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万博で地下鉄延伸、広島で路面電車新ルート 25年の鉄道

鉄道の達人 鉄道ジャーナリスト 梅原淳

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今年の国内最大の話題の一つは2025年国際博覧会(大阪・関西万博)であろう。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、大阪市此花区夢洲(ゆめしま)で4月13日から10月13日までの184日間開かれる。日本では2005年(平成17年)に愛知県で開催された愛知万博(愛・地球博)以来、20年ぶりの万博だ。

国内開催の万博は鉄道にも大きな変化をもたらす。1970年(昭和45年)開催の大阪万博、1975年(昭和50年)開催の沖縄海洋博、1985年(昭和60年)開催のつくば科学万博、1990年(平成2年)開催の国際花と緑の博覧会(花の万博)、そして愛知万博と、開催期間中限定で会場内を運行したものを含め、どの万博でも新たな鉄道が登場した。

駅に1日最大25万人

今回は大阪・関西万博のアクセス路線、大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)4号線(中央線)コスモスクエア駅―夢洲駅間(3.2キロメートル)が延伸となる。開業は1月19日と間もなくだ。

大阪メトロの中央線は地上を行く区間が多い。コスモスクエア駅―長田駅間の17.9キロメートルのうち、大阪港駅―阿波座駅間の約5.9キロメートルは地上を走っている。今回開業の区間はどうかというと全線がトンネルだ。

会場の最寄り駅となる夢洲駅は、万博期間中に1日最大25万人が利用するとみられているため、充実した設備を持つ。両側に2本の線路が敷かれたホームには3基横に並んだエスカレーターが設置され、改札フロアには自動改札機が横にずらりと16基並べられている。1時間当たり3万人の利用者にも対応できるよう設計されたという。

JR西日本も万博会場へのアクセスに名乗りを上げている。期間中は、東海道新幹線が停車する新大阪駅から会場近くの桜島駅までをノンストップで結ぶ「エキスポライナー」を運行する。桜島駅方面14本、新大阪駅方面12本の計26本が運転され、桜島駅と会場との間はシャトルバスで結ばれるという。加えて、大阪環状線やJRゆめ咲線の列車も増発されることが決定した。

東海道新幹線の増発も

東海道新幹線の増発も計画されている。大阪・関西万博は、同新幹線が通る府県で開催される万博としては4例目となり、過去どの万博でも観覧客を輸送するために多数の列車が増発された。

JR東海によると、大阪・関西万博に伴う東海道新幹線の列車の増発は、週末などの朝6時台に、東京駅が始発となる「のぞみ」で行われるという。新大阪駅方面行きの「のぞみ」は、品川駅始発、新横浜駅始発を合わせて従来毎日運転されるものが6本、臨時列車が7本の計13本であったところ、臨時列車1本が増発されて14本となる。2本ずつが設定されている「ひかり」「こだま」と合わせると、最大で1時間当たり18本もの列車でにぎわう東海道新幹線随一のピーク時が姿を現す。

市中心部に環状線を形成

もう一つ、今年開業する新線で注目されているのは、広島市の路面電車を運行する広島電鉄の駅前大橋ルートだ。工事の遅れもあり開業時期は夏ごろとなる見通しで、広島駅電停と比治山町(ひじやまちょう)交差点との間の1.1キロメートルが開業の予定となっている。

駅前大橋ルートは、広島駅と広島市中心部との運行距離を短縮するとともに、既存の路線と組み合わせて市中心部に環状線を形成する目的で計画された。注目されるのは広島駅から伸びる259メートルの区間だ。リニューアルされる広島駅ビルの2階から発着し、この区間では路面電車は道路の上ではなく橋梁または盛り土を行く。

広島駅から見て広島市の中心部は南西方向にあるが、現状は列車が一度南南東に向かい、その後西に向かう大回りルートとなっている。新ルート開業により、広島駅から稲荷町電停までの距離は0.8キロメートルから約0.5キロメートルに短縮され、乗車時間も6分半から2分半へと4分短縮されるという。

駅前大橋ルートの開業後、大回りしていた既存区間のうち、広島駅電停と的場町電停との間の0.5キロメートルは廃線となり、その区間内にある猿猴橋町(えんこうばしちょう)電停は廃止される。的場町電停と稲荷町電停との間の0.3キロメートルはそのままで、市内中心部に形成される環状線の一翼を担う。既存の路面電車にはこれまであまり変化が見られなかったこともあり、今回のルート開業は久々の大プロジェクトとして注目したい。

重大事故から20年の節目

また今年は2005年に起きた2件の重大事故から20年の節目を迎える。一つは4月25日に発生し、死者107人、負傷者562人を数えたJR西日本福知山線脱線事故、もう一つは12月25日に発生し、死者5人、負傷者33人を数えたJR東日本羽越線脱線事故だ。

2件の事故はそれまで世界一安全と言われていた日本の鉄道の信頼を揺るがすものであり、この事故の起きた2005年を「元年」として日本の鉄道は再生を迫られた。鉄道を取り巻く情勢、特に経済情勢は厳しさを増しているが、これからも安全な鉄道であり続けてほしいし、筆者も安全な鉄道が今後も維持されるよう、力を尽くすつもりだ。

梅原淳(うめはら・じゅん)
1965年(昭和40年)生まれ。大学卒業後、三井銀行(現三井住友銀行)に入行、交友社月刊「鉄道ファン」編集部などを経て2000年に鉄道ジャーナリストとして活動を開始する。「JR貨物の魅力を探る本」(河出書房新社)、「新幹線を運行する技術」(SBクリエイティブ)、「JRは生き残れるのか」(洋泉社)など著書多数。雑誌やWeb媒体への寄稿、テレビ・ラジオ・新聞等で解説する。NHKラジオ第1「子ども科学電話相談」では鉄道部門の回答者も務める。

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