この記事では「嫌でも」について解説する。
端的に言えば「嫌でも」の意味は「不承知でも、ぜひとも」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「嫌でも」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/flicker

仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「嫌でも」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「嫌でも」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「嫌でも」の意味は?

「嫌でも」には、次のような意味があります。

たとえ好まなくても。たとえ不承知でも。どうしても。

出典:コトバンク

「嫌でも」は是が非でも、どうしてもという意味です

「嫌でも」の語源は?

次に「嫌でも」の語源を確認しておきましょう。それでは「嫌」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「嫌」は「女」と飽き足らなく思う意味の音を示す「兼」とを合わせた字。女が何かを飽き足らなく思うことから、「嫌う」「疑う」意味を表します。

\次のページで「「嫌でも」の使い方・例文」を解説!/

「嫌でも」の使い方・例文

「嫌でも」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

1.スポーツに興味がない他人を趣味の野球に嫌でも付き合わせる。無責任タイプと悪口を言われようが、印象やイメージが少し悪くなるかろうが、会場まで無理矢理連れて行く。

2.わざわざ文句やクレームを付けてくるおばちゃんの必死の言い訳は嫌でも聞きたくない。当たり前のことだが、いくらお客様でも嘘をつくのは悪い。

3.テレビではどのチャンネルでもネガティブなオリンピックの話題、ワイドナショーでも同じような内容を放送している。嫌でも目に付くので憂鬱だ。

例文1からは強引な性格の人だということが伺えますし、例文2からは開き直った中年女性のふてぶてしい態度が想像できますよ。また、例文3からは見たくもない聞きたくもない話題に嫌気がさしている様子が伝わってきます。

「嫌でも」の類義語は?違いは?

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「嫌でも」と似たような意味をもつ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「無理に」

「無理に」は行為を強行する様子を表します。「本をむりに本棚に突っ込んだら抜けなくなった」「そんなに学校が嫌ならむりに来なくてもいい」は、「無理に」の形で述語にかかる修飾語、前者は窮屈で本を差し込みにくい状況を承知で強引に突っ込んだという意味、「敦は復縁を承知しない麻衣とむり心中を図った」「カラオケをむり強いされるのは嫌だ」は「無理□□」の形で名詞を直接修飾する用法で、相手の同意を得ないまま強行するという意味です。

\次のページで「「無理に」を使用する際のポイント」を解説!/

「無理に」を使用する際のポイント

好ましくない結果が生じることを承知の上で意図的に行うというニュアンスで、しばしば主体の強引さと相手の被害者意識が暗示されますよ。この「無理に」は「無理矢理」や「強いて」に似ていますが、「無理矢理」の方が強引さの程度が高く、しばしば結果を考慮していない暗示があります。また、「強いて」は困難や抵抗があるのを承知で意図的に行うというニュアンスで主体の意図の暗示はありますが、強引さの暗示はありません。ちなみに「嫌でも」との違いは、「無理に」は相手の同意を得ないまま強行するという点です。

その2「強いて」

「強いて」は困難や抵抗があるのを承知の上で意図的に行う様子を表す副詞。「鷲と鷹をしいて区別するとすれば大きさの違いだろう」「だいたい酒はあまり好きじゃないが、しいて言えば日本酒よりビールの方がいい」などのように述語にかかる修飾語として用いられます。

相手の意思に反して行為を行う暗示があるので、日常会話で用いられる場合には、しばしば「そんなに学校が嫌ならしいて行けとは言わないよ」のように打消しを伴って、相手への配慮を残す言い方をすることがありますよ。また、自分の行為について用いる場合には条件句を作り、「…するのは難しいが」という意味になります。主体の意図が強調され、実際に相手に好意を強制するかどうかについては言及しません。

「強いて」を使う際のポイント

「強いて」は「あえて」「たって」や「無理に」「無理矢理」に似ていますが、「あえて」は意図的に行う行為に好ましい結果を期待する暗示があるでしょう。「たって」はとても古風な表現で、無理を承知で依頼する場面でよく用いられ、ふつう自分の行為については用いません

