プロ野球ドラフト会議が24日、行われる。高校野球の春夏甲子園をはじめアマ野球もチェックする本紙評論家の田村藤夫氏(64)が、各球団の補強ポイントを独自の目線でピックアップ。前編はセ・リーグ編。

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■中日 金丸に地元・中村

井上新監督で再スタートする中日は、投手力の整備が鍵を握りそうだ。懸念されるのが小笠原のメジャー挑戦、抑えのマルティネスの動向は投手力に直結する。その上で、今年のドラフトの目玉、関大の左腕・金丸夢斗投手(4年、神港橘)が筆頭にあげられる。左腕は大野、松葉、小笠原と枚数はそろっているが、先発ローテーションを任せられる素材の金丸は外せないだろう。また、地元の右腕・愛知工大の中村優斗投手(4年=諫早農)も注目。中日はドラフトでは地域性を非常に大切にする。制球も良く、スライダー、フォークの精度も高い。特にフォークの落差は千賀(メッツ)をほうふつとさせる。ちょうど打者がスイングするベース板近くで、ゾーンギリギリからボールに落ちる理想的な軌道を描く。右打者、左打者に通用するこのフォークは大きな武器になる。先発スタッフでは右腕高橋宏という頼れる柱ができたが、柳、涌井の力量にやや陰りが見える。左腕金丸を筆頭に、新生中日は投手力整備からのスタートとなりそうだ。

関大・金丸夢斗
関大・金丸夢斗

■ヤクルト 左腕・伊原も候補

先発ローテーションに最後まで苦しんだ。小川が戦列を離れ、奥川にも復調の兆しはなかった。サンタナ、オスナ、村上、山田、長岡の攻撃力があるだけに、投手力整備が最大の補強ポイントだろう。左腕金丸、右腕中村、社会人左腕のNTT西日本・伊原陵人投手(24=大商大)が候補になってくるのではないか。中でも金丸は真っすぐで厳しく内角を突ける制球力がある。上背はないが、ズドンと来る球質は魅力。チェンジアップ、カーブ、フォークを持ち球とし、今年のドラフトの目玉として、5位に沈んだヤクルトにはうってつけの素材。

■広島 宗山1位を公表

9月に大失速した広島は注目だ。球団の基本方針として自前の選手を練習で鍛えるやり方を貫く。球団は早々に明大・宗山塁内野手(4年、広陵)の1位指名を公表した。矢野、小園と内野陣は若返りを図っており、宗山はそうした方針と一致する。さらに、現有戦力を考えると、ポスト菊池は補強ポイント。花咲徳栄・石塚裕惺(ゆうせい)内野手(3年)は高校生内野手では高評価。また、将来的に坂倉の後継を考えると健大高崎・箱山遥人捕手(3年)も注目だ。投手陣は大瀬良を軸に顔触れは健在。投手はチームの根幹を成す。大学、社会人の先発候補も視野に入れたドラフトとなりそうだ。

明大・宗山塁
明大・宗山塁

■DeNA 相模の藤田もある

投手を補強するのではないか。今永が抜けた穴は大きく、それを埋めるべく躍進した若手も見当たらない。私は左腕育成に実績がある球団との印象が強く、金丸や伊原との相性は興味がある。競合を避ける戦略なら、上位で地元東海大相模の左腕・藤田琉生投手(3年)などもあるのではないか。打ち勝つチームカラーは来季も大幅に変わらないだろう。牧、宮崎、オースティン、佐野の強打はリーグでも存在感がある一方、守備力という点ではスキもある。宗山のような守備と打力を備えた大型新人が、チームに変革をもたらす布石に感じる。

東海大相模・藤田琉生
東海大相模・藤田琉生

■阪神 遊撃補強に宗山

岡田監督の勇退でまたひとつ脱皮する機会を迎えた。その中で私は大山、佐藤輝、近本、中野、森下と、大卒野手が成功している流れを重視したい。そこで注目はショートだろう。木浪は打力でやや物足りなさがある。宗山は、打力では大きな期待ができる上、守りでも広い守備範囲と正確なスローイングが魅力だ。特に腕の使い方が柔らかく、肩も強い。送球も安定している。イレギュラーが心配される甲子園だが、そもそもイレギュラーはどんな名手でも対応は困難。打てて守れる大卒野手として、新生タイガースの補強は宗山からというのも理にかなっている。

■巨人 まずは先発投手

菅野、岡本和のメジャー挑戦という不確定要素がある。菅野が抜ければ15勝という大黒柱が抜け、攻撃面でも打点83の岡本和が抜けるとなると影響は計り知れない。これをドラフトで補強するのは現実的ではない。これまで通り、まずは先発投手を補強する判断となるのではないか。金丸、中村を筆頭とした優先順位で、競合での抽選も予想した中でのドラフト戦略となるのではないか。(日刊スポーツ評論家)