深見弾
深見 弾(ふかみ だん / ただし[1]、1936年6月15日[2] - 1992年7月28日[3])は、ロシア・東欧SFの翻訳家、研究家。
人物
ストルガツキー兄弟(ロシア)やスタニスワフ・レム(ポーランド)など、多くの作品を日本語に翻訳した。また、逆に日本の作品をロシア・東欧に紹介することにも取り組んだ(矢野徹によるとレーニン図書館へ資料を送るため毎月1万円以上を使っていたという)[3]。日本ペンクラブ、日本SF作家クラブ、日本推理作家協会、各会員[4]。
主な訳書に『収容所惑星』、『ストーカー』、『そろそろ登れカタツムリ』(以上ストルガツキー)、『泰平ヨンの航星日誌』、『ロボット物語』、『宇宙飛行士ピルクス物語』(以上レム)などがある。SF以外にミステリや児童ものの翻訳もある。編訳書としては『ロシア・ソビエトSF傑作集(上・下)』、『東欧SF傑作集(上・下)』の二点がある。
本名の山田忠名義でも、英語からの翻訳がある[5]。
2007年から、やはりロシアSF研究者の大野典宏が著作権管理人になっており[6]、以降、大野は深見の訳本の改訳を行っている。
略歴
岐阜県岐阜市生まれ[3]。本名、山田忠。1958年に早稲田大学文学部を卒業(1988年には母校の文学部でソ連SF史について講義を行なった)[3]。モスクワ大学に短期留学の経験あり[3]。
1959年~1977年にロシア・ソ連専門書店・出版社のナウカ株式会社に勤務[4]。1968年よりロシア文学や東欧文学の翻訳に携わる[7]。仕入部長を経て、1979年よりフリーに[4]。
SF同人誌『宇宙塵』には初期から関わり、矢野徹らとも親交が深かった[3]。ロシアと共産主義を愛していたが、ソヴィエト連邦の実態についてはこれを憎んでいた[3]。1990年、翻訳の業績に関してカレル賞を受賞[3]。1992年に56歳で病死した[3]。
深見弾名義
訳書
※一部分だけ担当した短編集は省いてあります。
フィクション
- 『顔に傷のある男』(イェジィ・エディゲイ、早川書房、ハヤカワ・ポケット・ミステリ)1977年
- 『ペンション殺人事件』(イェジィ・エディゲイ、早川書房、ハヤカワ・ポケット・ミステリ)1978年
- 『遙かな世界、果しなき海』(ダルコ・スーヴィン編、関口時正共訳、早川書房)1979年
- 『黄金の鎖』(アレクサンドル・グリーン、早川文庫)1980年
- 『異邦からの眺め』(F・ロッテンシュタイナー編、早川文庫)1981年
- 『青い惑星』(オリガ・ラリオーノワ他、飯田規和共訳、プログレス出版所、現代ソビエトSFシリーズ6) 1982年 - 発売:ナウカ
- 『銀河の破壊者』(セルゲイ・スニェーゴフ、創元推理文庫)1983年
- 『ペルセウス座進攻』(セルゲイ・スニェーゴフ、創元推理文庫)1984年
- 『逆時間の環』(セルゲイ・スニェーゴフ、創元推理文庫)1985年
- 『007は三度死ぬ』(アンドレイ・グリャシキ、創元推理文庫)1985年
- 『迷宮1000』(ヤン・ヴァイス、創元推理文庫)1987年
- 『スポンジ教授救出作戦』(スタニスワフ・パガチェフスキ、ほるぷ出版)1988年
- 『スポンジ教授の使命』(パガチェフスキ、ほるぷ出版)1989年
- 『スポンジ教授とUFO』(パガチェフスキ、ほるぷ出版)1989年
- 『チェルノブィリからの脱出』(ケネス・ロイス、徳間文庫)1992年
ストルガツキー兄弟
- 『幽霊殺人』(ストルガツキー兄弟、早川書房)1974年
- 『収容所惑星』(ストルガツキー兄弟、早川書房)1978年、のち文庫
- 『蟻塚の中のかぶと虫』(ストルガツキー兄弟、早川書房)1982年、のち文庫
- 『ストーカー』(ストルガツキー兄弟、早川文庫)1983年、のち深見訳名義のまま大野典宏訳で改訳新版(ハヤカワ文庫) 2014年
- 『世界終末十億年前 異常な状況で発見された手記』(ストルガツキー兄弟、群像社)1989年
- 『月曜日は土曜日に始まる 若い科学者のための物語』(ストルガツキー兄弟、群像社)1989年
- 『願望機』(ストルガツキー兄弟、群像社)1989年
- 『波が風を消す』(ストルガツキー兄弟、ハヤカワ文庫)1990年
- 『トロイカ物語』(ストルガツキー兄弟、群像社)1990年
- 『そろそろ登れカタツムリ』(ストルガツキー兄弟、群像社)1991年
- 『地獄から来た青年』(ストルガツキー兄弟、群像社)1994年(翻訳の途中で深見が死去したため、大野典宏,大山博が共訳し、深見名義で刊行された)[8]。
スタニスワフ・レム
- 『捜査』(レム、早川文庫)1978年
