これが民明書房を代表する奇書のひとつ『世界の怪拳・奇拳』である。同書は発売と同時に話題を集め、民明書房倒産の危機を救い、そして現在へと続く礎の一冊となったのだ。
武術書、自然科学、歴史、スポーツ等の幅広い専門書籍を出版し、その殆どが一般的に知られていないマニアックな事柄について記述されている事が多く、特に古代中国武術を解説する際に引き合いに出される。また、漫画家の宮下あきらは同社書籍の熱烈な読者であり、彼の手掛けた漫画『魁!!男塾』でその記述が多く引用された事が民明書房の名をより広く世に知らしめるきっかけとなった。
ニコニコ大百科における民明書房
様々な知識が集まるニコニコ大百科においても民明書房からの引用が多く見られる。その多様さはお家芸である武術関連に留まらず、宗教問題に鋭くメスを入れた書籍にも注目が集まっており、懐の広さを物語っている。また、ニコニコ動画で多発する病院不足問題にも積極的に取り組んでおり、『来いよ病院!』事件の際には記者がニコニコ病院スタッフにインタビューを敢行する姿も。
また、『世界乗馬運動名人百選(民明書房刊)』は同社には珍しく年齢制限の設けられた春画集であり、日本では幻の一冊とされていたが、近年台湾で発見され話題となった。
大百科で引用された書籍一覧
- 『愛蔵版 世界の記録媒体一覧 2013年度版 ~古代中国から現代、そして未来へ~』(VD)
- 『愛奴流魔巣汰』(COBRA THE IDOLM@STER)
- 『明日を生き残るための狩猟訓練』(東方トレーニング週間 ※関連項目:東方充電娘)
- 『あたしの尻を舐めろ』亜名留痔朗著(アルマジロ×たこルカさん)
- 『イスラム哲学・その起源と苦難』(ナイルの命題)
- 『一緒に哲学極めようぜ!』(我知無知)
- 『一発屋列伝10096 江戸の閃光花火』(桃黒亭一門)
- 『古の魔術』(邪視)
- 『兎・婦愁~その過酷な人生~』(アークIIにモンスターで挑戦してみた)
- 『江戸文化詳細解剖図』(イシマタラ)
- 『大江戸風俗奇譚~新駕籠情報’36~』(不躾棒)
- 『カバノキ無双』(カバノキ)
- 『神の恵みの歴史』(神の恵み)
- 『完済人になろう』(那戯無闘鬼)
- 『強者の歴史』 (嬢売電)
- 『基督教・日本仏教 伝来以来の習合云百年記念 散多菩薩東西説話集』(散多菩薩)
- 『巨大ファーストフード店のルーツを探る』(釈迦釈迦血禁)
- 『近世近代のクリスマス~基督教と日本仏教の巧みな習合~』(散多菩薩)
- 『屑と呼ばれた男』(石川ストック)
- 『クールジャパン・驚愕のキャラクタービジネス大全』(玉袋ゆたか)
- 『軍板戦史叢書7巻 801軍の占領政策』(軍事板)
- 『決闘の歴史』(突っ込んだら負け)
- 『ゲラルドでもわかる ユグドラル大陸の歴史』(アルヴィス)
- 『幻想サイドの精神攻撃』(トナカイ)
- 『現代うめポン学総論第十二巻』(アルテマうめぽん)
- 『現代エロ漫画用語の基礎知識改訂伍版』(アヘ顔ダブルピース)
- 『現代武術』(魔王K)
- 『剣奴百覧』(タスサマ)
- 『古代数学で紐解くロールプレイングゲームの歴史 第15版』(アルテリオス計算式)
- 『古代の政治闘争 その恐るべき手法』 (嬢売電)
- 『最後のメイド大隊』(れみりあ逆補正)
- 『The.団塊世代でも始められる拳法大全』(クンツォ!)
