2015年一番良かった記事、ならぬ、2015年一番印象に残ったライター&編集者を選ぶ #HyperlinkChallenge2015
転職報告をしたっきり、完全にこのブログを放置していたことを思い出したので、年内最後の更新をしたいと思います。
少し前にみねくん id:minesweeper96 からこんなバトン(?)が回ってきていました。今年よかった記事を選んで紹介する、というもの。
ルールについてはこちらがくわしいみたい。
集計対象になるのは12/20までということなのでこれは集計外なのですが、年末らしく一年を振り返るエントリもいいかなと思うので、以下、今年のWebメディア界隈のいろいろを思い出しながら書いてみたいと思います。
もともとの企画は「今年一番面白かった記事」を選ぶものなのですが、今回はどうせ集計外ということで、ここでは「私が今年一番すごかったと思うライターさんと編集者さん」をMVPとして選んだ上で、その人が担当した記事で個人的にもっとも面白かったものを選んでみようと思います。
●「Webメディア」という観点だと、広告記事のありかたとかオウンドメディアのありかたについて考えることが多かった一年
2015年は、Webメディア業界全体にとっても非常に大きな変革の年だったと思います。要素はいくつか考えられるのですが、その中で今回取り上げたいのが
- 広告記事の再定義
- オウンドメディアの隆盛
の二つのポイント。もっと平たく言い換えると
- スポンサーがついてる記事を、どうしたら面白く、しかもたくさんの人に読ませることができるの?
- 商用メディアとは違う立場を生かしてブレイクする、サイトとして面白くてしかも会社の本業に目に見えて貢献できるオウンドメディアってどういうのが成功例?
……という感じでしょうか。この2つのポイントでそれぞれ最も光っていた2人が、私的には2015年Webメディア業界のMVPです。ライターさんと編集者さんをそれぞれ一人ずつご紹介します。
●ライター部門MVP:ヨッピーさん
今年のヨッピーさんのバズり具合は本当に凄かったです。去年以前ももちろん人気ライターさんでしたが、今年は出す記事出す記事必ずSNSに流れてくる感じ。「またヨッピーさんの記事が流れてきたよ、でも今回は読まなくていいか」(スミマセン)と思っていてもあまりにいろんな人がシェアするので根負けして結局読む、みたいなことも何度かありました。
私がヨッピーさんをスゴイなと思うのは、単にすごくバズってるからではありません(バズるだけの人なら他にもいます)。タイアップ記事((の書き手として、めちゃくちゃハイレベルだという点です。特に今年の記事は真似できないレベルでした。
ヨッピーさんの記事の何がすごいかというと、
- タイアップ記事であることが誰にでも分かる仕立てであり
- クライアントが言いたいことを完全に入れ込んだ上で
- みんなが面白がって読む(PV/UUが多い)
- さらに大勢の人がSNSでシェアする
……という4点をすべて満たしているところです。
タイアップ記事を担当したことがある編集者・ライターさんならご存じだと思いますが、このうち2個を満たす記事を作るのは慣れればそれほど難しくないです。でも、3つを満たすとなるとかなり難しい。さらに4つすべてを満たすのはものすごく難しいです(少なくとも私はできたことがありません……)。
1.の「誰にでもタイアップとわかる仕立て」というのを隠すと、これまた2015年のホットトピックだった「ステマ記事」になってしまう。2を満たし、クライアントの満足度が高い記事にすると読者にとっては面白くないものになってしまうのが常。一方で3を追求したタイアップ記事は「ぶっ飛んでて面白いけど、クライアントさんよくこの記事にOK出しましたね……?」とか「これ面白いけど、なんの記事だったか結局分からなかった」というものになってしまいがちです(そういうタイアップ記事、見たことありませんか?)。3を満たせば4を満たすと思いきや、意外とそうでもなかったりします。PVは多いけどバズらない、というのはよくあるし、SNSですごく話題になってるのにPVはそれほどでも……というのもときどきあるんですよね。
