2021-01-01から1年間の記事一覧
随分と背負ったタイトルなのだが,小三治師の本意ではないだろう。連載「紅顔の噺家諸君!」の書籍化を頼まれて任せてしまったのだから,後は四の五の言わないことにしているだけだろう。 若手に向けて始まった連載だが,この頃の小三治師はまだ,周りにあれ…
まだ何者かになる前の坂道の途中の人が書き記した「きれはし」である。 なので,視点はブレる。迷い,戸惑う。悩んでいる。これでいいのか。違うやり方があるんじゃなかろうか。方向はある。でも,スタイルは?,ポジションは?そして芸人としての需要とは。…
財政健全化をお題目とする「認識共同体」とは何かを明かす謎解きである。 仲間内の価値観や認識での正義を信じて疑わず,自己責任とルサンチマンを撒き散らし,これまで信奉してきた「国の財政危機」を唱え続けるエリートとやらの群れが正体だ。 歪んでいる…
労作である。星新一を星新一を成さしめているのは何か?を誠実に著述した一冊だ。 完全に空調の効いた室内のような,プラスチックや人工大理石で床や壁で出来上がったツルツルとした空間。そして,吐息や体臭の無い登場人物たちの星新一ワールドとは?を問う…
全ての保健所職員よ,必読だ。そして,膝が抜け落ちるだろう。ワハハ!私は泣き笑いの半べそになりながら,これを読んだ。「クソだ。全くクソだ」。ページを捲るたびにいちいち罵詈雑言が口をつく。「何てことだ!アメリカの感染爆発の正体は,クソみたいな…
病を得るという言い方がある。病後の自分を省みて,病気の結果,変わってしまった自分を第三者的な目線で見おろすことで,やっと言える表現だ。 片麻痺,半身不随の闘病期である。リハビリの毎日とは,こうした心情が湧いてくるものなのか。同じリハビリに励…
今どきのマネジメントの教科書である。また,かつて栄華に浸った日本のエレキ産業の衰退当初における「ニッポンの会社の視点」から見れば「異端のリーダーシップ」である。 大きな会社が,大きな会社として採用した人たち,すなわち「大きな会社だから就職し…
副題をつけるなら「国家と経済」である。 なぜ,国家なのか。現実の社会生活がどう営まれているかの理解ができていれば,自ずから導かれる。下村治の言葉である「現実の世界経済は,政府,中央銀行,各国通貨,為替レートといった,国境を前提とした『国民経…
前座修行とは何か。一人前の人間としての型(カタ)を手に入れるための時間と経験である。 この人間としての型(カタ)が無くちゃあ,ひと前に出らんない。それ相応の挨拶ができること,世の中には理不尽さがあるということを知ること,見てくれも大事だとい…
緩い律令国家である。権威っぽい体裁を整えようとするのだが,朝廷を成り立たせようとしようとする側と,メンバーとして名を連ねている官人たちにシビアさが無い。「嫌だし面倒だし,あー,もう行くけどさ,顔は出すけど遅れるよ」だし,「いや,まー,とり…
混乱である。 日本社会というのは,個人としては優秀なのだろう。そして,親分ー子分やチームが形成されまとまると強い。だが,それぞれが組織としての体裁を保ち,もっともらしい方向に動き出そうとすると途端にセクショナリズムが非全体最適な行動を取り始…
哺乳類の持つ体温が紙片から伝わる小説群だ。 原田ひ香の描く登場人物たちのリアルさ。そこに人がいるのがわかる。油断すると触れてしまう気さえする。だからこそ,この短編集は距離がテーマなのだ。誰もが個々に時間も距離も離れたコミュニケーションが取れ…
「親ガチャ」完全解説本である。 政治や行政,マスコミなど政策形成に関わる人たちは,教育と子育てに関してこの本を読まずして語ることを当面,禁止しておく。この本で扱うのは「本人には変えることができない『生まれ』ーー帰属的特性である出身階層と出身…
全てはマネジメントである。チームを機能させるのも,子どもたちが生き生きと暮らすのも。 仕事を動かすのはチームワークだ。チームを構成する個々人が活躍して始めて成果になる。そのためには,リーダーたるマネージャーがチームメンバーの様子に常に気を配…
編集者・玉川奈々福による,現在に伝わる芸についてのバラエティ・パックである。 なので,決して一般向けではないし,系譜系統についての定番となる歴史がこれでわかる!というものでもない。玉川奈々福のいるポジションから見える風景をゲストに教えてもら…
