在来種を捕食して生態系に悪影響を及ぼすとして、駆除対象となっているブラックバスの一種「コクチバス」が、兵庫県内でも確認されたことが国土交通省の調査で分かった。以前から確認されていたオオクチバスとは違い、流れの速い河川にも適応するコクチバスの生息範囲の拡大に、専門家は「未経験の被害を生むかもしれない」と警鐘を鳴らす。(杉山雅崇)
調査は、国交省が1990年度から全国の河川やダム湖で魚類や鳥類などの生息状況を調べている「河川水辺の国勢調査」。おおむね5年度ごとに全国の調査地点を回り、確認された種を公表している。
コクチバスは北米原産の外来魚で、これまで県内の河川とダム湖では確認されていなかった。だが、2016~20年度の同調査で、淀川水系の「一庫ダム」(川西市)でコクチバスが捕獲された。
インターネットの釣りサイトなどでは、県内ダム湖でコクチバスが釣れるという情報が掲載されていたものの、同調査での生息確認は初だった。
コクチバスの生息域は全国で広がっている。1990年代以降、野尻湖(長野県)などで相次いで確認されたのを皮切りに、生息域が急速に拡大。関東、東北、中部地方などでも捕獲されるようになった。
コクチバスの拡大で危ぶまれるのは、河川の生態系だ。滋賀県立琵琶湖博物館の特別研究員で、長年琵琶湖の生態系保全に尽くしてきた中井克樹さんによると、コクチバスは日本に多い流れが急な河川にも適応しやすいといい、淀川水系や紀の川水系など近畿地方の河川でも生息が確認されている。
アユやオイカワなどを捕食するとされ、中井さんは「既に広範囲に広がったオオクチバスやブルーギルと比べ、河川に生息する魚類を食害するリスクが格段に高い。これまでの外来魚では経験しなかった被害が生じるかもしれない」と危惧する。
コクチバスのような特定外来生物の放流は外来生物法で禁止されているが、中井さんは「意図的な放流以外での拡大は考えにくい」と分析する。兵庫県自然鳥獣共生課は「コクチバスに限らず、外来生物の密放流をしないでほしい」と呼びかけている。
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