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R-6 (航空機・アメリカ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

シコルスキー R-6

R-6A Hoverfly II at the USAF Museum

R-6A Hoverfly II at the USAF Museum

シコルスキー R-6Sikorsky R-6)は、シコルスキー・エアクラフト社で製造された小型の複座ヘリコプターである。イギリス空軍イギリス海軍では「ホーバーフライ II」(Hoverfly II)という名称で就役した。

開発

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R-6 ホーバーフライ IIは、成功作のシコルスキー R-4を改良して開発された。性能向上のために全く新しい流線型の胴体が設計され、テールローターを備えたブームは延長/強化された。主ローターとトランスミッション系は、R-4のものが利用されていた[1]。シコルスキー社はこの新しい設計に「モデル 49」の名称を与えた。後にローターの動的平衡を保つような改造(dynamically balanced modifications)がドーマン・ヘリコプター社(Doman Helicopters Inc.)で実施された。R-6の最高速度は以前のR-4の82 mphから100 mphへ向上した。

初めの頃の生産はシコルスキー社自身により行われていたが、ほとんどの機体はナッシュ=ケルビネーター社により生産された。後の機体の中にはより強力なエンジンが搭載されたものもあった。

運用の歴史

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アメリカ陸軍航空軍(USAAF)に最初のR-6が納入されたのは1944年のことで、その中にはアメリカ海軍(USN)に移譲された機体もあった。当初は150機のR-6がイギリス空軍(RAF)へ引き渡される予定であったが、ストラトフォードのシコルスキー社工場からデトロイトのナッシュ=ケルビネーター社工場への生産移管に起因する遅れから実際に「ホーバーフライ II」としてRAFに納入されたのは僅か27機であった[2]。このうち15機はイギリス海軍艦隊航空隊(FAA)へ引き渡された[3]

RAFの中の何機かがイギリス陸軍との直協任務におけるヘリコプターの使用のために英第657飛行隊に配備され、胴体外部に2床の担架を備えつけられるようにされた。第657飛行隊はホーバーフライ IIを陸軍砲兵部隊の着弾観測に使用した。ホーバーフライ IIは1951年4月まで現役に留まり、飛行隊所属の1機は1950年9月に開催されたファーンボロー国際航空ショーに展示された[4]

FAAはホーバーフライ IIを訓練と連絡任務に使用した。海軍の部隊ではこの機を1945年12月から第771飛行隊、続いて第705飛行隊といった部隊で使用し始めた。

USAAFではR-6を2次的な任務に使用し、1948年に残存していた機体はH-6Aと改称された。USNの機体はHOS-1と命名され、更に64機がUSAFFから移管される予定であったがこれは実施されなかった。

軍需余剰品の軍用のモデル 49は1940年代末に民間市場に放出されたが、現在運用されている機体は無い。4機がアメリカ合衆国内の博物館に展示されている[5]

派生型

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アメリカ海軍のHOS-1(1947年1月)
ブラッドレー国際空港ニューイングランド航空博物館に展示されるR-6A の胴体を流用したドーマン LZ-1A。
XR-6
出力225 h.p.のフランクリン O-435-7を搭載した試作機。1機製造。
XR-6A
出力240 h.p.のフランクリン O-405-9搭載のXR-6。5機製造されたうち3機はXHOS-1としてUSNへ引き渡し。
YR-6A
小変更が加えられたXR-6A。ナッシュ=ケルビネーター社により26機製造。
R-6A
ナッシュ=ケルビネーター社により193機が製造された量産型。うち36機がアメリカ海軍のHOS-1、27機がRAFのHoverfly IIとして使用された。
R-6B
出力225 h.p.のフランクリン O-435-7を搭載することを計画された派生型だったが、計画は進展しなかった。
XR-7
出力240 hpのフランクリン O-405-9を搭載したXR-6からの発展型として計画された型。製造されず。
ドーマン LZ-1A
ドーマン社設計のヒンジレス・ローターブレードと自動給油式ローターハブのテストベッド用に1機のR-6Aを改造。

R-6Aの展示機

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(data from Ogden, 2007)

要目 (R-6A)

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出典: Thetford, 1977

諸元

  • 乗員: 1
  • 定員: 1
  • 全長: 14.61 m (47 ft 11 in)
  • 全高:
  • ローター直径: 11.58 m (38 ft 0 in)
  • 運用時重量: 1,179 kg (2,600 lb)
  • 動力: フランクリン 0-405-9 、180 kW (240 hp) × 1

性能

  • 最大速度: 161 km/h (87 kn) 100 mph
  • 実用上昇限度: 3,048 m (10,000 ft)


お知らせ。 使用されている単位の解説はウィキプロジェクト 航空/物理単位をご覧ください。


脚注

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  1. ^ Swanborough, 1963, p.529
  2. ^ Butler, 2004, p.278
  3. ^ Thetford, 1977, p.422
  4. ^ Thetford, 1976, p.603
  5. ^ Ogden, 2007, p.602
  6. ^ http://neam.org/index.php?option=com_content&view=article&id=880 "Sikorsky R-6 Doman Conversion (LZ-1A)

出典

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  • Butler, Phil (2004). Air Arsenal North America. Midland Publishing. ISBN 1-85780-163-6 
  • Ogden, Bob (2007). Aviation Museums and Collections of North America. Air-Britain (Historians) Ltd. ISBN 0-85130-385-4 
  • Swanborough, F.G. (1963). United States Military Aircraft since 1909. Putnam & Company Ltd 
  • Thetford, Owen (1976). Aircraft of the Royal Air Force since 1918. Putnam & Company Ltd. ISBN 0-370-10056-5 
  • Thetford, Owen (1977). British Naval Aircraft since 1912. Putnam & Company Ltd. ISBN 0-370-30021-1 

外部リンク

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