なんか悲しいなぁ。 才能は持って生まれてきてしまう。そやけど、その才能に沿って,その者の「業」が乗ったときに始めて,その才能ある者の道がスタートする。なので、そこに「才能はある」んけやど,しかし…,となると悲しい。才能の行き先が無い。才能が…
まちづくりには,2つの側面がある。一つ目は,文字通り,「まち」に見たことのない新しい何かを「つくる」こと。もう一つは,その「まち」における生命・健康・財産を守るために仕組みや制度,仕事の新しいやり方を「つくる」ことだ。この本のまちづくりと…
当世英国孤独対策事情である。何せ世界初の孤独担当相の置いた国なのだ。本が書かれてもおかしくない。ときの首相は,オシャレ番長,テリーザ・メイ。社会運動家である議員の気の毒な死亡事件からの世間の動きを受けての産物だったとは言え,社会問題が統治…
何を隠そう私は、元ケミストである。なので,化学については一言ある。 化学の作用や効能を発揮させること自体は目に見えない。なので,現象を理解・説明するためのプロセスは頭の中で進む。試験官やフラスコの中で色が変わったー!と喜んでみても,それは機…
論理や理屈で日々,納得や説得が交わされる現在である。 では,一見ごもっともで納得や説得されてしまいがちな,そのもっともらしさに乗ってしまって大丈夫なのか。ほんのりと気分やムードで乗っかってしまっていいのか。 その言説の事実・推測・意見は何か…
デフレは悪である。 では,なぜ90年代以降,続いているのか。デフレ脱却を図ろうとしても,その政策の本意とすることをよく理解しないまま,好き勝手に気分でものを言い出す連中があまりにも多いためである。さらに,緊縮策が予算編成権能を振りかざす上で有…
食材を食事に加工するプロセスである料理とは何か。 清潔,安全であり,味であり、見た目であり、量であり、栄養であり、食べやすさである。本来、腹が空いて食うものである。なので、カロリーメイトと牛乳と果物があれば生きていける。お腹を壊すこともない…
官兵衛は軍師であった。だが,軍師であり続けたわけではない。そして,秀吉にとって軍師として重用はされたが,決して一切を委ねられたわけではない。 配下の者ではあったが,それはスタッフとして立場であって,ラインを統べる立場ではなかったのだ,と童門…
災禍に向かう政府は,中央であれ地方であれ「失敗」する。なぜか。金井は言う。「災害とは,行政に対する需要を増やし,行政による供給を減らす。基本的に災害対応を行う行政は,失敗が運命づけられている」。 シニカルな金井節か,とも受け取られようが,「…
これを読み通すのは,相当の政治マニアではないか。労働組合の専従職員なら読むか,政経学部でも、院生はともかく学部生なら面白がって読むのか。政党機関紙の配達員なら嬉々として読むのか。マニアックである。ゆえに読むには気合と体力が必要だ,と言って…
後悔をする男・黒田如水である。 何せ「天下一鋭い頭脳の持ち主」である。ほぼほぼバカにしてるのか?と聞き返す称号だ。だが,本人にもその自覚がある。ヤレヤレ。 如水は小早川隆景にこう言われる。「如水殿は頭がよすぎる。そのため,決断が早い。それに…
歴史を学ぶべきである。 1980年代,「メザシの土光さん」はスターであった。スターは,スターと呼ばれ期待される振る舞いをするからスターなのであって,庶民はそもそもスターがなぜ,スターと呼ばれるようになったかは知らない。 土光は,つねづね政治に金…
組織開発,チームビルディング,マネジメントの分野においてベストの1冊である。 大袈裟なタイトルである。しかも「グーグル流」の文字が並ぶ。自分には参考にならないのでは無いか,世界の最高峰の知性が集まる大企業の事例を知ったところで役に立つのか,…
日経ビジネス文庫お得意のビジネス小説である。 経営参謀は登場しない。経営参謀が求められるシチュエーションに陥った状況を通じて読者に考えさせるのだ。お前がこの会社の経営参謀だったらどうする?と。 マネジメントがチームづくりだとすれば,経営参謀…
カラッと明るい読後感を味わえる一冊である。 岡が研究対象のフィールドとする徳島県海部町の人々は,次のように評される。ー 世事に通じている。機を見るに敏である。合理的に判断する。損得勘定が早い。頃合いを知っている。深入りしない。愛嬌がある。他…