諸田玲子「登山大名」(358)
諸田玲子「登山大名」(358)
佐代だけではない。わたしたちの息子も生き永らえていた。一雲(いちうん)のあの災難がなければ、身分上藩主にはなれずとも、中川家の親族として重きをなし、御国御前の母と共に今も安泰に暮らしていたはずだ。
「寺の名を申せ」
二人はまたちらりと目を合わせたが、今度は藤兵衛が身をのりだした。
「武蔵国世田谷の豪徳寺という寺にござる」
「今はご修行の身にございますが、聞くところによれば英明にして仁徳・孝養ひと…
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