概要
第二次世界大戦においてドイツが生み出した新たな銃の形態であり、今日の突撃銃を主体とした歩兵の装備体系を作り上げた始祖鳥である。
7.92mmクルツ弾を使用しフルオート・セミオート切り替え可、最大射程800mを主眼としたスペックを持つ。
ちなみにこの始祖鳥の意味をアメリカは理解できず、ガチの殴り合いをし理解したソ連が作ったAK47によって初めて理解するのは押さえておくべきポイント。
開発
StG44は大戦時の交戦距離の統計と現場の要請から生まれた。
第二次世界大戦中、第一次世界大戦の装備のまま突入した結果、ある問題が起きていた。それは小銃の交戦距離が長すぎ、威力も過剰である事であった。
ドイツの主力小銃であったKar98kは理論上交戦距離1000mを持つ銃であるが、独ソ戦の結果別段そんな射程は要らず、有効射程は数百m程度で十分であった。
また、建物の中や瓦礫のひしめく市街地戦等、手数による制圧、ここぞでの連射力が決め手となる戦場が増えたものの、手数では優れるが数十メートル離れるだけで精度を期待できなくなる短機関銃を、主力小銃のように配備する事は戦術上不可能であった。このような研究の結果生まれたのがStG44である
元々、主力小銃の自動化、もしくはStG44そのもののようなコンセプトの銃器は1900年代初頭から研究自体はされており、主力小銃の自動化に懸念を抱いていたドイツ軍上層部もこの結果にその有効性を認め、あっさりと開発を進めGew41、Gew43が生まれた。
しかし、開発者達は別の問題のクリアを目標としていた。それは従来の使用弾薬7.92mm×57では反動が大きく、セミオートやさらにフルオートでは制御が出来ないという事である。
事実、この弾薬を使用するフルオートが可能な個人携行火器"FG42"は、上述のような市街地での接近戦や、手持ちでの制圧射撃のためにフルオート射撃すると反動と軽い自重から暴れまわり、マズルブレーキが付いていても命中率は微妙という結果に終わっている。
連射しても当たらなければ意味が無いのである。
そのため、交戦距離と威力を要求最低限まで落とし、その分反動を抑えた7.92mm×33 通称クルツ弾が開発され、これを使用する自動小銃の開発がスタートする。
だが、「新しい弾薬」である事が新たな問題を引き起こす。射程が短く新たな補給負荷をかける新型弾薬に総統閣下が「まった!」をかけ、開発はストップしてしまう。
それでも技術者達はあきらめない。戦争の勝利のため、はたまた自分達の夢のため、秘密裏に開発は続けられた。こうしてある程度の銃が完成し、最終的にハーネル社とワルサー社の銃がトライアルに残り、東部戦線での結果ハーネル社の銃が改良の後、正式に採用される事になる。
設計ポイントは
が上げられる。こうしてMkb42はトライアルの問題点を改良してその後採用…されなかった。
ヒトラーはわずかな性能向上と引き換えに制式武器の生産が遅延するのを恐れ、すべての新型小火器の生産計画を中断し、現用のサブマシンガンと機関銃の生産に全力を傾けるよう指示したという。同時にヒトラーは、新弾薬を導入することで、限界に近かった兵站が麻痺することも懸念したようだ。しかしMkb42の戦場での評判がきわめてよいことから、陸軍兵器局はこれを「マシン・ピストル」(MP.43)と改称して量産に踏み切り、ヒトラーに事後承諾させた。改良型のMP.44は1944年12月にStG.44(スチューム・ゲベアー44:アサルト・ライフル44)とさらに名称が変更された。(「アサルトライフル」の命名者がヒトラー本人とする説があるが、真偽の程は疑わしい。名称変更命令に署名した可能性はあるものの、「アサルトライフル」はおそらく陸軍兵器局による造語だろう。)[1]
こうしてシュトゥルムゲーヴァー44、StG44、44年式突撃銃がここに誕生した。この名前がそのまま「AssaultRifle」「突撃銃」と直訳され(本当は意訳だけど)使用されている事から分かるように、まったく新しい概念の銃であった。
