一斉休暇闘争とは、労働運動に関する言葉である。
概要
定義
一斉休暇闘争とは労働組合が行う団体行動の1つであり、労働組合に所属する労働者が示し合わせて一斉に同じ日において年次有給休暇取得権を行使することをいう。
状況により争議行為になったり組合活動になったりする
一斉休暇闘争は、それを行う状況により、争議行為になったり組合活動になったりする。組合活動というのは、労働組合が行う行動のなかで争議行為以外のものをすべて含む概念である。
職場の人手が足りなくなることが容易に予想できて「自らの職場の業務の正常な運営を阻害する目的で労働者が一斉に有給休暇を申請した」と明らかに判断できる場合は、「労働者は年次有給休暇取得権を行使したのではなくストライキという争議行為を行った」と判断される。使用者は、労働者を欠勤扱いにして、ノーワークノーペイの原則に従って給与を支払わない。
職場の人手が不足しないことが容易に予想できて「自らの職場の業務の正常な運営を阻害する目的で労働者が一斉に有給休暇を申請した」とは判断できない場合は、「労働者は年次有給休暇取得権を行使して組合活動をした」と判断される。使用者は、労働者に対して有給休暇として給与を払わねばならない。
争議行為とされたとき、「不当な争議行為」になる可能性がある
自らの職場の業務の正常な運営を阻害するほどの効果がある一斉休暇闘争は、争議行為と判定された後に「不当な争議行為」になる可能性がある。
労働関係調整法第2条では「労働争議が発生したときは、誠意をもつて自主的にこれを解決するやうに、特に努力しなければならない」と定められている。
自らの職場の業務の正常な運営を阻害するほどの効果がある一斉休暇闘争は、年次有給休暇取得権の行使を装って争議行為をするのだから、相手を欺く手段であり、あまり誠意のある手段ではない。このため「不当な争議行為」になる可能性がある。
1952年の国鉄で行われた
一斉休暇闘争は1952年冬の国鉄で行われた。1952年12月9日から国労(国鉄労働組合)が順法闘争を開始し、14日から一斉休暇闘争に拡大した。このときの国労は一斉休暇闘争のことを「賜暇闘争(しかとうそう)」と呼んでいたという[1]。
白石営林署事件
一斉休暇闘争に関する判例として白石営林署事件(昭和48年3月2日最高裁)というものがある。
営林署Aに務める労働者が年次有給休暇取得権を行使して2日間を休み、その2日間において営林署Bの争議行為に参加していた。そのことを知った営林署Aの使用者は労働者の年次有給休暇を取り消して欠勤扱いにしたが、労働者は不服として裁判所に訴えた。
判決で「労働者の行為は営林署Aの業務の正常な運営を阻害するに至っていなかったので、争議行為のうちに入らない」とされ、年次有給休暇の取得が認められた。
休暇の取得が争議行為になるか、それとも年次有給休暇取得権の行使になるのかは、その労働者の職場の正常な運営が阻害されたかどうかによってのみ判断され、休暇中の行動の内容によって判断しない。
関連項目
脚注
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