能力バトルとは、創作の1ジャンルとして、個々のキャラクターがそれぞれの持つ能力を活かして戦うもの。能力者バトル、異能バトルなどとも呼ばれる。
ざっくりこういうものという共通認識は持たれているものの、具体的なジャンル定義を行おうとした者がいないため、同じフレーズを使用しながらも指している意味合いが変わってくるケースも有る。
概要
能力バトルと呼ばれる作品は、以下のような傾向を持つことが多い。
- 登場キャラクターたちが超常的な能力を用いて戦う。
- 基本的に同じ能力を持つものはほぼ登場せず、キャラクターごとに異なる能力を有している。
- 個々人の才能に区分されるため、同じ能力を別の者が特訓や修行などで身につけることは不可能、あるいは困難となる。
個々のキャラクターがそれぞれ異なる方向性の能力を持ち、個々に身体強化、属性、近距離・遠距離の得意不得意などが異なることで、キャラクターの個性付けを容易とすることから、古今東西ありとあらゆる作品が産み出されてきた。古くは神話もそれぞれの神や悪魔、怪物等が司る分野の違いを活かして戦う一種の能力バトルと見做すことができる。
異能バトルというジャンルを形成したものとしては山田風太郎の『甲賀忍法帖 (講談社, 1958)』から派生した『忍法帖シリーズ』が挙げられており、本作は後に『バジリスク~甲賀忍法帖~ (講談社, 2003)』として漫画化されている。また、『ジョジョの奇妙な冒険 (集英社, 1987)』第3部から登場する『幽波紋 』は能力バトルを可視化したとしてしばしば言及される。
何を持って「能力バトル」と呼ぶか
さて、何を持って「能力バトル」と呼ぶかというものには結構難しい要素がある。というのも、同じような能力バトルものでも、能力を行使する手段、能力を行使できる制限、能力の譲渡の可否などさまざまな点で千差万別であるためである。何を持って能力バトルと定義できるのかが不明瞭なのだ。
そのため、ここでは何を持って「能力バトルではない」とするのかを見てみよう。
- 鍛えれば同様の力を得られるならば能力バトルではない
- たとえば『ドラゴンボール (集英社, 1984)』や『北斗の拳 (集英社, 1983)』、『ジョジョの奇妙な冒険 (集英社, 1987)』(第2部まで) などでは武術や拳法、波紋といった鍛えることで身につく力を持って戦っている。こうしたケースは (確かに本人の才覚も無縁ではないものの) 異なる能力のぶつかりあいとは言い難いので能力バトルではない。
- また『鬼滅の刃 (集英社, 2016)』も鬼のほうは異能 (血鬼術) を行使することもあるが、主人公サイド (鬼殺隊) は鍛えた呼吸法によって戦っているため能力バトルではない (各呼吸法ごとのエフェクトは視覚効果でしかなく、実際に攻撃がそのようなものであるわけではない) 。
- 能力バトルを主眼としていないならば能力バトルではない
- 『キン肉マン (集英社, 1979)』にはときに人間離れした異能を持つ能力者もいないわけではないが、基本的にはプロレスによる勝負が主であるため、能力バトルではない。
- また『ONE PIECE (集英社, 1997)』は主人公のモンキー・D・ルフィをはじめとした『悪魔の実の能力者』が多数登場するが、一方で悪魔の実を食べていない、体術や剣術、狙撃等を極めた非能力者の強者も多数登場しており、また異能とはことなる種族特性や体質、覇気などによる別軸の戦法も多数使用される。このためこれも能力バトルとは言い難い。
- サイバーパンク小説『ニンジャスレイヤー (KADOKAWA, 2012)』も個々のニンジャは『ユニーク・ジツ』と呼ばれる固有能力を持っているのだが、根底として『ノーカラテ、ノーニンジャ』という作中を通底する戦闘哲学が存在しており、そのためユニーク・ジツはおまけに過ぎず基本的にカラテの技量のほうが重要視される。これも能力バトルとは言い難い。
- 相手の能力を(自身の能力を使って)攻略していないならば能力バトルではない
- 能力バトルに置ける描写は「如何にして相手の能力を攻略するか」に主眼が置かれるのが基本であり、単純に身体能力で圧倒するようなロジックを置き去りにした攻略は能力バトル的では無い。
- 特に、攻略の歳「自身(や仲間)が持っている能力を絡める」という物は能力と能力の戦いになるので最も能力バトル的と言える。
- なお攻略前に身体能力や武器の効果が無い(それのみでは決着出来ない)事が周知なら能力を攻略した後でオチとしてそれらを使って決着するのは構わない。
これらに当てはまる能力バトルではない作品は対義語として「パワーバトル」と呼ばれる事もあるが、パワーバトル作品でも能力バトル的なバトルが描かれたり、作品の傾向そのものが「序盤はパワーバトルだったが途中から能力バトルになった(その逆)」というケースや事はよくある。
また、上述したように決着に能力を攻略するロジックが必要となる為、(特にパワーバトル的要素が減れば減る程)「頭脳戦」物ジャンルに内包される場合もある。
能力バトルでよく見られる設定
以下においては能力バトルに分類されないが、能力バトル要素を持つケース (『ONE PIECE』など) も含めて言及している。
- 能力の分類