こうして総統閣下も銃の性能を認め、大急ぎで増産にかかるも、もう末期であったドイツの状況をひっくり返す力はなかった。だが、崩壊する戦線の中で、そして西側への逃避行の中でこのStG44は持てる性能の有らん限りを尽くし、最大限の戦果をドイツ兵達にもたらした。
戦後
ソ連は1944年からAK-47の設計を開始したが、すでに相当数のドイツ製アサルトライフルが赤軍の手に渡っていた。アサルトライフルの威力を体験した赤軍の情報や、鹵獲されたアサルトライフルへのアクセスをカラシニコフも認められていたはずで、これらの武器を高く評価したものと思われる。[2]
※AK-47は、内部メカニズムは大きく異なるものの、その外観はドイツの影響を色濃く受けている。また、多くのガス圧作動式ライフルが銃身の下にガス・シリンダーを設けているのに対し、AK-47ではガス・シリンダーを銃身の上方に設定しているのもドイツ製アサルトライフルの影響だろう。[3]
しかし、どういう訳かアメリカ軍はStG44の性能を理解できていなかった。これは戦後のNATO軍統合弾薬選定でフルロード弾ごり押しで採用させた結果からも理解いただけるであろう。(なおこの当時小口径弾を熱心に開発をしていたイギリスはこの件を反対したが、結局はフルロード弾を使用したFN FALを採用する事になる)
その後、アメリカ軍はベトナム戦争において突撃銃の威力を思い知る事になる(朝鮮戦争の時点でAK-47がソビエト軍へ配備されていたが、秘密保持を理由にまったく使用されなかった[4])。アメリカ軍はたまたま採用テスト中だったAR-15をあわてて投入し、M14の後継として正式採用しM16として投入、アサルトライフルをもってして戦闘を行う事になる。(なお、この件に振り回されたイギリスは独自で小口径弾を開発しようとするが頓挫し、結局はM16と同じ口径のSA80を開発・採用するが使えない銃として汚名をつけられた、詳しくは当該記事を参考)
こうして突撃銃の突撃銃たる性能は証明される事となり、全世界の銃が突撃銃の思想を採用している。その流れを作ったのは、まぎれもないStG44なのだ。
最近ではテロ戦の影響ゆえ、本来の交戦距離以上の戦いが多いアフガンでは力不足となり、アメリカ軍がごり押し採用させたNATOフルロード弾にも光があたっている。
それでも反動を抑え込んだアサルトライフルとなると、SCAR等は重量が5kgを超える重い銃となり、今後もStg44の設計思想がすたれる事はなさそうである。
関連する銃器
まず、先に生まれたフルオート自動小銃としてフェドロフM1916の名前が上げられる。しかし、この銃は実用的なフルオート射撃を考慮してはいない古典的なライフルスタイルに、当時の小銃弾としては最も低反動とはいえ、フルサイズ規格である三十八年式実包を使用しており、あくまで"フルオートで制御可能な自動小銃を作っていたら出来た自動小銃"である。
前述の通りStg44は"必要最低限まで威力を落とした小型で反動の少ない弾を使用する事を前提とした、近代的な構造と設計を持つ自動小銃(突撃銃)"であり、設計思想が異なる。フェドロフはあくまでもフルオート機構を取り込んだ比較的低反動な"従来型の小銃"なのだ。
また、前述のFG42も時々突撃銃扱いされる事があるが、これはあくまで"降下時にも持っていける小型軽量で、ある時は軽機関銃、ある時はライフル、その実態は…!"な銃が欲しい→なんとか出来た軽機関銃統合型の自動小銃であり、あくまでライフルと軽機関銃を混ぜたシロモノなので突撃銃ではない。
そもそも弾薬も違うけど。
関連作品
動画
静画
MMD作品
関連項目
脚注
- *「AK-47ライフル」G・ロットマン 加藤 喬:訳 床井 雅美:監修 並木書房 2018 pp.17-20
- *「AK-47ライフル」p.21
- *「AK-47ライフル」pp.48-49
- *「AK-47ライフル」p.120
- 16
- 0pt