慈悲深い改革者 教皇フランシスコが残したもの(社説)
この記事の原文(英文)をNIKKEI FT the Worldでお読みいただけます。 21日に死去したローマ教皇フランシスコはその前日、明らかに体調が悪いにもかかわらず、バチカンのサンピエトロ広場で開かれた復活祭(イースター)の行事のために集まった信者の前に姿を現した。それはまさに在位中に示し続けた人間性の証しだった。肺炎を起こし死の淵をさまよった数週間後、聖職者の道を歩み始めた時と変わらずに人々
アジアで細る中間層 安全網整備・経済多角化を(社説)
この記事の原文(英文)をNIKKEI FT the Worldでお読みいただけます。 銀行やコンサルタント会社は長らく、アジアの新興国における中間層の急拡大が事業機会を生むとクライアント企業に吹聴してきた。たしかに所得の上昇とともに外国からの直接投資が十分流れ込み、経済成長に拍車がかかった。 だが近年、アジアの消費者の勢いは失速している。新型コロナウイルス禍とロシアによるウクライナ侵略に伴う食品・
イラン核開発は外交努力で解決を(社説)
この記事の原文(英文)をNIKKEI FT the Worldでお読みいただけます。 米トランプ政権が数週間にわたり軍事行動の可能性を示唆しつつ外交的な駆け引きをした結果、米国とイランがようやくイランの核開発をめぐる危機の高まりを解消する可能性を探り始めた。米国のウィットコフ中東担当特使とイランのアラグチ外相が12日、オマーンで間接的な協議を行い、双方とも建設的だったと評価した。重要なのは、19日
市場の力に屈したトランプ氏(社説)
この記事の原文(英文)をNIKKEI FT the Worldでお読みいただけます。 トランプ米大統領は自滅的な大規模関税の発表を「解放の日」と呼んだ。金融市場はその後混乱に陥ったが、1週間後にトランプ氏が中国を除く大半の国への追加関税を90日間停止すると方針を転換したことで、ある程度の解放感は得た。 この譲歩は市場に安心をもたらしたが、平時に戻ったわけではない。10日に米国市場で株価がさらに下落
トランプ氏が壊した同盟関係、修復困難に(社説)
この記事の原文(英語)をNIKKEI FT the Worldでお読みいただけます。 トランプ米大統領は、自身の予測不可能な面と取引主義的な生き方を誇りにしている。こうした戦術は不動産ビジネスや債務再編などでは効果を発揮するかもしれない。しかし国際政治においてトランプ氏の取引主義は、米国自身にとっても世界の安定性にとっても非常に高くつくことになるだろう。 中国やロシアに比べ、米国が持っている大きな
フランス極右ルペン氏に対する衝撃的な判決(社説)
犯罪者に甘すぎると裁判官を非難するのは、フランスの極右政治家によるエスタブリッシュメント(支配層)攻撃の常とう手段だ。だが3月31日、極右勢力は別の攻撃手段が必要になった。パリの裁判所は極右の国民連合(RN)を実質的に率いるマリーヌ・ルペン氏に対し、欧州連合(EU)の資金を不正流用したとして極めて厳しい判決を下した。ルペン氏は禁錮4年、執行猶予2年と残りの2年は電子タグを装着して監視される処分を
米国の自動車関税、中国製EVの追い風に(社説)
今は大手自動車メーカーであることが少々難しい時期だ。ただし、中国企業であれば、それほど困難ではない。トランプ米大統領が計画している輸入自動車と主要自動車部品への25%の追加関税は、メーカー各社に米国内への生産移管を強い、雇用を創出することを意図している。欧州とアジアの自動車メーカーの株価は下落したが、コストが上昇する米国の自動車メーカーの株価も下がった。しかし、今や世界最大の電気自動車(EV)メ
揺らぐ米国例外主義、世界経済とマネーに影響(社説)
この記事の原文(英語)をNIKKEI FT the Worldでお読みいただけます。 2024年末のセルサイド(証券会社)の投資リポートにざっと目を通すと、多くのアナリストが(傑出した米国経済の強さなどを意味する)「米国例外主義」や「投資できない」中国、欧州の「退屈な株式市場」について得意げに語っていた。 トランプ米大統領が就任して2カ月で状況は一変した。米銀バンク・オブ・アメリカが3月中旬に発表
米政権がデータ介入、揺らぐ経済統計の信頼性(社説)
この記事の原文(英語)をNIKKEI FT the Worldでお読みいただけます。 トランプ政権の政策に関して、有力経済学者の懸念は経済成長やインフレへの影響にとどまらない。フィナンシャル・タイムズ(FT)とシカゴ大学ブース・ビジネススクールが実施した最新調査では、米国の経済統計の質について「非常に」または「やや」懸念しているとの回答が9割に達した。影響力の大きい米連邦経済統計諮問委員会(FE
アジアの米同盟国も防衛の再考が必要だ(社説)
米国を深く信頼できないパートナーに変えるトランプ米大統領の動きは、北大西洋条約機構(NATO)加盟国に防衛政策の抜本的な見直しを迫った。アジア太平洋地域における米国の同盟国への影響はあまり注目されていないが、あらゆる面で同等に深刻である。権威主義的かつ独断的な中国はロシアよりはるかに強力であり、その台頭は、長年にわたって自国の安全保障を米国の力に頼ってきた地域の民主主義諸国に対し、大きな難題を突