北極圏統治めぐり揺らぐ多国間主義
北極圏では、気候変動の影響が地球上のどこよりも如実に表れている――。科学者たちはそう警告を発している。慎重な統治体制を欠けば、地政学的な温度まで急速に熱を帯びる可能性がある。 最も差し迫った地政学リスクは軍事紛争ではない 見たところ、北極圏における争奪戦の機は熟している。外交的な緊張の高まりや、気候変動の結果、天然資源と海上航路へのアクセスが改善したことに伴い、権益拡大に動く国や、それを食い止め
米国の狂った「王」が招く経済大混乱 マーティン・ウルフ
「こやつらの首をはねてしまえ」――。 これは童話「不思議の国のアリス」に登場する気まぐれな絶対君主の「ハートの女王」が好んで口にする言葉だ。本の中の話なら面白おかしく思えるかもしれない。 だが、現実となれば面白いなどとは言えない。絶対的統治者は歴史を通じて民衆に苦しみをもたらし、自らの家族にさえ危害を加えた。その宮廷は媚(こ)びへつらいや、えこひいき、腐敗の温床だ。これこそが専制政治の弊害である
トランプ政権のあまりに不当な米大学攻撃 ギデオン・ラックマン
今や誰の目にも明らかだろう。トランプ米政権による米国の数々の大学に対する攻撃は、反ユダヤ主義との戦いが目的ではなく、自律的な思考を育む諸機関を政府の統制下に置こうとする試みだ、ということが。 バンス副大統領は2021年から「大学こそが敵」と見ていた トランプ米大統領の政治活動にとって、大学は米国のリベラル派支配層の中核をなす。その自由主義を打ち負かすには、一流大学をつぶす必要があるというわけだ。
テック供給網の現実無視した米関税 ジリアン・テット
この記事の原文(英文)をNIKKEI FT the Worldでお読みいただけます。 6カ月前、米半導体大手エヌビディアは、投資家にとって米経済の魅力を象徴する存在だった。同社は巨額の利益、卓越した技術革新、そして革ジャンがトレードマークのカリスマ創業者、ジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)などの魅力を備えていた。 だが今や、同社は意図せずして、トランプ米大統領が引き起こした悪夢の象徴になっ
米金融業界の世界制覇を阻むトランプ氏
この記事の原文(英文)をNIKKEI FT the Worldでお読みいただけます。 トランプ米大統領が2024年11月の大統領選を制した時、多くの銀行や資産運用会社の関係者は米金融業界に強い追い風が吹くと見ていた。だが今や、同氏こそがウォール街のアキレス腱(けん)となる可能性が出ている。 米国の大手銀行や運用会社はここ15年間、躍進を続けてきた。米銀は08年の金融危機から欧州のライバルよりも早く
米資産のリスクプレミアムは不可避 ケイティ・マーティン
米国のスティーブン・ミラー大統領次席補佐官が10日、「米大統領による歴史上、最も偉大な経済戦略だ」と称賛したのを目にした。 アックマン氏も相互関税発動延期を「見事だ」と言うが トランプ大統領が世界の国・地域を対象に課した過激な相互関税のうち、10%を超える上乗せ部分の適用を90日停止すると方針転換したことを億万長者の著名投資家でトランプ氏支援者として知られるビル・アックマン氏も「見事だった」とし
トランプ氏より強い習氏の「手札」 ギデオン・ラックマン
ちょっと迷っているから冒頭は大文字なのだろう。トランプ米大統領は13日、自身のSNSに「いかなる国・地域も逃れることはできない(NOBODY is getting off the hook)」と投稿した。 これは9日に発動した相互関税について、米税関・国境取締局(CBP)が11日夜になってスマートフォンと電子関連製品を対象外にすると発表したことを受けた投稿だ。トランプ氏としては事態を明確にしよう
米テック、トランプ氏支持の報い 海外での影響力低下も
米国のトランプ大統領に対する米テック業界の支持はわずか1週間のうちに急激に裏目に出たようにみえた。グローバル貿易体制を破壊するようなトランプ氏の政策が電子機器の複雑なサプライチェーン(供給網)に影響することがわかると、米テック企業のアップルとエヌビディア、テスラの株価が急落した。 画像処理半導体(GPU)を搭載したコンピューターに大幅な関税がかけられそうな見通しになったことから(編集注、米政府は
トランプ氏に戦略ビジョンはない ジャナン・ガネシュ
カンボジア北西部のシエムレアプ空港に降り立つと、均整の取れたアーチ型天井にも目がいくし、世界一ピカピカに磨かれたような床にも驚かされる。少し前まで国連の後発発展途上国(LDC)だったカンボジアが、いかにして国内第2の都市にこれほど洗練されたモダンな施設を建設できたのか。空港ロビーに張り出された広告を見ればわかる。中国の投資とノウハウのおかげだ。 折しも米国はそのカンボジアへ49%の相互関税をかけ
米国債売りの裏側 ジリアン・テット
米国発の貿易戦争で株式市場が暴落するなか、ベッセント米財務長官は4月初旬、神経をすり減らした投資家の不安を鎮めようとした。「401k(確定拠出年金)に加入している大部分の米国人は、いわゆる60/40口座を持っている。これは年初から5、6%しか下がっていない」とベッセント氏はテレビ番組で言明した。 普通の言葉に言い換えると、ファンドマネジャーは通常、資産の40%を債券に(編集注:残る60%は株式な