
「無理に」を使用する際のポイント
好ましくない結果が生じることを承知の上で意図的に行うというニュアンスで、しばしば主体の強引さと相手の被害者意識が暗示されますよ。この「無理に」は「無理矢理」や「強いて」に似ていますが、「無理矢理」の方が強引さの程度が高く、しばしば結果を考慮していない暗示があります。また、「強いて」は困難や抵抗があるのを承知で意図的に行うというニュアンスで主体の意図の暗示はありますが、強引さの暗示はありません。ちなみに「嫌でも」との違いは、「無理に」は相手の同意を得ないまま強行するという点です。
その2「強いて」
「強いて」は困難や抵抗があるのを承知の上で意図的に行う様子を表す副詞。「鷲と鷹をしいて区別するとすれば大きさの違いだろう」「だいたい酒はあまり好きじゃないが、しいて言えば日本酒よりビールの方がいい」などのように述語にかかる修飾語として用いられます。
相手の意思に反して行為を行う暗示があるので、日常会話で用いられる場合には、しばしば「そんなに学校が嫌ならしいて行けとは言わないよ」のように打消しを伴って、相手への配慮を残す言い方をすることがありますよ。また、自分の行為について用いる場合には条件句を作り、「…するのは難しいが」という意味になります。主体の意図が強調され、実際に相手に好意を強制するかどうかについては言及しません。
「強いて」を使う際のポイント
「強いて」は「あえて」「たって」や「無理に」「無理矢理」に似ていますが、「あえて」は意図的に行う行為に好ましい結果を期待する暗示があるでしょう。「たって」はとても古風な表現で、無理を承知で依頼する場面でよく用いられ、ふつう自分の行為については用いません。
また、「無理に」「無理矢理」は主体の行為の強引さが強調され、相手の被害者意識を暗示します。そのため「嫌がる子供を強いて学校へ行かせた」は「しかったり説得したりして行かせた」、「嫌がる子供を無理に学校へ行かせた」は「暴力も辞さずに強引に連れて行った」というニュアンスになりますよ。なお「嫌でも」との違いは、「強いて」は主体の意図が強調されるという点です。
その3「押して」
「押して」は障害を乗り越えて意図的に行う様子を表しますよ。例えば「彼は激しい風雨をおして出かけた」は動詞の用法、「何度も断られたがそれでもおして頼むと、相手はとうとう根負けして契約を結んでくれた」は動詞にかかる修飾語の用法です。修飾語の場合には依頼や願望などの動作にかかることが多く、主体の意志を暗示しますが相手の被害者意識は暗示されません。
「押して」を使用する際のポイント
「押して」は「あえて」や「強いて」に似ていますが、「あえて」は困難を承知で意図的に行う行為に好ましい結果を期待する暗示がありますし、「強いて」は相手の意志に反する暗示があります。したがって「登山隊一行はおして困難なルートを選んだ」「そんなに学校が嫌ならおして行けとは言わないよ」は誤用となり、正しくは「登山隊一行はあえて困難なルートを選んだ」「そんなに学校が嫌なら強いて行けとは言わないよ」となります。ちなみに「嫌でも」との違いは、「押して」は意図的に行うニュアンスが含まれる点です。
「嫌でも」の対義語は?
「嫌でも」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。
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