説明が長くなりました。そんなわけで、今年見かけた広告記事の書き手のなかでMVPを決めるなら文句なくヨッピーさんではないかと。ヨッピーさんが手がけたタイアップ記事の中で、おそらく一番バズったのは市長とシムシティ勝負をするコレだと思います。上記の4つをすべて満たしており、さすがです。
個人的に、今年ヨッピーさんの記事で好きだったのは銭湯神&温泉神シリーズ。中でもこの野沢温泉の記事(2本セットで)。
この記事を読んで、今年久しぶりに野沢温泉に行ってしまいました。野沢温泉は熱いし成分も濃いしで13か所の共同浴場を1日でハシゴ するなんてとても無理です。ヨッピーさんすごい。
※記事を読んで、つられて野沢温泉に行ってしまった時に撮った写真。特に温度が高い源泉(野沢菜やとうもろこしをゆでたりする)は、記事にある通り本当に地元の人以外立入禁止だった
●編集者部門MVP:えとみほ(江藤美帆)さん
今年、個人的に一番注目していたのが kakeru(http://kakeru.me) というサイトでした。サイトのキャッチコピーは「ソーシャルメディアの可能性を追求するメディア」。えとみほさんは、そのkakeruの編集長です。
「この記事面白いな、どこの記事だろう」と思ってサイト名を見ると「kakeru」と書いてある……ということが何回かあった後、サイト名を認識。その後、このサイトが今年の5月にできたばかりであり、しかも商用サイトではなく、株式会社オプト(ネットの広告代理店です。私も前職ではお付き合いがありました)のオウンドメディアだということを知り、「商用サイトがやらないところを突いてる、これはすごい、面白いメディアが出てきた」と、驚くとともに定期的にチェックするようになったのでした。
kakeruのコンテンツというと、一般的にはたぶん、SNSポリスのマンガ(http://kakeru.me/twitter/snspolice-1/)が広く知られていると思うのですが、私が「これはすごい」と思ったのは、Instagramについての記事や、10~20代のいわゆるデジタルネイティブの子たちがどうやってSNSを利用しているかを取材した記事です。典型例がこれ。
これは、Instagram(インスタ)大好きだという平成生まれ女子二人に、えとみほさんがその面白さをインタビューで聞きだしていくという記事です。
個人的にはここ数年、SNSではInstgramが一番好きなんですが、そう言っても仕事でのつながりの人たちにはヘビーユーザーが少ないという事情があり、あまり共感してもらえなくて……。この記事を初めて読んだときは、「Facebookは意識高い自分を見せたいけどインスタはビジュアルをよく見せたい」とか「インスタ映えが大事」とかのくだりに「あ~、分かる分かる!!!」と共感しまくり、うなずきまくりだったのでした。
この記事だけじゃなく、kakeruのInstagram関連記事は毎回非常に鋭くて面白いのです。インスタの世界の人気者という人がいて、それは雑誌の読者モデルに近い存在で、フォロワーさんのあこがれの存在である。というか、インスタそのものがファッション雑誌化しつつある、インスタからECサイトに誘導してモノを売る、ファッション誌のプロモーションはもうインスタ抜きには考えられない…というInstagram関連のトレンド話などは、自分がぼんやり感じていたことだったので、kakeruの記事を読むたびに「あー、やっぱりそうだよね、そうなってきてるよね」と、頭の中の答え合わせをしているような気分になっていました。
それともう一つ。10~20代前半のいわゆるデジタルネイティブを取材した記事もよくできてます。例えばこれ。
この2本とか、あと上に挙げたインスタ女子へのインタビュー記事もそうなんですが、生まれたころからネットがあって、学生のうちにスマホを使い始めた彼らの行動を、ちゃんとヒアリングしてすくい上げ、もっと上の世代にも伝わるように翻訳して記事にしているところがすばらしい。
簡単なようで、意外とこれができてる記事って少ないのです。「デジタルネイティブすごいねー」と単にほめちぎったって意味がないと思うのですが……。一部商用メディアにも時々こういうヒアリング記事は搭乗するのですが、大抵単発なんですよね。シリーズでずっと読ませるのはなかなかない。