- 『散多菩薩 ~滅より離れ、苦よりも離るる道~』(散多菩薩)
- 『三人依れば文殊の知恵』ボンクラーズ著(トナカイ)
- 『三葉虫でもわかるサッカールール指南』(鎖呑出守)
- 『ジャパリ神話の世界~壁画の中の神、またの名をフレンズ~』(カヴァン神話)
- 『小五でも分かる 歩く諏訪子ZUN帽教~サトリ伝』(ZUN帽の奇跡)
- 『冗談みたいな本当の英雄』(コジマカロン)
- 『少年浪漫の秘めた夜のススメ』(もうショタコンでいいや)
- 『叙事詩 その神話性』(セナルアックス)
- 『知られざる神秘の錬金術』(トリキ錬金術)
- 『神域の男 -その隠された真実-』(空白の6年間の真実)
- 『新幕末全書、その倒幕への軌跡の全て』(奴が来る)
- 『真!! 非想天則 幻想郷最後の日』(ジョインジョインレイムゥ)
- 『スポーツ起源異聞』(天地飛翔の構え)
- 『駿河國風土記』(アニメ不毛の地静岡)
- 『性別逆転は燃え上がるか!?』(イケメンs)
- 『精密KI械工学Ⅲ』(K.I道場)
- 『世界ギターテク列伝』(アンジェロラッシュ)
- 『世界乗馬運動名人百選(民明書房刊)』
- 『世界の決闘・第2525版』(吹いたら負け)
- 『世界の決闘・第2528版』(ジャンケン)
- 『世界の秘密組織集:一の巻~正義と悪、その系譜~』(悪の組織)
- 『世界の不思議な伝説・口承文学』(カヴァン神話 ※補足:「バステ記」)
- 『世界の不思議な歩行術~西欧編』(アサレン=スンダラー)
- 『ちくわでもわかる日本神話』(ちくわ大明神)
- 『中国暗殺術に見るシューティングゲームの起源』(民明書房)
- 『中国に見る下着の歴史』(犯体)
- 『テーブルトークRPG単語録』(セッション)
- 『テニス大全―四大大会の奇跡―』(スーパーウィンブルドンステップ)
- 『デ・マスネ』(デマスネ)
- 『毒食らわば死亡確認』(オニギリ機関)
- 『トシカズ大百科』(胃割れ)
- 『753迷言辞典』(753)
- 『南斗聖拳大全Ⅵ』(南斗編集拳)
- 『ニコニコ大百科 第1版』(民明書房)
- 『日本に伝わる暗殺拳』(甘利神拳)
- 『日本の新たな老人像 -その爺、脳内常春につき-』(そうだ、ここに老人ホームを建てよう。)
- 『バレンヌ帝国秘史~ルドンに送られた皇帝たち~』(先帝の無念を晴らす!)
- 『半熟天使の美学』(もうショタコンでいいや)
- 『フビライ怒りのモンゴル相撲』(アフガン航空相撲)
- 『風呂烏龍とは』まふP著(なかよしP)
- 『ベトナムクンフー牙-KIBA-』(ゴーストシープ)
- 『暴君の部下~縁の下の力任せ列伝~』(斧)
- 『まどか教のすべて』(まどか教)
- 『漫画家といふもの』(冨樫仕事しろ)
- 『味噌汗の具と言えば百合根』(御味噌汗)
- 『妄想 ―還ってこれなくなっちゃった人の話―』(ヨット右翼)
- 『紋章を捨てた男』(ローレンツパンチ)
- 『山の妖怪たちの常識・儀式』稗田阿弥著(胡瓜婚)
- 『百合神セブンのもたらした影響と闘争の歴史』(東方五英傑)
- 『百合は世界を救う ー歴史に見る女性同士が紡いだ愛ー』(百合スキーの社交場)
- 『よく分かる農民入門』(散魔異愚我)
- 『雷電 - その曖昧さの回避』(雷電)
- 『起教(りっきょう)大学秋吉教授 真夏の夜の薬物・毒物講座記録』(ホモコロリ)
- 『RAINBOW GIRL宗教戦争とその歴史』(「ろくじょうま」正答主義)
- 『ローマ奥さまレポート』(民主の大料理)
- 『腋巫女の歴史』(YR1)
真!!概要
…さて。
ここまで読んでいただけた賢明な読者の方々ならば、『民明書房』が架空の出版社である事はおわかりいただけるだろう。元ネタである『魁!!男塾』においては、記事冒頭の流れが一種の様式美として多用された。
- 見た事もないような武術や仕掛け等が展開され、まずその名前のみが解説役によって明かされる。
- すかさず仲間が反応。解説タイムが始まる。
- いかにも書籍から抜粋したような説明文と写実的な挿絵、書籍名によって、読者への説明が行われる。
荒唐無稽なフィクションをいかにも実在するかの如く見せる技法のひとつである。後に『バクマン。』で提唱された「シリアスな笑い」に通ずる部分があるかもしれない。
男塾と同時期に連載されていた『キン肉マン』の“ゆで理論”が「その場の盛り上がりを重視し、常識を無視した荒唐無稽な理論で読者を力ずくで納得させる」のに対して、民明書房は「実在しない架空の存在を作り上げ、それが実在するかのように語る事で擬似的リアリティを作り上げる」手法である。対照的に見えるが、どちらも理論的正しさはともかく、「解説で背景や動機を与えて説得力を持たせる」フィクションテラーの技法である。これはエンターテイナー全般に必須の能力であろう。
ともあれ、男塾連載当時の読者にとって、民明書房の効果は絶大であった。架空の出版社ではなく実在すると信じて民明書房の書籍を探す者、「ゴルフの起源は中国」に抗議電話をした者までいたというのは有名な逸話である。
現在でも『民明書房』はパロディのひとつとして様々な作者やファンに愛されている。宮下あきらと同じく週刊少年ジャンプに連載していた荒木飛呂彦は、『ジョジョの奇妙な冒険』第4部で「旅行するなら日本のここベスト100」なる書籍を民明書房刊としてリスペクトしている。
最近では『HUNTER×HUNTER』を連載中の冨樫義博が「人といふもの」という書籍から一節を引用し、話題となった。
関連動画
関連静画
関連項目
民明書房刊『ニコニコ大百科 第1版』より
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