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ガスや水道を手掛ける51事業者の顧客情報416万件に漏洩の恐れが判明した。業務を受託していた東京ガスの子会社が不正アクセスを受けたためだ。システム運用に必要な業務のために集めた個人データが被害を受けた。攻撃者は当該データへのアクセス権限を持つ従業員の情報を窃取。VPN(仮想私設網)装置を経由して社内サーバーに侵入したと見られる。

 「お客さまの情報が外部から閲覧できる状態になっていたことが判明しました」――。

 2024年7月以降、都市ガスや水道事業を手掛ける全国の企業や地方自治体が相次いでこのような謝罪と対応に追われた。発端となったのは、東京ガス子会社の東京ガスエンジニアリングソリューションズ(TGES)で発生した不正アクセスだ。

 この一件が、同社にガス管や水道管を管理する一部業務を委託していた事業者に飛び火。各事業者の顧客情報が漏洩した可能性が浮上した。

 例えば、千葉県でガスを供給する京葉ガスは7月18日に約81万件(第2報時点)、北海道ガスは7月19日に約69万件(第3報時点)の顧客情報が漏洩した可能性があるとしている。

 それだけではない。埼玉県の越谷・松伏水道企業団は約19万3000件、福岡市水道局も約22万4000件が漏洩した可能性があるとする。他にも熊本市上下水道局や新潟県の長岡市水道局、岡山ガスなど、日経コンピュータが確認できただけで被害を受けた事業者は30を超える。

 7月17日、各社が公表するのに先駆けてTGESは顧客情報が漏洩した可能性を明らかにした。累計件数は約416万件に上る。同社はガスや水道などの事業者から一部の管理業務を受託する役割を担っており、416万件の全件が委託元事業者から預かった顧客情報に当たるという。事業者数は51社に及ぶ。

 この中に、東京ガスの家庭用ガスや電気を利用する顧客情報は含まれていない。東京ガスは管路の管理などをTGESに委託しておらず、自社で行っているためだ。ただし、東京ガスを利用する一部の法人データは漏洩した可能性があるという。

表 東京ガスエンジニアリングソリューションズによる情報漏洩事案の主な影響
業務委託元に問題が飛び火
表 東京ガスエンジニアリングソリューションズによる情報漏洩事案の主な影響
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