……なんて思っていたら、つい先日、当のえとみほさんが「kakeru編集長をやめます」と表明、記事&ブログを書いていらっしゃいました。
www.etomiho.com
これを読んでいたら、kakeruの他サイトとの差別化ポイントについて
と書いておられて、「あー、私はえとみほさんの狙い通りのところに反応していたんだなあ」と改めて思った次第です。
実は今年の夏、えとみほさんご本人にひょんなことからお会いすることができ、Webメディアの運営についてとか、昔のネット話とか、ライター&編集者あるあるみたいな話とか、同世代&同じ編集長経験者ということでものすごく盛り上がっておしゃべりしたのでした。その時に新規事業の話もチラッと伺っていたので、改めて退職エントリを拝見して「お疲れさまでした!」とお伝えしたい次第。えとみほさんが手掛けるkakeruを読めなくなってしまうのは残念ですが、編集長としてしっかり線路を引いたあとなので、きっと来年も伸びていくだろうなと思っています。
ということで改めてえとみほさんの手掛けた記事でNo.1は……と考えてみたのですが、やはりこれかな。
●河崎環さん「WOMAN千夜一夜物語」
ヨッピーさんとえとみほさんの話でだいぶ長くなってしまいましたが、自分が手掛けたものから一つ紹介していいということなので、こちらも記事というよりは人で選びたいと思います。
一つ前のエントリにも書いたとおり、今年の8月に長年勤めたアイティメディアを退職し、プレジデント社に入社したのですが(プレジデント社に入社しました。 - ヨシオカの頭の中)、結局「日替わりdancyu」(http://dancyu.jp/)にはあまりタッチせず、主に「PRESIDENT WOMAN Online」、それと「PRESIDENT Online」に携わった半年弱でした。
PRESIDENT WOMAN Onlineというのは、平たくいうならば「キャリア女性向けのビジネス誌(のオンライン版)」です。これまでもいろんなジャンルの記事を手掛けてきたつもりだったんですが、女性向けのコンテンツというのは本当に生まれて初めてで、かなり戸惑いました。メイクアップアーティストの取材をしたり、女性用スーツを仕立てる話を取材したり、もう「こんな記事書いたことないよ~!(困惑)」の連続。たいへん。
でも逆に、それまでの男性向けメディアでは声をかけられなかった筆者さんにお願いできるようになったのは楽しかった。その中でも筆頭が、河崎環さん。キレッキレの文章を書く河崎さんに以前から一度原稿をお願いしてみたかったのですが、彼女は子育て系のメディアがメインフィールドということもあり、以前いた媒体ではなかなか難しかったのです。どきどきしながらお願いしたところ、週一コラムを快諾していただけまして、その第一回目がこちら。
初回からインパクトあるというか、女性を全面的に前に出してのコラム(私にはこういうのは書けない)。その後も、某有名女性研究者のことを書いたり、炎上した某メーカーのミルクパウダーCMを取り上げたりと、テーマ選びも筆も冴えてるコラムが続くのですが、一本だけ選ぶならやっぱりこれでしょうか。
連載開始直後に賛否両論を巻き起こし、第二話で休載することが決まった東村アキコさんのマンガ『ヒモザイル』についてのコラム。河崎さんの全コラムの中でも&私が今年PRESIDENT WOMAN Onlineで担当したすべての記事の中でも、最もPVが多い記事となりました。
河崎環さん、2016年はきっとブレイクする筆者さんだと思っています。他社さんのサイトに書かれている記事も本当に鋭いし面白いので、ぜひご注目ください。
余談ですがヒモザイルの記事で河崎さんが書いていたテーマは、ちょうどこの年末年始で掲載している、川崎貴子さんと田中俊之さんの対談にも通じる内容だったりします。ぜひ合わせてこちらもお読みいただければと思います。
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さくっと書くつもりがめちゃくちゃ長くなってしまいました。ちょっと気が早いかもしれませんが、それではみなさま、良いお年を。