- 能力バトルでは非常にたくさんの能力が登場するが、作中においてそれらは何らかの分類がなされているケースが多い。
- 『金色のガッシュ!! (小学館, 2001)』のように「属性」で語られるなどシンプルなものから、『ONE PIECE』のように『超人系 』『動物系 』『自然系 』といった能力分類がなされ、分類ごとに能力そのものは異なっていても、発現の仕方は似通っているというケースも有る (『動物系』の場合、基本的には「人型」「人獣型」「獣型」の3種類のフォルムに変化するし、『自然系』の場合は武装色の覇気をまとっていない物理攻撃を無効化してしまう) 。
- 他にもHUNTER×HUNTERの念能力のように、生まれつき「得意な系統」があるものの、覚えるにあたって効率がいいというだけで、理由さえあれば他の能力を覚えることもできるというケースもある。ただし作中で他の系統の能力を発現させた結果弱点を多く孕んでしまった反面教師のようなケースが登場しており、「メモリ (伸びしろ) の無駄遣い」とまで称されている。
- 能力の制限・弱点
- 全く別の能力でも、共通した制限や弱点が設定される。
- これを守る事で、一見無茶苦茶な能力でも、作中に置いてのリアリティを確保できる他、万能能力を作り出さない措置として機能する。
- 『うえきの法則(小学館, 2001)』において全ての能力は発動する為に「限定条件」という能力毎に設定された条件を守るor行う必要があり、バトルの際は先ずはその限定条件を解き明かす所から攻略が始まる描写が多くされている。
- 同系統の能力を持つキャラクター
- 基本的に能力バトルは個々が違う能力を持つことが個性付けとして使われる。しかし主人公の場合、「同系統の能力を持つ」キャラクターが作中の重要なポジションとして登場する。
- わかり易い例が『金色のガッシュ!!』。この作品に登場し長い間主人公・ガッシュのライバルキャラクターとして活躍したゼオンは、ガッシュと似たような容姿であり、ガッシュと同じ雷の力を行使でき、威力もガッシュより上であり、かつゼオンはガッシュのような術発動後の気絶もないなどガッシュの上位互換のようなキャラクターであった。
- そんなゼオンがガッシュと似ている理由、そしてガッシュに対して憎悪を向ける理由は作品のネタバレになるためここでは記載しないが、無論『他人の空似』というわけではなく、きちんとした理由が存在している。
- 無能力者
- ここでいう「無能力者」とは能力がない、というより異能がないということである。異能がないとうことは通常であれば能力者ばかりの戦いにおいては不利になるわけだが、そのデメリットを打ち消すように体術を磨いたり、個々の能力の弱点を的確につくなど、持たざる者なりの戦いを見せることがあり、作中のベストバウトに挙げられることも多い。
- しかし、そのバトル内容は能力バトル的かは微妙といえる。「能力を使って能力を攻略する」という構図にならなず、特に片方に体術の技能がある場合はパワーバトル的になりがち。見方を変えれば「超パワー+能力者共通弱点の無効化能力」と言えなくも無い…かもしれないが。
ベストバウト評価されがちなのは作品自体のマンネリ感を打ち破っているという事情もある。 - 無効化能力者
- 「相手の異能を無力化する」という異能。作中での扱いもイレギュラーな事が多いが、メタ的にも能力バトルのやり取りを崩壊させる危険性があるので慎重にならなければいけない要素「強制的にパワーバトルに持ち込む能力」と言っても良い。その為、範囲や回数などにかなり制限をつけられる事が多い。攻撃手段や画面の派手さ実質上記の無能力者に近いという弱点もかかえる。
- 『とある魔術の禁書目録 (KADOKAWA, 2004) 』の主人公・上条当麻は『幻想殺し』によりあらゆる異能を打ち消す事が出来るが範囲は”右手で触れたモノ”とかなり限定的。
『めだかボックス (集英社, 2009)』の副主人公・人吉善吉が後天的に獲得したスキル『愚行権 』が存在している。これは『すべてのご都合主義を否定する』というもので、「運良く特別なイベントが起きる」ことがなくなるというデメリット能力。しかもこのデメリット能力は本人たっての希望で作ってもらったというやや特殊な事情を抱えている (善吉はこの時点でもうひとつ異能も持っていたが、それも作中においては異能と呼べなくなるものに作り変えてしまっている) 。 - 能力の進化・覚醒
- 能力自体が別系統、あるいは上位の能力に変化するというものもある。
- 方法は様々で、『めだかボックス』では不知火半袖の『正喰者 』というスキルを喰い改めるスキルによって、相手の能力を別解釈したようなスキルに変更することができた。
- 『ONE PIECE』では悪魔の実の能力に『覚醒』というフェーズがあることが明らかとなり、『超人系 』は自分の能力の性質を周囲の物体に付与して操ることができるようになり、『動物系 』は異常な体力 (タフさ) と回復力、動物のより強い特性を得られる「覚醒フォルム」への変身ができるようになる。なお、『自然系 』の場合はどういう特性が覚醒で得られるのかは不明。
関連リンク
関連項目
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