- 『泰平ヨンの航星日記』(レム、ハヤカワ文庫)1980年、のち大野典宏共訳で改訳(ハヤカワ文庫)
- 『すばらしきレムの世界』1 - 2(レム、講談社文庫)1980年
- 『浴槽で発見された日記』(レム、集英社)1980年
- 『宇宙飛行士ピルクス物語』(レム、早川書房)1980年、のち深見訳名義のままで大野典宏訳で改訳(ハヤカワ文庫)
- 『泰平ヨンの回想記』(レム、早川文庫)1981年
- 『レムの宇宙カタログ』(レム、F・ロッテンシュタイナー編、吉上昭三共訳、大和書房)1981年
- 『天の声』(レム、サンリオSF文庫)1982年、のち『天の声 / 枯草熱』(国書刊行会)への収録に際して、沼野充義により改訳
- 『ロボット物語』(レム、早川文庫)1982年
- 『泰平ヨンの現場検証』(レム、早川文庫)1983年
- 『泰平ヨンの未来学会議』(レム、集英社)1984年、のち大野典宏共訳で改訳(ハヤカワ文庫)
その他
- 『太平洋古大陸の謎』(アレクサンドル・コンドラトフ、大陸書房)1976年
- 『マヤ文字の秘密』(B・クジミシチェフ、大陸書房)1978年
- 『ロシアより笑いをこめて - 世界のジョーク集4』(ジャンナ・ドルゴポーロワ、光文社文庫)1986年
編訳書
- 『ロシア・ソビエトSF傑作集』 上(創元推理文庫) 1979年
- 「四三三八年」(ウラジミール・オドエフスキー)
- 「宇宙空間の旅」(ニコライ・モロゾフ)
- 「液体太陽」(アレクサンドル・クプリーン)
- 「技師メンニ」(アレクサンドル・ボグダーノフ)
- 「生き返らせないでくれ」(ワレーリイ・ブリューソフ)
- 解説〈ロシア・ソビエトSFの系譜〉(深見弾)
- 『ロシア・ソビエトSF傑作集』 下(創元推理文庫) 1979年
- 「五人同盟 - 世界が盗まれた七日間」(アレクセイ・トルストイ)
- 「運命の卵」(ミハイル・ブルガーコフ)
- 「髑髏蛾」(アレクサンドル・ベリャーエフ)
- 「危険な発明」(エ・ゼリコーヴィチ)
- 「不死身人間」(ゲ・グレブネフ)
- 解説〈初期のソビエトSF - 革命後から第二次世界大戦まで〉(深見弾)
- 『東欧SF傑作集』上(創元推理文庫) 1980年
- 「招かれざる客」(ボルニ)
- 「時代の子」(カリンティ)
- 「マホメットの毛」(ペーエフ)
- 「あちらの世界」(ヴィシニェフスキ=スネルグ)
- 「ある秋の日に……」(ヴェジノフ)
- 解説〈東欧SFの系譜(ポーランド、ハンガリー、ブルガリア)〉他(深見弾)
- 『東欧SF傑作集』下(創元推理文庫) 1980年
- 「移民局」(チャペック)
- 「システム」(チャペック)
- 「ターザンの死」(ネスヴァードバ)
- 「アイクサよ永遠なれ」(アラーマ)
- 解説〈東欧SFの系譜(チェコ、ユーゴ、東独、ルーマニア)〉他(深見弾)
- 『大笑い! ソ連激烈ジョーク集』(大陸書房) 1992年
山田忠名義
訳書
- 『激変の地球』(I.ヴェリコフスキー、国書刊行会、超科学シリーズ3)1984年
- 『祖父たちの戦争』(マレイ・ラインスター、早川書房、ハヤカワ文庫SF、メド・シップ1)1984年
- 『惑星封鎖命令!』(マレイ・ラインスター、早川書房、ハヤカワ文庫SF、メド・シップ2)1985年
- 『禁断の世界』(マレイ・ラインスター、早川書房、ハヤカワ文庫SF、メド・シップ3)1986年
- 『ビースト・マスター』(アンドレ・ノートン、早川書房、ハヤカワ文庫SF)1986年
- 『ビースト・マスター2 雷神の怒り』(アンドレ・ノートン、早川書房、ハヤカワ文庫SF)1987年
出典・脚注
- ^ 『現代翻訳者事典』(日外アソシエーツ、1985年)は「本人からの回答により」、読みを「だん」としている。早川書房・国書刊行会の刊行物でも「だん」と表記されている。ただし東京創元社の刊行物および国立国会図書館NDL-OPACでは「ただし」の読みを採っている(群像社では読みの記載なし)。
- ^ 『ソ連激烈ジョーク集』訳者紹介
- ^ a b c d e f g h i 『SFマガジン』1992年10月号
- ^ a b c 日外アソシエーツ現代人物情報より
- ^ 『SFマガジン』2015年6月号、大野典宏による『ビースト・マスター』解説。
- ^ https://www.asahi-net.or.jp/~yx6n-oon/announcement.htm
- ^ 日本推理作家協会 会員紹介 http://www.mystery.or.jp/member/detail/0190
- ^ http://www.mystery.or.jp/member/detail/1005