また、「無理に」「無理矢理」は主体の行為の強引さが強調され、相手の被害者意識を暗示します。そのため「嫌がる子供を強いて学校へ行かせた」は「しかったり説得したりして行かせた」、「嫌がる子供を無理に学校へ行かせた」は「暴力も辞さずに強引に連れて行った」というニュアンスになりますよ。なお「嫌でも」との違いは、「強いて」は主体の意図が強調されるという点です。

その3「押して」

「押して」は障害を乗り越えて意図的に行う様子を表しますよ。例えば「彼は激しい風雨をおして出かけた」は動詞の用法、「何度も断られたがそれでもおして頼むと、相手はとうとう根負けして契約を結んでくれた」は動詞にかかる修飾語の用法です。修飾語の場合には依頼や願望などの動作にかかることが多く、主体の意志を暗示しますが相手の被害者意識は暗示されません

「押して」を使用する際のポイント

「押して」は「あえて」や「強いて」に似ていますが、「あえて」は困難を承知で意図的に行う行為に好ましい結果を期待する暗示がありますし、「強いて」は相手の意志に反する暗示があります。したがって「登山隊一行はおして困難なルートを選んだ」「そんなに学校が嫌ならおして行けとは言わないよ」は誤用となり、正しくは「登山隊一行はあえて困難なルートを選んだ」「そんなに学校が嫌なら強いて行けとは言わないよ」となります。ちなみに「嫌でも」との違いは、「押して」は意図的に行うニュアンスが含まれる点です。

「嫌でも」の対義語は?

「嫌でも」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

\次のページで「「誤って」」を解説!/

「誤って」

「誤って」は意図に反する行為をする様子を表します。例えば「彼はあやまって崖から転落した」「その医者はあやまって劇薬を注射した」などのように動詞にかかる修飾語として用いられますよ。意図に反する行為をして非常に重大で好ましくない結果を招くことを表します。ただし、とても客観的な表現で慨嘆などの感情は暗示されていません

「誤って」は「間違って」や「うっかり」に似ていますが、「間違って」は行為の方法が適切でないというニュアンスで、結果については言及せず、意図に反しているかどうかまでは暗示しません。また、「うっかり」は主体の放心状態や勘違いにより行為を暗示します。そのため「電車の中に誤って傘を忘れてきた」は誤用となり、正しくは「電車の中にうっかり傘を忘れてきた」となりますよ。

「嫌でも」の英訳は?

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「嫌でも」の英訳にはどのようなものがあるのでしょうか。英語で「嫌でも」と言い表す時の例をさっそく見ていきましょう。

「don't even want to do」

「don't even want to do」は「やりたくない」という意味です。「I don't even want to do finish my homework by tomorrow even if I don't want to」で「嫌でも明日までには宿題を片付けなければなりません」、「I had to spend time with her kids even if I didn't want to」で「嫌でも彼女の子供と一緒に過ごさなければならなくなった」と表現することができますよ。

「嫌でも」を使いこなそう

この記事では「嫌でも」の意味・使い方・類語などを説明しました。「嫌でも」は是が非でも、どうしてもという意味だと解説しましたね。ちなみに「嫌でも」の同異義語に「無理矢理」が挙げられます。例えば「男は嫌がる子供をむりやり引きずっていった」「アヒルの口にむりやりえさを突っ込んで太らせる」「固辞する後輩をむりやりにくどいて代表にすえた」は相手の意志に反して行為を強制するという意味、「きついスカートをむりやりにはくとかえって太って見える」は状況に合わない行為を強行するという意味になりますよ。参考にしてくださいね。

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国語言葉の意味

「嫌でも」の意味や使い方は?例文や類語をプロダクション編集者がわかりやすく解説!

この記事では「嫌でも」について解説する。
端的に言えば「嫌でも」の意味は「不承知でも、ぜひとも」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
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「嫌でも」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「嫌でも」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「嫌でも」の意味は?

「嫌でも」には、次のような意味があります。

たとえ好まなくても。たとえ不承知でも。どうしても。

出典:コトバンク

「嫌でも」は是が非でも、どうしてもという意味です

「嫌でも」の語源は?

次に「嫌でも」の語源を確認しておきましょう。それでは「嫌」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「嫌」は「女」と飽き足らなく思う意味の音を示す「兼」とを合わせた字。女が何かを飽き足らなく思うことから、「嫌う」「疑う」意味を表します。

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