M1ガーランドとは、1930年代にアメリカ合衆国スプリングフィールド国営造兵廠で開発された自動小銃である。
概要
アメリカ軍がそれまで制式小銃としていた、M1903ボルトアクションライフルに代わる次代の制式銃器、全歩兵に配備可能な自動銃として開発され、1936年にM1自動小銃としてアメリカ軍に採用されたが、主任設計者であったジョン・ガーランドにちなみM1ガーランドとの愛称が生まれ、こちらが定着した。
機構・特徴
現在の自動小銃で主流であり、信頼性の高い、銃身に開けられた小さな穴から銃身に沿って配置されたバイパスにガスを導き、ボルトと連動したピストンを動作させる「ロングストロークガスピストン」に、ボルトが回転する事で固定が解除される「ターンボルトロッキング」を組み合わせた動作方式を用いる、大型セミオートライフルである。
この銃の一番の功績は、部品生産において厳密な「規格・仕様」を導入し、複雑な工程を必要とする自動小銃ながら生産性・互換性を高めたことである。これは現代では当然のことであるが当時の工業体勢においては困難なことであり、銃の生産は「現地合わせで動きゃいい」が当たり前で、同じ名前を持つ銃であっても部品の互換性が皆無なこともあった。このM1ガーランドが成功をおさめたことから、結果として以後の軍用銃ではこれが常識となった。
最大の特徴、クリップ装填
弾薬は、BARやM1919機関銃、M1903ライフルと共通の30-06スプリングフィールド(7.62×63mm弾)を使用し、固定弾倉で給弾するが、通常の固定弾倉のように直接弾薬を装填するのではなく、[ ]のような形のクリップに8発の弾薬をはさみ、そのまま装填するという独特の機構を持つ。
これは固定式箱型弾倉と着脱式箱型弾倉の間の発展途上の弾倉である。その為、この機構はデメリットも多い。
このクリップが無ければ連発射撃は不可能であり、もしクリップがなくなれば戦場でクリップ拾いという罰ゲームをするか、薬室に一発ずつ装填しながら射撃するというボルトアクション以下の射撃速度で戦わなければならない
このクリップは弾切れ時に強制排出される為、「ピーン」あるいは「カキーン・チャリーン」と表現される独特の音が出るのがある種の名物ともなっている。この音で弾切れがバレる」等と言う逸話もあるが、機関銃や砲撃支援、その他雑音の混じる戦場でこの特定の音を聞き分けられたかは謎である。しかし前述の通り特徴的な音なので、聞き分けていた可能性は十分にある。一方で、一人がわざと弾を撃ちきってこの音を出し、それを聞いて油断して飛び出てきた敵兵を仲間が撃つという頭脳プレーにも使われたという逸話もある。
なお、このクリップは8発弾薬が装填された状態でなければ安定して持ち運べない。このクリップは弾薬が1発でも欠けるとバラバラになってしまう。
このクリップ式装填の最大の欠点は途中装填が出来ないという事である。
M1ガーランドには任意のボルトストップ(機関部を開放した状態で固定する機構、M1ガーランドでは弾切れ時のみ動作する)が無い為、継ぎ足す形での装填も安全にはできない。無理矢理ボルトを開いて1発づつ装填するのも可能だがそれだと7発までしか装填出来ない。
その為、リロードの際弾倉内に弾が残っていた場合、半端な弾は無駄撃ちするか、強制排出して戦場にバラ撒き(強制排莢するとクリップと弾薬が勢い良く真上に飛び散る)、結果として高い確率で廃棄するかしかなく、紛失しやすいクリップと合わせコストパフォーマンスとしては劣悪な銃であったと言える。
ゲームでも撃ちきらないとリロード不可能となっているものも多いが、CoD:WaWでは装填済みのクリップを強制排出して新しいクリップを装填する方法でリロードしている。
その辺物量でなんとかするアメリカらしい銃器であるといえるが、その存在は当時主力小銃はまだまだボルトアクションであった他の軍事勢力に対し圧倒的な物であり、また、アメリカ軍の物量はその兵站を支えるのに十分な物であった。
また、歩兵1人当たりの所持弾数はクリップ10個の80発分で、補給が確保されていることを前提とした運用がされていることが分かる。
運用
上述の通り、1936年にアメリカ軍の制式小銃として採用され、不況や欠陥の発覚により量産は遅れるが、1941年には本格配備が始まり、1942年以降はほぼ全軍に行き渡り、世界初、そして第二次世界大戦では唯一の主力制式自動小銃となった。
そして、後の朝鮮戦争等、改良型であるM14が採用されるまでの間の戦乱を主力小銃として戦い抜くが、M14の配備後もなんだかんだでベトナム戦争あたりまでは一線で使われていたようである。
そのM14もごく最近のイラク、アフガニスタン紛争で第一線で使用されている点をみるといかにM1ガーランドが高い基本設計であったかがわかる。
他、アメリカと友好的な国家の防衛、治安の為の援助物資として多くの国に提供され、自衛隊の前身である警察予備隊にも提供されており、64式7.62mm小銃の採用まで7.62mm小銃M1として使用され、64式の配備後もかなり長い間予備兵器として保管されていたようである。
また、クラシックなライフルスタイルの外見から儀仗用に保管されている物も多く、自衛隊でも儀仗用として使用され閲覧式等で見る事が出来る。
民間では、狩猟や狙撃競技等で使用されており、アメリカ軍の制式小銃であった事もありそれなりに人気なようで、復刻モデル等も販売されている。
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動画
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関連項目
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